No.405066

左慈と于吉がいる日常~二~

ノワールさん

三国統一後、何だかんだで左慈と于吉とも一緒に生活している外史です。

2012-04-08 21:03:21 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:2772   閲覧ユーザー数:2534

・無印で敵だったあの二人が、もし味方だったら…が前提の短編集です。

 

・ツッコミ役の王道ツンデレ男&ボケ役のマイペース変態眼鏡による、カオスが褒め言葉なギャグ話です。

 

・注意:この外史では、恋姫本編では主人公を理不尽な目に遭わせるのに何故か制作スタッフに優遇されているツンキャラ達がその報いを受けてます。

 

 

 

 

左慈(さじ)さんは厳し過ぎる。

 

「なぁ、左慈…もう少し、皆と仲良く出来ないか?」

「出来ん相談だ。特に北郷、貴様よりも気に食わん不忠(ふちゅう)なド阿呆(あほう)共とはな」

真名(まな)で呼んで欲しがってるのも何人もいるんだけど…」

「言った筈だ、気が向いたら呼んでやると」

「やれやれ…」

 

 左慈…この男は道士でありながら蹴りを主体とした体術を得意とし、一騎当千と呼ぶに相応しい圧倒的強さを誇る。

 将軍や兵士達の鍛練相手だが……彼の鍛練を受けた者達に『血も涙も無い冷血道士』『残酷な魔道士』等々と、数え切れない異名で怖れられる程に厳しい。

 

 

 

「せめて、もう少し優しい言い方出来ないか?」

「出来んな。殺さないだけ有り難く思え」

「確かにお前の言ってる事は正論だと思う。でも、厳し過ぎるぞ…皆の心が折れないか心配だよ」

「貴様が甘過ぎるだけだ」

「それに、すぐ殺す殺すって…相変わらず物騒な奴だな、お前って」

「貴様の周りにも沢山いるだろうが…どうしても見せしめに死刑に出来んのなら、国外追放にでもしてしまえ!!」

「そんな事出来る訳無いだろ!!」

「チッ…お前を守る軍は一枚岩でないと、戦い甲斐がねぇんだよ!」

「つまり…皆で仲良くして、いざという時は協力し合って欲しいと? 最初からそう言えば良いのに」

「勝手な解釈をするな!! 貴様を殺すのは、この俺一人で十分だ…俺が殺す前に、下らん理由で死なれては困るのでな」

「ああ。いつも助けてくれてありがとうな、左慈」

「フン…礼などいらん」

 

 自分にも他人にも厳しい男で、物凄く口が悪い…そんな彼は、天の御遣(みつか)いであり三国統一皇帝である北郷一刀(ほんごうかずと)を敵視し、『殺す』発言が日常茶飯事だ。

 しかし…この都では他にも一刀を敵視し、理不尽な目に遭わせ、酷い時は命まで狙う輩が多い……その為か『貴様を殺すのはこの俺だ!!』と一刀を助けてしまう事の方が多い。

 

 

 

「俺は北郷のように甘やかしたりはせんぞ!! 理不尽な行いをするド阿呆共には、それ以上に理不尽な目に遭わせてやる…覚悟しておくんだな」

 

「貴様等みたいな不忠な馬鹿共も平等に扱わねばならんとはな…こればかりは北郷に同情するぞ」

 

「ええい、うるさいぞ脳筋共が!! 貴様等のやっている事は、主君への反逆罪だと何故分からん!!」

 

「ほぉ…良い武器だな、馬鹿共には勿体無い代物ばかりだ。出来れば破壊したくは無い…『下らん事』にしか使わんのなら、その武器を持つ資格は無いと知れ!!」

 

「いちいち下品な言葉をベラベラほざきやがって!! 貴様等には品性の欠片も無いのか!! それでよく軍師を名乗れるな!!」

 

「喋るな、耳が腐る。その下品な言葉しか喋らない舌を切り落とすか、引きちぎらなければ黙らんのか…?」

 

 外史(がいし)否定派の彼は、外史の人間達…特に『三国志の英雄達と同じ名前とは思えない言動が目立つ者達』には常日頃から不満だらけだ。

 そんな輩共に情け容赦の無い悪口の数々……一刀のように『女の子には優しく』なんて感情は欠片も無い。

 酷い時は外史の『元ネタ』である正史や三国志演義の英雄達と比較して、(けな)す事もある…。

 その度に一刀を初めとする『誰か』が止めに入らないと、本当に殺すんじゃないかと思う程に怒りを爆発させる。

 三国最強クラスの武力同様、彼が怖れられている原因である…。

 

 

 

 

 

「おい北郷、呂布(りょふ)華雄(かゆう)も天下一品武道会に出られるように調整しろ!!」

「無茶言うな!! あの二人は個人戦だと強過ぎて大会にならないんだよ!」

「それなら、俺や変態眼鏡や筋肉ダルマ共も出れば良いだろう!」

「お前、(れん)と華雄の為にそこまで…」

「勘違いするな、俺はただ強い奴と戦いたいだけだ!」

「はいはい、そういう事にしておくよ」

「チッ…それから、大会内容も毎回一対一のトーナメント戦ばかりでは芸が無い。タッグマッチ、チーム戦、前大会の上位4名辺りをシード枠にするなり工夫しろ!!」

「おお、色々考えてくれたんだな…」

「貴様が考えていないだけだ。こうも平和だと、体が(なま)ってしまうのでな…」

「前々からずっと思っていたけど、本当に戦うの好きなんだな…お前、本当に道士か?」

「どういう意味だ!」

 

