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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第40話

葉月さん

このお話もだいぶ長くなってきましたね。
もう40話です。
さてさて、なんだかここ最近シリアス気味のお話が続いちゃっていますが、私としてはコミカルな話の方が好きです!書いていて楽しいですし。
てなわけで、今回は日常会話、な話です!

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2012-04-08 15:00:45 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:8244   閲覧ユーザー数:5863

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第40話

 

 

 

 

【初めての友達、初めての気持ち】

 

 

 

《蒲公英視点》

 

「へ~。町は所々汚いけどみんな元気だな~」

 

たんぽぽは一人で諷陵の町を散歩してるの。

 

「やっぱりご主人様や桃香様が来たことでみんな喜んでるからなのかな?」

 

だとしたら、どれだけここに居た偉い人は仕事をしてなかったんだろうね。

 

「まあ、この町の様子を見れば一目瞭然なんだけど……ん?」

 

そんな事を考えながら歩いていると見覚えのある後ろ姿が見えた。

 

「あれって確か……よぉ~し!ちょっと驚かしてみよっと♪」

 

たんぽぽはこっそり後をつけて驚かす好機を伺った。

 

「……」

 

よしよし、気づいてないな……

 

「~~♪」

 

(今だっ!)

 

「わっ!」

 

「ふぇぇええええっ!?」

 

「あはははっ!大成功!」

 

「ふぇ?あ、た、蒲公英さん」

 

「やほぉ~。たんぽぽだよ!驚いた?」

 

「は、はい。すごく驚きました。心臓が止まるかと」

 

たんぽぽだとわかった雪華はほっと安心したみたいだった。

 

ちなみに雪華や他の人たちとは真名の交換をすでに済ませてある。

 

「そんなに驚いたの?」

 

「は、はい。色々と考え事をしていたので特に」

 

「考え事?」

 

「は、はい。この町の方々にお話を聞いて、どう政策に役立てようかと」

 

「す、すごいこと考えてるんだね、雪華って」

 

うぅ、同い年なのに同い年に見えない考え方だよ。

 

なんだか、たんぽぽが子供に見えてくる。

 

「私なんてまだまだですよ。朱里先生や雛里先生に比べれば」

 

「ふ~ん。そうなんだ」

 

雪華は軍師になる為に勉強中らしい。

 

そのことを以前、話していた時、お姉様がたんぽぽを見て『お前も少しは雪華を見習えよ』って言ってきたのを思い出した。

 

ふ~んだ。たんぽぽは取り合えず、武将なんだから関係ないも~んだ。

 

「ねえねえ。それよりさ、暇だから遊ぼうよ!」

 

「ふえ?で、でもまだお仕事が……」

 

「いいからいいから!ほら、行くよ!」

 

「ふぇぇぇええ!?あ、あの蒲公英さん!?」

 

「よぉ~っし!最初はどこに行こうかな!」

 

たんぽぽは無理やり雪華の手を取り走り出した。

 

………………

 

…………

 

……

 

「おぉ!こんな所に甘味屋が!雪華って甘いもの好き?」

 

「は、はい。大好きですけど」

 

「それじゃ中に入ろ!」

 

「ふぇ!?あ、あのでも!」

 

「いいからいいから!すみませーん!採譜見せてくださーい!」

 

「はいよ。元気なお嬢ちゃんたちだね。旅人さんかい?」

 

「ううん、違うよ。たんぽぽたちは今ここのお城に居る天の御遣いのお供なんだよ!」

 

「ああ、劉備様たちの……それじゃ、奮発しないといけないねぇ!」

 

「ふえ!そ、そんな、普通のお客さんとして扱ってください!」

 

「ホント!?やった~。おばさんありがとう!それじゃ、ゴマ団子二人分くださ~い!」

 

「ふぇえ!?蒲公英さん!?あ、あの!そ、その!」

 

雪華は驚いた声を出して私とお店のおばさんを見比べていた。

 

「はいよ!出来立てをお出ししますからちょっと待ってておくれよ」

 

「ふぇぇ……行っちゃいました」

 

「何そんなに気にしてるの雪華は」

 

「だ、だって今、私はお仕事の最中で、こんな所を見られたらご主人様たちに怒られちゃいます」

 

「え~?だってもう注文しちゃったんだよ?」

 

「そ、それはそうなんですけど……」

 

おどおどとする雪華。なんだかさっきみたいな大人っぽい感じが無くなって年相応の反応を見せてくれた。

 

「ふふ~ん♪」

 

「な、なんですか?」

 

「ん?なんでもないよぉ~。それよりさ!雪華って何が好きなの?」

 

「ふぇ!?す、好きなのですか!?」

 

「うんうん!教えてよぉ。別に減るもんじゃないでしょ」

 

「そ、そうですけど……恥ずかしいです」

 

「何で恥ずかしいの?」

 

「ふえ?あ、あの……ご、ご主人様が好きだから……」

 

「へ?」

 

「ふえ?」

 

「あ、あ~……たんぽぽは別に好きな人を聞いたわけじゃなかったんだけど……」

 

「……ふ、ふぇぇえええっ!わ、忘れてください忘れてください忘れてくださ~~~い」

 

「あぅあぅ!わ、わかったから!忘れる!忘れるから!め、目が回るぅ~~!」

 

雪華は顔を真っ赤にして、たんぽぽの肩を掴み揺さぶってきた。

 

「うぅ~。まだ頭がフラフラする……」

 

「す、すみません」

 

「別にいいけど。そっか~、なるほどね~」

 

かっこいいなとは思ってたけど、ご主人様の事が好きな人って居たんだね。

 

「あ、す、好きな物ですよね。私が好きなのは……」

 

「ねえねえ!そんなことよりさ!ご主人様のどこが好きなの?」

 

「ふ、ふぇぇええ!?わ、忘れてくださいってお願いしたじゃないですか!?」

 

「え~。そうだったけ?それよりさ、教えてよ!ねぇねぇ!」

 

「ふ、ふぇ~」

 

顔を真っ赤にして照れる雪華。わ~、照れちゃって可愛い!

 

「ねぇ。いいじゃんよ。たんぽぽたち友達でしょ?」

 

「ふえ?と、友達?」

 

「そ!友達!」

 

「友達……ふぇ」

 

「ええ!?な、何で泣くの!?そ、そんなに嫌だったの!?」

 

雪華は行き成り目に涙を溜めて泣き出しそうになった。た、たんぽぽ苛めてないよね!?

 

「い、いえ、違うんです、ごめんなさい。そ、その……今まで友達って居なかったから嬉しくて」

 

「そ、そうなんだ。たんぽぽ、てっきり酷いこと言ったのかと思ったよ。でも、そっか。友達居なかったんだね」

 

「はい」

 

「実はさ。たんぽぽも友達居なかったんだよね」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなんだよ!周りは大人ばかりだし。近い歳って言ったらお姉様しか居なかったんだよ!それなのにお姉様ったら『槍の稽古だ』、『乗馬の稽古だ』って。煩いんだもん」

 

「で、でも。それって、蒲公英さんの為を思ってのことじゃないんでしょうか?」

 

「ま、まあ、そうなんだけどさ。たんぽぽも別に鍛錬とか嫌いな訳じゃないよ?でも、毎日勝てない相手にやってるとさ……やる気なくさない?」

 

「う、う~ん。そう言われましても……ご主人様も愛紗さんも私より全然強いですし、でも、たくさん為になることを教えてくれますよ」

 

いつの間にか、たんぽぽは雪華に愚痴をこぼしていた。

 

たんぽぽも近い歳の子が居なかったから、嬉しくてつい色んなことを話したくなっちゃうんだよね。

 

