No.408989

特捜戦隊デカレンジャー & 魔法少女まどか☆マギカ フルミラクル・アクション

鈴神さん

見滝原市にて、謎のエネルギー反応が続発する。一連の現象について調査をすべく、見滝原市へ急行するデカレンジャー。そこで出会ったのは、この世に災いをまき散らす魔女と呼ばれる存在と戦う、魔法少女と呼ばれた少女達。本来交わる事の無い物語が交差する時、その結末には何が待っているのか・・・
この小説は、特捜戦隊デカレンジャーと魔法少女まどか☆マギカのクロスオーバーです。

2012-04-15 17:17:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3776   閲覧ユーザー数:3705

Episode.13 チェンジ・ザ・ワールド

 

ワルプルギスの夜によって破壊された見滝原市を、デカベースロボは進む。目標は目の前の超弩級魔女・ワルプルギスの夜。デカベースロボの巨体が近づくのが分かると、デカウイングロボの中からは歓声が上がった。

 

「やった!!デカベースロボが来た!!」

 

「これなら、奴を倒せる!!」

 

「皆、一旦退くよ!!」

 

ワルプルギスの夜から距離を取り、デカベースロボに合流するために旋回飛行をするデカウイングロボ。だが、ワルプルギスの夜もそれを易々見逃す筈も無く、周囲の建物を次々放ってくる。

 

「うっわ!!あの野郎!!」

 

「こっちも結構ジリ貧だってのに、やってくれるよね!!」

 

既に一度、デカウイングキャノンに変形してファイナルバスターを放っている以上、機体が内蔵しているパトエネルギー残量は少ない。高速飛行能力に優れるデカウイングロボの動きも鈍くなりつつあった。迫りくる瓦礫の雨も、回避しきれなくなってきていたのだった。

 

「くっ!!このままじゃ、落とされる!!」

 

「避け切れない!?」

 

ワルプルギスの夜が、一際大きな高層ビルをデカウイングロボに放つ。完全に回避しきれない、命中すれば落とされるのは必至の一撃。だが、デカウイングロボが落とされる事は無かった。

 

「フィンガーミサイル!!」

 

デカベースロボが腕を上げると同時に、両手の指の先から無数のミサイルが放たれる。それらは、ワルプルギスの夜が放つ高層ビルを完全に粉砕する。デカウイングロボはその間に、デカベースロボに合流する。

 

「助かりました!!ボス!!」

 

「礼はいい!!デカウイングキャノンに変形後、デカマシンに乗り移れ!!」

 

『ロジャー!!』

 

デカマスターの指示に従い、変形とマシンの乗り換えのために動くデカレンジャー達。ワルプルギスの夜を倒すべく、遂にドギーが外部機関に依頼して用意した切り札が炸裂しようとしていた。

 

 

 

『やれやれ・・・君達では僕には勝てないって、何度言えば分かってもらえるのかな?』

 

見滝原市の交差点にて、マッスルギアに乗り込んだインキュベーターから呆れを含んだ声が漏れる。未だに数の減らないウィッチロイド5体を傍に控えさせ、瓦礫の山を見つめる。そこには、血まみれになりながらも未だに武器を構えて戦おうとする魔法少女、ほむらとマミの姿があった。

 

「まだ・・・まだよ!!」

 

「私達は・・・あなたに・・・」

 

未だに二人の戦意は衰える気配を見せず、戦いを続けようとしていた。そんな二人の姿に、インキュベーターは再び溜息を吐く。

 

『そこまでして、僕という存在を消し去りたいのかな?特にほむら、君は無駄だと分かっているくせに・・・君達の力じゃ、かりにこのマッスルギアを破壊して中の器を破壊しても、僕の本体を消滅させる事は出来ないんだよ。』

 

インキュベーターが地球上で活動するために利用している白い小動物の身体は、魔法少女の契約を取り結び、エネルギーを回収するための仮初のものでしかない。本体はこの地球の外に居るのだ。

 

「させない・・・譬え今回も失敗したとしても、私は絶対に諦めない!!まどかの運命を変えてみせる!!」

 

『・・・哀れだね、暁美ほむら。君のその想いが、まどかの魔法少女としての素質を高めているというのに。』

 

「!・・・どういう意味よ?」

 

まどかを救いたい一心で戦うほむらの姿を哀れと言ったインキュベーター。ほむらはその意味を問わずにはいられない。長い時間遡行の旅の中で培ってきた経験が、その先を聞いてはならない警鐘を鳴らしているにも拘らず・・・

 

『魔法少女としての潜在力は、背負い込んだ因果の量で決まってくる。一刻の女王や救世主ではない、ごく平凡な人生だけを与えられてきたまどかに、あれだけ膨大な因果の糸が集中しているのか不自然だ。だが、その謎を解く鍵が、君の魔法にあったんだよ。』

