クリスマス。それは、1年の中でも重要な時期であるために多忙な店も多い。士樹が住んでいる高町家が経営する翠屋もその1つであった。
「いらっしゃいませ」
「何名様ですか?」
玄関では、高町なのはとその義妹であるヴィヴィオが接客をしていた。時期が時期なので、来ている服は、通常時の制服ではなくミニスカサンタ服である。少女達のミニスカサンタ服姿見たさにやってくる男性客は多く、跡を絶たなかった。
「ご注文は、コーヒーとモンブランが1つずつでよろしいでしょうか?」
士樹に会いに来たアインハルトも巻き込まれ、ミニスカサンタ服に着替えて客の注文を取っている。
「ねぇ、バイトなんかしていないで俺と遊ばない?」
好色な目でなのはに近づく男性客の頭部を苦無(くない)がかすめる。客の額からはうっすらと血が滲み出ていて、その表情は恐怖に染まりきっている。
「俺の妹に…、手を出すな!!」
怒気を発しながらどこぞのガンダムパイロットのごとき口調で喋るのは、たまたま実家に帰ってきていた高町家長男の高町恭也(既婚者)である。
同時刻、アインハルトにちょっかいを出そうとした別の男性客の頭部に銃弾(非殺傷設定)が撃ち込まれる。
「お客様、人の彼女に手を出すのはやめてくれませんか?」
左腕でプレートを持ちながら器用に右手のドライバーで男性客の頭を撃った士樹は笑顔で脅迫する。実は、桃子が安心して女性店員にミニスカサンタ服といった服を着せられるのは、士樹や恭也みたいな用心棒がいるおかげであった。それが伝わっているのかいないのか、「翠屋の男性店員には気をつけろ」という暗黙のルールが翠屋の客にはあった。
「相変わらずね、士樹達は」
翠屋のテーブルで高等部2年のルーテシア・アルピーノはケーキを頬張りながら士樹達の様子を見ていた。近くには、ヴィヴィオの同級生であるコロナやリオも一緒にいる。
「仕方ないよ、ルーちゃん。恭也さんはシスコンだし、士樹さんはアインハルトさんが大好きなんですから」
「そうだねぇ。あ、チーズケーキ1つ追加でお願いします」
コロナ目の前の状況を既に日常の一部として受け入れているし、リオはいちいち反応するのも面倒なようだ。
「分かったよ、リオ。桃子さん、チーズケーキ1つ追加です」
「は~い」
士樹は厨房にいる桃子に追加の注文を伝える。
★★★★★
【午後6時】
「ふぅ、ようやく落ち着いてきたね」
なのはが翠屋の店内を見渡すと、客が来店するペースは確かに落ち着いてきていた。既にヴィヴィオとリオははコロナについていく形で泊まりにいっている。
「僕達、そろそろ時間なので上がりますね」
士樹がそう言って、更衣室に向かおうとすると、アインハルトは自分が着ている服を見る。
「桃子さん、この服しばらく借りていいですか?」
その声を聞いて厨房から顔を出していた桃子の顔が笑みを浮かべる。
「ふふふ、別にいいわよ」
「士樹、早く着替えてください。私の準備はすぐ終わりますので」
桃子の了承を得たアインハルトは士樹に着替えを催促する。
「アインハルト、まさかその恰好で外に出るつもりじゃ…」
「そうです。せっかくこんな恰好をしたので士樹にもっと見てもらいたいんです。あの、駄目ですか…?」
「うっ!!」
アインハルトが涙目+上目づかいで士樹を見つめる。
そして、士樹は大好きなアインハルトにそんな風に見られて理性を保てるような人間ではない。つまり…
「い、嫌なわけないだろ!」
即陥落である。
士樹は照れ隠しにさっさと着替えに行った。
★★★★★
外は、雪が降っており、商店街では幻想的な光景が広がっていた。
「やっぱり外は寒いですね」
ミニスカサンタ服のアインハルトに冬の寒さは堪えるようで、士樹の左腕にべったりくっついているが、士樹はむしろ左腕に押し付けられている2つの膨らみを楽しんでいた。
「そんな恰好で出歩くからだよ」
対する士樹は普通にコートを着ている。
「私としては、欲情した士樹にいやらしい目で『じゃあ、僕が温めてやるよ』と言って、アレなことをしてほしいです」
「そういうことばかり言う奴にはこうだ!」
士樹はいきなりアインハルトに抱き着く。突然のことにアインハルトは顔を赤くする。
「ふぅん、まだそういう部分が残っていたんだ」
「あ、あの…」
「だ~め! 離さないよ!!」
士樹はアインハルトを抱きしめる力を更に強め、アインハルトも士樹に体を任せていた。この時、近くの店でブラックコーヒーを飲む人が一時的に増加したらしい。2人がラブラブモードを発動していると、1人の少女が空から落下してきた。どこかの民族衣装らしき白地に黒いラインの服、後ろで2つにまとめている紅い髪に人ではないことを示す天使のような紅い翼が特徴的な少女だ。少女は落下中になんとか体勢を立て直し、無事に着地できた。少女を確認した2人は抱擁をやめて少女と向き合った。
「すみません、人を探している途中に空間の歪みに巻き込まれてしまったんです。ここはどこでしょうか?」
「ここは、日本のACE学園です」
アインハルトが答えるが、少女は首を傾げていた。
「(ACE学園を知らない。空間の歪みに巻き込まれたということも含めると、異世界からきたというのか)君、名前はなんて言うの?」
「イカロスです」
その名前を聞いて2人の目の色が変わった。
「イカロスって、確か刹那さんが探していた女の子の名前じゃ…」
「刹那を知っているのですか!?」
今度は、イカロスと名乗った少女が食いついてきた。士樹は脳内から目の前の少女に関する情報を必死にかき集めていた。
「(彼女の反応と事前に聞いていた知識から考えると、彼女が刹那の探していた人物で間違いないようだな)現在、刹那は君の世界の日本にある風都と呼ばれる街の高校に通っている」
「風都…?」
風車がたくさんある街だ。そこで、破壊の後継者[仮面ライダーゲイザー]として暮らしている」
「仮面ライダー…。今噂になっているアレですか?」
「そうだ」
「彼も貴方のことをずっと探していました。早く会ってあげてください」
「ありがとうございます。あの、貴方達のお名前は?」
イカロスは2人に感謝し、その名前を問う。
「僕は、終焉の後継者[仮面ライダーアクエリアス]の前杉士樹だ」
「その恋人、アインハルト・ストラトスです」
「そして、僕は仮面ライダーディエンドの海東大樹さ」
士樹とアインハルトはいきなり後ろから声をかけてきた大樹に驚いて後ろを振り向く。
「やあ。元気そうだね、お2人さん」
大樹は右手で銃をかたどり、2人を狙い撃つようなポーズを取る。
「大樹さんこそお元気そうで良かったです」
驚きこそしたが、士樹は素直に大樹と会えたことを喜ぶ。
「君が、刹那の探していたお宝か。2人は忙しそうだから僕が送っていくよ」
「よろしくお願いします」
大樹はオーロラを発生させ、イカロスと共にくぐってその姿を消した。2人が去った後には、士樹とアインハルトだけが残された。
「士樹…」
「ああ、いよいよ始まるんだ、新しい物語が」
2人は感慨深そうに大樹達が去った後を見つめていた。
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[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305
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