 そんな彼だが、意外な一面もある。

 例えば…強過ぎて天下一品武道会に出場しようとしたら皆から『勘弁して下さい』と頼まれて、

 涙を飲んで出場を見合わせようとした切ない二人も出場出来るように一刀の所に怒鳴り込む。

 

 

 

 

 

「飯と酒が不味くなる! さっさと出て行け!!」

 

 外食中、店内で喧嘩が起きると即座に『喧嘩両成敗』だと叩きのめす。

 

「ほぉ、少しぶつかっただけで骨が折れたから治療費をよこせだと? 随分と貧弱な盗賊もいたものだ。『本当に』へし折られたいらしいな…」

「貴様等がやっていたのはこういう事だ…楽しいか?」

 

 典型的な言いがかりをつけて来るチンピラ共を初めとする、弱い者苛めをする輩は大人も子供も関係無く成敗する……勿論、(一応)手加減はしている。

 

『ありがとうございます、左慈様!!』

「勘違いするな! 貴様等の為じゃない! 俺が気に食わんからやっただけだ!」

『そう言って、いつも我々を助けて下さる!』

「偶然通りかかっただけだ! あの(くず)共が邪魔だったから片付けたまでだ!」

『それでも、ありがとうございます!!』

「ええい、礼などいらんと言っているだろうが!!」

 

 更に、意外に民には人気がある…本人は自分の為だと言いつつも『弱きを助け、強きを(くじ)く』言動が人気のようだ。

 

 

 

 

于吉(うきつ)さんはマイペース。

 

「于吉は左慈よりは皆と仲良くやってるんだな」

「これは北郷殿。左慈がツンデレなら、私はデレデレですから」

「デレデレって、お前なぁ…」

「特に、貴方のような良い男には」

「はいはい、そういうボケは左慈に言ってやってくれ。漫才コンビの相方なんだから」

「自分を過小評価するのは良くないですよ」

「そんなつもりは無いんだけどなぁ」

「左慈に、華佗(かだ)殿、それに貴方のような良い男に危害を加えない限りは上手くやりますよ」

「そ、そうか…」

「はい♪」

(その、何か企んでそうな笑顔が怖い…)

 

 于吉…彼は傀儡(くぐつ)と呼ぶ白装束の者達を召喚したり、他人の動きを封じたり、心を操ったり等々の数え切れない妖術を扱える妖術使い。

 普段は文官として政務(せいむ)に励み、傀儡を召喚して模擬戦や陣形の訓練相手として役立てている。

 また、象棋(しょうぎ)や囲碁は勿論『天の国』の頭脳を使うゲームの数々を広めたりもしている。

 更に、あらゆるジャンルの『天の国の知識』を本に纏めて公開している……大勢の白装束の傀儡達が無言で本を制作する光景はかなり不気味だが。

 

 

 

「最近、朱里(しゅり)雛里(ひなり)に俺の時代の言葉……主に八百一(やおいち)絡みのオタク用語教えてるのも、お前の仕業か」

「色々便利ですからねぇ。知らない方には暗号同然ですし」

「俺でも分からんと言うか、分かりたくないのも混じってるんだけど…」

「本人達が興味のあるジャンル絡みの言葉から教えるのが一番ですからね」

「凄い説得力だな、それ…でも、俺のいた世界の言葉や文化を皆が分かってくれるのは嬉しいな」

「でしょう? 今回の私と左慈の目的は『貴方をこの外史で満足させる事』です。『天の国』の知識を広めるのも、その一環ですよ」

「でも、知識偏り過ぎてるぞ…もう少し、一般向けなのも頼む」

「分かりました。他に教えてくれそうなのは貂蝉(ちょうせん)卑弥呼(ひみこ)位しかいませんしねぇ…左慈は知っていても滅多に教えませんし」

「だな…」

 

 彼は文官の友人が多く…同じ趣味を持つ孔明(こうめい)こと朱里、龐統(ほうとう)こと雛里とは特に仲が良い。

 

 

 

「北郷殿、私も貴方をご主人様と呼んだ方が……おや、『それだけは絶対に勘弁してくれ』って顔ですね。なら、仕方ありませんね…」

 

「朱里殿、雛里殿。良い本が手に入りましたよ。この都の品揃えの良さには恐れ入りますね」

 

「また左慈に怒られたのですか? まぁ、彼はああいう言い方しか出来ない男ですから。人一倍…いえ、人百倍は真面目で頑固で融通が利かないんですよ」

 

「左慈が真名で呼んでくれない…ですか。こればかりは私にもどうにもなりませんよ。気が向いたら…と言うのを待つしかありませんね」

 

「左慈は北郷殿みたいに誰にでも優しい訳ではありませんからねぇ…ええ、長年彼の相棒を務めている私の経験談です」

 

「いつもいつも左慈に殴られたり蹴られたりで辛くないか…と? ご心配無く、私こう見えて頑丈ですから。それに、私達の芸風はそれが売りですからね。

そういう優しい言葉は、日頃から私よりもっと理不尽な目に遭っている北郷殿にかけてあげて下さいね」

 

「命が惜しかったら、左慈を怒らせない方が良いですよ。あ、私ですか? 私は彼の反応が面白くて、つい…こればかりは分かっていても、止められないんですよね」

 

