No.402284

《インフィニット・ストラトス》~二人の転生者~

菊一さん

第三話!
コメントに感想に要望待ってます!批判も受け付けてます!

2012-04-03 21:16:18 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1788   閲覧ユーザー数:1695

第三話 兄妹の生活

「おにいちゃ~ん、朝だよ~」

「ん~…あと五分だけ寝かせてくれ~」

「じゃあ私も~!えいっ!」

「グハァ!!」

春華がベッドにダイブしてきて俺の腹を直撃した。しかも毎朝これだから困るもんだ。

「あはっ、起きた~?」

「ああ、そりゃもうバッチリ…」

時計を見ると午前四時。春華は上下赤いジャージを着ていた。

「すぐに着替えるから下で待っててくれ」

「うん!わかった!」

そう言って俺は起き上がる。

転生してから十五年、あと数ヶ月もすれば十六年経つ。神様に約束された物は届いたが今の世の中ではあまり必要ではないものだった。…まあバレない限りあって困るものじゃないのでいいのだが。

今の俺と春華は中学生で受験生という位置。俺と春華は無事転生し、ご近所だった織斑姉弟と篠ノ之姉妹と幼少時代を過ごす。しかし篠ノ之姉妹の姉――篠ノ之 束さんがISを開発したせいで篠ノ之姉妹とは別れてしまった。妹の箒は重要人物保護プログラムによって何処にいるか不明だし、束さんも三年ほど前に467個目のコアを置いて姿をくらましてしまった…確か生中継で《これが最後のコアだよ~》的な感じで行方をくらましたんだっけ?……昔から馬鹿と天才は紙一重というが……今も変わってないし。

今現在束さんは全世界が血眼になって探しているが行方は未だにわからない、が俺は連絡手段を持っている。携帯の番号を知っているのだ。何故かというと、俺は昔から小説やアニメ、漫画の機械などに興味があり、現実で作れないかとノートパソコンと睨めっこしていたのだ。そこで束さんと意気投合し、色々なものを計画したり作ったりした。そしてISの開発にも俺は携わっている。故にISに詳しい人物の中に俺も入っているのだ。しかし必死に隠蔽していたため、現在政府からの人間が来たりはしていない。そして今でもたま~に電話やメールでISに関することや他にも楽しそうなことを話たりする。

とにかくそんな感じで箒とは音信不通だが束さんは元気で連絡をとっている。

織斑姉弟はご近所さんと言うよりは《義兄弟》みたいな感じだった。しかし小学校を卒業した後、俺達兄妹は私立の中学校に入学し引っ越したので離れ離れ。といってもメールや電話は織斑姉弟の弟の一夏としているので一夏の近状も把握している。一回友達紹介されたな……五反田弾だっけ?…結構気のいいやつだった記憶がある。妹の蘭も紹介されたな……懐かしい。

ついでに織斑姉弟の姉――千冬さんは今現在どうしてるのかは知らないが、一夏によると月に一回、二回は帰ってきてるので生きているようだ。

千冬さんは俺と春華、一夏にとっては剣の師匠だ。引っ越した後も篠ノ之道場で修業した日々を思いながら剣道と居合を嗜んでいる。そういや箒はいつぞや剣道の全国大会で優勝してたな……元気らしくて何よりだ。

千冬さんは束さんの唯一といっても過言じゃない友人でISにも携わっていた。束さんが開発担当、俺がサポート、千冬さんが操縦。こんな編成だ。千冬さんは第一回モンド・グロッソでも優勝した世界最強のIS使いだ。俺と春華を実の肉親のように扱ってくれた厳しくも優しい人だった。

ついでに俺が昔呼んでいた各人の呼び方は一夏のことを《夏》、千冬さんのことを《冬姉》、箒のことを《箒》、束さんのことを《束姉さん》と呼んでいた。今は束さんだけ《束さん》と呼んでいるが。ん?千冬さん?最近呼んでないからわからないな。多分呼ぶとしても昔のままだと思う。そして向こうからは俺は《(シュウ)》、春華は《(ハル)》と呼ばれていた。束さんに関しては《しゅーくん》と《はるちゃん》と呼ばれているがな。まあ悪い気はしない。

「おにいちゃ~ん!まだ~?」

おっといけない、春華の事を忘れていたな。行かなくては!!

