No.409068

仮面ライダークロス 第十四話 なんでもかんでも運命という言葉で片付けるな

RIDERさん

まさかの事態です

2012-04-15 19:30:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:940   閲覧ユーザー数:919

〈CROSS/ETERNAL/INFINITY!〉

〈UNLIMITED!〉

 

クロスはバーチャルバトルルームでクロスアンリミテッドに強化変身した。

ところで彼がクロスアンリミテッドに強化変身した理由だが、単純に自分の力がどの程度なのかを見極めるためである。

「…強化」

クロスはスーツの防御力を強化し、バーチャルのウェザーの攻撃を受ける。

「…無効化」

続いてバーチャルウェザーの吹雪を消滅させ、そのままパンチ力を強化して、バーチャルウェザーを殴る。

 

 

 

こんなことをかれこれ一時間繰り返し、クロスは変身を解いて部屋を出た。

「どうだった?」

出迎えてくれた一真が訊く。

「アンリミテッドの力は確かに強力だよ。でも…」

光輝は数日前、自分が究極の存在、無限の使徒として覚醒した戦いを思い出す。

「あの時と同じ感覚が掴めない。何かが違うんだ」

光輝は確かにアンリミテッドフォースを操れるようになった。しかし、どうにもあの時と同じ圧倒的と言える程には使えない。感覚が違うのだ。あの時は、そう、例えるなら、全ての世界を敵に回しても無傷で勝てる、そんな自信に満ち溢れていた。だが、今使ってみると、そこまでの自信を感じない。こんな感じだった。

 

「まあいいじゃないか。俺が見てた限り、今のままでも君に敵はない。あまり深く考える必要はないさ」

「…うーん…」

一真の言う通りなのだが、いまいち納得できない光輝。

「それより、ご飯できてるよ。一緒に食べよう」

「…うん」

正直まだ腑に落ちない光輝だったが、せっかく一真が作ってくれた料理を冷ますわけにもいかない。

光輝は一真とともに、居間に上がった。

 

 

 

 

 

園咲家。

若菜は琉兵衛に尋ねた。

「お父様。あれからかれこれ数日経ちますけど、無限の使徒の件はどうなったんですの?」

「…何の音沙汰もないが、失敗したと見て間違いはないだろうね。無限の使徒が覚醒、及びアンリミテッドフォースの完全行使するためには、激情が必要だ。アーチボルト君は少々、遊びすぎる癖があるから、彼を刺激しすぎたんだろう。」そう言った琉兵衛は、その目に憤怒の色を宿して続ける。

「全く、あれほどやりすぎるなと言っておいたのに…戻ってきたら処刑だな。」

琉兵衛は机の上に乗って丸まるミックに目を向けた。

ミックはそれに応えるように喉を鳴らした。

 

 

 

 

 

風都のどこか。

アーチボルトはヒステリーを起こしていた。

「クソッ!クソッ!クソッ!なぜだ…なぜこんなことになった!?全てうまくいくはずだったのに!!」

アーチボルトは仕事もできるし、物腰も穏やかだったが、その性格は残虐そのもので、相手を苦しめることを何よりの喜びとする。会社仲間からはそのことで忌み嫌われ、琉兵衛から指摘されることもしばしば。

今回の出動前も、琉兵衛に何回も指摘された。無限の使徒は激情によって覚醒するため刺激しすぎてはいけない、と。

だがアーチボルトはそれを無視した。無限の使徒だろうと何だろうと自分のペインメモリに敵うはずがない、とたかをくくっていたからだ。

その結果任務に失敗し、現在のような状態になってしまった。

このまま戻れば自分は間違いなく処刑されるだろう。処刑人はミックか、もしくはゲテモノ好きのあの女か…どちらにしても、それは確定事項だ。

「冗談じゃない!やっと…やっとここまで登り詰めたんだぞ!?それなのにこんなにあっさり…」

危機感を抱くアーチボルト。

「対抗策を考えなければ…!」

しかし、相手は全てを可能とする無限の力を操る、神にも等しき存在。そんな奴に小手先の策をぶつけたところで、簡単に破られてメモリブレイクされるのがオチだ。

ではどうする?何かいい策はないものか…と、アーチボルトはあることを思い出す。

そういえば、自分がペインメモリの力を使って無限の使徒の仲間に幻覚を見せた時、妙な反応をした者がいた。

ブレイドだ。他の者が幻覚に苦しんでいたというのに、彼だけは違った反応を見せた。彼はあろうことか暴走して、仲間に手をあげたのだ。

普通ペインメモリによって幻覚を見せられた者は、精神が崩壊するか、発狂して死ぬ。暴走など起こさない。

 

…これはひょっとして使えるのではないか?