「口癖のように殺す殺すと言ってますが、相手に合わせてちゃんと手加減しているんですよね…あ、これは左慈には内緒にしておいて下さいね」

 

 誰に対しても丁寧な口調で話し、普段は左慈とは正反対な印象を皆に与えている。

 そんな彼に、相方(当然、左慈は否定しているが)に関する愚痴をこぼす者も多い。

 

 

 

「私は左慈と違って同性愛を否定しませんよ。否定しているのは、貴女の言動です…それでは全くの逆効果ですよ。それで貴女が本命に振られても、自業自得です」

 

「左慈が怒るのも無理は無いですね…全く、何と下品極まりない言葉遣い。よくそれだけ品性の欠片も無い悪口が出て来ますね…呆れますよ」

 

「左慈を何とかして欲しい? 彼が怒る原因は貴女にあるんじゃないですか? 文句がおありでしたら、自分の愚かな言動を振り返ってからにして下さいね」

 

「本当に脳味噌まで筋肉なんですね…馬鹿につける薬は無いとは、よく言ったものですね」

 

「貴女が処刑されずに生きていられるのは誰のおかげか…こんな簡単な事も分からないのですか?」

 

「私達が男だから気に入らないと? 何とも理不尽極まりない理由ですね…では、私も『貴女が女だから気に入らない』と言えば宜しいのですかな?」

 

「主君の幸せが貴女の望み…忠臣らしいお言葉ですね。しかし、妙ですね…北郷殿と結ばれる事が貴女の主君の幸せなら、貴女の行動は不忠そのものですが?」

 

「ふむ、つまり貴女は男になりたいんですね…では、私の妖術で貂蝉か卑弥呼と体を交換させてあげましょうか? 

あの二人が女の体だったら、皆さんがどのような反応をするか興味がありますしね…」

 

「私が幼女趣味? ご冗談を…朱里殿と雛里殿に失礼ですよ。その汚い口、二度と利けなくなる呪いでもかけて差し上げましょうか?」

 

 しかし……ある意味、左慈以上にキツイ事を平気で言う毒舌な一面もある。

 気に食わない輩には躊躇いも無く妖術を使うので、左慈同様に『怒らせてはいけない人』として怖れられている。

 

 

 

 

・左慈さんと于吉さんの『アダ名』

 

「左慈! 武官連中から武器奪って、その武器で半殺しにするのはやり過ぎだぞ!!」

「折角の良い武器を下らん理由で使おうとするからだ…あれでは武器が不憫なのでな」

「いや、武器より持ち主に優しくしてやれよ!!」

「断る」

 

「于吉! 妖術と毒舌で脅かすのは止めろ! トラウマになるだろ!!」

「おや、これでも加減しているつもりですけどねぇ」

「お前、最近朱里や雛里と仲良くしているから女嫌いは治ったのかと思ったのに…」

「いいえ、今でも女は嫌いですよ。あのお二人は特別です…同じ趣味を持つ同志ですから」

「二人に甘過ぎるのはそのせいか…あんまり、甘やかさないでくれよな」

「北郷殿……その台詞、丁寧にラッピングしてリボン付きでお返し致しますよ」

 

 左慈と于吉は今日も今日とて皆に恐れられている…いくら相手側の自業自得とは言え、二人は厳し過ぎると主張する一刀。

 民衆の間では左慈は『まるで暴君のようだ』と、于吉は『暴君を補佐する極悪軍師のようだ』と噂される始末だ。

 

 

 

「でも、まぁ…俺にキツイ態度だった面々が以前に比べて大人しくなったのも、お前達が厳しいからでもあるんだよな…」

「まぁ、我々と比較する事で北郷殿の優しさと有難みを再確認したんでしょうねぇ……左慈の存在そのものがトラウマになっている面々もいますが」

「フン、軟弱な奴等だ」

「お前も左慈の事言える立場じゃないぞ、于吉…お前、ある意味左慈よりタチ悪いし」

「ちょっと、外史の記録映像を見せただけなんですけどねぇ…当人達にとっては地獄以上の恐怖の記録を少々」

「タチ悪過ぎるぞ!!」

「お前にしては手ぬるいな、于吉…奴等を自殺に追い込める内容も沢山あっただろうが」

「自殺されたら困りますから」

「お…お前等は鬼だ!! 悪魔だ!! いや、それ以上だ!!」

 

「うるさい!! それもこれも北郷、貴様があの馬鹿共を甘やかすからだ!!」

「いや、甘やかしてるつもりは無いんだけど…」

「無自覚と言うのは本当に罪ですねぇ……だから三国一の種馬なんてアダ名が付くんですよ」

「この女たらしは…救いようのない大馬鹿だな」

「ちょっ!? 俺のせいかよ!?」

 

「はぁ…北郷殿、原因の半分は貴方にあるかと」

「違うな于吉、九割はコイツのせいだ」

「お、お前等なぁ…そんなだから、怖がられたり怪しまれたりするんだろうが!!」

「知った事か」

「あからさまに怪しいとか、常に何か企んでそうで胡散臭いのが私のキャラですし」

「いや、それじゃダメだろ…」

 

 左慈は何でもハッキリと言う為、それが正論でも相手を怒らせたり怖がらせたりしている。

 性別以外はとことんまで一刀と正反対な彼の存在が…優しく温厚で、滅多な事では怒らない一刀を聖人君子のように見せている。

 