「はいよ、お待ちどう。出来立て熱々のゴマ団子だよ」

 

「わ~!美味しそうだね、雪華!」

 

「はい。とても美味しそうです」

 

二人して出された出来立てのゴマ団子を見て顔を綻ばせた。

 

「それじゃ……」

 

「頂きます」

 

「「はむ……っ!?!?」」

 

「あ、あふいへふ!」

 

「お、おひふ!おひふ~~っ!」

 

「「ごく、ごく……ふぅ」」

 

二人同時にゴマ団子を頬張り、中の餡が熱くて二人して口をパクパクさせて、お水を飲み干した。

 

「「……ぷっ」」

 

「「あはははっ!」」

 

たんぽぽたちは顔を見合わせて笑いあう。

 

「ふ、二人同時になんておかしいですね」

 

「だね。雪華は火傷しなかった?」

 

「はい。蒲公英さんも平気でしたか?」

 

「たんぽぽも平気だよ。でも、熱いけど美味しいよね」

 

「はい。美味しいですね」

 

雪華は美味しそうにゴマ団子を食べていた。

 

「ねえねえ、話は戻るけどさ。ご主人様のどこが好きなの?」

 

「っ!けふっ!けふっ!ま、またですか!?」

 

「ねぇ~、良いでしょ?秘密にしておくから!」

 

「ふぇ~」

 

雪華はまた顔を赤くしてゴマ団子を見つめていた。

 

「……ほ、本当に秘密にしてくれますか?」

 

「もちろん!ご主人様にも言わないから安心して!」

 

「ふぇ……そ、その……私の事をとても大事に思ってくれる所とか……何より、ご主人様の笑顔を見てるととても心が温かくなるから」

 

雪華は小さな声だったけどご主人様のどこが好きなのかを話してくれた。

 

「へ~。確かにご主人様ってみんなのこと、大事にしてるよね。ここに戻ってきて自分の心配よりみんなの心配してたもんね」

 

「はい。だから逆に心配なんです」

 

「なんで?」

 

「私たちの事を思って無茶なことを度々しちゃうので。それがすごく心配で」

 

雪華は不安そうな顔をして本当に心配してるんだなって思った。

 

「雪華にこう思われてるなんてご主人様って幸せ者だね」

 

「ふぇ……わ、私だけじゃありません。桃香様や愛紗さんもご主人様の事を心配しています」

 

「だったらなおさら幸せ者だよ」

 

へ~。ご主人様ってみんなに思われてるんだね。でも……

 

そこでたんぽぽは一つ気になる疑問が浮かんできた。

 

「……でもさ。ご主人様って誰の事が好きなんだろうね」

 

「ふえ?」

 

「だって雪華の話だと。桃香様も愛紗もご主人様の事が好きなんだよね?」

 

「はい。そうだと思いますけど」

 

「それに星姉様や他の人たちもその可能性があるんだよね?」

 

「た、たぶん……」

 

不確実そうに雪華は言ってるけど、たんぽぽはわかるもんね。きっと星姉様も朱里や雛里もご主人様の事を好きだと思ってるって!

 

「なにそれ!それでそれで!雪華はご主人様のお嫁さんになりたいの?」

 

「ふ、ふぇぇぇぇえええええっ!?わ、わわわわた、わたっ!」

 

「わわっ!お、落ち着いて雪華!はい。お水飲んでお水!」

 

雪華のすごい慌てっぷりに、慌ててお水を手渡した。

 

「ごく……ごく……ごく……ふぇ~~~~」

 

「落ち着いた?」

 

「は、はい。蒲公英さんが行き成りすごいこと言うから驚いてしまいました」

 

「でも、ご主人様が好きってことはつまりはそういうことでしょ?」

 

「そ、それは飛び越し過ぎです」

 

「そうかな~。それじゃそれじゃ!雪華の大好きなご主人様が違う女の人と楽しそうにしてたら雪華はどう思うの?」

 

「え?……」

 

雪華はその光景を思い浮かべてるのか目を閉じて考え始めた。

 

「ふぇ……なんだか悲しい気持ちになります」

 

目を開いた雪華は悲しい顔をしていた。

 

「でしょー!よ~し!たんぽぽが手伝ってあげる!」

 

「?何をですか?」

 

「雪華がご主人様のお嫁さんになれるように!」

 

「ふ、ふぇえええ!?」

 

「まずは作戦会議だね!どうやったらご主人様を……」

 

「俺がどうしたって?」

 

「え?」

 

「ふえ?……ご、ご主人様!?」

 

たんぽぽの後ろから声が聞こえたかと思うと、雪華は顔を真っ赤にして驚いていた。

 

「よっ!雪華に蒲公英。二人でお茶か?」

 

振り返るとそこにはご主人様が立っていた。

 

「な、なんでこんなところにご主人様が居るの!?」

 

「え?政務が一段落ついたから愛紗に許可を得て町の散歩」

 

「そ、そうなんだぁ」

 

「ふぇ、ふぇ……」

 

苦笑いを浮かべながら雪華に目線を向けると雪華は顔を赤くして口を開けたり閉じたりしてた。

 

「おっ!美味そうなゴマ団子だな。おばちゃん、俺にもゴマ団子ちょうだい!」

 

「これはこれは御遣い様。すぐにお持ちします!」

 

注文をしたご主人様はたんぽぽと雪華の間に座ってきた。

 

「それで、俺の話をしてたみたいだけど。何の話かな?」

 

「えっ!えぇ~~~っと……そ、そう!どうやったらご主人様に勝てるのかなって!」

 

たんぽぽは何とか話をごまかした。

 

「俺に?」

 

「そうそう!そうだよね雪華!」

 

「ふえ!?」

 

「そうだよね!」

 

「は、はい!そ、そうでふ!」

 

ぼーっとしていた雪華に話を振り、同意を得る。

 

「俺を?」

 

「うんうん!ご主人様ってすっごーく強いんでしょ。お姉様から聞いたよ」

 

ご主人様の強さは反董卓連合軍に参加したお姉様から聞いていた。その強さは兵が束になっても敵わないほどらしい。

 

「そこまで強くないよ。強いって言ったら恋の方が俺は強いと思うけどね」

 

でもご主人様はその強さをひけらかすこともしないで否定してた。

 

「またまた~。そんなお世辞、たんぽぽには通じないよ。ね、雪華」

 

「は、はぃ。ご主人様はとてもお強いですし、あ、あのお優しいですし……」

 

雪華は俯き小さな声でしゃべって聞き取りにくかった。

 

「ん?ごめん、良く聞こえなかったんだけど。もしかして調子でも悪いのか?」

 

「い、いえ!そんなことないです」

 

「でも、最近も夜遅くまで部屋に明かりがついてるだろ?また、力が足りないからって勉強してたんじゃないのか?」

 

「そ、それは……」

 

へ~。ご主人様ってちゃんと見てるんだね。

 

「大丈夫だよ、雪華。雪華はちゃんとみんなの力になってる。もちろん俺の力にもね」

 

「ふぇ。ご主人様……ありがとうございます」

 

「でも、だからと言って根を詰め過ぎても駄目だぞ。余裕を持たないとな。焦っている時ほど、人間はどこかで失敗をするからね」

 

「はい。わかりました」

 

「うん。雪華は聞きわけが良くて俺は好きだぞ」

 

(なでなで)

 

「ふぇ~」

 

雪華はご主人様に頭を撫でられて恥ずかしそうに、でも、嬉しそうな顔をしていた。

 

「ねえねえ。雪華」

 

「は、はい。なんでしょうか?」

 

「そんなにご主人様に頭撫でられるの好きなの?」

 