 

「・・・どういう事よ?」

 

『僕の仮説が正しければ、まどかは君が時間遡行を繰り返す度に、強力な魔法少女になっていった筈だ。』

 

「!!」

 

インキュベーターの言葉に、目を見開いて驚いた様子を見せるほむら。普段の無表情な彼女ならばあり得ない反応。それは、図星を突かれた事を明確に示していた。

 

「魔法が原因と言ったわね・・・時間遡行が、鹿目さんの因果に影響を与えたと言うの?」

 

『その通りだよ、マミ。ほむらが時間を巻き戻してきた理由は一つ、鹿目まどかの安否だ。同じ理由と目的で、何度も時間を遡る内に、ほむらは幾つもの平行世界を螺旋状に束ねてしまったんだろう。鹿目まどかの存在を中心軸にしてね。』

 

淡々と、まどかの真実について語るインキュベーター。聞いているほむらとマミは、話しを半ばまで聞いている現時点で嫌な予感しかしない。ほむらに至っては顔色が悪化している様に見える。

 

『そうしてほむらが時間遡行を繰り返した結果、決して絡まる筈の無かった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら・・・彼女の、あの途方も無い魔力係数にも納得がいく。』

 

「そ、それじゃ・・・まさか!!」

 

『君が繰り返してきた時間、その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだ。あらゆる出来ごとの元凶として、ね。』

 

インキュベーターが放った真実に硬直する魔法少女二人。ほむらがこれまでまどかを救うために繰り返すため使った筈の魔法が、彼女の因果を蓄積させる結果を生み出しきたのだとしたら・・・

 

『お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ。』

 

その瞬間、ほむらの中にあった全てが音を立てて砕け散った。まどかを救済するために得た筈の魔法が・・・自分の思い描いた希望を形にするための魔法が・・・自分がこれまで繰り返してきた事全てが、助けようとした親友を苦しめる結果になってしまった。

インキュベーターの仮説は、敵の戯言と切り捨てるには筋が通り過ぎていて、否が応でも、それが真実である事を理解せざるを得なかった。自身の今までの行為全てが無駄だと悟ったほむらは、絶望に打ちひしがれて、地面に膝を付いて涙を流していた。

 

『また旅を続けてくれると言うのなら、僕としては本望だね。今以上にまどかの因果を蓄積させてくれるのならば、彼女一人で全宇宙を救うためのエネルギーが確保できるかもしれな』

 

「黙りなさい!!!」

 

何の感情も交えず皮肉を口にするインキュベーターの言葉を遮ったのは、マスケット銃を杖代わりにして立ち上がったマミだった。

 

「まだ・・・まだよ!!暁美さん!!まだ、この時間は終わっていない!!」

 

「・・・・・!!」

 

普段の冷静なマミとは違う、感情を剥き出しにして叫ぶその姿に、絶望を抱いたほむらは顔を上げる。

 

「暁美さん!!皆まだ戦っているのよ!!大切なものを守るために・・・生きるために、戦っているのよ!!あなたも、守りたいものがあるのなら、立ち上がりなさい!!」

 

マミの言葉に喝を入れられるほむら。戦っているのは、自分達だけではない。インキュベーターの真実を知りながらも、戦いに臨んでいる人が居る。今だって、史上最強の魔女・ワルプルギスの夜相手に、デカレンジャーが奮闘している。

自分――暁美ほむらがここに立っている理由・・・それは、

 

「まどかを・・・助ける!!今度こそ!!」

 

大切な親友を助ける。そのために自分はここで戦っている筈。ならば、地に伏している暇などあるものか。自身の願いを勝ち取るためにも、ほむらは立ち上がらなければならない。

 

「私は、戦う!!まどかのために!!」

 

折れてボロボロになった心を奮い立たせて立ち上がるほむら。自身の願いを、戦う理由を得た彼女は、インキュベーターが突きつけた真実を背負いながらも、立ち上がったのだ。

 

『それで、僕に勝てると思ったの?』

 

途端、インキュベーターの両手にバレーボール大のエネルギー弾が生成され、ほむらとマミ目掛けて放たれた。

 

「「きゃぁぁああ!!」」

 

ダメージが蓄積していた彼女達は、回避する事すらできず、直撃を受けて再び地面を転がる。体力も限界を迎え、もはや気力をもってしても立ち上がる事すらできない。

 

『それじゃあ、そろそろお別れだね。ほむら、マミ・・・さよなら。』

 