俺は急いで愛用の黒のジャージに着替えると、下に降り、春華とジョギングに出る。

「おおう!今日も寒いな……」

冬……そろそろ受験の時期だが俺の受験先は決まっている。《私立藍越学園(アイエツガクエン)》…実はこの世界でも俺達の両親はいない。幼少時に事故に遭って他界してしまった。その後織斑家にお世話になっていたが中学になってからは引越し、今の学校に入学。高校は学費が安く、将来も安心の《藍越学園》というのが俺の計画だ。そして絶対に千冬さんに恩返しをするのだ。千冬さん曰く《お前達が元気で過ごしてくれることが私の喜びだ》らしいが恩返ししないと俺としては気分がわるいのだ。だからそうした。ついでに一夏も同じ学校を受験するらしいので高校は一緒らしい。

「よし!行くか!」

「うん!」

…そういえば春華は何処を受験するんだろうか?まあいいや、後で聞こう。

 

「起立、礼、ありがとうございました~」

「はい、お疲れ様。それじゃあみんなちゃんと帰るように、受験生だから勉強するようにな」

あの先生は何時も同じ事いってるな。ま、そこがいい先生なんだが。

さてと…帰りますか。俺は鞄を背負い、春華を迎えに行く。春華とは別のクラスになってしまった為、毎日こうしている。だって置いてくとあいつ怒るもん。俺は一組で春華は三組だった。

「さてと…あ、君。ちょっといいかな?」

俺は三組の前まで来ると手前にいた女子生徒に声をかけた。

「はい?あ、一ノ瀬くん。春華ちゃん?」

「そそ。呼んできてもらえるかな?」

「わかりました」

「ごめんな」

そう言うと女子生徒は春華の傍まで行くと声をかけた。春華がこっちに手を振ったので振り返す。すぐに近づいてきて「帰ろう!」と言ったので「ああ」と答えを返す。

 

「いいよね~、一ノ瀬くん。身長高くてあんなにかっこいいもんね」

春華が帰った三組では生徒たちが話していた。

「あ~、私にもあんなお兄ちゃんいたら毎日が楽しいだろうな~」

「でも体中に傷跡があるんだぜ?ちょっと残念だよな」

「あ、そうそう、俺もそれ見たぜ。なんでも居合と事故の時の傷だってな。あんな傷跡見せられると同情するよな~」

男子生徒がざわめきだす。

「しかもあれ一ノ瀬さんを守った時なんだってな。勇気あるよな~」

「でも俺一年の時同じクラスで偶然その傷見たけど、二年の時腕にあった無数の傷が綺麗に無くなってたんだけどなんでかな?」

「大方傷跡を消したんだろ?あれぐらいは消せるだろうし。腕とかは結構目立つからな。まあ代償で半年以上学校休学してたけど」

「もったいない、全身の傷消したら美形なのにな……」

そして秋葉の話に春華の事も加わっていた。

「一ノ瀬さんの方も可愛いよな~…二人共性格よくて文武両道、おまけに美少女と美男子ときて、すごいよな~」

そんな話が広がる三組である。

 

昇降口で俺は靴を交換していたら、扉の近くで知り合い――親友が駄弁っているのを見つけた。

「二ノ宮!倉持!」

「ん?なんだ、秋葉じゃん」

駄弁っていた一人のメガネの少年が振り向く。

「お!ホントだ!苗字で呼ばれたから誰かと思ったぜ!」

こっちはスポーツ刈りの少年だ。

「何話してたんだ?」

「いや、最近秋葉見ねえな~、って。まあ今こうしてあったけどな」

スポーツ刈りの少年がそう言いながら肩を叩いてくる。

体格ががっしりした黒髪のスポーツ刈りで、真冬でも日焼けした肌に所々の小さな傷跡が目立つ完璧運動系の男子。名前を《二ノ宮 翔(ニノミヤ ショウ)》という。

「まあ受験生だから、秋葉も大変だったんだろ?」

もう一人はメガネを掛けており、黒髪にストレスからか、所々白髪が混ざったセミロングを頭の上で束ねている。こいつの名前は《倉持 望(クラモチ ノゾム)》。二人共俺の親友であり悪友でもある。