「は、はい。なんだかお父様に撫でられてるような優しくて、暖かくて好きなんです」

 

「ふ~ん……ねえねえ、ご主人様。たんぽぽの頭も撫でて」

 

「え?別にいいけど」

 

(なでなで)

 

「わわっ!なにこれ、気持ちいい♪」

 

ご主人様の手、温かくて大きくてなんだかすごく安心する。雪華が言ってたみたいに本当に父様に撫でられてるみたい。

 

「でしょ♪」

 

「うん!たんぽぽもこれ気に入っちゃった!もっと撫でて~♪」

 

「はいはい」

 

(なでなで)

 

「ふえ、わ、私も撫でてほしいです」

 

「了解」

 

「ふぇ……えへへ~♪」

 

雪華もご主人様に頭を撫でられてとても幸せそうだった。

 

でも、なんだかこれじゃ。違う人たちから見たら仲のいい兄妹にしか見えないよね。

 

「あっ!見つけたぞ、たんぽぽ!」

 

「っ!お、お姉様!」

 

たんぽぽを呼ぶ声に肩を震わせて、振り返るとそこには眉を吊り上げたお姉様が立っていた。

 

「まったく、鍛錬の時間になっても来ないと思ったら、こんな所でサボりやがって。それにゴマ団子まで食ってよ」

 

「えっ、蒲公英さん。さっき暇……」

 

「わわっ!しー!しー!」

 

「あっ……」

 

雪華は理解してくれたのか口をすぐに押えてくれた。

 

「ん?何二人でこそこそしてるんだ?」

 

「な、なんでもないよお姉様!ね、雪華!」

 

「……(こくこくっ!)」

 

雪華は口を押えて頷いてくれたけど……うぅ~、どっちにしろ、怒られるのは確定だろうな。

 

そう思ったその時だった。

 

「ごめんごめん。翆」

 

「ご主人様?なんでご主人様が謝るんだ?」

 

頭を撫でていたご主人様が急に謝りだした。

 

「実は、たんぽぽに護衛を頼んだんだよ。そのお礼を兼ねてゴマ団子を奢ってあげてるんだ」

 

「そうなのか、たんぽぽ?」

 

「え?あ、うん!そうなんだよ!」

 

「それならそうと、ちゃんと言ってくれればいいのによ」

 

「ごめん。次からはそうするよ」

 

「まあ、そういうことならわかったよ。それじゃ、たんぽぽ。しっかりとご主人様の護衛をするんだぞ」

 

「あ、うん!任せてよ。お姉様!」

 

「あれ?翠も一緒にお茶しないか?」

 

「あ~。そうしてやりたいのは山々なんだが、体動かさないと調子が出ないからさ。今から、愛紗でも誘って鍛錬してくるよ」

 

「そっか。それじゃ、また今度誘うよ」

 

「ああ、そん時はよろしくな!」

 

お姉様は手を振って城に戻っていった。

 

「ご主人様、ありがとう!庇ってくれて」

 

「対した事じゃないよ……さて、さっきの話の続きだけど、俺に勝ちたいなら。最低でもちゃんと鍛錬をしないとダメだぞ」

 

ご主人様はたんぽぽを見て、微笑みながら話してきた。

 

「あぅ……だ、だって~。お姉様相手だと勝てる気がしないんだもん」

 

「まあ、確かに力の差はあるよな。でも、だからってサボってたらもっと差が開くだろ?」

 

「それはそうなんだけど~。人間、負け続けるとやる気って無くなるものだと、たんぽぽは思うんだよ」

 

「まあ、確かに、それは言えてるよな」

 

「でしょー?たんぽぽの相手ってずーっと、お姉様一人だけなんだよ。そりゃ、一人でも鍛錬はしてるよ?でも、やっぱり相手が居るほうが実践に近いでしょ?」

 

「ああ」

 

「だからたんぽぽもお姉様を相手にやるんだけど、一度も勝たせて貰ったことがないんだよ。これじゃ、たんぽぽのやる気を削ぐだけだよ」

 

「なら、たんぽぽと力が同じ位の相手が居れば、ちゃんと鍛錬するって事だよね?」

 

「え?……うん。まあ、居ればするけどさ」

 

「なら問題ないよ。な、雪華」

 

「ふえ?」

 

ご主人様は笑うとなぜか雪華に話しかけていた。

 

雪華も何で呼ばれたのか分からず首を傾げてた。

 

「愛紗から話は聞いたんだけど、確かに雪華とたんぽぽなら丁度良い対戦相手なんだよ」

 

「え?でも、雪華って軍師なんじゃないの、ご主人様?」

 

「雪華は戦う軍師さ」

 

「えええぇぇぇえええっ!?そ、そうなの!?」

 

「ふぇ……そ、その……はぃ。らしいです」

 

ご主人様が言った事に驚き雪華を見ると、恥ずかしそうにしながらも雪華は頷いた。

 

「元々、雪華には武の才能があったんだ。でも、俺は知識の方にも才能があるような気がして、朱里たちに頼んで勉強してもらったんだ」

 

「そ、それって大変じゃないの?」

 

「大変ですけど、とてもやりがいはあります。蒲公英さんも一緒にどうですか?」

 

「え゛っ!た、たんぽぽは勉強はちょっと……そう言うのはきっとたんぽぽには向かないと思うんだ」

 

「そうですか。蒲公英さんと勉強できたら楽しそうだったのに、残念です」

 

「ご、ごめんね~」

 

本当に残念そうにする雪華だったけど。でも、流石にたんぽぽ、勉強は遠慮したいな。

 

「よし!それじゃ、早速行こうか?」

 

「行くって、調練場へ?」

 

ご主人様に行く場所を確認する。

 

「ああ」

 

「でもさ、ご主人様」

 

「ん?どうしたたんぽぽ」

 

「ご主人様のゴマ団子、まだ来てないですよ?」

 

「……そう言えばそうだったな」

 

ご主人様は机に目線を落としてしみじみ答えていた。

 

「それじゃ、ゴマ団子を食べた後、調練場に行こう」

 

「わかりました」

 

「は~い!あっ!ご主人様、たんぽぽもう一個、ゴマ団子食べたいな!奢ってくれるんでしょ?」

 

「ええ!?」

 

「ねぇ、いいでしょ。ご主人様~」

 

「うん、まあ。一個ならいいか」

 

ご主人様は苦笑いを浮かべてもう一個注文して良いって言ってくれた。

 

「やった~!すみませ~ん!ゴマ団子二つ追加してくださ~い!」

 

「ええ!?二個!?さっき、一個って言っただろ?」

 

「たんぽぽと雪華で一個ずつだよ」

 

「ふえ!?あ、あの私は別、自分の分は出しますから」

 

いつの間にか、自分の分も入っていたことに驚く雪華。

 

「いいからいいから!ここはご主人様に奢って貰おうよ。ね、ご主人様」

 

「あ、ああ。男に二言は無いぞ!たんぽぽも雪華の分も全部、俺が奢ってやる!」

 

「さっすがご主人様!」

 

「ふぇ……本当によろしいのですか?」

 

「ああ、雪華は気にしなくて良いんだよ。雪華が美味しそうに食べてくれれば俺はそれで十分だよ」

 

「ふぇ……それでは、有り難く頂きますねご主人様」

 

雪華は嬉しそうに微笑んでいた。その横でご主人様は財布の中身を確認してたけど。

 

「……」

 

雪華を見つめるご主人様を見ながら、たんぽぽは思ったの。

 

ご主人様ったら……お姉様に怒られそうになった時、咄嗟にたんぽぽの事を庇ってくれてちょっとだけかっこ良く見えちゃったよ。

 