「そうだ…使える!使えるぞ!!」

クロスに及ばないとはいえ、あのライダーの戦闘力はかなりのものだった。仲間らしいし、無限の使徒でも戦いたいとは思わないはず。うまく同士討ちさせれば、倒すことはできずとも、疲弊させることはできるはず。そこを突けば……

「いいぞ…これで…勝てる!」

対クロス用の作戦を考えたアーチボルトは、邪悪な笑みを浮かべる。

「では、奴を誘き出す作戦を考えましょうか」

アーチボルトはクロスを倒すべく、さらなる作戦の発案に入るのだった。

 

 

 

 

 

僕は自分の机の上のシャーペンに意識を集中させ、手をかざす。

すると、シャーペンが空中に浮き上がった。

「「おお~~~!!」」

ダンテと照山が歓声をあげる。

さらに、僕がイメージすると、シャーペンは僕のイメージ通りに空中を舞う。そして、僕の手に収まった。

「今のは念動力ってやつだな?」

「すげぇ!副会長みてぇだ!」

ダンテが質問し、照山がはしゃぐ。

「他にも、瞬間移動とか、衝撃波を出したりとかもできるよ。」

「へぇー、並のドーパントより強いんだ…」

レディさんが感嘆した。

「それも無限の使徒として覚醒した影響か?」

今度はバージルが尋ねてくる。

「たぶんそうだと思う。それでも変身した方がずっと強いし、アンリミテッドになれば、なお強いんだけど。」

「それはそうでしょう。っていうか、ライダーだけでなく変身者までチート?ありえなすぎるんだけど…」

トリッシュさんに呆れられた。なっちゃったものは仕様がないよ。

と、

「…どうしたカズマ?さっきから全然話に乗ってこねぇじゃねぇか。」

ダンテが一真に声をかけた。そういえば、さっきから話に乗ってきてない。心なしか元気もなさそうだ。

「一真?」

僕も声をかけた。一真はそこでやっと反応する。

「えっ?いや、ちょっとね…」

よそよそしい態度の一真。僕は気付く。

「もしかして、暴走したこと、気にしてるの?」

「…気にしてないって言ったら、ウソになる、かな…」

やっぱり…。

そこで、バージルが訊いてきた。

「そういえば、俺達はお前がライダーであること、異世界の住人であること以外、お前のことを知らんな…いい機会だ、話してみろ。」

そうだ、僕は一真がライダーだってところまでは話したけど、アンデッドだってことは話してなかったんだ。

一真は自分のことを話した。当然、自分がアンデッドだってことも、キングフォームのことも…。

「不死の生物、ねぇ…」

ダンテは考えるように言った。照山が僕に尋ねてくる。

「光輝。お前こいつが、そのアンデッドとかいうやつだって知ってたのか?」

「うん、知ってたよ。」

「何でそんな大事なこと黙ってたんだよ!」

「言ったら混乱すると思ったから…」

「俺も口止めしてたんだ。余計な心配させたくないし…」

僕と一真の答えに、レディさんはため息をつく。

「あのね。私達がそんなに信用できない?」

「そういうわけじゃないよ。」

「俺達は、みんなのことを思って…」

「だったら、もっと私達を信用しなさい。」

バージルも割り込む。

「光輝、一真。俺達は仲間だ。仲間なら、頼れ。どんなことでも、話せ。それが仲間だ」

「バージル…」

僕は胸が熱くなるのを感じた。

「みんな、ありがとう!」

一真も同じみたいだ。

「しっかし、暴走か…」

照山は腕を組む。

そこで、トリッシュさんが意見を言った。

「そうだ。光輝、あなたのアンリミテッドフォースで、一真を人間に戻しちゃえばいいんじゃない?」

「それは僕も考えた。でも…」

「俺が人間に戻ったら、またバトルファイトが終了して、俺の世界が滅亡してしまう。」

一真は元々、バトルファイトを永遠に終了させないためにアンデッド、ジョーカーになったんだ。それを人間に戻したら、バトルファイトが終了してしまう。

それに…

「それは相手の存在を変えることに繋がる。今の僕に、そこまで大きくて複雑な事象への干渉はできない。」

