No.404918

『欢迎、瑚裏拉麺』 其之弐―肆

ども、峠崎ジョージです。
投稿83作品目になりました。
今回の『瑚裏拉麺』はかなりネタに走ってみました。元ネタを知っている人はきっと俺と美味い酒が飲め……俺が飲めないので、きっと美味いメシが食えると思います。
各アバターはなるだけ御本人の要望を反映させてはいますが、基本的に俺の勝手は妄想の産物となります。

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2012-04-08 16:43:48 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5434   閲覧ユーザー数:4805

SIDE:『漁業』グループ

 

「うわ~お……マジで?」

 

手紙を読み終え、どこか実感の湧いていない気の抜けた声で、スターダストはそう溢した。

 

「で、ここに連れて来られたって事は、俺等は海産物担当ってことなんだろうな」

 

「でしょうねぇ……でも、どうすればいいんでしょう? 船も道具もありませんし」

 

「イカダでも作るか? 向こうの森から丸太ぐらいなら調達できそうだぞ?」

 

「いやいや、大海原相手に手製のイカダとか、遭難フラグ以外の何物でもないですからね?」

 

辺りを見回しながら苦笑する森羅。陸地の向こう、『農業』グループがいる森林の方を見ながら何とも無しに言ってのける黒山羊に骸骨は慌てながらそう返す。

 

「ん~、どうしたもんかなぁ……」

 

「その心配なら不要だ」

 

『え?』

 

突如、背後からの声。そして、巨大な影が自分達を覆い尽くしたと思った、その直後。

 

 

 

―――――ドッパァァァァァァァァァァァァァン!!!!

 

 

 

『んなっ!?』

 

爆音と共に立ち昇る水柱。雨粒のように降り注ぐ海水と水煙が風に乗り、緩やかに晴れていくと、

 

「……なんだ、こりゃ?」

 

「漁船? いつの間に?」

 

そこには、港町で見るような一艘の漁船が波間で揺れていた。さほど大きくは無く、結構型は古い。所々に錆びや傷、金属疲労が窺える事からかなり使いこまれているのが解る。そして、

 

「し、師いいいいいいいいいいいいいいいいいいい父うううううううううううううううううううう!!!!」

 

「よぅ、久し振りだな」

 

鼓膜を劈かんばかりの暑苦しいひっとーに平然と返すのは、彼のトレードマークと化したアロハシャツとサングラス。何より、ひっとーが『師父』と呼ぶ時点で、最早誰なのかは説明するまでもないだろう。そして、

 

「にゃ」

 

「うたまるちゃん……もう頭の上が定位置になりつつあるね」

 

「居心地いいから仕方ないのにゃ」

 

丈二の頭上、小さな肉球つきの前足を挙げ短い挨拶をするうたまるが、つい先ほど目の前で起きた超常現象及び彼のとんでもびっくり人間具合を上手い具合に緩和してくれていた。

で、本題だが、

 

「じょ、丈二さん……この、船は?」

 

「知り合いの漁協で使わなくなったってのを俺が譲り受けて修理したものだ。エンジンは新調したし、強度も心配ない。鯨に突撃されても壊れんだろう」

 

……この人は何を言っているのだろう、その人脈も技術も全く訳が解らない。それに、先程の影と、直後の音からして、

 

「丈二さん?」

 

「何だ?」

 

「これ、どうやって運んで来たんですか?」

 

「? 普通に担いで来たが?」

 

『…………』

 

最早、言葉もない。この人には『普通』どころか『人間』という言葉すら不釣り合いかもしれない。

 

「……何か失礼な事、考えてないか?」

 

『い、いやいやいやいやっ!! 何でもありませんです!!』

 

弾かれるように高速で左右に首を振る皆の反応は当然と言えよう。ただ一人を除いて、だが。

 

「流石は師父!! 漁船程度の重量など片腕で充分という事ですな!!」

 

「片腕というか、指一本で足りるがな」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

何がそんなに彼の心を打ったのだろう、感涙に咽びながら雄叫びを挙げる握り飯というのは中々にシュールな光景である。

さて、閑話休題。

 

「で、丈二さん。この船を使って、魚を釣ってくればいいって事ですか?」

 

「まぁそういう事だな。船には釣竿各種は勿論、網や籠の仕掛けに銛まで、目当てのモンに必要な道具は一通り揃ってる筈だ。後は黒山羊の方が詳しいだろう」

 