 于吉は人々を楽しませたり、悩みを解決させたり……そして、主に自分が楽しむ為に妖術を使っている。

 しかし……ある意味、左慈より怖がられている毒舌っぷり。

 

 

 

「まぁ、そういう訳で…そんなお前等に、皆から親しまれるアダ名を考えてみた」

「余計なお世話だ…まぁ、聞くだけ聞いてやろう」

「ほぉ、それはそれは…で、どんなのですか?」

 

「まず、妖術で何でも解決する于吉は…うきえもん」

 

「ほぉ、この変態眼鏡には勿体無いな」

「……北郷殿、私は未来からやって来た猫型ロボットではありませんよ」

「この世界でそのツッコミが聞けるのって嬉しいよ」

「貴様がツッコミとは珍しいな、于吉」

「私、基本ボケ役なんですけどねぇ。ツッコミなら左慈がいるじゃありませんか」

「いや、左慈の全力ツッコミに耐えられるのは多分お前と筋肉ダルマ二人位だから…で、次は左慈だが」

「最初から期待はしていないぞ」

 

 

 

「ツンデレ道士」

「……殺す!! やはり貴様は今、この場で殺す!!」

「まぁまぁ左慈、貴方にピッタリじゃないですか」

「誰がツンデレだ!! 誰が!! 俺がいつ貴様等にデレた!?」

「お前、自覚無いのか…」

「北郷殿の事をどうこう言える立場じゃありませんね…」

「黙れ馬鹿共!! そう手のアダ名は関羽(かんう)曹操(そうそう)孫権(そんけん)にくれてやれ!!」

愛紗(あいしゃ)に、華琳(かりん)に、蓮華(れんふぁ)な」

「真名制度など下らんと、いつも言っているだろうが!!」

「彼女達はそれぞれもっと特徴的なアダ名が既にありますしねぇ……本人達が気に入っているかどうかは別ですが」

「そうだな。そういう事だから…お前達のアダ名も広まると思うぞ」

「北郷、貴様ぁ!!」

「やれやれ…」

 

 一刀が考えたアダ名は、本人達の意思とは関係無く広まっていった…。

 

 

 

 

・八百一党の活動内容。

 

「さて、我々の分の仕事は片付きましたね」

「では、皆さんのお手伝いに参りましょうか」

「これも全ては、八百一党の活動の為です…」

 

 八百一……男性同士の恋愛を題材にした趣味の事。

 于吉、朱里、雛里の三人は……今日も今日とて、活動を開始する。

 文官三人は自分の仕事もきちんとやっているし、王達や他の文官達の手伝いまでしている。

 『天の国の知識』を纏めた本作りも、主にこの三人が楽しみつつ行っている。

 

 

 

「于吉さんの妖術のおかげで仕事もはかどりますし、皆さんとも仲良くなれて良い事尽くめですね~♪」

「気分次第で、こんなに仕事が出来るようになるんだね、朱里ちゃん…♪」

「いえいえ、お二人の実力を十二分に発揮出来るお手伝いをしただけですよ」

「ちょっと、目のやり場に困りますけどねぇ…」

「私達には、ご主人様が美青年や美少年な皆さんと仲(むつ)まじい光景に見えるから…」

「確かに憎らしい光景を見なくて済みますが、我々には刺激が強いですからね…うっかり鼻血が出てしまいますし」

『き、気を付けましゅ!』

「はいはい、落ち着かないと舌噛みますよ」

 

 貧乳と女嫌いにとって、憎っくき巨乳が男に見える『男体化(だんたいか)の術』のおかげで、三人は執筆活動のネタに困らない。

 それ所か、事情を知らない人達には精神的に余裕があるように思われる。

 

 

 

「さて、今日はどなたをお助けしましょうかね…特に、恋の応援を」

「貧乳の同士はともかく……巨乳の皆さんの恋の応援なんて、以前の私達では考えられないですよね~」

「巨乳もげろって、思わなくなりましたしね…于吉さんの仰る通り、ご主人様は『二人は何て心が広いんだろう』って褒めて下さいますし…」

「自分の事より人助けを優先する…北郷殿じゃなくても好感度大ですよ。お二人共、最近男性人気が急上昇中ですからね」

「はわわっ!? こ、これも于吉しゃんのおかげでしゅ!」

「落ち着いて下さい、朱里殿」

「あわわ…は、恥ずかしいです…」

「恥ずかしがる事はありませんよ、雛里殿。容姿が同じ位なら性格が良い方が愛される…当然の結果です」

「でも、私達は結局自分達の為にやってますよね…」

「ちょっと、罪悪感感じますね…」

「良いじゃないですか。私達のやりたい事が、結果的に人助けに繋がっているんですから」

『于吉さん…』

 

 朱里と雛里の知識と、于吉の妖術で人助け……実際は、八百一党の執筆活動の為のネタ集めなのだが。

 

 

 

 

・八百一党、同志募集中。

 

「雛里ちゃん、于吉さん…同志をもっと増やしたいですね…」

「于吉さんが同志になった事が奇跡みたいな物だよ、朱里ちゃん…」

「中々理解者が得られませんからね…たった三人では、党と言うより同好会止まりですし」

 

 八百一の理解者は少なく……現在、たった三人の党。

 最近は口の悪い面々(主に左慈)に『三馬鹿軍師』『煩悩三馬鹿』『八百一馬鹿共』等々と呼ばれる始末…。

 

 

 

