No.405256

【獣機特警K-9】薬物という名の悪魔【交流】

古淵工機さん

二手に分かれて行動するK-9隊。
今回はまず、犯罪組織と癒着していたネロス署の所長が逮捕…できればよかったんだけどね。

みんなドラッグにはゼッタイ手を出さないようにね!K-9隊との約束だ!!
◆出演

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2012-04-08 23:51:46 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:844   閲覧ユーザー数:805

さて、捜査依頼を受けたK-9隊は一路、インブル製薬周辺地域へと向かうことになったのだが…。

 

「隊長」

「何だ、イシス」

ナインキャリアーの車中。3号機であるイシス・トライスターが真っ先に口を開く。

「今回の事件ってインブル製薬だけではなく、ネロス署も噛んでるんですよね」

「ああ、間違いはないだろう。何しろ情報を送ってきたのがあの怪盗ノワールだからな」

「怪盗ノワールが…?」

「確かにヤツは犯罪者なのかも知れん。だが、ヤツがこの手の情報を渡すとき…ウソの情報は一度も流したことがないからな。今回の場合も、十分信頼できるだろう」

 

それからしばらくの間をおいて、作戦会議が始まった。

「さて、今回の作戦だが、我々の目的はインブル製薬の実態を調査することと、ネロス署の裏取引を糾弾し、犯人を確保することだ」

「怪しい施設が2つもあるってのはなんかね…」

「これらの捜査をより効率的に行うべく、今回は製薬工場への潜入を行う班と、ネロス署に向かう班とに分かれて行動してもらう」

そう言いながら、エルザはゆっくり立ち上がると、メンバーを選び出す。

 

「では、まず潜入捜査のメンバーだが…フィーア、シス、リク、クオンの4人。ウーとグーテはバックアップ、ならびに強行突入を担当してもらう」

「潜入捜査かー…なんか緊張するな」

「ぼ、ボクも…」

「……任務については問題ない」

緊張で肩をこわばらせるクオンとリク、相変わらず淡々としているシス。

そこに、フィーアが声をかける。

「まあまあ、緊張するのはわかるけど、あんまりガチガチしてても上手くいかないわよ」

「そ、そうだね」

そんな4人の傍らでは、残念そうな顔をするウー。

「あーぁ、お預けかよ、残念だなー」

「まぁ、出番になったら思いっきり暴れればいいよ!それまではグーテとチェスでもやってようね!」

「おーし、負けねえwwww」

 

そんな6人を横目に、エルザは作戦立案を進めていく。

「…さて、次にネロス署へ向かうメンバーだが、ここには私とアレク、イシスの3人で向かう。それでいいな?」

「大丈夫ですよ。狙撃の腕をお目にかかれないのは残念ですが」

「ええ、私も問題はありません」

どうやら今回も人員配置はスムーズに決まったようだ。

「では、先に告げたメンバーで作戦行動に移る。気を引き締めてかかれ」

「了解!」

そして、潜入捜査が始まった。

インブル製薬の近くにある通気口から進入するリク、クオン、フィーア、シスの4人。

ふと、フィーアが尋ねる。

「シス、何か掴めそう?」

「……この区域には何もない…が」

「?」

「………内部にいる従業員は、我らの存在に気づかぬようだ」

その会話をよそに、リクが怪しげなニオイを嗅ぎつけた。

「あれ?」

「どうしたのリク君」

「…嗅いだことのない…ニオイがします!」

「嗅いだことのないニオイだって…?」

メンバーの表情が一気に険しくなる。

「…ええ、かすかではあるけど、嗅覚センサーを刺すような…キケンなニオイです。ボクが生身だったらきっと…間違いなく頭がおかしくなってるような…」

「やったねリク君、そのニオイをたどっていけばきっと…」

「とにかく、先に進むわよ」

「了解!!」

4人はひたすら通気ダクトを進み続ける。

一方その頃、ネロス警察署では…。

署長室では、アグネス署長がタバコをふかしながらふんぞり返っていた。

「署長、お客様がお見えです」

「なんだい、ゴクセイカイの人間かい?」

「それが、警察官のようです」

「フン、また駐在の奴らかい。通してやりな。きっとまたクスリでもせびりに来たんだろ」

どうせいつものようにクスリが欲しくてやってきた警官だろう、とアグネス署長は思っていた。

しかし、やってきたのはその予想とは違うものであった。

「いえ、なんでもラミナ署所属の警官のようで」

「へえ、そいつらもクスリ目当てってワケかい?」

「いいえ、違いますね」

署長室のドアから、どこか機械的な足音が聞こえてくると、3人のイヌ形ロボットが入ってきた。

 