ついでに翔の方は裏社会では名の通った一族の次期当主で、望はIS関連の《倉持技研》の社長の息子で齢十五にして研究員である。

「しかし相変わらず秋葉は春華と仲いいな。羨ましいぜ、妹や弟がいるっていうのは。翔は姉さんいるしな」

「まあ会社では上司で姉だから厳しいけどな」

望は「ハハハ…」と苦笑いしながら言った。

「そういや三年になってクラス変わってから四人一緒ってなかったからな、久々に一緒に帰るか?」

「お!それいいねえ!秋葉に賛成!望はどうするよ?」

「俺もいいよ。特に予定ないし」

「よっしゃ!じゃあ何処かよってこうぜ!」

提案者は俺のはずなんだが、翔に連れられる様に俺達は街中へ移動した。

本屋や電器店に入って俺と望が議論し、翔と春華はそれを眺めて笑ったり、一緒に歩きながら面白い出来事や自分の近状報告等をしながら俺達は歩いて行く。

「そういえば望の所は今専用機IS作ってんだろ?確か《打鉄弐式》とか言うIS。日本代表候補生の専用機になるやつだっけ?」

ふいに思い出して、俺が話をふる。

「ああ、確か候補生の名前は…さら…さら…」

望は話しに乗ったがどうもその代表候補生の名前が思い出せないらしい。

「《更識(サラシキ)家》の当主の妹だろ?確か(カンザシ)とか?」

俺と望の会話に翔がサラっと入ってくる。

「そうそう、さすが《二ノ宮家》の次期当主、裏社会で知らないことはないな」

「まあな~、これでも《更識家》と《二ノ宮家》で《裏社会の双璧》と呼ばれてるんだぜ!!」

「えっへん!」と言った感じで胸を張る。そういう場面を見ながらふと束さんを思い出す。あの人程こういうポーズが似合う人はそうそういないと思う。

そんな事を話しながら歩いているとゲームセンターの前を通り過ぎようとするとこで立ち止まった。

「なあ、どうせなら《アレ》…やってかね?」

俺は春華、翔、望に声をかける。

「《アレ》って《ISバーチャルバトルグランプリ》?お前ホントにおかしいよな?俺や望でさえ一瞬躊躇うゲームなのにお前は何の戸惑いもなくやるんだからな…」

翔が呆れた顔で言ってくるが、実はこの四人の間ではかなり流行りのゲームだ。

「へっ!そういうことは俺に一回でも勝ってから言うんだな!」

「おっ!言ったな!よっしゃ!!今日こそ勝ってやるよ!!」

そう言って俺達はゲームセンター内の球体のゲーム機へ近づいていく。

《ISバーチャルバトルグランプリ》…通称《IS・VBG》はスポーツの《ISで戦う》を擬似的にできるゲームなのだが、あまりにリアルに作られている為、本当のISに乗っている感覚なのだ。ついでにこのゲームはISが世の中に広まってから僅か数ヶ月で稼働を開始し、俺はその初期からの古株ユーザーでランキングの一位を他の奴に譲ったことがない。ついでに全戦全勝。最強CPUや第一回モンド・グロッソ参加者データを相手にも勝てるぐらいだ。