「はわわ…現実は厳しいですね…」

「あわわ…脳筋の皆さんに勉強を教えるのと、どっちが難しいんでしょう…」

「どっちもどっちな気がしますね…女性の同志を増やす難易度は、その位でしょうね」

『……では、男性の同志を増やす難易度は?』

「そうですねぇ……例えるなら、左慈が北郷殿のように優しくなる位ですかねぇ」

「はわわっ!? それ、殆ど不可能って言っているようなものですよ!?」

「…ご主人様が左慈さんのように厳しくなる、とも言えますね」

「どちらも、中々魅力的には思えるんですけどねぇ…これ、新刊のネタにはなりそうですが」

「想像しにくいですね…」

「やっぱり、ご主人様は優しい方が良いです…」

「私の術で二人の人格を入れ替えてしまえば、実物を見る事が出来ますよ?」

「はわわっ!? そんな事したら、左慈さんに殺されちゃいますよぉ!?」

「あわわ…左慈さん怖い、左慈さん怖い…」

「では、妄想の中だけに留めて執筆しましょうか(まぁ、実際に左慈に半殺しにされるのは私一人なんですけどねぇ…)」

『はい…』

 

 同志を増やす為に、日々会議を続けているが……このように、脱線する事も多い。

 しかし、結果的には執筆活動に役立っている…。

 

 

 

「やっぱり、地道にやるしかないみたいですね…」

「そうだね、朱里ちゃん…」

「他の皆さんはともかく…男嫌いで、百合百合しい輩には厳しいでしょうね」

「ですね……人によっては、発狂するかもしれませんね」

「今度、百合百合しい輩が北郷殿に危害を加えた時のお仕置き用に使いますかね」

「はわわっ!? 百合百合しい皆さんには地獄絵図ですよぉ!」

「あわわ…于吉さん容赦無いです…」

「私達にとっては天国なのに…お気の毒様ですねぇ。

では、百合百合しい面々は後回しと言う事で…今日は文官の皆さんを一人ずつ訪問しましょうか」

『はいっ!』

 

 今日も今日とて、三人は地道に同志を増やす活動を続けている。

 だが、巨乳嫌い=八百一好きには中々結びつかないのが三人の悩みである……『それはそれ、これはこれ』と言う事だそうだ。

 

 

 

 

・八百一党に一言物申す!?

 

「失礼、今日はどうしても皆さんに言いたい事がありまして」

「おや、郭嘉(かくか)殿」

(りん)さん』

 

 意外過ぎる来客に驚く三人。

 それもその筈…彼女は魏の軍師の一人であり、八百一とは相容れない筈の『百合百合しい輩』であった。

 

 

 

「…で、何の御用ですか?」

「まさか、新たな同志!?」

「意外過ぎるね、朱里ちゃん…」

「違います」

「はわわっ!? 一刀両断!?」

「め、目が冷たいです…」

「おやおや、手厳しいですねぇ」

 

 稟の氷の様に冷たいツッコミが場を凍らせる。

 

 

 

「私も人の事を言える立場ではありませんし、個人の趣味をとやかく言うつもりはありません…しかし!」

『しかし?』

「最近のあなた達の行動は黙って見ていられません! 所構わず妄想に浸り、鼻血を出して悶える有り様! 私と被っているじゃありませんか!!」

「ああ、それは確かに…」

「天の言葉で言うと、『キャラ被り』ですね」

「鼻血の出し過ぎで、偶然通りかかった華佗さんにご心配をおかけした事もありましたっけ…」

「最近…鼻血軍師と言えば私ではなく、あなた達三人の事になってしまいました…」

 

 要するに……稟は『最近私とキャラ被ってる!』と三人に文句を言いに来たのだ。

 

 

 

「しかし郭嘉殿、貴女の場合…鼻血は個性ではなく短所では?」

「た、短所…そ、そんなはっきりと…」

「ですね…そのせいで、未だに華琳さんから(ねや)に呼ばれないんでしたよね?」

「うっ…」

「ご主人様も、苦労してらっしゃるんですよね…」

「ううっ…」

 

 三人にツッコミ返され、段々と後ずさる稟。

 

 

 

「貴女、その内出血多量で死ぬんじゃないかって噂が流れていますよ? 良く生きてますよね…」

「于吉殿、毎度の様に左慈殿に殺されかけても死なない貴方に言われたくありません」

『どっちもどっちですよぉ』

「は、反論出来ない…」

「…まぁ、それはともかく。郭嘉殿、所構わず鼻血を出さないようにしたいのですね?」

「え、ええ…まぁ…貴方の妖術か、華佗殿の医術を頼りたい所ですが…」

「それも良いですが、まずは稟さん自身が免疫を付ける事が大事だと思うんですよ」

「免疫…ですか? 私も度々やっていますが、その度に鼻血を出し過ぎて失敗に終わってしまって…」

「いきなり刺激の強い妄想は危険です。少しずつ体を慣れさせるのが大事かと…」

「な、なるほど…」

「とりあえず、この本の登場人物を貴女好みの方達に脳内変換する事から始めましょうか…私の術で、お手伝い致しましょう」

「は、はぁ…(何故でしょう…物凄く嫌な予感がするんですが…)」

 

 三人は稟の鼻血癖を治す為に協力する事にした。

 

 

 

(布教用の写本が役に立ちそうだね)

(予備を大量に購入して、更に書き写しておいて正解だったね)

(『勧誘』が失敗に終わったとしても…郭嘉殿の鼻血癖を治せば、北郷殿と曹操殿の我々に対する評価も上がると言うもの。損はありませんよ、ククク…)