「どういうこと?あんた全部の事象に干渉して、全てを思い通りにできるようになったんじゃなかったの?」

レディさんが訊いてきたから、僕は話すことにした。

「…あの時と同じ感覚が掴めないんだ。」

「感覚が掴めない?」

「試してみてわかった。今のままだと、アンリミテッドフォースによる強化や補助、干渉できる事象に、上限がつく。」

つまり、一定の領域までなら強化とかできるけど、それ以上の強化とかができないんだ。

「暴走を引き起こさないように、一定の条件を満たさなければその力をフルには使えない、か…なるほどな…よくできている。」

バージルの推察だと、どうやら僕には、むやみやたらと力を使ったりできないようにリミッターがかけられているらしい。

「とにかく、キングフォームさえ使わなければ、問題はないのだろう?」

「ああ、大丈夫だ。」

バージルの問いに対し、一真は頷いた。バージルはそのまま僕に言う。

「光輝。俺達もできるだけサポートするが、一真にキングフォームを使わせるな。」

「…やっぱり、そうだよね…」

リミッター付きとはいえ、クロスアンリミテッドは強い。僕さえ頑張れば、一真がキングフォームになる必要もない。現状は、それしかないかな……。

 

 

 

 

 

下校時間。

光輝と一真はいつものように下駄箱に向かっていた。

一真は落ち込んでいる。それはそうだろう。

「気を落とさなくていいよ、一真。」

「…ごめん。俺、弱いよな…どうしてこんな簡単に、ジョーカーに負けるんだろう…」

それは仕方ないことだ。キングフォームは、一真にとって精神的にギリギリな状態。あの時は、そこをアーチボルトに突かれたのだ。要するに、あの戦いは始めから一真にとって分の悪すぎるものだった。一真にはそう割り切ってもらうしかない。光輝は思い、一真に声をかけた。

「あれは一真一人の責任じゃないよ。僕が頑張って、一真の負担を減らす、って言ったのに…僕がさっさと覚醒してさえいれば…」

「そんなことない。光輝は充分頑張ってる。それは、誇ってもいいと思う。」

「一真…ありがとう。」

「いいって♪」

一真を励ますつもりが、逆に励まされてしまった。そのことを少し恥ずかしく思いながらも、光輝は笑顔になった。

と、

「あれ?」

一真が下駄箱の中から何かを取り出した。

それは手紙だった。

「何だこれ?」

一真は疑問を抱いていたが、光輝にはこれが何なのかわかっていた。

「これ…ラブレターじゃない?」

「ええ!?」

一真は手紙を読む。そこにはこう書いてあった。

 

『剣崎一真さんへ

 

私はあなたに対して少し前から恋心を抱いていた者です。もしよければ、この場所に来て下さい。待っています。』

 

手紙には指定の場所が書いてあり、ラブレターであることはもはや明白だった。

「…どうしよう、これ…」

突然のことに戸惑う一真。

「とりあえず、行くだけ行ってみたら?OKするかどうかは、一真が決めるといい。」

光輝のアドバイスを聞いた一真は数秒思案し、答えを出す。

「…そうだね。向こうはこっちを待ってるわけだし、待たせるのも悪い。君の言う通りにしてみるよ」

それを聞いた光輝は、いたずらっぽい笑みを浮かべて言う。

「じゃあ僕は先に帰ってるね。二人っきりの時間を邪魔しちゃ悪いし」

「付き合うかどうかはまだ決めてないって!」

一真は慌てて抗議するが、光輝は先に帰っていった。

 

 

 

このあと、光輝は後悔することになる。

 

 

一真から離れるべきではなかったと……。

 

 

 

 

 

「…遅いなぁ…」

光輝は時計を見た。

一真と別れてから、もうかれこれ二時間経つ。

(付き合うことにしたのかな?それで今デート中とか…)

光輝は頭の中で、一真がデートしているところを勝手に妄想する。

(…だとしても、連絡くらいはくれるよね?)