インキュベーターが再び強力な魔力球を二人に放とうと手を上げる。もはや攻撃を避ける体力すら残されていないほむらとマミは、ぎゅっと目を瞑るしか出来ない。二人に対し、絶望が解き放たれようとした、その時だった。

 

「ほむらちゃん!!マミさん!!」

 

交差点に響き渡る、少女の声。それは、ほむらとマミ、そしてインキュベーターも知っているあの少女のもの。全員の視線が、瓦礫の砂煙が巻きあがる交差点の向こう側に集中する。

 

「鹿目・・・さん!?」

 

「まど、か・・・!!」

 

現れたのは、一人の少女。インキュベーターが、魔法少女としての契約を取り結ぶ事で、莫大なエネルギーを得るために利用しようとしている少女。マミが、魔法少女事件に巻き込んでしまった少女。ほむらが、たった一人の親友として守ろうとした少女。

少女の名は、鹿目まどか―――

 

「二人とも!!」

 

瓦礫の山の中に倒れるほむらとマミを確認するや、不安定な足場を駆けのぼり、二人の傍へ行こうとするまどか。インキュベーターは、貴重な資源たる少女を殺さないために、手の中の魔力球を消滅させた。

 

「まどか・・・何しに、来たの?」

 

魔法少女とインキュベーターの戦場に現れたまどかに、辛辣な言葉を放つほむら。傷ついた二人を心配してやってきた事に間違いは無くとも、自身の無力を承知で来たのならば、それは許されない事である。

 

「ごめんね・・・どうしても、私もここに居たかったから。」

 

「鹿目・・・さん?」

 

親友を救うために必死だったほむらはすぐには気付けなかったが、まどかの横顔を見たマミは、まどかの纏う雰囲気がいつもと違う事に気付いた。

 

『まどか、まさか君の方から現れてくれるとは思わなかったよ。ここに来たと言う事は、いよいよ決心してくれたんだろう?』

 

期待するような高揚感が僅かに垣間見える口調で話すインキュベーター。無理も無いだろう、まどかを魔法少女にする事が出来れば、彼らのノルマは達せられるのだから。それに対し、ほむらとマミは怒りと嫌悪を込めた視線を送るばかりだ。

 

「うん・・・私、決めたよ。私は・・・」

 

その言葉の先に、インキュベーターは自分達の求める物があると期待し、魔法少女達は絶望して涙を流し始める。ほむらに至っては、様々な世界を巡り続けてきても、結局まどかを救う事が出来なかった事に絶望し、その魂は穢れを溜め始めていた。

皆がそれぞれ異なる面持ちの中、まどかの言葉が紡がれる。

 

「私は、魔法少女には、」

 

 

ならない

 

 

まどかの言葉に硬直する一同。インキュベーターさえも言葉を失っていた。確かな決意の籠った表情で口にしたその言葉は、新たなる運命への分岐を予感させていた・・・

 

 

 

『特捜変形・デカウイングキャノン!!』

 

デカウイングロボが、巨大拳銃型必殺形態・デカウイングキャノンへと変形する。それと同時に、デカベースから予め出動していたデカマシンへとデカレンジャー達は乗り移る。

 

『特捜合体!!ビルドアップ・デカレンジャーロボ!!』

 

即座に変形合体の体勢に入り、デカレンジャーロボへと合体する五機のデカマシン。そしてそのすぐ横では、もう一つのデカマシンが変形しようとしていた。

 

「特捜変形!!」

 

デカブレイクの操縦する、白バイ型デカマシン・デカバイクが変形する。デカレンジャーのマシンとは異なり、単体による変形にて、ロボット形態へと移行する。

 

「ビルドアップ・デカバイクロボ!!」

 

現れたのは、胸部に施された超強度装甲が特徴的なロボット。これこそ、デカブレイク専用ロボット、デカバイクロボである。

デカレンジャーロボ、デカバイクロボ、デカベースロボ、デカウイングキャノンが揃った状態となり、ここに地球署の戦力が結集された事となった。

 

「皆!!デカベースロボのもとへ集まるんだ!!」

 

『ロジャー!!』

 

デカベースロボを操縦するデカマスターの指示に従い、デカレンジャーロボとデカバイクロボがその両サイドに立ち、デカウイングキャノンを支える姿勢を取る。

 

「ボス!!デカウイングキャノンは既にファイナルバスターを放っています!!オールスター・アルティメットバスターを放つにはエネルギーが足りません!!」

 

ホージーの言う、オールスター・アルティメットバスターとは、デカレンジャーロボ、デカバイクロボ、デカベースロボのパトエネルギーをデカウイングキャノンにフルチャージして撃つ必殺技である。その威力は絶大で、デカベースロボの必殺技・ボルカニックバスターさえ耐え切る宇宙生物を撃破する程のものである。だが、デカウイングキャノンがパトエネルギーを使い果たしている今、それを放つのは不可能とされていたが・・・

