「よし、治療は終わったぞ」
「助かるよ」
対紅蓮戦後、士樹は音無によって治療されていた。
「さて、これからどうするの?」
「? ちょっと待ってくれ。奏からメールが入っている」
「こっちもレイから念話が来た」
士樹は意識を集中させ、今この場にいないレイと念話する。
“やっと繋がったか……”
“レイ、どうしたの?”
“体育館にいるヴィヴィオから救援要請だ。とんでもないメカが暴れていて今苦戦しているらしい。アインハルトも一緒だ”
“なんだって……!?”
連絡を終えた士樹と音無は顔を上げる。
「どうやら次にやることは決まったようだね」
「ああ、これからグラウンドに行かないといけない」
「こっちはクラブハウスだ。場所はバラバラ……。どうする?」
「僕もこれからユフィを探さなくちゃいけない。ここは、いったん別れよう」
「悪いね、せっかく助けてもらったのに」
「気にしないでいいよ」
3人は、それぞれの思いを胸にその場を去っていった。
★★★★★
【ACE学園高等部・体育館】
アインハルトとヴィヴィオは足が4本、鋏が2つある蜘蛛型の機動兵器と交戦していたが、なかなか決定打を与えられずにいた。
「くっ!! 強い」
「あの大きさであれだけ動けるなんて……」
機動兵器が立ち上がろうとした時、天井を貫くように魔力矢が降り注いで動きを止め、バズーカ弾が直撃して足を1本破壊した。砲弾の雨を放った2人は、天井と壁を破壊しながらアインハルト達と合流した。
「士樹!! レイ!!」
「……なんでブラックウィドウがここにいる? 誰がFF8の世界から持ち込んだんだ!?」
「へぇ、あの蜘蛛はそういう名前なんだ」
「アレのことを知っているの?」
ヴィヴィオの質問に士樹は頷く。
「異世界に存在するガルバディア帝国で作られた兵器でスペックはかなり高いけど、弱点は雷だよ」
「なら、俺がアタッカーになれば問題はないな」
「そして、最も厄介な点は……」
アクエリアスがそうつぶやいている間にブラックウィドウは4(・)本の足で立ち上がった。
「再生能力を持っていることだ」
「それを先に言え!!」
レイが文句を言うなか、4人が散開して攻撃を回避する。
「さすがに通常形態でアレの相手をするのは難しいね」
アクエリアスはバイクのコンソールを操作する。
《STRIKE FORM》
電子音が流れた後、アクエリアスチェイサーはアクエリアスと合体した。内蔵武器であったガトリングはアクエリアスドライバーの強化パーツとなり、まるで重戦車を思わせる風貌のストライクフォームへと移行した。アクエリアスSはアクエリアスドライバーを構え、ブラックウイドウを攻撃し始めた。注意がアクエリアスSの方へと向いたことで出来た隙を見逃さず、ヴィヴィオとアインハルトは素早く正拳づきを決める。
「ロードカートリッジッ!!」
《RISING IMPACT》
レイは手甲・脚甲型デバイス[ラグナロク]からカートリッジを排出し、右手に雷をこめて突き出す。ブラックウイドウ左前足に仕込んであるパイルバンカーでレイを迎え撃つ。刹那、激しく火花が散るが、破壊できたのはパイルバンカーだけだった。
「ッ!! 雷が弱点じゃなかったのかよ!?」
《電撃対策は念入りに行ったということでしょう。恐らく他にも強化されている部分はあるかと思われます》
「士樹、他に弱点は?」
「無い」
愚痴りながら後ろに飛び退くレイにラグナは冷静な受け答えをする。アインハルトの問いにアクエリアスSはレイの後退を援護しながらきっぱりと答える。
「足を全て破壊してから攻撃したり、僕達が注意を引いて後ろから攻撃と言ったところかな?」
「了解」
ブラックウィドウはアクエリアスS達に向けて光線を発射しようとエネルギーをチャージする。
「そんな攻撃、防いでやる!!」
レイも防御魔法で防ごうとする。
「防ぐなッ!! 回避しろ!!」