確かに、一真と一緒には帰れない時はあった。遅くなる時は必ず連絡をくれる。

(何かあったのかな?)

光輝が思っていた、その時、クロスフォンが鳴った。

光輝がクロスフォンを見てみると、差出人不明のメールが来ている。普段なら迷惑メールと削除するところだが、なぜか見なければならないと思った光輝は、メールを開いてみた。

メールには、こう書かれていた。

 

『指定の場所まで来られたし。』

 

ちゃんと場所まで指定してある。唐突に嫌な予感を覚えた光輝は、家を飛び出し、ロイヤルランナーを駆って指定の場所へ向かった。

 

 

 

 

 

光輝がたどり着いたのは、数日前にミュージアム四天王と激戦が繰り広げられた、あの河川敷。

と、

「光輝!」

なぜか翔太郎と照井が来た。

「翔太郎さん、照井さん!どうしてここに!?」

「このメールを見て来たんだ。」

翔太郎はスタッグフォンを見せた。そこには、光輝の元に来たものと同じメールが映し出されていた。

「俺もだ。」

照井もビートルフォンを見せる。

「僕と同じだ…」

「何?」

「お前のところにも来たのか?」

「はい。ほら…」

光輝もクロスフォンを見せた。

「しかし、誰なんだ?俺達を呼び出したのは」

翔太郎が辺りを見回す。何者かに呼び出された三人だが、そこには誰もいない。

 

そう思っていた、次の瞬間、

 

「ヴオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

雄叫びをあげて、一真が現れた。

 

ブレイドキングフォームに変身して。

 

「か、一真!?」

驚く翔太郎。

「そんな…どうしてキングフォームに!?」

「白宮、どういうことだこれは!?」

「こっちが訊きたいですよ…一真はキングフォームに変身しちゃいけないのに、何で…」

照井と光輝もうろたえる。

その時、

 

「ようこそ、無限の使徒と、仮面ライダーの皆さん。」

 

ペインに変身したアーチボルトが現れた。

「アーチボルト…貴様の仕業か!!」

怒る照井。

ペインは笑いながら答えた。

「その通り。さすがの僕でも、覚醒した無限の使徒には勝てません。ですが、このまま帰れば、僕は確実に処刑されてしまいます。その方には、どうしても死んでもらわなければならないんですよ。そのために、彼を利用させてもらいました。」

ペインはそう言ってブレイドを見る。ペインはさらに続けた。

「実は、このペインメモリには他者の記憶を読み取る力もあるのですが、驚きましたよ。まさか彼が人間ではないとは!」

「何!?」

「白宮。どういうことだ?お前はそれを知っていたのか?」

驚いた翔太郎と照井は、光輝に尋ねる。

「…はい、知ってます。一真は…」

一真について説明を始めようとする光輝。しかし、そこにペインが割って入る。

「アンデッド。戦いだけを求める不死の生命体!彼はその中でも特に異質な存在であるジョーカー!ジョーカーは闘争本能のみの存在であり、本来なら彼のように自我を持つことなどありえない!ならどうしてだと思います?」

楽しむかのように話すペイン。一真がなぜ自我を保っていられるか、それは光輝が答える。とてもつらそうに…。

「一真は……人間から、ジョーカーになったから…」

「「!!」」

「そう!その通り!だからこの姿、キングフォームにしてから僕の力を使えば、暴走させることなどたやすい!」

「ウオオオオオオオオオオオオ!!」

ブレイドは、ペインの言葉に応えるように吼えた。

「彼はアンデッドとしての運命…闘争の運命に打ち勝とうとしていたようですが、そんなことできるはずがない。アンデッドになった瞬間から、それは避けられないものとなったのに…彼は愚かだ!」

「違う!!!」

「!?」

ペインは光輝の反論に、一瞬怯んだ。

光輝はさらに反論する。

「どんな運命も、自分の手で変えることができる。運命と戦うことは、決して、愚かなことなんかじゃない!愚かなのは、自分の手を汚さずに勝利を収めようとする、お前だ!!」