 

「心配するな。ワルプルギスの夜を倒すためのエネルギーは、既に調達済みだ。」

 

デカマスターは既にこの様な事態を予測し、先手を打っていたのだった。パトエネルギー以上の、ワルプルギスの夜を完全撃破するための強大なエネルギー。それをドギーは、三浦参謀長を通して、外部組織・UAOHから入手していたのだった。

 

「レジェンドエネルギー・全開!!」

 

デカベースロボから、パトエネルギーとは違う、しかし強大なエネルギーが注ぎ込まれる。デカレンジャー達は、未知のエネルギーに驚きを隠せずにいる。

 

「このエネルギーは・・・」

 

「強い・・・このエネルギーを通して、まるで地球を感じているかのようだわ・・・」

 

「その通り・・・これこそ、地球が危機に陥った時に、滅亡を齎す存在を消し去る力・・・“超力”だ!!!」

 

デカマスターの力強い言葉と共に、デカウイングロボに十分なエネルギーがチャージされた事が知らされる。デカレンジャー達は、目の前に浮遊する強大なる魔女・ワルプルギスの夜へ照準を合わせて、発射態勢に移って行った。

 

 

 

見滝原市の交差点。魔法少女とインキュベーターの戦いに割り込んだ少女――まどかの宣言に一同驚愕する中、インキュベーターが口を開く。

 

『魔法少女の契約は、しない・・・そう言ったのかい、君は?』

 

インキュベーターの、先のまどかの言葉を確認する問いに、まどかは首を縦に振って肯定する。対するインキュベーターは、相変わらず感情の読みとれない口調で話し続ける。

 

『・・・君は、今まで魔法少女達が関わる世界の裏側を見て、自身の無力を感じていた筈だ。君が魔法少女になりさえすれば、この街を滅ぼそうとしているワルプルギスの夜も、確実に倒せる筈だ。なのに、君はそのチャンスを不意にすると言うのかい?』

 

インキュベーターの目的は、まどかを魔法少女としての契約を交わし、彼女が魔女化した際のエネルギーを得る事に他ならない。この場に居る誰もがその心中を理解していたし、故に正論を掲げてまどかを自身の臨む方向へ誘導しようとするインキュベーターに嫌悪を示す。だが、まどかは毅然とした態度でインキュベーターと向かい合う。

 

「確かに、前の私だったら契約したかもしれない・・・私はずっと、自分が何の役にも立たない、誰のためにもならないまま、生きて行くだけの存在だと思っていたから。だから、魔法少女になれば人助けが出来るって聞いた時には、本当は嬉しかったんだ。自分が初めて誰かの役に立てる、そんな気がしたから。」

 

自嘲気味に話すまどかに、ほむらとマミも耳を傾ける。インキュベーターは相変わらず黙ったままだ。

 

「でも、ほむらちゃんやマミさん、杏子ちゃん、バンさん・・・他にも、たくさんの人に会って、たくさんの人が必死に頑張っている姿を見て・・・それが、ただの“甘え”だって、気付いたんだ。」

 

自身の、“魔法少女になりたい”と願った行為が、ただの甘えだったと断じたまどかの言葉には、確かな重みがあった。

 

「インキュベーター、あなたはこの世界が魔法少女の契約の力だけで作られてきたと言っていたけど、それは違うよ。私達が生きるこの世界には、たくさんの喜びや幸福があるけど、それと同じくらい悲しみや不幸もある。自分に都合の悪い事ばかり数えていたらキリが無いし、その度に魔法少女の契約をするわけにもいかない。

そんな中で、私達の今があるのは、魔法少女の力だけじゃない。皆、必死に生きようとしていた・・・運命を変えようとしていた・・・人間には、未来を切り開く力があったからなんだよ!!」

 

人間は自分の力で未来を作りだせる、運命を変えられる。それがまどかの出した答えだった。自分は存在意義を求めるばかりに、魔法少女になる事ばかりに囚われて、大事な事を見失っていた。人は常に運命と戦い、未来を切り開いていると言う事を・・・

 

「私達のこれまでが、魔法少女達の絶望で切り開かれた歴史なら・・・私は、私達はこの先の未来を変えてみせる!!誰かが犠牲にしない、新しい世界を作る!!」

 

避難所で出会った巽纏というレスキュー隊員は、「人の命は地球の未来」と言っていた。そしてバンは自分達に、「未来を守って欲しい」と言っていた。だからまどかは、自分の命も含めて誰かが死ななければ切り開けない未来を否定する。

 

「私達は、“生きて”未来を作りだしてみせる!!!」

 