ただその反面、このゲームを蔑む奴もいる。ゲームは所詮ゲームと言い《男の未練》や《低俗なゲーム》などという女性が後を絶たない。そう、《ISは女性しか扱えない》という常識がゲームの中なら関係ないのだ。だから男性を中心に広まっていった。しかしプレイヤーの中には当然女性もいる。妹の春華がいい例だ。春華は俺についでランキング二位を独占している。ついでに翔も望も普通から比べればかなり強いのだが、俺と春華がはるかに強過ぎて、オレと春華しか相手にしないので勝率は低いがランキングは何故か五位以内。そして五位以内はプレイ料金無料という嬉しい設定だ。

俺と翔はゲーム機に入り、出入り口を閉め、準備をしていく。

ISを模した機械に背中を預け、手足をはめて、ヘッドマウントディスプレイを頭に装着。

「行くぜ!翔!」

「こい!秋葉!」

――…ズガガガガッ!…ドゴォン!ドゴォン!…パンッ!パンッ!パンッ!…ブンッ、ザシュッ!!…――

俺は翔を瞬殺した。ああ、なんという快感!他人を倒すのって気持ちいい!!…まあゲーム内に限るがな…

転生前の事を思い、付け加えた。

ゲームならいいが、これが現実の殺し合いとなると快感どころか逆に吐き気がする。それほど俺がこの世界に慣れたってことか…ちょっと皮肉なものだな。

「だ、ダメだ…秋葉強すぎ…望、後頼むわ…」

「…あんまり期待するなよ…」

――…ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!…――

「…あ、アサルトライフルだけでやられた…」

「…ダッセェ…まあ人のこと言えねえが…」

二人は「ゼェ…ハァ…」と荒い息をしながら休憩している。このゲーム、男でも乗れるということを除けば殆ど本物のISの戦いと変わりはないのだ。だから相当な体力がいる。

「じゃあ次は私がやる!行くよ、お兄ちゃん!」

「こい!我が妹よ!」

そう言って戦いが始まり、翔と望は外部モニターで見物していた。

やがて「おい!王者《シュウ》と女王《ハル》が戦ってるぞ!」、「オオッ!!ホントだ!やっぱりこの二人がやると迫力が違うぜ!」などなど、ギャラリーが集まって来た。

その後、俺と春華は二十戦は余裕で超えた回数、戦い続けた。

 

「じゃあな秋葉、春華!」

「おう!翔と望も気をつけて帰れよ!」

「また学校で~」

俺と春華の家の前で翔と望に別れを告げて家に上がる。

「ただいま~っと…」

「ただいま~。それじゃあお兄ちゃん、私着替えたら夕飯作るから」

「おう!俺自室にいるから出来たら呼んでくれ」

「わかった!」

二人で階段を上がりながら話し、各々の部屋へ入る。

俺は鞄とケータイを机の上に置くと、着替え始めた。その時、不意にケータイが鳴る。

上着を脱いた段階でケータイを手にとり、画面を見た。電話の相手は束さんだった。少し迷ったが通話ボタンを押して電話に出る。

「はい、もしも――『やっほー!しゅうくん!愛しの束お姉さんだよ!!元気にしてた!?』――切っていいですか?」

束さんの電話に出るんじゃなかった、と思いながら電話を切ろうと思った。

『わー!待って待って!今日はしゅうくんに大事な話があるんだよ!!』

「大事な話?」

切ろうとした手を止め、再び電話を耳に当てる。束さんにしてみれば何時も話してる内容も大事な話なんだろうが、基本的に俺は薄情者とかそんな感じでは無いので聞く…がその前に――

「ちょっと着替え中なんで服着ていいっすか?」

『何っ!それは一大事!!さあ、モニターに変えて束さんにその肉体美を見せるんだ!!はあはあ…』

ダメだこの人!はやくなんとかしないと!!