「光輝…」

翔太郎は光輝の心の強さに感銘を受けた。

「愚か…だと?僕が…?貴様…許さん!!」

ついに本性を表したペインは、ブレイドに命令を下す。

「剣崎一真!!こいつらを殺せ!!」

「ふふ…はははは!!」

ブレイドは笑い声をあげ、キングラウザーを振り上げる。

「一真…君は言ったよね?もし暴走したら、僕に止めてほしい、って。だから…」

 

〈CROSS!〉

 

「今、止めてあげる…変身…!」

 

〈CROSS!〉

 

光輝は一真との誓いを果たすため、クロスに変身した。

「俺達も行くぜ、フィリップ、照井。」

「ああ。」

 

〈JOKER!〉

〈ACCEL!〉

 

「「変身!」」

「変・身!」

 

〈CYCLONE/JOKER!〉

〈ACCEL!〉

 

翔太郎と照井もWとアクセルに変身する。

「貴様ら…皆殺しだ!!」

「はははは!はははははははは!!」

こうして、一真を取り戻すための戦いが始まった。

 

 

 

 

 

「オオオオオオ!!!」

ブレイドはキングラウザーを無茶苦茶に振り回し、W、アクセル、クロスを問わずに攻撃を仕掛け、暴れ回る。

ペインはその合間を縫って、手からエネルギー弾を放って攻撃してくる。能力と策だけかと思いきや、戦闘力も高いようだ。Wとアクセルを圧倒している。

「フィリップ、エクストリームだ!」

『わかった。』

 

〈XTREAM!〉

 

Wはサイクロンジョーカーエクストリームに強化変身し、プリズムビッカーを召喚。

 

〈PRISM!〉

 

プリズムメモリを挿して、プリズムビッカーでブレイドの身体をスキャンする。

ペインの能力を無効化し、ブレイドを解放するという作戦だ。

「検索を終了した。」

フィリップの言葉を聞き、

 

〈PRISM・MAXIMUM DRIVE!〉

 

Wはプリズムソードを引き抜く。

そして、

「「プリズムブレイク!!」」

Wはブレイドを斬りつけた。

「グアアアアアアアアアアアア!!!」

ブレイドは倒れた。

「これで、元に戻るはずだ。」

フィリップが言い、クロスが近付く。

「一真…」

しかし、

 

「ヴオオオアアアアアアアア!!!」

 

ブレイドは立ち上がり、キングラウザーでクロスを斬った。

「うわああああ!!」

ダメージを受けたクロスは、河川敷を転がる。

「戻っていないだと!?」

「おい、どういうことだフィリップ!?」

「そんな馬鹿な!今のでペインの能力は無効化したはずだ!」

驚き慌てるWとアクセルに、ペインは冷酷な事実を告げた。

「無駄ですよ。僕は彼の暴走を後押ししただけ。僕の能力を無効化しても、暴走は止められない!」

「はははは!!」

ブレイドはキングラウザーでWに斬りかかり、Wはビッカーシールドでキングラウザーを受け止める。

「やめろ一真!!」

「アアアアアアアア!!」

「ぐあっ!!」

ブレイドはWの呼び掛けを無視してWを蹴り飛ばし、そのままキングラウザーで追撃する。

「くっ…」

 

〈TRIAL!〉

 

アクセルはアクセルトライアルに強化変身し、ブレイドの攻撃をかわして背後から抑えにかかる。

「落ち着け剣崎!!」

「ガアアアア!!」

しかしパワーで及ばず、アクセルは簡単に振りほどかれ、キングラウザーの連撃を受けてしまう。

 

 

 

ブレイドの力は、圧倒的だった。

戦い方こそ無茶苦茶だが、迷いがないため加減もなく力を振るえる。だから強かった。

 

クロスはブレイドの姿を見て決心する。

「一真を止めるには、アンリミテッドしかない!」

光輝は早速行動に移した。

 

〈ETERNAL!〉

〈INFINITY!〉

〈CROSS/ETERNAL/INFINITY!〉

〈UNLIMITED!〉

 

クロスはクロスアンリミテッドに強化変身する。

瞬間、クロスは感じた。

(この感覚…同じだ、あの時と!)

そう、今のクロスは、初めて自分がクロスアンリミテッドに目覚めた時と同じ感覚を取り戻していたのだ。

なぜかは知らないが、これはチャンスだった。

(イメージしろ…)

クロスは精神を集中させていく。

(ただ止めるだけじゃ駄目だ。一真が二度と暴走しないように…一真が二度と、苦しまないように…!!)