アクエリアスSが珍しく怒鳴りながらチャフミサイルを発射して迷わず後退する。レイはアクエリアスSの怒鳴り声にただならぬものを感じ、反射的に跳んで回避する。その瞬間、ブラックウィドウの光線[レイ・ボム]が辺りを薙ぎ払い、爆発を起こす。チャフミサイルも遅れぎみではあったが、多少は効果を発揮した。
「ふぅ、危機一髪だったぜ」
「本当に結界内で良かったね」
「そろそろかたをつけましょう。いつ敵の増援が来るか分かりませんし」
「そうだね。じゃあ、ヴィヴィオとアインハルトは足を崩してくれる。後は、僕とレイで締める」
「分かりました」
アインハルトが答えると、他の2人も頷く。ブラックウィドウは4人に向けて接近し、鋏を振り上げる。
「行きますよ、ヴィヴィオさん」
「はい」
2人のMS少女は機敏に動き、振り降ろされた鋏をかわして懐に潜り込む。
「アクセルスマッシュ!!」
「覇王空破断!!」
ヴィヴィオのカウンターとアインハルトの掌底がブラックウィドウの両前足を破壊し、退避する。それから1秒立つか立たないかの間にレイは背後に回り込んで雷で出来た15Mの槍を投擲体勢で保持していた。
「これで……」
「チェックメイトだ」
《FINAL ATTACK RIDE:A・A・A・AQUARIUS》
アクエリアスSの通常よりも大きくジャイロ回転している必殺砲撃[ディメンション・ストライク]とレイの巨神殺しは交差するように直撃し、ブラックウィドウを完全に破壊した。戦いが終わったことを確認した士樹達は変身を解除した。
「ようやく終わったね」
「えぇ」
「余韻に浸りたいところだが、油断してやられちゃ意味がねぇ。さっさと帽子を交換するぞ」
「まあ、イチャイチャは後でも出来るしね」
士樹とレイはそれぞれのパートナーの前に立って向かい合った。
「水泳部のカフェ、楽しみにしてるよ」
「そう言えば、そんなことをしていましたね。いきなり戦場に放り込まれたので忘れてしまいちゃいました」
「そうかい」
士樹とアインハルトはそれだけ言うと、帽子を交換して結界の外へと出た。
★★★★★
【ACE学園高等部・水泳部カフェ】
「お待たせしました。ご注文のチョコレートドリンクとオレンジジュース2つです」
激闘から30分ぐらい立った後、士樹は歩にユークリウッドと一緒に水泳部カフェを訪れていた。一向を出迎えたのは、紺色のスク水をベースとしたメイド服姿のアインハルトだった。
「ありがとう」
出るところが出ているその体を士樹はにやけ顔で見つめていた。
「ここに来るだけで疲れが吹っ飛ぶよ」
「同感だな」
満面の笑みを浮かべている歩の裾をユークリウッドが掴み、メモ帳で筆談を始めた。
[私もこういう姿をした方が良い?]
「無理しなくていいぞ。また気が向いた時にでもしてくれ」
歩はユークリウッドに優しい笑顔を向けながら言った。
「他の指名手配犯はどうしてるのかな?」
「稟さんは、ネリネさんが確保したそうです。後、スザクさんはコーネリアさんの親衛隊を突破して自力でユフィさんを確保したそうです」
機体の性能差があるとはいえ最強クラスのシスコンを相手に自力で脱出したというスザクに驚かざるを得なかった。
「あいかわらず人間離れした奴だね」
「あなたも似たようなものだと思いますよ、士樹」
「『お宝は絶対に手放すな』、大樹さんの数少ないまともな教えだからね」
「その割りには、けっこう影響を受けていますよね」
それに対し、士樹は笑顔で答えた。
「なんて言ったって、僕の大切な師匠だからね」
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[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305
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