魔法少女の様に“死ぬ”のではなく、“生きる”事によって未来を作りだす。それがまどかの出した答えだった。それがどれだけ巨大な困難なのか、まどかは全てを理解してはいない。だが、自分という存在に何かを成し遂げる事の出来る可能性があるのならば、それを信じてみたいとまどかは強く思っていた。

 

『・・・それが君の出した答えかい?なら、この状況はどうするんだい?君が魔法少女にならないせいで、そこの二人を含めて大勢の人たちが死のうとしている。君は彼等を見殺しにして未来を切り開こうとしうのなら、それこそ本末転倒だ。』

 

「違う・・・私は、皆を信じている。今も私達と同じように、未来を切り開くために戦っている、バンさん達・・・デカレンジャーの人達の事を!!」

 

まどかがそう言い放った瞬間、見滝原市の空に、激しい閃光が迸った。その光は、曇天に閉ざされたこの街を明るく、強く照らしだしていた。

 

 

 

見滝原市の一角にて、デカウイングキャノンを構えていたデカレンジャーのロボット達は、エネルギー充填を終え、遂に射出に入ろうとしていた。

 

『超力フルチャージ!!!必殺!!オールスター・レジェンドバスター!!!』

 

遥か昔の超文明から引き継がれた、地球を守る光が、デカウイングキャノンの銃口から解き放たれる。黄金の閃光は、目の前の標的目掛けて、真っ直ぐに伸びて行く。

やがてそれは、巨大な魔女――ワルプルギスの夜に着弾し、激しい閃光が溢れだすと共に、内に秘められた邪悪を浄化する。もはや声とは思えない、壮絶な断末魔の末に、ワルプルギスの夜は、大爆発と共に消滅した。

 

『Got You!!!』

 

デカベースロボが敬礼し、デカウイングロボが拳を突き上げて勝利のポーズを取る。そんな中デカレンジャー達は、本当の最終決戦を行うために、見滝原市へと急行する。

 

 

 

『そんな・・・ワルプルギスの夜が消滅するなんて・・・!!!』

 

インキュベーターが信じられないとばかりに空に迸る光を見つめる。まどか、ほむら、マミはその光景に、信じていた人々が導いた希望の光を見出す。

そして、インキュベーターを断罪(ジャッジ)するために、六人の戦士がその場所へ降り立つ。

 

『トォッ!!!』

 

まどか達を背に、インキュベーターに向かい合う形で着地する六色の影。この地球を守る宇宙警察――デカレンジャーだった。

 

「インキュベーター!!お前の野望もこれまでだ!!」

 

『!!!』

 

デカレッドの言葉に、衝撃を受けるインキュベーター。そして、デカレンジャー達がインキュベーターの元へ一歩踏み出す。

 

「一つ!!」

 

デカレッドのシンボルナンバー・1が煌めく。

 

「非道な悪事を・・・憎み!!」

 

デカレッドが人差し指を突き立て、口上と共にインキュベーターに人差し指を突きつける。

 

「二つ!!」

 

デカブルーのシンボルナンバー・2が煌めく。

 

「不思議な事件を・・・追って!!」

 

デカブルーが指を二本突き立て、口上と共にインキュベーターに人差し指を突きつける。

 

「三つ!!」

 

デカグリーンのシンボルナンバー・3が煌めく。

 

「未来の科学で・・・捜査!!」

 

デカグリーンが指を三本突き立て、口上と共にインキュベーターに人差し指を突きつける。

 

「四つ!!」

 

デカイエローのシンボルナンバー・4が煌めく。

 

「良からぬ宇宙の・・・悪を!!」

 

デカイエローが指を四本突き立て、口上と共にインキュベーターに人差し指を突きつける。

 

「五つ!!」

 

デカピンクのシンボルナンバー・5が煌めく。

 

「一気にスピード・・・退治!!」

 

デカピンクが指を五本突き立て、口上と共にインキュベーターに人差し指を突きつける。

 

「六つ!!」

 

デカブレイクのシンボルナンバー・Ⅵが煌めく。

 

「無敵がなんか・・・イイ!!」

 

デカブレイクが両手で指を六本突き立て、口上と共にインキュベーターに人差し指を突きつける。

 

『S.P.D.!!!』

 

響き渡る銃声。そして、それぞれのポーズと共に名乗りを上げる。

 

「デカレッド!!」

 

「デカブルー!!」

 

「デカグリーン!!」

 

「デカイエロー!!」

 

「デカピンク!!」

 

「デカブレイク!!」

 

『特捜戦隊!!!』

 

鳴り響くサイレンの音。一同は走りだす体勢を解くと、SPライセンスを引き抜き、突きつける。

 

『デカレンジャー!!!』

 

S.P.D.