これじゃ、たんぽぽもご主人様の事、好きになっちゃうかも知れないよ。

 

その後、たんぽぽ達はゴマ団子を三人で食べた。

 

その味はやっぱり美味しくて、でもなんだか少しだけほろ苦い味がした。

 

《End...》

【世話焼き馬騰。菫は愛の天使(キューピッド)?】

 

 

 

《菫視点》

 

「今日も良い朝ですね」

 

ご主人様のお仲間になり数日、大分体も良くなって来ました。

 

寝台から起き上がり寝間着から普段着へと着替える。

 

「……」

 

ふと、鏡が視界に入り自分の背中が目に入った。

 

曹操との戦いで娘達を守る為についた傷。

 

本当でしたら(わたくし)はあの場で死んでいたのかもしれない。

 

ですがご主人様は二度も(わたくし)を助けてくださいました。

 

一度目は、そう……忘れもしない始めてご主人様と出会った『反董卓連合軍』の時でした。

 

「あの時は驚きましたわ。天幕に入ってきたご主人様がなぜか夫に見えてしまったのですから」

 

そして、ご主人様は誰も治せなかった(わたくし)の病を治してくださいました。

 

これだけでも感謝してもし足りないくらいですのにさらにご主人様は言って下さいました。

 

『董卓を助けたい』っと

 

この言葉を聴いた時、この人なら月を助けてくれるに違いないっと確信しました。

 

そしてその結果は間違っていませんでした。

 

ご主人様は月を助け匿ってくださっていたのです。

 

この地に来て月を見た時、幸せそうな月の顔を見てホッとしました。

 

「ですが、まさかご主人様の侍女をしているとは思いもしませんでしたが。まあ、月が楽しそうに仕事をしているので良いのですが」

 

そして、二度目……それがこの背中の傷跡。

 

戦場で死ぬ覚悟は(わたくし)が馬一族を統べる長になった時に出来ていました。

 

背中に傷を負い、遠のく意識の中、(わたくし)はもう死ぬのだと思いました。

 

ですが不意にご主人様の笑顔が脳裏を横切りました。その瞬間、近くに居た敵兵の馬を奪い駆け出していました。

 

その後の事は記憶にはありませんでした。気が付いたら心配そうに見つめる翠とたんぽぽが居ました。

 

体は思うように動かず、意識もはっきりしませんでしたが、なんとか無事に逃げ切れたのだと思いました。

 

ですが、この傷では助からないだろうと(わたくし)は心の中で思っていた。

 

これもまた天命。(わたくし)はそう思い諦めました。でも、一目だけ……

 

あの世で待つ夫に会う前に、もう一度だけでもご主人様に会いたい。そう思っていた矢先に奇跡が起こった。

 

大陸を彷徨い益州と荊州の国境沿いで出会ったご主人様の仲間である愛紗さん。

 

その愛紗さんの計らいで諷陵にある客間をお借りしてしばらく療養することになりました。

 

そしてその夜。部屋の扉を叩く音に(わたくし)は落ちかけていた意識を戻した。

 

部屋に入ってくるご主人様は以前、お会いした時と変わらぬ笑顔に(わたくし)は嬉しくなりました。

 

そしてご主人様は、また奇跡の力を使い(わたくし)の体を治療してくださった。

 

「なんといいますか。これでは(わたくし)、ご主人様に生かされていると言っても過言ではありませんね……ふふ」

 

それがなんだか妙に嬉しく、笑ってしまいました。

 

「さて……旦那様は起きておいででしょうか」

 

(わたくし)は敢えて『旦那様』と呼び、自室から出ました。

 

………………

 

…………

 

……

 

(こんこん)

 

部屋の扉を叩き、人が来たことを伝える。

 

これは天の世界での部屋に入る為の作法らしいのです。

 

「……返事がありませんわね。まだ寝ておいでなのでしょうか?」

 

部屋からご主人様の声は無い、ですが、人の気配は在るのできっと寝ているのでしょう。

 

(がちゃ)

 

「失礼いたします」

 

一言告げて部屋に入る。

 

「……あらあら」

 

部屋に入ると案の定、ご主人様は寝ておいででした。

 

「す~、す~」

 

「可愛い寝顔ですね。殿方といってもまだまだ子供ですね」

 

そう言えば誰かが言っていましたね。殿方は見た目よりも子供だっと。

 

「確かに、この気持ちよさそうに寝ている顔を見ている、納得してしまいますね」

 

ずっと見ていたいですがもう朝、ご主人様を起こさなくては。

 

「ご主人様、起きて下さい。朝ですよ」

 

(ゆさゆさ)

 

「ん~……あと五分……」

 

子供のようなことをいうのですね……またそこが可愛らしいのですが。

 

「起きないといたずらしてしまいますよご主人様」

 

「ん~……んっ」

 

「起きましたかご主人様。さ、お早く身支度を……え?……っ!あらあら、これはどうしましょう」

 

手を伸ばしてきたので起きたのかと思いご主人様の手を握ると、そのまま引き寄せられてご主人様に抱き付かれてしまいました。

 

「ん~……ふかふか……すー、すー」

 

(ふにふに)

 

寝ぼけているのか、ご主人様は(わたくし)の胸を揉みながら顔を埋めてきました。

 

「あ、あらあら。そんなに気持ちよさそうにされては怒るに怒れませんね」

 

(わたくし)は優しくご主人様の頭を撫でてみた。

 

「んん~……」

 

頭を撫でるとご主人様は気持ちよさそうに顔を綻ばせてくださいました。

 

「……」

 

(わたくし)はその安らかに眠る寝顔に魅入ってしまいました。

 

「んんっ!何をしているのですか菫」

 

「っ!あらあら、愛紗さん。おはようございます」

 

ご主人様をしばらく見つめていると、後ろから咳払いする声が聞こえ首だけ動かすとそこには愛紗さんが眉を吊り上げて立っていました。

 

「おはよう。それで、何をしているのか聞いているのだが」

 

「あら、見てわかりませんか?ご主人様の添い寝をしているのですよ」

 

「なっ!」

 

「ふふふっ、愛紗さんも如何ですか?」

 

「な、何を言い出すのだ!」

 

「ダメですよ、そんな大声を出しては。ご主人様が起きてしまいますよ」

 

大きな声を出す愛紗さんに人差し指を口元に当てて静かにするように伝えました。

 

「す、すまない……?ではなぁ~い!私はご主人様を起こしに来たのだ。寝たままでは困るのだ!」

 

「あらあら、そう言えばそうでしたわね……ですが」

 

「ですが、なんだ」

 

「これでは(わたくし)、離れられませんわ」

 

(わたくし)は今どのような状態になっているのかを愛紗さんにお見せしました。

 

「なっ!?」

 

その状態を見た愛紗さんは目を丸くして驚いていました。

 

「ん~~、大きいメロン……ぐぅ~~~」

 

「?めろんとはなんでしょうか?」

 

「そんなこと知らん!だが、なぜかその言葉に苛立ちを覚える」

 

愛紗さんは『めろん』という言葉に、何かを感じ取っていたようです。

 

「ん~~……メロン、頂きま~す」

 

(むにゅ~~~)

 

「なっ!?」

 

「あ、あらあら……ご主人様ったら大胆ですね」

 

ご主人様は(わたくし)の胸に齧り付いた来ました。

 

「~~~~っ!!ご主人様!起きて下さい!」

 

(ごんっ!)