どうすればいいかは、わからない。だが、クロスは願い続けた。

 

その時、

「ぐっ!?」

クロスは自分の左手に激痛を感じた。見ると、クロスの左手が発光している。

「ぐっ…ぐぅっ!」

痛みが強まり、それに従って光も強まっていく。

そして、光と痛みがピークに達した時、

 

 

光の中から、一枚のカードが飛び出した。

 

 

クロスはそれを掴み取る。

「これは…ラウズカード!?」

出てきたカードは、金色の∞の字のイラストが描かれ、横にジョーカー、上にパーフェクトと書かれた、黒いラウズカードだった。

クロスはそれを見てから、ブレイドに向かってカードを投げ渡す。

 

「一真ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「!?」

その声によって我に返ったブレイドは、カードを受け取る。

ブレイドはカードを見てから、ラウズアブゾーバーにラウズした。

 

〈PERFECT JOKER〉

 

電子音声が響いた瞬間、ブレイドの身体に変化が現れる。

まず、ブレイドがラウズしたカード、パーフェクトジョーカーのカードが、黒いオーラ状のカードとなってブレイドの身体に宿った。

それに伴って、ブレイドの身体の各部に付いているカードが一度離れ、黒いカードとなって元の部位に戻る。

そして、ブレイドの装甲が、黒く染まった。胸の紋章も、赤く変色する。

 

ブレイドジョーカーフォーム。アンリミテッドフォースの加護を受け、今ここに、ブレイドは新たな進化を遂げたのだ!

ブレイドは生まれ変わった自分の身体を見て、反射的に感じ取る。

「これが、運命に打ち勝つための力…。」

対照的に、ペインは大いに慌てていた。

「何だ…何だその姿は!?ならば…もう一度暴走しろ!!」

ペインは両肩のスピーカー、マインドクラッシャーから超音波を放ち、ブレイドに幻覚を見せようとする。

しかし、効いていない。

「何!?なら…死ね!!」

ペインは手からエネルギー弾を撃ちだし、ブレイドを攻撃した。

ブレイドは落ち着いて左手を前に向ける。すると、バリアが発生し、エネルギー弾を防いだ。

「なら…うおおおおおおおおお!!」

ペインはブレイドに接近し、ブレイドを全力で、無茶苦茶に殴る。

だが、ペインの攻撃はブレイドを揺らすことすらできない。

ブレイドは逆にペインを殴り飛ばした。

「ぐあああっ!!」

「すごい…キングフォームの…数倍以上の力だ…!」

新たな力に陶酔するブレイドは、ペインにとどめを刺すべく、カードを五枚出現させ、キングラウザーと同じ形状で、キングラウザーより一回り大きな剣、超醒剣ジョーカーソードにカードをラウズしていく。

 

〈SPADE J,Q,K,ACE,JOKER〉

〈JOKER ROYAL STRAIGHT FLASH〉

 

ブレイドの目の前に、黒いカードのオーラが五枚、並ぶ。

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

ブレイドはそのカードのオーラをくぐり抜けていき、

「はっ!!!」

ペインを斬りつけた。

これぞブレイドジョーカーフォームの必殺技、ジョーカーロイヤルストレートフラッシュである。

「ぐあああああああああああああ!!!!」

ペインはメモリブレイクされ、アーチボルトに戻った。

ブレイドは変身を解除し、そのブレイドに変身を解いた光輝達が駆け寄る。

「一真!」

「光輝、翔太郎さん、フィリップさん、照井さん…」

「よかった。元に戻ったんだな」

「はい。」

「無事でなによりだ。俺はあの男を署に連行する」

照井はアーチボルトの元へ行き、手錠をかけて連行していった。

 

 

 

 

 

一真は自分の身体を見る。

「…いつもみたいな疲れがこない…これも、君がくれたカードの力なのかな?」

一真がパーフェクトジョーカーのカードを思い浮かべると、彼の手の中にパーフェクトジョーカーのカードが出現した。

光輝は頷く。

「うん。さっきわかったんだけど、そのカードは君の中のジョーカーと、アンデッドとの融合による急激な体力消耗を抑える効果がある。これがある限り、君は二度と暴走しない。」