 

 勿論、本とは八百一本……彼女を八百一党の同志にする為に。

 

 

 

 

・左慈さんの苦手な人達。

 

「左慈様、私を弟子にして下さい!!」

「断る。何度も言わせるな」

「何度断られても諦めません!! 隊長をお守りする為に、私はもっと強くなりたいのです!!」

 

 ある日…左慈に弟子入りを志願する、全身傷だらけの少女が一人。

 魏の楽進(がくしん)こと(なぎ)…職務に忠実、真面目で堅物な性格な『魏の忠犬』

 彼女は、体術と氣を弾の様にして放つ気弾を得意としている。

 同じ体術の使い手である左慈の圧倒的な強さを見て、弟子入り志願をしているが……断られ続けている。

 

 

 

「俺に積極的に関わろうとするとは…貴様は食事の好み同様、とんだ変わり者だな」

「か、辛い物は大好きですが…やっぱり、変わっていますか?」

「ああ。女共は甘い物が好きな奴が多いからな」

「わ、私は甘い物はちょっと苦手で…」

「ほぉ、良く言うな…貴様も北郷の甘さにやられてる一人だろうが」

「たっ、確かに隊長はお優しい方ですが…それとこれとは…」

「…大した忠犬ぶりだな」

 

 一刀の事が話題になると…途端に顔を真っ赤にして照れながら、もじもじとする凪。

 懲りずに『一刀を理不尽な目に遭わせる百合百合しい馬鹿共』が多い魏……左慈は、彼女がそんな国にいるのが不思議でならなかった。

 

 

 

「弟子を取るつもりは無いが…強くなりたいなら実戦あるのみだ。全力でかかって来い! 今の貴様の限界を超えてみろ!!」

「はいっ! 宜しくお願い致します、師匠!」

「師匠と呼ぶな!!」

 

 左慈の言葉に喜び、凪は構える。

 

 

 

「攻撃が単調過ぎる! 力が足りなければ速さで、速さが足りないなら戦法で補え!」

「はい!」

 

「それが防御のつもりか! 貴様の後ろに北郷がいると思って死ぬ気で防げ!!」

「私の後ろに隊長が…絶対に防いでみせます!!」

 

 何だかんだ言いつつも、彼女の修行に付き合ってやっている左慈であった…。

 

 

 

 

 

「何の用だ…甘寧(かんねい)の仇討ちか?」

「あれは左慈様に何度返り討ちにされても、一刀様のお命を狙う思春(ししゅん)殿の自業自得です」

「ほぉ…少しは分かっているようだな」

 

 また、ある日…日本刀のような刀を背負った、長い黒髪の少女が音も立てずに現れる。

 呉の周泰(しゅうたい)こと明命(みんめい)…生真面目で礼儀正しい『呉の忠犬』

 工作部隊を率いた戦術と隠密行動に長けており…特に、気配を消して身を潜みながらの戦いなら普段以上の強さを発揮する。

 工作員捕獲訓練、天の言葉で言うとマンハント…その訓練で次々と各国の将達を撃破し、普段の性格からは想像も付かない強烈な落書きをする。

 

 

 

「では、何故ここに来た?」

「はい! この前の三国合同工作員捕獲訓練の件で…」

「再戦の申し込みか…良いだろう、かかって来い」

「あ、いえ! あの時は素晴らしい格好にして頂いたので、一言お礼をと思いまして…」

「……また同じ落書きをされたいのか、この猫馬鹿が」

「むしろ、望む所です!」

 

 左慈はそんな彼女を返り討ちにし……顔に猫のヒゲ、服(背中の部分)に『三国一の猫馬鹿』と落書きした事がある。

 

 

 

『へぇ、お前にしては優しいな。猫馬鹿って、明命には褒め言葉だぞ』

『褒めてなどいない。こいつに関しては猫絡みの事しか思い浮かばなかっただけだ』

『お前も、明命みたいな()の悪口は思い付かないんだな…いっそ、猫耳ヘアバンドと尻尾アクセサリーと肉球手袋と肉球靴を付けよう!』

『それは貴様の趣味だろうが、ド阿呆!!』

『良いじゃないか、可愛いんだから!!』

『貴様は女相手だとそればかりだろうが!!』

『可愛い子を可愛いと言って何が悪い!!』

 

 その時の一刀の言葉に腹を立て…いつもの口喧嘩に突入した。

 

『こ、これは何と素晴らしい…負けた私に、何てお優しい…!』

『おい、少しは悔しがれ…』

『負けたのは私が慢心していたからです! 最も得意とする分野で殆ど負け無しだった故の思い上がり…それが敗因です! それに…』

『それに…何だ?』

『それ以上に、お二人の優しさが嬉しくて…ああ、お猫様ぁ~♪』

 

『言ったろ? 明命に猫馬鹿は褒め言葉だって』

『チッ…ならば次は、妖術で猫に変えてくれる!』

『それ、逆効果だと思うぞ…』

『つ、次とおっしゃらずに今お願いしては駄目ですか!?』

『うわっ! 明命、聞いてたの!?』

『ええい、やはり貴様は三国一の猫馬鹿だ!!』

『そ、そんな…私なんてまだまだですよぉ…照れちゃいます…』

『良かったな明命、左慈がここまで誰かを褒めるなんて珍しいぞ』

『褒めとらん!!』

 