「はいはい、今変えます…」

と思いつつもモニターに変えてしまう俺だ。しかし体を見せる気は毛頭なく、モニターに携帯をつなぎ、変えた瞬間に脱いだ上着を被せる。

『ああ!!しゅうくんの意地悪!!束さん泣いちゃうよ!!』

「それはスミマセン。しかし鼻息荒くしていやらしい目線は浴びたくないので…で要件なんですか?」

実際には自分の傷跡をあまり他人に見せたくないだけだった。特に《あの事》を知ってる束ねさんには。

俺は素早く私服に着替え、モニターの上着をハンガーにかけながら問いかける。

俺の私服はジーパンに白いフード付きパーカーと質素なものだ。

『ふっふっふ。今各国がISの第三世代を制作してるのは知ってるよね?』

「ええ、有名な話ですよね。確か《イメージ・インターフェイスを用いた兵器の搭載を主眼においたIS》とか?でもまだ実験機の域を出ないって。オマケに燃費が悪いって……まあ従来のIS搭載の動力源じゃあ大容量バッテリーとかでも搭載しないと実験機の段階を出ないだろうな…各国の研究機関や開発者をバカにする訳じゃないですけど、俺はそれを帳消しにする方法を知ってます」

『えー!うそっ!しゅうくん、しゅうくん!!今すぐその方法を束さんに教えるのだ!!』

しまったぁ……つい口が。仕方ない強制的に話をずらすしか無い。

「そっちの要件が先のはずです」

焦りながらも悟られないように静かな声でしっかりと言う。

同士に俺はデスクの横においておいた自分用のPCの電源を入れて、起動させながら言った。

束さんとの会話は大体データ交換が交わってくるので先に起動しておく。たとえ交換がなくてもそっち系の話が多いからやっぱり起動させておく。

『うー、じゃあ束さんの要件言ったらその方法おしえてくれる?』

「要件の内容によります」

言う気は毛頭ないがな。しかもこれがもし《新型ISの開発協力》なんて言われたら絶対に利用されるからな…

『しゅうくんは相変わらずガードが硬いなあ…まあそこが好きなんだけど。で要件っていうのは、ズバリ!!《第四世代ISの技術協力》なのだ!!どう、驚いた!?驚いたでしょ!?』

「いや、全然」

予想はしてたし。

『しゅうくん、さすがの束さんでも即答でその返事は凹んじゃうよ。束さん泣きそう』

だって、まあ殆ど当たってたもんな。しかも《第三世代》じゃなくて《第四世代》とは……

「まあまあ束さん、動力源の方法は教えませんけど、技術協力は全面的に協力しますよ。さてと、まずはどういうコンセプトを主眼において開発するかを教えて――「おにいちゃ~ん!ご飯出来たよ~!」ちょっとスミマセン。ああ!今行く!」

どうも夕飯が出来たらしく、俺は春華の呼びかけに返事をした。

『むふふ~、今の声ははるちゃんだね。』

束さんにも聞こえたらしく、モニターの向こうからそう聞こえてくる。

「ええ、すみません、夕飯の後でもいいですか?」

『えっへん!束さんはそこまで心は狭くないよ!気兼ねなくいってくるがいいさ!』

「すみません。じゃあその間に第四世代のデータとか細々したの俺の方に送ってください。夕飯終わったら折り返し電話しますんで」

『了解だよ!じゃあ細かい話は夕飯の後だね!待ってるよ、しゅうくん!』

束さんはそう言うと電話を切り、モニターも通信が切れて、黒い画面になった。俺はそれを確認すると、部屋を出て、階段を降りていった。

 

俺が階段を降りて食卓に向かうと、春華は椅子に座って足をブラブラさせながら待っていた。身長が低いからこそ出来る行為で、かなり可愛いとは思うのだが……中学生にもなってその行為はどうだろうか?服装はピンクのニットセーターに白のミニスカ、ピンクと白の縞々のニーソックス。服装とその他諸々の総合的な可愛さ度は……まあ90%ぐらいかな?十人中八人は「付き合ってください!」とか言うに違いない……やらんがな!!

「お兄ちゃん、早く食べよ?」

おっと、そうだった!