 

愛紗さんはご主人様に近づき、大きな声を出してご主人様の頭を拳骨で殴りました。

 

「いてっ!な、なんだ!?敵襲か!?」

 

痛さで起きたご主人様は目を覚まし辺りを見回していました。

 

「おはようございますご主人様」

 

「おはよう……え?何で菫が目の前に?」

 

「あらあら、寝ているご主人様はあんなに大胆でしたのに」

 

「へ?……っ!?!?」

 

「ごほん!朝から何をいちゃついているのですかご主人様?」

 

「あ、愛紗!こ、これは違うんだ!俺はまだ何も!」

 

「……酷いですわご主人様」

 

「へ!?」

 

(わたくし)の胸を揉みしだき、顔を埋め、さらに齧り付いてきましたのに」

 

「う、嘘!?」

 

「本当ですわ」

 

驚くご主人様に笑顔で答える。

 

「ええ、本当です。私も見ていましたからね」

 

愛紗さんは腕を組み、ご主人様を睨みつけながら(わたくし)に同意していました。

 

「ああ、それと」

 

「ま、まだ何か?」

 

ご主人様は恐る恐る聞いてきました。

 

「寝言で『大きいめろん』と言っていましたが『めろん』とは何のことでしょうか?」

 

「メロンって言うのは果物の事だけど……ああ、そう言えば、なんだかメロンを齧り付く夢を見てたような……」

 

「そのめろんとはこのように大きなものだったのですか?」

 

「え?」

 

(むにゅ)

 

「ちょ!す、菫!?」

 

「いえ。『頂きます』、と言いながら(わたくし)の胸に齧り付いてきたので」

 

「あ、あ~……確かに、大きさ的には丁度……」

 

「ふんっ!」

 

(ごちんっ!)

 

「いって~~~~っ!」

 

ご主人様は(わたくし)を抱いていた両手を離し、愛紗さんに殴られた頭を押えました。

 

「いい加減、菫から離れてくださいご主人様!それから顔を洗ってください」

 

「うぅ……だからって頭を殴らなくても……」

 

ご主人様は起き上がりお顔を洗う為に、部屋の隅に置いてあった桶へと向かいました。

 

「ご主人様が弛んでいるからいけないのです……はぁ」

 

文句を言うご主人様に愛紗さんは弛んでいると一蹴する。ですが、背を向けるご主人様を見ながらもご自身の胸をたくし上げて溜息をついていました。

 

「あらあら」

 

(わたくし)は愛紗さんの態度を見て思わず微笑んでしまいました。

 

「なんだ菫。何か言いたそうな顔ではないか」

 

「いいえ。愛紗さんも十分立派な『めろん』をお持ちではないかと思いまして」

 

「なっ!?」

 

愛紗さんは無意識なのかご自分の胸を両手で隠し、(わたくし)から背をそむけてしまいました。

 

「な、何を言い出すのだ急に!」

 

「素直な感想を言ったまでですが」

 

「な、何が素直な感想だ!」

 

「ふぅ……さっぱりした……?どうしたんだ?」

 

顔を洗い戻ってきたご主人様は愛紗さんの大きな声に何かあったのかと尋ねてきました。

 

「な、何でもありませんご主人様!」

 

「ええ。何でもありません。ただ、愛紗さんも十分魅力的だと言っただけですわ」

 

「す、菫!?」

 

「ははっ、愛紗は十分どころかものすごく魅力的な女の子だよ」

 

ご主人様は恥ずかしげもなく愛紗さんを褒めていました。戸惑いも無く答えるあたり、本気でそう思っているのでしょう。

 

「ご主人様!?」

 

「でも、それを愛紗は分かってくれないんだよ。『私は可愛くなどありません』ってさ」

 

「当り前です!私の手は得物を握り、手はごつごつと硬いのです。そんな私が可愛いはずがありません!」

 

「そんな訳ないだろ?ほら、こんなに綺麗でスベスベな手なのに。これでごつごつで硬いとか言ったら。世の中の女性に恨まれるぞ」

 

ご主人様は愛紗さんの手を取り、手のひらを擦りました。

 

「で、ですが……」

 

「あらあら、それはいけませんね。では、僭越ながら(わたくし)が愛紗さんをご自分が可愛いのだとご理解いただける様にお手伝いをいたしましょう」

 

それでも尚、言い訳をしようとする愛紗さんに(わたくし)は言葉を遮り、ご主人様に提案をいたしました。

 

「な、何を言い出すのだ菫!わ、私は可愛くなどない!だから何をやっても無駄だ!ご主人様も何か言ってください!」

 

「……よし。菫に任せるよ」

 

ご主人様は暫しの沈黙の後、(わたくし)にお任せしてくださいました。

 

「ご主人様!?」

 

ご主人様の判断に戸惑う愛紗さん。

 

「かしこまりました。それと、事に当たるにあたり、ご主人様のお力をお借りするかもしれませんが宜しいでしょうか」

 

「構わないよ。愛紗が自覚してくれるためなら、俺に出来ることなら是非」

 

ご主人様は(わたくし)の願いを快く受けてくださいました。

 

「か、勝手に話を進めるな!私はまだやるとは一言も!」

 

「ご主人様からも了承を得たことですし、そうですね……二日間ほどお時間をいただけますか?」

 

「まあ、食料の補充とかもあるから七日間くらいはここに居るだろうから……うん、わかったよ」

 

「は、話を聞いてください、ご主人様!私はっ!」

 

「ささ、愛紗さん。これから忙しいですわよ」

 

「ちょ、菫っ!話はまだ」

 

(わたくし)はまだ何か言いたそうな愛紗さんの背中を押してご主人様の部屋から出て行きました。

 

「す、菫!どこに連れて行くつもりだ!」

 

「それはついてからのお楽しみですよ」

 

廊下に出た(わたくし)は愛紗さんを逃がさない様に手をつなぎ歩く。

 

「わ、我々はこれから朝議があるのだぞ!その為にご主人様をお越しに来たのだ!」

 

(ぴたっ)

 

「そう言えば、そうでしたわね。忘れていましたわ」

 

「菫も我らの仲間になったのだ、少しは自覚を……」

 

「では、朝議の後、愛紗さんを見繕う事にいたしましょう」

 

「ひ、人の話を!」

 

(わたくし)はまた愛紗さんの話を無視して勝手に決めてしまいました。

 

「あらあら、それともご主人様に可愛いと言われたくないのですか?」

 

「うぐっ!そ、それは……」

 

「ふふふ。言葉を言いあぐねているということは、満更でもないということですわね」

 

「~~っ!と、兎に角!朝議があるのだ!早く向かうぞ!」

 

「あらあら」

 

愛紗さんは(わたくし)の手を振り解き行ってしまいました。

 

それにしても、愛紗さんは奥手ですわね……桃香様はどうなのでしょう?