「どうも、初めまして。ラミナ警察署特殊機動捜査部隊K-9隊隊長のエルザ・アインリヒトです」

「K-9隊?…ああ、聞いたことあるよ。アンタらいろいろな事件解決して評判なんだってね。で、用件はなんだい?」

「その前にまずは私どものほうから質問させていただけますか?」

「ああ、構わないけどねェ」

「…ネロス地区の治安状況、随分と悪いようですが」

その言葉にアグネス署長は一瞬ハッとしたが、すぐにこう切り返した。

「ああ、そのことかい。見てのとおりこの地区はヤク中のやつらが多くてね。ごらんの通り荒んでるんだが一向に捜査が進まないんだよ。何とかしてくれないかねえ?」

「ええ、何とかしましょう…アグネス署長」

その言葉を聞くやいなや、アレクが答えた。

そしてそれに続けてイシスも答える。

「…『ネロス地区が荒廃する原因を作ってしまった』あなたたちをね」

「な、なんだとっ!?」

「実際、ネロス署に勤務する職員のほとんど…あなた方上層部を除くほかの警官はドラッグに侵され、ある者は禁断症状による発作で、ある者は精神障害による自殺でね」

「そ、それがどうだっていうんだい!?」

動揺するアグネス署長。しかしエルザは間髪いれずにズバズバと攻める。

「もっともこれは序の口に過ぎません。問題なのはそのドラッグの流通ルートです。インブル製薬のことはご存知ですね?」

「ああ、知ってるも何もこのビルから見えるからね」

「…ならば話は早い。あなたはそのインブル製薬からドラッグを受け取ったばかりか、バイヤーを通じてネロス地域の住民に密売していた」

「そんなバカな!そんなことあるわけないだろ!?」

「ではこの記録媒体の映像をお見せしましょうか?」

そう言って、エルザは一枚のディスクを取り出し、プロジェクターに差し込むと、ある映像が浮かんだ。

そこに映っていたのは…そう、ドラッグ密売の現場であった。

そしてその密売に、なんと他でもないアグネス署長の姿が映っていたのである!!

 

「な…なに…!?」

「これでお分かりでしょう。しかもその売上金ですが…ある組織に渡っているのです」

「ある組織…だと!?」

「……ゴクセイカイですよ。あなたはドラッグを密売して治安の悪化を招いたばかりでなく、ゴクセイカイに活動資金を渡した」

「ぐっ…」

言い返す言葉もなくしていたアグネス署長に、さらにアレクが言う。

「まったく、呆れてものも言えませんね。総監が犯罪組織との癒着を撲滅すると言ったばかりだというのに、あなたのような方のせいで我々警察の面目は丸つぶれですよ」

立て続けにイシスも言う。

「同感ですね。『捜査が進んでないから何とかしてくれ』?捜査が進んでない原因を作ってるのはどこのどなたですか?」

そして、エルザは一枚の書類を取り出した。そこに書かれていたのは…

 

『=逮捕状= 被疑者氏名:アグネス・デュポン 被疑事実の要旨:別紙の通り 上記の被疑事実により、被疑者の逮捕を許可する ファンガルド最高司法局』

「な、あ…あたし宛の…逮捕状だと!?」

「…アグネス・デュポン、特定薬物取締法違反、および特定犯罪組織取締法違反等の容疑により逮捕します」

「…な、なんだい!あたしを逮捕しようってのかい?冗談も休み休み…うっ…!?」

逮捕状を突きつけられたアグネス署長は、しばらく開き直るかのような態度をとっていたが、突然頭を抱えて苦しみだしたではないか!!

「なんだ!?様子がおかしいぞ!?」

「がああぁぁぁ!頭が…頭が割れ…」

「イシス!アレク!アグネス署長を取り押さえろ!!」

「了解!!」

アグネス署長の様子が明らかにおかしい。

急いでイシスとアレクは取り押さえにかかる。しかし…。

「来るな、来るな来るな来るなぁぁがはあぁっ、ぐっ、うがあぁはあぁぁぁぁ!?!?」

頭を抱えながら暴れるアグネス署長。その目は血走っており、口からは大量の涎が溢れ出していた。

しばらくアグネス署長は、理性のない獣のごとく暴れまわっていたのだが…

「ぐ、がっ…がは……た、た…助…け…ぐっ……あたし…壊れ……ぐぁっ…!!」

突然口から泡を吹き出したかと思うと床に倒れこみ、やがて白目をむいて、そのまま動かなくなってしまったのだ。

すぐにイシスが駆けつけ、手のひらから接触式センサーを展開してアグネスの身体に触れた。

 

「…心拍、呼吸ともに停止…ならびに脳波停止。…アグネス・デュポンは生命反応を停止しました…」

「そうか…しかし一体なんで…」

「おそらく急に苦しんだところから見ると、ドラッグの禁断症状でしょう」

「……なんてこった、利権だけじゃなく、ドラッグそのものに毒されてたってのか」

アグネス署長の遺体を、ただ黙って見つめていた3人であったが、エルザが沈黙を破った。

「…被疑者アグネス・デュポンは死亡した。よって被疑者死亡のまま検察局に書類を送検する」

「了解…」

そして、夕日に照らし出されたアグネス署長の死に顔を見つめながら、エルザは呟いた。

 

「…まさか、心だけでなくその肉体までドラッグに蝕まれていたとは…無様なものだな…」

そう吐き捨てるように呟くと、膝をつき、指で十字を切り静かに祈りを捧げる。

そして改めてK-9隊は、犯罪という名の巨大な敵と戦い抜く決意を固めるのであった。


 
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