「ふむ、任されよう」

 

自分の得意分野であるからだろう、黒山羊は嬉しそうに唇の端を持ち上げ笑顔を浮かべていた。

 

「目当てのモンが釣れなくても取り敢えず何かしらの釣果は上げてくれよ。魚市場に持って行って物々交換って手もあるし、何かを釣らなけりゃ俺も腕の振るい様がないからな」

 

「了解しました、師父っ!! あなたの子弟たるこの私にお任せあれ!!」

 

「ん。期待しているぞ、一番弟子」

 

「―――~~~っ!! ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「だああああああっ、煩ぇなひっとー!! 耳元でそんなに叫ばんでくれ!!」

 

「こ、鼓膜が破れそうですね……思わず偽体が脱げそうでした」

 

「ちょっ、ここには他に人目はないですけど、気をつけて下さいよ骸骨さん。いきなり人骨標本が隣にいるとか心臓に悪いですからね?」

 

「済みません、森羅さん。気をつけます」

 

両耳を塞ぎながら怒鳴るスターダストの傍ら、若干その肉体が透けたりぶれたりと危なっかしい骸骨を見て冷や汗を垂らす森羅。

 

「兎に角、後は任せたぞ。うたまる、次は『酪農』連中の所だ」

 

「了解なのにゃ」

 

直後、丈二の巨体が再び瞬時にして消え、

 

「さて、それじゃ俺達も始めようか。取り敢えず皆のお目当ての確認からかな」

 

封筒から更に数枚の便箋を取り出して、

 

「俺が頼んだのは海老なんだが、これは籠で獲れるよな黒山羊」

 

「うむ。海老は基本雑食だからな、適当に釣れた魚の切り身や、潜って巻貝でも獲れば充分餌になるだろう。俺は確か、鯛料理を頼んだ筈だ」

 

「だな、そう書いてある。んでひっとーは奥州産の食材って書いてあるけど、この辺の海産物ってぇと何だ?」

 

「そうですな……ホタテにカキ、サンマにアワビ、毛ガニに生うに。他にも色々ありますぞ」

 

「ん~、美味そうじゃん。……あれ、森羅の分がないぞ?」

 

「あ、僕が頼んだのって魚介類じゃないからだと思いますよ?」

 

「そうなのか?」

 

「はい。多分、農業グループの人数が多かったんじゃないですかね?」

 

「あ~、成程ね。んで、最後が………………え、マジ?」

 

「? どうしたんですか、スターダストさん?」

 

「骸骨……俺の目が間違ってなけりゃさ、ここに書いてあるのって」

 

「……あ」

 

思わず、周囲を見回す二人。その二人を見て首を傾げる三人。

 

「この割とメンバーで、か?」

 

「……何気に大変なもの、頼んじゃったかもしれませんね」

 

「なんですか? 何か不味い事でもあったんですか?」

 

「あったというか、これから起こりそうというか」

 

「容量を得ませんな。はっきり言って下され」

 

「……ん~とな」

 

 

 

 

 

 

―――――ここにな、本マグロって書いてあるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

……………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

SIDE:『畜産』グループ

 

「畜産って、要は肉と乳製品って事だよな」

 

「そうですね。そして、目の前に牧場がある、と言う事は、」

 

「……あそこに行けって、事なんだろうな」

 

狼と老仙の言葉に、皆は視線を件の牧場へと向け、

 

「ま、取り敢えず行ってみるか」

 

で、行ってみた所。

 

「……結構でかいんだな」

 

近づくに連れてその規模の大きさが徐々に解る。

数十ヘクタールはある敷地の中には幾つも煉瓦製の建物が並んでいた。順に中を覗いていくと、

 

「ここは、牛舎か」

 

「ホルスタインって言うんでしたっけ、この白黒の牛」

 

「放牧場広いな~。 柵があんな向こうに見える」

 

「うわっ、ウ○コ踏んだ!!」

 

「ちょっ、こっち来んなよ!?」

 

室内は木製の壁で仕切られ、水道が直結した水飲みはまるで流しそうめんのように牛たちの前を通っており、その横には干草用の籠がそれぞれ取り付けられている。

床には柔らかそうな藁が敷き詰められ、乳牛達が思うままに寛いでいた。

その牛舎の端の扉の向こう、広がる平原は先程と同じ光景。ただ、はるか遠くに見える柵はやけに細く、牛をとどめるには少々弱過ぎるのではと思いもする。

続いて、

 