 

そこで(わたくし)は桃香様のことを考えてみる。

 

見た感じ、愛紗さんよりはずっと行動力がおありですからね。自らご主人様を攻めているかもしれませんね。

 

「おい、菫!聞いているのか?」

 

「ええ。聞いていますよ。では、朝議に向かいましょう。ご主人様より遅く入ってはダメですからね」

 

「う、うむ。わかっているなら良いのだ……」

 

愛紗さんはそう言うと、朝議を行う間へと向かっていきました。

 

「ふぅ、逃げられてしまいましたね。これでは(わたくし)が近づくと警戒されてしまいますね」

 

さて……ご主人様に今日と明日の二日猶予を頂いたのでなんとかその間に事を進めなくてはいけませんね……

 

(わたくし)はどうやって愛紗さんを捕まえようか歩きながら考えました。

 

………………

 

…………

 

……

 

「では、これで朝議を終了する。各自持ち場に戻り作業を進めてくれ」

 

愛紗さんの号令で今日の朝議は終了した。

 

さて、愛紗さんの下へと向かいましょうか。

 

(こつっ)

 

「っ!」

 

「あら?」

 

(こつっ、こつっ)

 

「っ!!」

 

「あらあら?」

 

「っ!!!」

 

(こつっ、こつっ、こつっ)

 

「あらあらあら?」

 

愛紗さんは(わたくし)が一歩近づくと一歩下がり、二歩近づくと二歩下がり、三歩近づくと三歩下がってしまいました。

 

「どうして逃げるのですか?」

 

「に、逃げてなど居ないぞ!わ、私はき、急用を思い出したのだ!そ、それではな菫!」

 

愛紗さんはそう言うと脱兎の如く逃げ出してしまいました。

 

「やはり避けられてしまっていますわね……一体どうしましょう」

 

「あれ?菫さん。何か悩み事ですか?」

 

どう愛紗さんを捕まえようか悩んでいると桃香様が話しかけてこられました。

 

「これは桃香様。ええ、少々愛紗さんの事で」

 

「愛紗ちゃんの事?」

 

「はい、実は……」

 

(わたくし)は桃香様に今朝の出来事を掻い摘んで説明しました。

 

「ふ~ん。それじゃ愛紗ちゃんを可愛くして、自覚を持ってもらおうって事なんだね」

 

「はい。しかし、愛紗さんに逃げられてしまい、どうしようかと悩んでいたところです」

 

「そっか~。やっぱり菫さんから見ても愛紗ちゃんは可愛いって思うんだね」

 

桃香様は自分の事の様に喜ばれていました。

 

「そうですわね。(わたくし)もあと数年若ければご主人様と……」

 

「え?」

 

「こほん……なんでもありませんわ。それよりもどうすれば愛紗さんを捕まえられるでしょうか」

 

危うく本音が出てきそうになり、話を元に戻しました。

 

「う~ん……私も今日はお仕事一杯だから菫さんのお手伝いは出来そうにないな……それに今日は愛紗ちゃんも忙しいみたいだし」

 

「そうですか……ご主人様との約束があるので今日中には決めておきたかったのですが無理そうですね」

 

「……っ!そうだ!それなら今日は愛紗ちゃんに似合いそうな服を見繕って明日着せてみたらどうかな?」

 

「なるほど、それは名案ですわ。ですが、(わたくし)を警戒している愛紗さんをどうすれば」

 

「それも任せて!私に作戦があるんだ♪」

 

桃香様は何やら企んだ笑みを浮かべておられました。

 

「そうですか。では、愛紗さんにつきましては桃香様にお任せしてもよろしいでしょうか?」

 

「うん。任せてよ!ちゃんと愛紗ちゃんを連れて来てあげるよ!それでどこに連れて行けばいいのかな?」

 

「では、誰もいない客間へお願いできますか?(わたくし)はそこで待っておりますので」

 

「了解!それじゃ、明日ね!」

 

「はい。よろしくお願いいたします」

 

(わたくし)は桃香様にお辞儀をしてその場を離れました。

 

「愛紗さんにはどのような服がお似合いでしょうね……」

 

(わたくし)は街にある意匠が売られている店を回っていました。

 

「やはり、髪は下していた方がより女の子っぽく見えるでしょうからそれは決定で良いでしょう」

 

あとはご主人様がお喜びそうな服ですが、仲間になったばかりの(わたくし)にはご主人様の趣向はわかりませんからね。

 

「困りましたわね……あら、この服は、たんぽぽに似合いそうですね……あらあら、そうでした、今日は娘たちの服を選びに来たのではないのでしたね」

 

服を見ながらつい、娘たちに似合いそうな服を手に取ってしまいました。

 

「ふぅ、色々と良いものはあるのですが、これっと言うものが見つかりませんね」

 

店から出て思わず溜息を吐いてしまった。

 

「おや?そこに居るのは菫ではないか」

 

「菫なのだ!おーい!」

 

店を出て歩き出そうとした時、後ろから声を掛けられました。

 

「あらあら、星さんに鈴々ちゃんではありませんか。警邏ですか?」

 

「うむ。菫は何をしておいでですかな?」

 

「少々、服選びを」

 

「服を?」

 

「ええ、分け合って愛紗さんに似合いそうな服を探していたところです」

 

「ほほう……それは詳しく聞きたいものだな」

 

星さんはニヤリと笑い興味津々のようでした。

 

「あらあら、警邏は良いのですか?」

 

「おっと、忘れるところだった。しかし、詳しく聞きたかったのだが致し方ない。後ほどゆっくりと聞かせてもらうとしよう」

 

「ふふふ、星さんもお好きですね」

 

「ふっ。色恋の話は良い肴になるのでな。ああ、それと主の好みを知りたければ直接聞いたほうが良いと思うぞ。まあ、主ならなんでも可愛いと申されるからな似合っていれば良いと思うが」

 

「あらあら、(わたくし)、一言もご主人様のお名前を出していませんでしたのに良くお判りになりましたね」

 

「なに、愛紗に似合いそうな服を探していると云われれば、大体の者がご主人様絡みだと思うだろう。愛紗は己の技は磨くが、自らを磨こうとはしないからな、回りが焚き付けねば何もせん。まったくもって勿体無い」

 

「なるほど、納得ですね」

 

星さんの説明に思わず納得してしまいました。

 

「まあ、そう言うことだ。愛紗の事、よろしく頼むぞ。あと、結果もな」

 

「ふふふ、分かりましたわ……あら?鈴々ちゃんがいつの間にか居ませんね」

 

「なに?」

 

いつの間にか居なくなってしまった鈴々ちゃんを探す。

 

「……っ!あらあら、ふふふ。あんなところに居ましたわ」

 

鈴々ちゃんを見つけ思わず笑ってしまいました。

 

「うにゃ~~。美味しそうなのだ……」

 

鈴々ちゃんは近くで店を出していた点心屋の前に立ち、店先で蒸していた肉まんを見つめながら涎を垂らしていました。

 

「鈴々はまだ色気よりも食い気ですからな。鈴々!そろそろ行くぞ」

 

「にゃ~。お腹が空いたのだ」

 

「まったく……」

 

「あらあら」

 

鈴々ちゃんの言葉に思わず微笑んでしまいました。

 

「すみません。肉まんを五つ包んでくださいますか?」

 

「へい、毎度!」

 

店の店主は手早く蒸したての肉まんを包んでいました。

 

「へい、お待ち!」

 

「ありがとうございます。お代はここに」

 

肉まんの代金を置き、鈴々ちゃんの下へ向かう。

 

「はい。これだけあれば十分かしら?」

 

「にゃにゃ!も、貰ってもいいのか?」

 

「ええ。お腹が空いたのでしょ?」

 

「やたー!ありがとうなのだ菫!はぐっ!もぐもぐ……美味しいのだ!」

 

鈴々ちゃんは美味しそうに肉まんを頬張っていました。

 

「あらあら、口の横に餡がついているわ鈴々ちゃん」

 

(ごしごし)

 

懐から布を取り出し、鈴々ちゃんの頬を拭いてあげた。

 

「はい。取れましたよ」

 

「んにゅ~。ありがとうなのだ」

 

「やれやれ。鈴々よ、そろそろ行くぞ」

 

「わかったのだ!またなのだ!」

 

肉まんが入った包みを抱えて歩き出す鈴々ちゃんの足取りはとても軽やかでした。

 

「ご主人様にお聞きしたほうが良い、ですか……それでは驚き感が無くなりそうですが、参考程度には聞いてみるのも良いかもしれませんね」

 

(わたくし)は星さんの意見を取り入れることにして、ご主人様を探して見ることにしました。

 