スペシャル・ポリス・デカレンジャー

燃えるハートでクールに戦う六人の刑事達。彼らの任務は、地球に侵入した宇宙の犯罪者達と戦い、人々の平和と安全を守る事である!!!

 

『僕は今まで、宇宙の寿命を延ばすためだけに活動を続けてきた・・・君達宇宙警察に、今更止められはしないよ。』

 

「そいつはどうかな!?皆行くぞ!!!」

 

『ロジャー!!!』

 

デカレッドの掛け声と共に、インキュベーターに突撃するデカレンジャー達。

 

『ハァァアアアアアアア!!!』

 

『行け!!!』

 

『ウィイイイ!!!』

 

それに対し、インキュベーターは横に控えていたウィッチロイド達を向かわせる。インキュベーター含め、六対六で戦う構図だ。

 

「人の絶望でしか宇宙の未来を作れないあなた達に!!」

 

デカピンクの振りかざしたディースティックが、剣を持ったウィッチロイド・セイバーの防御を突き抜け、ヒットする。

 

「私達は、絶対に負けない!!」

 

弓を持ったウィッチロイド・アーチャーの射る矢の群れを、デカイエローがディーショットで撃ち落としながら、懐に飛び込んで至近距離から攻撃をする。

 

「人はいつだって、勇気を持って戦える!!」

 

デカブルーがディースナイパーから放つ弾丸が、ウィッチロイド・シューターが空中に展開したマスケット銃を次々撃ち落とし、本体にまで弾丸を届かせる。

 

「愛を知っているからこそ、支え合える!!」

 

デカグリーンの振りかざすディーロッドが、ウィッチロイド・ランサーの槍を弾いて怒涛の連撃を叩き込む。

 

「誰かを犠牲にしなければならない未来があるのなら、この手でぶち破る!!」

 

羅針盤を装備したウィッチロイド・キャスターに、デカブレイクが強烈な拳を猛烈なスピードで繰り出す。

 

「それが、俺達が信じる正義だ!!」

 

瓦礫を吹き飛ばすほどのビーム攻撃に、しかしバンは怯む事無く突貫し、ディーマグナムの二丁拳銃から放つ弾丸によって、インキュベーターの乗り込んだマッスルギアへダメージを与える。

 

『ぐぁっ・・・そんな、馬鹿な・・・!!』

 

インキュベーターは驚愕する。自身が用意したウィッチロイド達は、本来宇宙の寿命を延ばすために使われる強大なエネルギーによって強化されたドロイド達である。インキュベーターが乗り込んでいるマッスルギアも同様である。だが、デカレンジャーはそれらをものともせず、攻撃を叩き込んでくる。

 

「ミラージュディメンション!!」

 

『ウィッ!?ウィウィ!!』

 

デカイエローのライセンスが発光すると同時に、デカイエローの姿が三つに増える。ウィッチロイド・セイバーとウィッチロイド・アーチャーはどれが本物かを見極める暇も無く、デカイエローの繰り出すディースティックの攻撃に晒される。

 

「ピンクタイフーン!!」

 

『ウィィイイイ!!』

 

さらに、デカピンクがジャンプして空中回転しながらディーショットを連射する必殺技・ピンクタイフーンに晒されるウィッチロイド達。そして、攻撃を続ける中で出来た隙を見逃さず、一気に止めに持ち込む。

 

「「ディーショット・ストライクアウト!!!」」

 

ディースティックとディーナックルをセットした武器・ディーショットから放たれる強力なエネルギー弾が、ウィッチロイド・セイバーとウィッチロイド・アーチャーに命中した。

 

「ディースナイパー・ブルーフィニッシュ!!」

 

ウィッチロイド・シューターと対峙していたデカブルーは、弾幕を乱され、自らも攻撃に晒されているウィッチロイド・シューターに、体勢を立て直す暇など与えず、必殺技を叩き込む。

 

「ストライクアウト!!!」

 

『ウィ・・ウィイイ・・!』

 

フル出力で撃ちだされた弾丸は、ウィッチロイド・シューターのコアがある髪飾りの部分を寸分たがわず撃ち抜いた。

 

「うぉぉおおおおお!!!」

 

デカグリーンは、ウィッチロイド・ランサーが繰り出す多節棍による攻撃を巧みに回避し、一気に肉薄する。

 

「グリーンクラッシュ!!!」

 

『ウィイイイ―――ッッ!!』

 

デカグリーンの放った、電撃を纏ったディーロッドの一閃が、ウィッチロイド・ランサーの肩から胸元に掛けての部分を袈裟掛けに切り裂く。

 