 しかし、大の猫好きで『お猫様』と敬愛する程の彼女は……怒ったり悔しがったりする所か喜んでしまった。

 

 

 

「だが、貴様の落書きの数々には笑わせて貰ったぞ。常日頃から随分と不満が溜まっているようだな」

「はうあっ!?」

「優等生面した貴様の本音…特に、同じ呉の奴等にも容赦が無い辺りが気に入ったぞ」

「ううっ…どうしても巨乳が憎らしくて、そして羨ましいんです…。やっぱり一刀様も、巨乳がお好きなんでしょうか…?」

 

 巨乳に強いコンプレックスを持つ明命…巨乳、爆乳が多い呉の出身である彼女は、自分を貧乳と思い込んでしまっている所があった。

 落書きの内容も『存在価値は巨乳のみ』『乳に栄養行き過ぎ』等々……普段の彼女からは想像も付かない強烈なものばかり。

 

 

 

「…周泰、貴様は大人の猫と子供の猫、どちらが好きだ?」

「な、何ですかその厳し過ぎる質問は!? お猫様の愛らしさに大人も子供も、それに(おす)(めす)も関係無いですし…」

「答えろ」

「うう、決められないです…りょ、両方という答えでは駄目なのですか?」

「…北郷に女の好みを聞くと言うのはそういう事だ」

「あ…」

「あの馬鹿相手にそんな下らん事を気にするだけ無駄だ」

「そ…そうですよね! ありがとうございます!!」

「事実を言ったまでだ…礼などいらん」

 

 落ち込む明命に対して、左慈は『明命の猫好き=一刀の女の好み』は似たような物だと言った。

 

 

 

「さて、下らん悩みは無くなったか?」

「は、はいっ!」

「ならば、貴様も隠密の端くれなら…実力で北郷の役に立つんだな。気配を消し、奴を殺そうとする輩の背後から刃を喉元に突き付ける位はやって見せろ」

「はいっ!」

「そう簡単に、背後は取らせんがな」

「はい! 次の三国合同訓練の日が待ち遠しいです!」

「…おい、誰が訓練の話をした? 北郷の命を狙うのはこの俺だぞ」

 

「はい? 左慈様は、一刀様の親衛隊長じゃありませんか」

「……どこでそんな大嘘を吹き込まれた!? 貴様それでも隠密か!!」

 

 『左慈が一刀の親衛隊長』……心底不思議そうな顔で首を傾げ、とんでもない爆弾発言をかました明命。

 流石の左慈も、氷漬けになったかのように一瞬固まってしまった…。

 

 

 

「都中の噂ですよ? 一刀様に理不尽な理由で危害を加えようとする者には例外無く制裁を加えると…」

「勘違いするな! 奴の忠臣共が近くにいない時だけだ!!」

「鬼や悪魔も泣いて逃げ出す程に厳しい態度は、一刀様を中心に三国同盟を一致団結させる為に、自ら嫌われ役を買って出ているからとか…」

「……誰だ、そんなデタラメな噂を流しやがった大馬鹿は」

「于吉様です」

「やはり、あの変態眼鏡か…!」

 

 噂話を流したのが『やっぱり』于吉の仕業と知った左慈は、ゴキゴキと指を鳴らす。

  

 

 

 

・左慈さんの苦手な人達……を遠くから見ている八百一党。

 

「左慈はどんなに怖れられ、憎まれ、恨まれ、殺意を向けられても…それ等の負の感情を何とも思わずに、己の目的を果たそうとする男です。

そんな彼にとって、自分に負の感情を持たないどころか正の感情を真っ直ぐぶつけてくる相手は苦手なんですよ…そう、北郷殿のように」

桃香(とうか)さまとか、天和(てんほう)さんとかもですね」

「天然って、恐ろしいですよね…」

「そして、何と言っても彼ですよねぇ」

『華佗さん!』

 

 八百一のネタ集めの為に、遠くから左慈の様子を伺っている八百一党。

 どんなに怒られても、三人にとって左慈は八百一のネタ集めに欠かせない存在…だから、ほぼ毎日のように彼の言動を覗き見ているのだ。

 

 

 

「それに、左慈の苦手な相手はまだまだいますよ」

『き、聞きたいでしゅ!』

「はいはい、落ち着いて下さい。次は、ただ純粋に強い相手との一騎討ちが好きで戦いたがる方達です。

左慈への怒りや恨みでは無く、ただ彼が強いから手合わせがしたい…実に単純明快です」

雪蓮(しぇれん)さんとか(しあ)さんとか、特に分かり易いですよね」

「基本的に、(せい)さんとか自由奔放な人達が苦手そうですよね…ご主人様は天の国の言葉で『フリーダム』って言ってましたね」

「何事にも捕らわれず、自分の考えを貫き通すという意味では左慈も同類だと思うのですがねぇ…」

『ですよねぇ~』

 

 左慈が聞いたら『一緒にするな!』と言うツッコミが来そうな事を言う三人。

 

 

 

「次に、これは一番少ない例ですが…北郷殿の故郷、天の国に伝わっている英雄達に近い方達…。

つまり、貴女方の中でも特に、性別以外の相違点が少ない方達ですね」

「はわわ…じゃあ、私は無理ですねぇ。ご主人様の国の孔明さんは同じ人間とすら思えないんですけど…」

「あわわ…龐統さんもそんな感じだよ、朱里ちゃん…」

「まぁ、天の国との人物像の違いでは董卓(とうたく)殿と呂布殿がダントツですけどね…」

『ああ、(ゆえ)ちゃんと(れん)さんはそうですよねぇ~』

 