「確か朝議ではご主人様は政務でしたね。では一旦城に戻るとしましょう」

 

一旦、城に戻る為に歩いてきた道を戻っているときでした。

 

『な、なんでこんなところにご主人様が居るの!?』

 

一際大きな声が(わたくし)の耳に入ってきました。

 

「あら?この声はたんぽぽですね。それにしても大きな声ですね、もう少し女の子らしくして欲しいのですけれど」

 

まあ、娘である翠よりは色々と気にしているのでそこら辺は安心なのですが、少々おてんば過ぎるところありますからね。

 

辺りを見回してたんぽぽを探す。

 

「……あそこに居ましたね。先ほど叫んでいたようにご主人様も居るので丁度良かったです」

 

たんぽぽを見つけるとそこにはご主人様と雪華ちゃんが楽しそうに会話をしていました。

 

「あらあら、なんだか楽しそうですね。あれでは(わたくし)があそこに入るのは無粋でしょうか」

 

ご主人様の両側でたんぽぽと雪華ちゃんが楽しそうに会話を楽しんでいました。

 

「仕方ありませんね。服は(わたくし)が決めてしまいましょう。何点か愛紗さんに似合いそうな服を見つけてありますし、もう少し店を回り決めてみましょうか」

 

余りにも楽しそうに会話をしている三人を見て(わたくし)は踵を返しました。

 

………………

 

…………

 

……

 

「今日も良い朝ですね」

 

窓を開け、まだ太陽が上がらない空を見上げる。

 

「ふふっ……それにしても昨日の愛紗さん、あんなに顔を赤くして可愛らしかったですね」

 

無事、愛紗さんに似合いそうな服が決まり、桃香様の作戦でうまく空き部屋へと連れてこられた愛紗さん。

 

そこで逃げ回る愛紗さんに化粧などを施し、ご主人様へお披露目をいたしました。

 

そう言えば、ご主人様も愛紗さんの姿を見て顔を赤くしていましたね。

 

あの時のご主人様の顔をは驚きもあったのでしょう。

 

「さてと、それではご主人様のお部屋ヘ向かいましょうか」

 

身支度を整え、部屋を出てご主人様の寝室へと向かう。

 

(こんこん)

 

「ご主人様、朝でございます。起きておりますか?」

 

『……』

 

「返事がありませんね。やはりまだ寝ているのでしょうか……失礼致します、ご主人様」

 

(がちゃ)

 

「ん~~、すー、すー」

 

「あらあら」

 

扉を開けて中を覗き込むとやはりご主人様はまだ眠っていました。

 

「ご主人様、朝でございます。起きてください」

 

「ん~~……あと十分……」

 

「あらあら、一昨日よりなんだか数字が増えていますね」

 

一昨日も同じことを言って起きてくださりませんでしたね。

 

「ダメですよ。今朝も朝議があるのですから起きて下さいませ」

 

(ゆさゆさ)

 

「ん~~……」

 

(がしっ)

 

「あ、あらあら。またですかご主人様」

 

一昨日と同じ様に腕を掴まれ抱き寄せられてしまいました。

 

「困りましたね……起きて下さい、ご主人様」

 

「ん~~……プリンだぁ」

 

「ぷりん?めろんでは無いのですね。ぷりんとはなんなのでしょうか」

 

「いただきま~す……はむ」

 

「ひゃぅっ!ほ、本当に寝ているのですか、ご主人様?」

 

行き成り胸に齧り付いてきて、思わず声を上げてしまいました。

 

「そ、そんな事をされては……早く起きて下さい、ご主人様」

 

「はむはむ……プルンプルンだ~~」

 

ですが、一向に起きる気配を見せず、(わたくし)の胸を口に含んでいました。

 

「こ、困りましたわね。(わたくし)としては嬉しいのですが、そろそろ愛紗さんが来るころでは……」

 

「……もう来ている」

 

そろそろ来てしまうと思った矢先に、低い声が背中から聞こえてきた。

 

「あらあら、来ていましたか」

 

「……ご主人様、いい加減に起きて下さい!」

 

(ごんっ!)

 

「いいっ!?」

 

回り込んできた愛紗さんはご主人様の頭を思いっきり殴りつけ、その痛さにご主人様は慌てて起きてきました。

 

「やっと起きましたかご主人様」

 

「おはようございます。ご主人様」

 

愛紗さんは目を吊り上げて、(わたくし)は微笑みながらご主人様を見ていました。

 

「え?え?え?」

 

ご主人様は状況が呑み込めず、愛紗さんと(わたくし)を何度も見返していました。

 

「いい加減、菫から離れてくださいご主人様!」

 

「え?……わぁああ!ご、ごめん菫!」

 

ご主人様は今どんな体勢でいるか理解をして慌てて(わたくし)から離れました。

 

「あらあら……ところでご主人様?」

 

「な、なにかな?」

 

「また夢を見ていたようですが、『ぷりん』とはなんでしょうか?」

 

「えっ、プリン?プリンはプルプルとやわらかくて甘いお菓子だけど」

 

「なるほど、そう言うことですか。(わたくし)の胸を吸い付いてきたのでどんな食べ物かと思いまして」

 

「う、嘘!?」

 

「本当ですわ。子供のように吸い付いてきて可愛らしかったです」

 

「ご~しゅ~じ~~ん~~さ~ま~~~っ!!」

 

「あ、愛紗?あ、あのこれは、ね」

 

ご主人様は冷や汗を掻きながら恐る恐る愛紗さんに目線を向けていました。

 

「まあまあよろしいではありませんか。ご主人様は夢を見ていただけなのですから」

 

「……」

 

「それに、愛紗さんも立派なぷりんをお持ちではありませんか♪」

 

「なっ!す、菫!」

 

これまた一昨日と同じやり取りを繰り返す。

 

「と、兎に角、本日も朝議があるのですから早く支度をなさってくださいね、ご主人様!」

 

「は、はい!」

 

愛紗さんは強く念を押し、部屋から出て行きました。

 

「ふふふっ」

 

「な、何笑ってるんだ菫?」

 

「いえ。何でもありません」

 

ただ、ちょっと微笑ましく思っただけなのですが、言わないことにしておきました。

 

「昨日はとても楽しめたようですね」

 

「え?あ、ああ。菫のおかげだよ。ありがとう」

 

「いいえ。(わたくし)は対した事をしていませんわ」

 

「そんなこと無いよ。そうだ!何かお願いしたい事ないかな?」

 

「願い事、ですか?つまり、褒美、ということでしょうか?」

 

「うん。まあ、そんな大層なもんじゃないんだけどさ。菫にお礼がしたいんだよ。だから何か無いかな?」

 

「そうですわね……」

 

(わたくし)は少し思案する。

 

「でしたら……」

 

「おっ!何かあったか?」

 

「はい。では、目を閉じていただけますか?」

 

「目を?別に構わないけど……これでいいのか?」

 

ご主人様は何の疑いも無く、(わたくし)に従ってくださった。

 

「はい。では、そのままじっとしていてくださいね。(わたくし)が良いと言うまでそのままでいてください」

 

そして、(わたくし)は目を閉じるご主人様に近づき……

 

「……ん」

 

「っ!」

 

唇と唇が触れ合った瞬間、ご主人様は体を震わせて離れようとしてきた。

 

ですが、(わたくし)はご主人様の両肩に手を添えていたので離れることはできなかった。

 

ダメですよ。ご主人様、逃がしませんわ♪

 

「……んっ……ちゅ……もう目を開いてもよろしいですわ、旦那様」

 

「す、菫……」

 

旦那様から離れると旦那様は驚いた顔で(わたくし)を見ていました。

 