「高速拳ライトニングフィスト!!!ハァァアアア!!!」

 

デカブレイクが放つ高速拳ライトニングフィストは、光の速さで繰り出される。だが、この時のデカブレイクの拳は、光すらも凌駕していた。

 

『ウィイイ・・・イッッ!!』

 

ウィッチロイド・キャスターが羅針盤を利用して時間停止を行使するよりも早く、接近したデカブレイクの拳が、羅針盤を叩き壊していた。

 

「フルスロットル!!必殺拳・ソニックハンマー!!!」

 

武装を破壊されて攻撃・防御手段を失ったウィッチロイド・キャスターへ、デカブレイクの奥義が叩き込まれる。

デカレンジャー達の必殺技を受けたウィッチロイド達は、次々異常な電子音と共に、その身体は煙を上げ、紫電が迸る。

 

『『『ウィィイイイイイッッッ!!!』』』

 

遂に度重なるダメージに耐えられなくなったウィッチロイド達は、その場で爆発炎上する。その姿にデカレンジャー達は背を向け、突き立てた左手の親指を下に向けて構える。

 

『Got You!!!』

 

ウィッチロイド達が倒される中、マッスルギアに乗り込んだインキュベーターと戦っていたデカレッドは、接近戦に持ち込んで得意のジュクンドーを繰り出していた。

 

「ハァッ!!トリャァッ!!」

 

『ぐっ!!』

 

二丁拳銃によって繰り出される打撃技に翻弄されるインキュベーター。放たれる技の一発一発が、マッスルギアに確かな衝撃とダメージを与えて行く。

 

「ハイブリッドマグナム!!!」

 

インキュベーターと間合いを取る事に成功したデカレッドは、ディーマグナム01とディーマグナム02を連結させて、ハイブリッドマグナムにして、その銃口をインキュベーターに向ける。対するインキュベーターは、真向からの出力勝負ならば負けはしないと、右腕をデカレッドへむけて魔力球を撃ち込む体勢に入る。

 

「行くぞ!!!」

 

『消し飛ぶと良いよ。』

 

インキュベーターが放つ魔力球は、建物を半壊させる程の威力がある。如何にハイブリッドマグナムといえど、太刀打ちできる筈も無く、デカレッドは魔力の奔流に呑まれる、その筈だった。

 

「とりゃぁあああ!!!」

 

『何!?』

 

インキュベーターが魔力球を放った先にはデカレッドの姿が無く、その声は頭上から響いていた。

 

「ムーンサルトギャラクシーショット!!!」

 

『なっ!!うわぁああああああ!!!』

 

インキュベーターの頭上からドリルの様に回転しながらハイブリッドマグナムを連続して放つ必殺技・ムーンサルトギャラクシーショットが発動する。インキュベーターは回避が間に合わず、それらをまともに食らってしまう。

吹き飛ばされ、ハイブリッドマグナムを食らって身動きを取れないインキュベーター。その位置から距離を置いて集まるデカレンジャー達。

デカレッドが前へ出て、インキュベーターをアリエナイザーとして判定(ジャッジ)にかける。

 

「インキュベーター!!」

 

『!!?』

 

「知的生命体を利用しての違法なエネルギー搾取、及びそれに伴う銀河消滅の罪で・・・」

 

SPライセンスを腰から抜き、インキュベーターに向かって突きつける。

 

「ジャッジメント!!!」

 

『JUDGEMENT TIME』

 

SPライセンスが開き、インキュベーターを囲むように時計型の立体映像が浮かび上がり、『○』と『×』のマークが左右で点滅する。アリエナイザーに対しては、スペシャルポリスの要請により、遥か銀河の彼方にある宇宙最高裁判所から判決が下される。

 

『×』

 

『・・・!!』

 

「デリート許可!!!」

 

宇宙最高裁判所より下されたインキュベーターに対する判決・・・それは、デリートだった。感情の無い筈のインキュベーターはこれに驚愕し、硬直する。

一方デカレンジャーは、インキュベーターをデリートするべく、捜査の相棒にして必殺武装でもあるロボット警察犬・マーフィーが到着する。

 

「マーフィー!!」

 

ウメコが、骨の形をした変形装置・キーボーンを空中に投げる。マーフィーはそれをくわえると、必殺二連装バズーカに変形する。デカレンジャーはバズーカへと変形したマーフィーをキャッチする。

 

「ディーバズーカ・レジェンドキャノン!!」

 

『その力は・・・!!』

 

ディーバズーカに内蔵された、通常のディーバズーカには無いエネルギーを、インキュベーターは知っていた。超力とは、かつて地球に栄えた超古代文明が遺した力であり、地球が危機に陥った際に、地球自身が自浄作用として発するエネルギーである。

