白昼のキャピタル・ハイウェイで激しいカーチェイスを繰り広げたローゼン海賊団とK-9隊。
逃走するトラックは、ハイウェイの出口から一般道へ降り、廃宇宙港へと向かっていた。
K-9隊はひたすらトラックを追い続ける…。
「このまま宇宙港に入られるわけにはいかん…悪いが、足止めさせてもらう!」
エルザが操縦するナインチョッパーが、ビームバルカンを放つ。
各トラックの駆動輪はタイヤが割れ、さらにその前方にあった宇宙港に通じるゲートも崩され、
壁と車両に挟まれてトラックは動きを封じられる格好となった。
エルザはそれを見届けると、ナインキャリアーの上面にナインチョッパーをランディングさせた。
「よし、犯人の確保に入るぞ。イシス、フィーア、ウー、クオンは私に続け!」
「「「「了解!!」」」」
5人はゆっくりとトラックの近くに近づいていく。
「いいか、相手が攻撃してくるまでは手を出すな。あくまでも目的は犯人の確保と金塊の奪還だ」
「でも隊長、ボクなんかイヤな予感がするんだけど…」
クオンの予感は的中する。突然一台のトラックから閃光が走ったかと思うと、
まるで蟹のハサミのような腕が飛び出してきたではないか。
「あー、もう少しだったのに…警察の犬チクショウどもがァ!!」
中から出てきたのは、そのハサミの持ち主…右腕にそれを持つテラナーの女性サイボーグだった。
「隊長、アイツは…!」
「ああ、ローゼン海賊団の女海賊シザーハンドだな…」
「へぇ、俺様の名前を知ってるとはたいしたもんじゃねえか、え?」
シザーハンドは挑発的な笑みを浮かべながらK-9隊を見つめている。
「海賊シザーハンド!強盗殺人、高速道路での危険運転、重火器等取締法違反の疑いでお前を逮捕する。おとなしく此方へ来て貰おう!」
と、啖呵を切るエルザ。しかしとうのシザーハンドは薄ら笑いを浮かべていた。
「ククク…ヒャハハハハハ…!」
「!?、何がおかしい!!」
「バカが!そう簡単に捕まってたまるかよ!!」
シザーハンドの右腕が開き、内部からレーザーキャノンがせり出した!
「っ!?」
「きゃぁ!?」
レーザー攻撃の標的になりかけたエルザとイシスだったが、咄嗟に飛び出したフィーアに抱きかかえられ何とか避けることが出来た。
「大丈夫ですか?隊長、イシスさん」
「ああ、何とかな…」
「あのレーザー砲が厄介ですね…」
三人が悩んでいたその時だった。
「隊長!オレに名案があるぜ!」
「名案だと?」
勢いよく叫んだのはウーだった。驚きを隠せなかったエルザだったが、今は信じてみるほかなさそうである。
「…わかった、話を聞こう」
そして5人は犯人に聞こえないよう、発声装置の音量を下げ、作戦の打ち合わせを始めた。
「まずオトリ役がそいつのビームを引きつける。しかしヤツの腕は一本だけだ。これがどういうことかはアホでもわかる」
「ああ、攻撃に使える腕は一本だけだからな」
「つまり後ろはがら空きに…?」
「そうだ、そこをぶん殴ればいいってワケだ」
「…よしわかった。ウー、イシス、フィーアはオトリとしてやつの攻撃を引きつけるんだ。油断しているところを私とクオンで叩く。いいな」
それを傍から見ていたシザーハンドは相変わらず挑発を続ける。
「どうしたー?何の話してんだ?入るお墓のご相談ですかァ?」
するとウーがシザーハンドのほうを向き、大声で叫んだ!
「へっ、バーカ!テメーみてーなセコイ女をブン殴ろうって話をしてたんだよ!!」
「…上等だコラァ!てめえら全員鉄くずにしてやらぁ!!」
ウーの言葉を真に受け、シザーハンドは逆上する。
だがそれすらも、作戦のうちだった。右腕のアームを使いウーたちを攻撃するシザーハンド。
だが、ウーの読み通りその背後はガラ空きだった。
「今だッ!クオン!!」
「まかせて!どりゃあぁぁぁっ!!」
エルザのトンファーがシザーハンドの右腕に、続いてクオンの電磁警棒が背中に命中する!!
「ぐあぁっ!?」
強烈な電撃と打撃を受け、吹き飛ばされるシザーハンド。
すぐさま、他のトラックからシャークロイドが降りてきて駆け寄る。
「シザーハンドのアネキ!」
「大丈夫ッスか!?」
「ぐぅ…!」
「さあ、観念するんだな」
すぐさまエルザは手錠を取り出し、シザーハンドを逮捕すべく近づいた。
シザーハンドの右腕は先ほどのダメージで、すぐに攻撃が出来る状態ではなかった。
しかし彼女は再び狂ったような笑みを浮かべ、
「ククク…観念?誰が?」
と、よろめきながら立ち上がると、シャークロイドに指示を出した。
「野郎ども!こうなったら数で勝負だ!」
「「「「おーっ!!」」」」
だが、シャークロイドの性能では特別な訓練を受けてきたK-9隊に敵うはずがない。
しかも、K-9隊はここにいる5人だけではないということをシザーハンドはすっかり忘れていた。
シャークロイドが飛び掛ろうとしたそのときである。
「ぎゃっ!?」
「ぐえっ!?」
アレクセイの精密射撃の腕がここでも披露された。
的確にシャークロイドの脚を撃ち抜いたのだ。
「隊長、これでヤツらは動けない。あのシザーハンドとかいうのも武器は使えない。逮捕するなら今のうちです」
「ありがとうアレク。さあ、来て貰うぞシザーハンド!」
しかし、シザーハンドは左ポケットからリモコンを取り出しスイッチを押した。
するとどうだろう、動けなくなっていたシャークロイドが自爆したではないか!!
「うっ…!?」
「バカな、こいつ自分の仲間を!!」
煙が晴れた頃には、シザーハンドの姿は跡形もなく消えていた。
あとには、金塊を積んだトラックが残されていただけだった。
「そんな、自分の仲間をいとも簡単に…」
爆破されたシャークロイドの破片を手に取り、涙ぐむフィーアに、ウーはそっと話しかけた。
「それがあいつらの恐ろしいところだ。邪魔な奴らはサッサと片付ける。例えそれが味方だったとしてもな」
「でも、いくらなんでも可哀想です!」
「そうだな…だが悲しいことにこいつらは、海賊団にとっちゃ『捨て駒』でしかねえのさ…。ロボット人権団体が黙っちゃいないぜ」
そう言いつつ、ウーは泣き崩れるフィーアをなだめていた。
「…隊長、金塊は無事か」
「ああ、確認してみたが数が減っているような痕跡はない。犯人に逃げられたのは惜しかったが、金塊は守り抜くことが出来たんだ…今はそれでよしとしよう。リク、輸送隊に連絡を」
「了解!」
…その後、連絡を受けたプラネットポリスの輸送隊により、強奪された金塊は無事セントラルバンクへと届けられた。
ともあれ今回もK-9隊の活躍によって、ファンガルド星の平和は守られたのである。
だが、何時どんな事件が起きるかは誰にもわからない。
そしてそうある限りK-9隊の戦いに終わりはない。彼らは今日も、そして明日もファンガルド星の平和のため戦い続けるのであろう。
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前回:http://www.tinami.com/view/401059
いよいよシザーハンド接触編も大詰め。
今回は機動力に長けるメンバーをメインに展開していきます。
女同士の修羅場が見れる…か!?(違)
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