つまり、一真はアンデッドの闘争の運命に打ち勝ったのだ。

「ありがとう、君のおかげだ。やっぱりこの世界に来てよかった」

「僕こそお礼を言いたい。一真がこの世界に来てくれてよかった」

互いにお礼を言い合う光輝と一真。

翔太郎はその光景を見て呟いた。

「一件落着、だな。」

「ああ。」

フィリップも頷いた。

 

 

 

 

 

とある研究所。

ムスカは井坂に声をかけた。

「リハビリの調子はどうかね?」

「いたって快調ですよ。もういつでも戦えます」

「そうか、それはよかった。」

「ところで、あなたの計画とは何なのですか?」

井坂は、まだムスカの計画を聞いていなかった。

ムスカは自分の計画について話す。

「これから我々は、ある場所に赴く。そこで、君の力が必要になってね。正確には、君の使うウェザーのメモリだが。」

「ウェザーメモリが?」

「そう…」

ムスカは、数歩歩いてから振り返る。

「君が封印を解くのだ。」

 

 

 

 

 

「うーん…」

ドナルドは唸っていた。

実は、彼とシュラウドは井坂がトーレに救出される瞬間を目撃していたのだ。

だが…。

「シュラウドさんは放っておけ、って言ってたけど…大丈夫かなぁ?」

ドナルドはシュラウドから無視するよう言われていたのだった。

 

 

「ま、いいか。何かあったらドナルドが修正するし」

 

 

あまり深く考えていないドナルドだが、この安易さが悲劇を招くことを、彼は知らない。

 

 

 

 

 

 

************************************************

次回、

仮面ライダークロス!!

 

ダンテ「M-ウィルス?」

バージル「何だそのとてつもなく意味不明なウィルスは。」

一真「オンドゥルラギッタンディスカ!!」

光輝「一真!言えてないから!!」

 

第十五話

Mの狂気/ある意味最悪なバイオハザード

 

これが裁きだ!!

 

 

ブレイドジョーカーフォーム

 

ブレイドがパーフェクトジョーカーのカードによって強化変身した姿。

ディアマンテゴールドの装甲が、その数倍の強度を誇るブラックアダマンチウムに変化している。

見た目は色が黒くなっただけのキングフォームだが、融合しているアンデッドの力が数倍に高められているため、その相乗効果でキングフォームの数十倍以上の戦闘力を発揮できる。

また、完全な飛行ができる、バリアが展開できる、使用するカードの威力が数倍に上がっているなど、戦闘面以外でもキングフォームを大きく上回る。

また、ある程度アンリミテッドフォースが使用可能で、相手の能力を無効化できる。

必殺技はラウズするカードの中にパーフェクトジョーカーのカードを混ぜるジョーカーロイヤルストレートフラッシュ、ジョーカーストレートフラッシュなど。技もキングフォームに酷似しているが、威力はキングフォームの数倍以上。

 

パンチ力 15600AP(156t)

キック力 17600AP(176t)

ジャンプ力 ひと飛び210m

走力 100mを2,2秒

 

ジョーカーストレートフラッシュ 57000AP(570t)

 

ジョーカーロイヤルストレートフラッシュ 97000AP(970t)

 

超醒剣ジョーカーソード

 

ブレイドがジョーカーフォームに強化変身した際に出現する、キングラウザーと同じ形状の、キングラウザーより一回り大きな黒い大剣。

キングラウザーと同様の機能だが、切れ味はキングラウザーの数倍以上。

初期APは77000AP(770t)

 

パーフェクトジョーカー

 

クロスアンリミテッドがアンリミテッドフォースから生み出したラウズカード。

ラウズカードの形状をしているが、実際にはラウズカードとは全くの別物で、ラウズカードの形状は、あくまでもブレイドに使わせるという様式を表すためのもの。

ブレイドが使うことでブレイドをジョーカーフォームに強化変身させる。

このカードには一真の中のアンデッドの衝動、アンデッドとの融合による急激な体力消耗を抑える効果があり、このカードがある限り、一真がジョーカーになることは二度とない。

ちなみに、このカードは常に一真の肉体に宿っており、変身前変身後を問わず、自在に手元に出現させられる。


 
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