「ふふふ、これが(わたくし)が頂きたかった褒美ですわ」

 

「す、菫!」

 

微笑みながら(わたくし)は部屋を出て行こうとすると旦那様が呼び止めてきました。

 

「はい?なんでしょうか旦那様」

 

「そ、その……こんなので良かったのか?」

 

「はい♪(わたくし)、身も心も旦那様に捧げる所存ですから。ですから、これからも宜しくお願い致します、旦那様」

 

微笑み、部屋を出る。

 

「ふふふ、旦那様のあの驚きよう……とても可愛らしかったですね」

 

旦那様の顔を思い返し、頬を染める。

 

それにしても、旦那様と唇を合わせた瞬間、体を駆け巡った痺れはなんだったのでしょうか。

 

「なんだか癖になってしまいそうですね。ふふふっ」

 

廊下を歩きながら思わず頬に手を当てて微笑んでしまった。

 

それに、久しぶりに殿方と接吻をしたせいでしょうか、胸の鼓動がとても早くなり、なかなか収まりそうにもありませんでした。。

 

「……旦那様は(わたくし)の様な若くない女性でも愛してくださるのでしょうか?」

 

振り返り旦那様の部屋がある方を見つめる。

 

「……ふふっ、こんな気持ちにさせるなんて、旦那様は罪作りな方ですね」

 

(わたくし)は微笑、廊下を歩き出す。

 

別に愛していただかなくても構いません……ですがどうか、いつまでも旦那様のお傍に居させてくださいね……(わたくし)が愛したもう一人の殿方……

 

《End...》

葉月「……ども、葉月です」

 

愛紗「愛紗だ」

 

葉月「えっとですね。開始早々なんなんですが、よろしいでしょうか?」

 

愛紗「なんだ」

 

葉月「なんで私は逆さまに吊り下げられているのでしょうか?」

 

愛紗「それはお前が悪いからだ」

 

葉月「えっと……もしかして、菫の事ですか?」

 

愛紗「当たり前だ!ご主人様になんて事をさせているのだ貴様は!」

 

葉月「ああ、口付けの事ですか?別にいいじゃないですか、愛紗だってもう一刀とはしてるでしょうに」

 

愛紗「そ、それはそうなのだが……とにかくだ!今後一切、ご主人様への口付けはきっ」

 

葉月「却下です」

 

愛紗「ま、まだ最後まで言っていないではないか!」

 

葉月「言わなくても分かりますから。まあ、口付けくらい良いじゃないですか、別に減るものではないんですし」

 

愛紗「うぅ~む……だ、だが、なんというか人のそう言うところを見ていると……いや、というかなんと言うか……」

 

葉月「ああ、ヤキモチですね。流石、かまってちゃんの愛紗。そのくせ、かまってあげると素っ気無くしたりと、ホント、ツンデレちゃんですね」

 

愛紗「なっ!?ち、違う私は!」

 

葉月「はいはい、分かってます分かってます。自分はツンデレじゃないとか言いたいんでしょ」

 

愛紗「ぐぬぬ」

 

葉月「まあ、もう愛紗がツンデレだって言うのは全国に広まっているので。もう、どうにもなりませんがね」

 

愛紗「な、なんだと!?」

 

葉月「っと、忘れるところでした、本日はゲストをお呼びしています。菫とたんぽぽのお二人で~す」

 

菫「こんにちは菫です」

 

葉月「……あれ?たんぽぽはどこに?」

 

愛紗「知らん」

 

葉月「もう、そんなところで素っ気無くしないでくださいよ。お~い、たんぽぽ~!どこですか~~!」

 

(どどどどどどどっ!)

 

葉月「ん?何だこの地響きは」

 

蒲公英「ここにいるぞーーーっきーーーーーーーっくっ!!」

 

葉月「ぶべらっ!」

 

蒲公英「たんぽぽ、ここに登場!」

 

愛紗「良くぞやった、たんぽぽ!」

 

蒲公英「はえ?」

 

葉月「ふ、踏んでる……たんぽぽ、踏んでるから……」

 

蒲公英「ああ、こんな所に何寝てるの?」

 

葉月「と、兎に角どいてください……」

 

蒲公英「は~い♪よいしょっと」

 

葉月「うぅ、酷い目にあった……さて、気を取り直して、本日の話は如何だったですか?」

 

蒲公英「うん!雪華とお友達になれて嬉しかったよ!それと、ちょっとだけご主人様の魅力もわかったし♪」

 

葉月「そうですか。その内、一刀に恋とかしちゃったりして?」

 

蒲公英「う~ん。どうだろうな~。もっとたんぽぽのことを気にかけてくれたらなっちゃうかも?」

 

葉月「なるほど、では菫はどうですか?」

 

菫「そうですね。(わたくし)は既に、身も心も旦那様に捧げても良いと考えていますわ」

 

葉月「おっと、その呼び方は二人だけの時にしか言わないのでは?」

 

菫「ふふふっ、ここは本編ではないので大丈夫ですよ」

 

葉月「なるほど……一人、大丈夫じゃない人も居ますが、まあ、無視してっ」

 

愛紗「ふんっ!」

 

(がんっ!)

 

葉月「ぐはっ!」

 

愛紗「菫、はっきり言わせて貰うぞ」

 

菫「あらあら、なんでしょうか?」

 

蒲公英「わわっ!これって修羅場?修羅場って奴なの!?たんぽぽ始めて見たー♪」

 

愛紗「ごほん!と、とにかくだ。今後、ご主人様を起こしに行くのは控えて貰おう」

 

菫「あら、なんででしょうか?」

 

愛紗「な、なんででもだ!菫も困るだろ?そ、その……寝ぼけているとはいえ、ご主人様に行き成り寝台へ連れ込まれるなど」

 

菫「いいえ。一向に構いませんわ。むしろ、旦那様の意思で(わたくし)は閨に誘っていただきたいくらいですわ」

 

愛紗「なっ!」

 

葉月「愛紗、生きている年期が違うんだから勝てるわけが無いでしょ」

 

菫「あらあら、葉月さん?今、ちょっと気になる言い回しがありましたね」

 

葉月「え?」

 

菫「少々、『お姉さん』とお話をした方がいいかしらね」

 

葉月「はっ!ち、ちがっ」

 

菫「では、参りましょうか葉月さん。では、愛紗さん、たんぽぽ、後の事はお任せいたしますね」

 

愛紗「あ、ああ……」

 

蒲公英「葉月、強く生きてね!」

 

葉月「裏切り者おおおぉぉぉ……」

 

愛紗「……行ってしまったな」

 

蒲公英「行っちゃったね。それで、次回はどんな話なの?」

 

愛紗「ん?次回か?私も聞いていないのだが……?なんだこの紙は」

 

蒲公英「どれどれ?……これって次回予告の紙みたいよ」

 

愛紗「ほう。なんと書いてあるのだ?」

 

蒲公英「えっとね……次回は、愛紗と桃香の事を書くみたいよ」

 

愛紗「ほう。あらすじとかは書いてないのか?」

 

蒲公英「え~っと……愛紗は菫おば様の愛紗を可愛くしちゃおう大作戦でっ」

 

愛紗「ちょっとまった!なんだその明らかに今回の話の続きは!」

 

蒲公英「たんぽぽ知らないよ。だって、そうかいてあるんだもん」

 

愛紗「おのれぇ!葉月め!私を笑いものにするつもりか!」

 

蒲公英「ちょ!愛紗までどこに行っちゃうのよ!たんぽぽ一人でどうしろっていうの!……って、もう居ないし」

 

蒲公英「はぁ、兎に角、今日はこれでお仕舞いね!それじゃ、また次回~♪」


 
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