かつて地球侵略を目論んだマシン帝国を滅ぼし、そして先程もワルプルギスの夜を撃破したものと同じ物だった。ドギーはインキュベーターをデリートするこの時のために、超力を専門とする機関・UAOHの三浦参謀長に超力エネルギーの搭載を依頼していたのだ。

 

『超力・・・なるほど、それなら僕の存在を完全に消す事も可能だね。』

 

地球そのものに由来する自浄作用を持つ超力ならば、地球上には居ない本体諸共、インキュベーターという存在を消滅させる事は可能である。

 

『僕達は、宇宙の寿命を延ばすために活動しているだけなのに・・・君達は本当に理解できないよ・・・』

 

「それは違うな、インキュベーター。お前達は理解できないんじゃない・・・理解しようとしなかったんだ。」

 

自らの最期を悟ったインキュベーターの、呆れを含んだ言葉を、デカベースロボから現れたデカマスターは切り捨てる。そしてその続きを、ディーバズーカを構えたデカレンジャー達が紡ぐ。

 

「お前は何千年も昔から、魔法少女の契約を通して人間を見てきた筈だ!!」

 

「それなのに・・・お前は人間の美しさも、醜さも・・・何も理解しようとしなかった!!」

 

「感情が無いからじゃない・・・あなた達は、自分が契約した魔法少女に対してすらまともな関心を持とうとしなかった!!」

 

「あなた達が見てきたのは、魔法少女がもたらすエネルギーだけで、私達と分かり合おうとはしなかった!!」

 

「宇宙の寿命を延ばすために、宇宙に生きとし生ける存在と分かり合おうとしないお前達に、未来は作れない!!」

 

インキュベーターは、この宇宙に生ける知的生命体が紡いだ何千年もの歴史を見てきた。ならば、その長い時間の中で人が何を思い、願い、生きてきたのか、それを考える機会はいくらでもあった筈。だが、インキュベーターは歴史を紡いで来た人間を見る事はせず・・・自身が契約の対象とした魔法少女の事すらまともに理解しようとはしなかったのだ。

知的生命体が持つ感情と言う物を、“極めて希な精神疾患”と断じ、宇宙の寿命を延ばすために利用する、ある意味家畜としての価値しか見出す事が出来なかったのだ。

人類に対して歩み寄りを示さず、自分達だけの力で宇宙の寿命を延ばすという考え方は、インキュベーターの傲慢さから出た、侵略行為なのかもしれない。

 

「俺達は、俺達の手で未来を切り開いて見せる!!!」

 

故に、デカレンジャーはインキュベーターの存在を否定し、許さない。宇宙の寿命を延ばすために、魔法少女や魔女を利用する方法をここで終わらせる事を決意した。インキュベーターの様に、誰かを犠牲にする方法ではない、皆で幸せを掴む未来を作りだす事を誓って。

 

『・・・残念だよ。君達に関心を示すのが、遅かったみたいだ・・・もっと君達を理解しようとする意思があれば、僕等はまた違う道を歩む事が出来たのかもしれないね・・・』

 

思えば、長い歴史の中で、魔法少女はじめ人間達が何を願い、戦ってきたのか、その意味を深く知ろうとは・・・理解しようとはしなかった。歩み寄りが足りないと言うならば、その通りかもしれない。

インキュベーターはこの時初めて自身の失策に気付き・・・そして、後悔する。

 

『僕はここでデリートされる。魔法少女を利用したエネルギー回収が出来なくなれば、宇宙は一気に崩壊に向かうだろう。でも、君達にならこの宇宙の未来を変えられるかもしれない。僕は、君達の可能性を信じてみるよ・・・』

 

インキュベーターの最期の言葉は、怨嗟でも悔恨でもない。ただ、デカレンジャー達に、この宇宙の未来を託すための言葉だった。デカレンジャー達はその言葉を黙って聞き・・・そして、インキュベーターを“終わらせる”。

 

『ディーバズーカ・ストライクアウト!!』

 

ディーバズーカから放たれる、超力を宿した二発の光弾が、インキュベーターを直撃する。インキュベーターが乗り込んだマッスルギアから電流が漏れながら、爆発する。その爆発は、内部に乗り込んだインキュベーターを、この場に居ない本体ごと消滅させた―――

 

「これにて一件・コンプリート!!」

 

事件解決後の決め台詞を言うデカレッド。そして、ワルプルギスの夜が作りだした曇天が晴れたそこには、青空がどこまでも広がっており、太陽が煌めいている。

 

「メガロポリスは、日本晴れ!!」

 

晴れた空から降り注ぐ光は、新たなる未来を照らしているかのように感じられた。

 


 
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