No.399571

BORDER BREAK ~The sky is the limit~ 第十九話

SHUさん

愛機

2012-03-29 07:31:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:841   閲覧ユーザー数:841

 

試験から開けて一日、昨日は疲れて食堂で食事を取った後、当て割られた自室のベットに倒れ込む様にして眠り。チェスカに起こされた時は、既に昼前だった。

新しく貰った服に着替え、チェスカに連れられて今は、ブラストの格納庫を目指していた。

 

「しかしレオ君、疲れているとはいえよく寝るね、きっと大きくなるよ」

 

「これ以上大きくなったら、身体に合うベットも、コックピットも無くなるよ」

 

それもそうだねと、チェスカが笑った。

そうこうしているうちに、格納庫に着いた。格納庫の中は昨日とは打って変わり、作業員の数も少なく、皆静かに作業に当たっていた。

格納庫の一画にゴードンさんと、もう一人誰かが立って話していた。

 

「遅いぞレオ、何時まで寝てるんだ‼」

 

「すいません」

 

寝起き早々、ゴードンさんの怒声が頭に響く。

 

「まぁゴードン、昨日の今日だ少しぐらい大目に見てやれ」

 

ゴードンさんより体格の良い、筋肉隆々の作業着姿の男が前に出る。

 

「俺はロイ・グラント、この格納庫の整備主任をやってる。よろしくな、エースパイロット」

 

エースパイロットと呼ばれるのはどこかこそばゆく、恥ずかしかった。差し出された手はゴードンさんに劣らず、硬い皮膚に覆われた大きな手だった。

 

「津守レオです、よろしくお願いします」

 

力強い握手を交わし手を離す、指の一本、一本が鈍く痛んだ。

 

「しかし始めてブラストに乗って、Bクラスのボーダーを片付けるとは対したものだな、ただでさえ同クラスの人間二人でも難しいのに、格上三人を同時に相手とは、正直そんな奴がいるなんて、思ってもみなかったぞ。社内じゃ、期待の新人が来たって話で持ち切りだ。」

 

そんな話になっているなど、露も知らなかった。昨日の食堂や、ここに来るまでの廊下でやたら視線を感じた理由がやっとわかった。

 

「いや僕が倒したのは一機だけで、後一機は放置してましたし、後一機はゴードンさんが倒したんです」

 

事情を説明していただけなのにグラントさんは豪快に笑いだして、言った。

 

「謙遜するな、実質立ち回ったのはお前だ、ゴードンは最後の美味しい所を持って行っただけだろ、自信を持って良いと思うぞ」

 

そう言うと、グラントさんは俺の頭を強く撫でた。初対面だったが、何故かこの人とは仲良くなれそうな気がした。

 

「おいグラント、調子に乗るからあんまりおだてるな。訓練に励まなくなったらどうする」

 

語尾を強めたゴードンさんが詰め寄る。

 

「良いじゃ無いか、本当の事なんだからな。俺は褒めて伸ばすタイプなんだよ」

 

二人のやり取りを見ていると、なんだか腐れ縁の様だった。

 

「さて話は此れぐらいにして、レオ着いてこい。お前の機体を紹介してやる」

 

グラントさんの後ろに着いて行き、シートが被さった機体の前に立つ。

 

「まぁ新人に支給されるのは、クーガーI型しか無いんだがな」

 

そう言ってグラントさんが、シートを剥ぎ取ると、そこにはグレーのロールアウトカラーが施された、クーガーI型が立っていた。

 

「普通は新人には中古のクーガーI型を支給するんだが、フィオナさんの手配でお前には新品のクーガーI型が支給される事になった。この御時世に新品のクーガーI型なんて、中々手に入る物じゃ無いぞ、大事に扱えよ。」

 

傷一つ無いクーガーI型を見上げ、心の中で、フィオナさんにお礼を言った。

 

「カスタムやらチューニングに関しては、チェスカが担当したから本人から、詳しく聞いてくれ」

 

「はいは~い、じゃあレオ君こっちに来てね~」

 

二人に一旦別れを告げ、チェスカに案内され格納庫の事務室に向った。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人を見送ったグラントが、ゴードンに話しかけた。

 

「素直そうな、いい奴じゃないか。お前が鍛えてやれば、良いボーダーになる」

 

ゴードンは気まずそうに視線を逸らして言った。

 

「いや·····俺はもうブラストには乗ら無いと決めたんだ。それにお前も俺も、過去の遺物だ、そんな奴が教えれる事なんて、あるわけ無いだろ」

 

それだけ言うと、ゴードンはグラントの返答を聞かずにに背を向け、歩き出した。

立ち去るゴードンの背中を見つめ、グラントが呟いた。

 

「過去の遺物か·····俺はそうかも知れんが、お前は違うだろ、ゴードン」

 

グラントが事務所で説明を受けているレオに、視線を向ける。あどけさが残るその横顔は、戦士になるにはまだ幼過ぎた。

 

「そうか・・・似てるんだな、あいつに」

 

誰に言うわけでも無く呟いた言葉に苦笑いを浮かべると、グラントもその場から立ち去り作業へ戻った。

 

 

 
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