 三国志に関する知識があれば絶対に驚く『心優しい董卓』と『裏切らない呂布』…外史否定派の左慈にとっては、複雑な感情を抱く人達だ。

 

 

 

「さて、左慈に気付かれる前に退散すると致しましょう…まぁ今回の場合、例え見つかっても左慈にはどうする事も出来ませんがね」

「凪さん達を怖がらせたくない…ですからね♪」

「左慈さんも、もう少しデレてくれると良いのですが…そうすれば、ご主人様を狙う恋敵が減るかもしれませんし」

「あ、それは確かに…」

「……流石にそれは、北郷殿が貴女方だけを選ぶより確率が低いと思いますがね。まぁ、左慈も男ですから……私だって、側室は認めますよ」

「はわわ~v 于吉さん、ノリノリですね~♪」

「素晴らしい大胆発言です♪」

「いやぁ、そんなに褒められると照れますねぇ」

 

 いつもよりノリノリな于吉に、喜ぶ朱里&雛里……この八百一馬鹿共は。

 

 

 

(于吉…後で絶対に殺す!!!)

 

 ちなみに……地獄耳で八百一党の会話を一部始終を聞き取っていた左慈は、心の中でそう思っていた。

 

 

 

 

・左慈さんは北郷一刀と戦いたい。

 

「何故だ…何故、模擬戦で北郷と対決する機会が巡って来ない!?」

「それは貴方と北郷殿の実力差が原因ですね。どうしても同じ組にしないと、戦力バランスが取れないんですよ」

「三国まとめて相手してやれば良いだろうが!!」

「確かに最終決戦は盛り上がりますが、そればかりだと模擬戦が単調になりがちですからねぇ…軍を細かく分けて行う必要があるんですよ」

「…それで俺が北郷と同じ軍になる事が多い理由がどこにある?」

「基本的に我々って、弱い軍でも模擬戦に勝てるようにする助っ人扱いですからねぇ…」

「チッ…」

 

 左慈は日頃から一刀と対決したいと思っているが、模擬戦で同じ組にされる事が多い…。

 

 

 

 

・スタート地点は多数、ゴールは一つ。

 

「それにしても、三国志の英雄達と同じ名を持つ者達が誰一人欠ける事も無く三国同盟の成立…中々大変でしたねぇ」

「北郷を満足させる事で外史の檻に閉じ込め、これ以上外史を増やさない為とは言え…随分手間がかかった物だな」

「どの外史から始めるか、悩みましたよね」

「フン…俺は北郷を閉じ込められるなら、どの外史でも構わんと言った筈だがな」

「どうせなら、私達も楽しみたいじゃないですか」

「俺は楽しむつもりなど毛頭無い」

「やれやれ、お堅いですねぇ…」

 

 二人は『一刀を満足させて、これ以上外史を作らせないようにすれば良いのでは?』と思ってしまった時の頃を思い出す…。

 

 

 

~回想…出発前の二人~

 

『于吉、北郷を閉じ込める外史の檻は見付かったのか?』

『ええ。候補が沢山あって迷いそうですよ』

『ほぉ…』

『試しに、私が展開を予想してみました。参考になると良いのですが』

『貴様の予想などアテにならんな』

『まぁまぁ、そう仰らずに』

『…見るだけ見てやろう』

 

 于吉は妖術で、TVの様な複数の画面を映し出す。

 それ等の画面には、自分達が選択したスタート地点による展開予想がTV番組のように繰り広げられていた…。

 

 

 

スタート地点展開予想。

 

魏:正史と演義の因縁以前に性格の問題で喧嘩するツンデレ覇王VSツンデレ道士を毎回宥める一刀、それを見てニヤニヤしている于吉。

 

呉:一刀の提案で正史や演義とは逆に孫策(そんさく)こと雪蓮を助ける事になる于吉。

 

蜀:八百一党結成が早まります。

 

(おとこ):一刀が華陀に拾われ、外史肯定派の管理者・貂蝉&卑弥呼を仲間に加えて三国を旅する事に。

 

 他にも董卓軍、黄巾(こうきん)党、袁紹(えんしょう)軍、袁術(えんじゅつ)軍、公孫賛(こうそんさん)軍……等々、数え切れないスタート地点の数々。

 

 

 

『……おい、何だこの茶番劇の数々は』

『そうは言いますがね、左慈…大体、こういう展開になると思われますよ』

 

 『展開予想』を見た左慈は、引きつった顔で于吉を睨み付ける。

 

『で、どれにします? 私としては蜀か漢がオススメなんですが…』

『貴様が行きたいだけだろうが!!』

 

 さりげなく自分の希望を提案する于吉にキレる左慈であった…。

 

 

 

 二人がどの国の外史に降り立った一刀と共に行動したのかは……皆様のご想像にお任せ致します。

 

 

 

 

~あとがき~

前回の閲覧数が801超え……つまり八百一だったので、八百一党の出番増やした続きを書きたくなりました。

この外史の于吉は左慈をおちょくって楽しんでます……朱里&雛里と言う同志を得て、更に酷くなってます。

 

左慈と于吉の毒舌の数々ですが…これはあくまで全体に言っている版です。

個人個人には、もっとキツイ言葉を浴びせてます…その度に、主に一刀がフォローしております。


 
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