「そうだな、食べようか」

「「いただきます」」

俺達二人はそう言って箸をつけた。

今日のメニューは豚の生姜焼きに和風サラダに奈良漬け、豆腐とワカメの味噌汁という有触れたものだが、問題は量だった。俺は至って普通なのだが、春華の量が明らかに俺の十倍はあるのだ。まあ何も今に始まったわけじゃない、前世でもそうだったし。しかしあの小さい体のどこに吸収され、どこで消費するのだろうか……謎である。

「…ところで春華、お前高校何処に行くか決まったか?」

「うん、決まったよ!」

ご飯をすごい勢いで食べていた春華は凄い笑顔で答える。そしてその間もご飯の茶碗に二杯目もよそっている。ご飯の高さは一メートル近くある。何合ぐらいの米を炊いたんだろうか……

「そ、そうか。で、その学校って?」

「《IS学園》!」

俺は危うく箸を落としそうになった。俺の聞き間違いでなければ《IS学園》と聞こえたのだが……いやいや、聞き間違えだ。俺と同じ《藍越学園》に決まっている、似てるから聞き間違えたんだろう。

「……《藍越学園》だよな?」

「違うよ。《IS学園》だよ。そういえば《IS》と《藍越》ってにてるね~!!」

笑う春華とは対照的に俺の気分は沈んでいく。

《IS学園》とは字のごとく、IS操縦者、またはそれに準ずる人材を育成する学校である。しかしそれは将来ISに関わりを持つということなのだ。ISは人間なんて簡単に殺してしまえるほどの攻撃力に、従来の兵器を凌駕する機動力に防御力を備えた《兵器》だ。実際に開発に携わり、何度もシュミレートを実行し、そのデータを見てきた俺にはわかる。いつか《ISを使った戦争が起きる》と。それもそう遠くない未来……もしその時が春華が《IS学園》に入学して卒業する少し前に起こればどうなるか……考えただけでも俺は恐怖だ。

しかし俺はそんな想像を振りきりため、頭を振った。そうだ、そんなことあるはずがない!と。ISの絶対数が467機なのだ。しかもその絶対数を敗れるのはISを開発した束さんか俺しかいないのだ。コアを作れるのはこの世に二人だけ、その内の一人の束さんはもう作る気はないらしいし、俺は作り方は知っているがやはり作る気は起きなかった。

「…お兄ちゃん、大丈夫?」

春華の声に、俺は現実に戻ってきた。

いつの間にか怖い顔で冷や汗をかいたらしい。

「ああ、大丈夫。なんでもないよ。しかし《IS学園》か…将来ISに乗って何かしたいのか?」

「うん!千冬お姉ちゃんみたいにモンド・グロッソで優勝して恩返ししたいし、ISで困ってる人たちを助けたいの!」

春華は笑いながら言う。

「そうか…でも勉強とか適性検査は大丈夫なのか?」

「うん。模擬試験の結果はAだったし、IS適性もA判定。頑張れば受かるよ!」

「そうか。じゃあ安心だな。さてと、ごちそうさま。俺この後束さんとISのこと話すんだけど春華も洗い物終わったら来るか?」

《IS学園》に入学するのだ、聞いといて損はないだろう。それに何れ関わるんだったら早いうちから知っておいた方がいい。ISがどういう物で、どう扱わなければいけないのか。

「うん!いくいく!束お姉ちゃんと話すの久しぶりだな~!」

俺は自分の食器を流しに移すと、戸棚を開けてカロリーメイトとポカリスエットを箱ごと、それにコップを二つ持って自室に向かう。

自室に入るとデータの転送は終わっていたようで、フォルダの中に新しいデータが入っていた。

「これは…さすが束さん。もう基本設定が出来てやがる」

フォルダの中にはISの設計図が入っており、データを見ると確実に第三世代を凌駕するISだった。

「しかしいきなり作るとしてもやっぱり性能がちょっと見たいな…試験機みたいなのを見てみたいものだ。この《展開装甲》ってやつ、武器の素材とかに出来ねえのかな?聞いてみるか」

そう結論づけて、束さんとの電話をつなぐ。

 


 
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