No.403469

IS<インフィニットストラトス>過去の女神と未来の天使 第参話 初号機VSネウロイ

TBTさん

第十使徒との戦いでサードインパクトを起こした碇シンジ。
ネウロイとの戦闘で撃たれた宮藤芳佳。気付けば二人は別の世界にいた。
そこは《IS》という女性にしか扱えない兵器が存在する世界。 二人はこの世界で生きていけるのか?


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2012-04-06 07:47:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2430   閲覧ユーザー数:2395

 

「グッドモーニング、シンちゃ〜ん」

「ん……」

 

 

作業は日付が変わっても終わらず気づけば昼を過ぎていた。

 

 

「完成したよ、シンちゃんのIS」

「本当ですか!」

「うん、これ」

 

 

束が差し出したのはISではなく紫色の腕時計。シンジはとりあえず受け取り、腕に着けた。

 

 

「これでどうするんですか?」

「普通においでって念じれば出てくるよ」

「分かりました」

 

 

シンジはISを呼び出した。

全身が光に包まれ、あっという間に紫色のISアーマーが展開された。所々に初号機の名残があることにシンジは感慨深く感じた。

 

 

「名前はあとで自分で付けていいよ。とりあえず基本を――――」

 

 

 

 

 

ピーピーピー

 

束のポケットから警報音が鳴り響いた。

 

 

「お、早速来たね!シンちゃん行くよ!」

「行くってどこにですか?」

「決まってるでしょ、よっちゃんを助けに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

芳佳は巨大なニンジンもどきに隠れている。

束のボタンを押した途端、さっきまでいた白い空間に戻ってきていた。

しかもネウロイと一緒に転移していた。

目標を失ったネウロイは悠々と空間を縦横無尽に動き回っている。

 

 

「私一人でなんて……!」

 

 

ネウロイは芳佳の姿を確認するとクジラのように身体を曲げて旋回した。そして芳佳に向かってレーザーを放った。

 

 

「きゃあ!!」

 

 

芳佳はシールドでまたなんとか受け止めた。しかしその間にもネウロイは芳佳に接近する。

芳佳は隙を見てシールドを消し、ネウロイの上に飛び上がった。上部に組織が剥がれかけ、剥き出しになったコアがあった。

 

 

「これで!!」

 

 

芳佳は狙いを定めて引き金を引いた。しかし若干ぶれてコアの周りに着弾し、コアには傷一つ無い。

ネウロイは芳佳を突き放すべく速度を上げ、距離を広げていく。

 

 

「あと少しなのに……!」

 

 

 

 

 

 

 

ネウロイの左翼が切り落とされ、バランスを崩したネウロイは急旋回した。

しかし、芳佳は何もしていない。

 

 

「まさか!」

「大丈夫ですか?」

 

 

 

ISに乗ったシンジが芳佳の元へやってきた。彼の手には小型のプログレッシブナイフが握られている。

 

 

「あれが宮藤さんの言ってたネウロイ?」

「そうです」

「やっぱりコアとかあるの?」

「はい、ネウロイのてっぺんに宝石みたいなコアがあって」

「わかった、行くよ」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー早速やってるね」

 

 

束はニンジンもどきの中でシンジのISの稼動データを取っていた。

 

 

人造人間から作り出したIS。束にとっても初めての試みだった。

全て初号機から作り上げたのではなく、元からあったISのフレームに初号機の装甲や筋肉などを取り込み、一つのISとして完成させた。

 

一先ず動いたので束はホッとしている。

 

 

「シンちゃん、どうにかなりそう?」

『武器って他に無いんですか?プログレッシブナイフだと接近しないと……』

「あるよー、送るね」

 

 

束は武器庫にあった試作品をシンジに転送した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは」

『大出力型陽電子砲(ポジトロンスナイパーライフル)、試作品だから微調整はまだ出来てないよ。でもきっとイケるよ』

「ありがとうございます」

 

 

シンジはネウロイに陽電子砲を向け、エネルギーをチャージしていく。

しかし、なかなかエネルギーが貯まらない。

 

 

「あとどれくらいですか?」

「あと20秒!」

 

 

エネルギーを充填してる隙に左翼を回復したネウロイは再び接近してきた。

 

 

「あと10秒!」

「危ない!」

 

 

芳佳はシンジの前にシールドを張ってネウロイのビームを防いだ。

エネルギーはまだ溜まらない。

 

 

「あと5秒!」

「あと少し……」

 

 

ネウロイは更にビームを放ち、二人を追い詰める。

そしてようやくチャージが完了した。

 

 

「今だ!」

「はい!」

 

 

シンジの掛け声と同時に芳佳はシールドを引っ込め、シンジから離れた。

ネウロイのビームと陽電子砲のエネルギー弾がぶつかり合い、眩い光が何もかも掻き消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「……勝ったね」

 

 

光が消え、目を開くとネウロイは消えていた。

 

 

「凄いです、シンジさん」

「僕じゃないよ、束さんが作ってくれたこのISの……」

 

 

目の前に出てきた画面にシンジは固まった。

 

 

 

 

『ENERGY 0』

 

 

 

 

「あの、束さん」

『シンちゃん!急いで地面にお――――』

 

 

束の言葉より先にISアーマーが解け、シンジは元の制服姿になった。浮遊能力を失ったシンジは

 

 

「うわあああああああ!!」

「シンジさん!」

 

 

芳佳は直ぐに墜落しゆくシンジを追い、彼を床スレスレで受け止めた。

 

 

「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴメンシンちゃん、初めてだからエネルギーが少なかったね」

 

 

 

ISにはシールドエネルギーというものがあり、シールドバリアーが発動するとこのエネルギーが減る。ポジトロンスナイパーライフルにエネルギーを全て転化して残量が0になってしまったのでシンジのISは解除されてしまった。

 

 

「やっぱ改善する必要があるね、フムフム」

「じゃあしばらくはこのプログレッシブナイフで……」

「まあ、なんくるないさ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び白い空間。

 

 

「じゃあ私、帰りますね」

「あ、気をつけてね。またネウロイで困ったら呼び出していいからね」

「はい、シンジさんもありがとうございました」

「気をつけて」

 

 

芳佳はまた世界へ帰るために飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、いつまで飛んでも黒い靄が現れない。振り返るとシンジと束が米粒と同じくらい小さく見える。

振り返ったまま、高度を上げても二人の大きさも小さくならない。

 

 

「どうして……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ、でも仲間と過ごすことはできるよ。時間が止まってる時間が長くなるほどよっちゃんを中心に世界があの空間と繋がってドンドン掃除機みたいに吸い込まれるから』

 

 

芳佳が元の世界に戻る前、束はこう言っていた。

 

 

 

 

つまり、他の誰かも芳佳のようにネウロイのいる世界からISのある世界に来てしまった。

 

 

 

 

『分からない?世界はよっちゃんが戻らない限り動かない。つ・ま・り、よっちゃんが言うえーとネウなんとかも戦うことはない。世界平和が永久に続くんだよ』

 

 

 

 

芳佳が戻るだけではダメ。すなわち、同じく異世界に渡った人間も戻らなければ世界は動き出さない。

 

 

 

 

「そんな…………」

 

 

芳佳は飛ぶのを止めた。

終わりのない虚空を呆然と見つめるしかなかった。

 

 

 

 

 

続く

 

 
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