「お、ここは鶏か」

 

「なんか、工場みたいですね。壁一面に鶏籠が」

 

「ここから卵が取り出せるのかな?」

 

「う~む、動物って独特の匂いするよな」

 

「あ~……後でファ○リーズですね」

 

右を見ても鶏。左を見ても鶏。英語では"cock-a-doodle-doo"なんて表記されるが、これだけ四方八方から聞いているとそうも聴こえて来るから不思議なものだ。

鉄製の柵に囲まれた白い羽毛と赤い鶏冠が忙しなくあっちへこっちへ行ったり来たり。

で、

 

「牛、鶏とくれば、ここは豚か?」

 

「でしょうね。鳴き声も聞こえますし」

 

「豚かぁ……美味いよなぁ」

 

「こらこら、気が早いですよ?」

 

「お、沢山いるなぁ」

 

太い鉄の格子で囲まれたそこは、何処か動物園の触れ合いコーナーのような印象を抱かせた。広さに対して頭数はさほど多くない。

薄桃色の表皮は若干の泥を纏い、寸胴の丸太のような体が幾つもごろりと横たわっていた。

と、

 

「豚は蔑みの代名詞に使われる事が多いけれど、実際の生態はまるで正反対だって知ってる?」

 

『?』

 

いつの間にそこにいたのか、ツナギにタンクトップというラフな格好でそこにいたのは、

 

「泥で体を汚すのは寄生虫予防や暑い日の体温の維持の為。匂いの記憶力は動物界でもトップクラスで、真っ暗闇でも迷わないんですって」

 

「華陽ちゃん!?」

 

「はぁい♪ 待ってたわよ」

 

作業後なのか、土色に汚れた軍手をひらひらと振りながらこちらに歩いて来るのは先程別れたばかりの峠崎華陽その人であった。

 

『…………』

 

「あら、なぁに? 『意外』って顔してるけれど」

 

「皆、あなたのその格好に吃驚してるんだと思いますよ?」

 

「……あぁ、これ? だって、汚れちゃうのに小奇麗な格好するだけ無駄でしょう?」

 

「いや、まぁそうだけど」

 

見た目の印象からか、どうしても彼女には華琳の姿をたぶらせてしまうのだろう。何よりあの『曹真』の百姓姿をそう簡単に想像できる者は決して多くないと思う。

 

「ま、自分でも変わったと思ってるわよ。昔の自分からは想像できないもの、こんな格好してる私なんて」

 

「……ここは、二人で?」

 

「えぇ、そうよ。あの人の趣味の一つ。最初は家も自分で一から建てる積もりだったんですって。実際、一度自分で丸太小屋を建てて自給自足してた事もあるらしいわよ?」

 

「はぁ……」

 

それは感嘆なのか呆然なのか。言葉の出ない皆をぐるりと見渡して、

 

「さて、貴方達にしてもらいたい事を教えるわね」

 

 

 

 

 

 

―――――貴方達には暫くの間、この『ごりら農園』の従業員として働いてもらいます!!

 

 

 

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

やっとこさ纏められたので続きの投下です。

ネタも豆知識も詰め込みまくって少しでも楽しんでもらえたらと思います。

暫くは研究室配属やら就職活動やらで更新もまちまちになりそうですけどね。

 

 

んで。

 

 

何やら『農業』グループがかっ飛びまくってたので奇天烈な妄想をさせたかもしれませんが、そこまで無理難題を課すつもりは…………ないとは言い切れませんが、人外メンツばっかだからなんとかなるっしょと楽観視してますww まぁどうせ現実じゃねえしww

参加メンバーに名前あるのにまだ出てないぞ~って人、もうちょい待ってくれ。出番は必ずあるから。

俺も実際に農業漁業に従事していた訳ではないので専門的な知識までは把握しておりません。間違ってたらご指摘宜しくたのんます。

ほいでは、次の更新で。

 

でわでわノシ

 

 

 

…………徐々に昔ながらの日本食(魚、野菜中心)の食生活に移りつつあり、精神的な老いを感じる今日この頃。


 
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