場所はプラネテューヌの巨大噴水広場。
綺麗な噴水を見ることができるこの広場はプラネテューヌでは絶好のデートスポットとも言われている。
それとは別に、この巨大な噴水の周りをジョギングするという人も少なくはなかった。
「はいは―い、『マジェコン』いかがっすか~~!?」
そんな広場にハスキーな少女の声が響きわたる。
「何でもコピーし放題、所持金増やし放題!万能ツール『マジェコン』は
いかがっすか~!?」
トレードマークの灰色のネズミの顔のアップリケの入ったパーカーを羽織り、同じく
灰色のズボン。黒い革手袋とブーツを履いた緑髪の少女―――『リンダ』は鞄一杯に
詰め込んだマジェコンを一つ取り出し行き交う人の波に呼び込みをかけていた。
しかしその言葉に足を止める人は皆無であった。
―――チッ、今日も成果無しか……
リンダはひそかに舌打ちした。
その時だった――
「――――……ぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」
「あん?」
上空から声が聞こえリンダは顔を上げた。
ドスンッ!
「ぎゃあああああああああ!!!!?」
リンダは突如振ってきた謎の物体に潰された。
「ふう~!どうだ、なかなかの絶景だっただろ?」
笑顔で言ったソニックに対し、生気を失い蒼白な面持ちのアイエフはソニックの耳元で
か細く息をついていた。
「アンタ!私を殺す気!?」
そういいながらも相当怖かったのか涙目でソニックから手を離そうとしないアイエフに
ソニックは再び笑顔で返す。
「いーじゃん無事なんだからさ~。」
「そういう問題じゃ―――って、ここ巨大噴水広場じゃない!?」
アイエフは周りを見回す。
―――噴水がある。間違い無い!
「ヒュ~♪bingo!」
「お……てめぇ………ら……」
「え?」
どこからか聞こえる音にアイエフは再び周りを見回す。
「ソニック今何か言った?」
「Hun?」
「……ぃ……早………どけ……」
「何だこの声?」
ソニックも周りを見回す。
「……重てぇ!!!」
バッ!
「おわッ!?」
トッ――
地面から突き上げられたソニックは少し離れた所に着地する。
「ぜぇ――、ぜぇ―――……あ―、死ぬかと思った……」
やっとソニックの背から離れたアイエフはリンダに歩み寄った。
「悪かったわね。大丈夫?」
「……なんで空から降ってきたんだてめえ等……」
「ちょっと色々あってね……」
地に手をつき荒呼吸するリンダにアイエフは膝をつき話しかける。
「……まぁいいや。てめえ等もこれが目当てで来たんだろ?」
「え?」
リンダはネズミの顔のアップリケが入った鞄の中をゴソゴソと漁った。
遅れて歩み寄ってきたソニックも鞄の中を覗いた。
そこにあったのは―――
「「!!!」」
「お?どうしたんだてめえ等?『マジェコン』が欲しいんだろ?」
ババッ!
アイエフとソニックは大きくバックステップしリンダと距離を取る。
シャキンッ!
アイエフはぶかぶかのコートの裾からカタールを構える。
「お?」
リンダも何だか腑に落ちない様子だったが戦闘体勢に入る。
「……アンタだったのね、マジェコン配ってるって馬鹿は……」
「あん?んだとコラ?」
「大人しくマジェコンを置いていくなら許してやってもいいぜ?」
一方で余裕たっぷりに口笛を吹くソニックも挑発するように言った。
「……そうかてめえ等か。ギョウカイ墓場で女神を助け出そうとして失敗した
奴等ってのは……」
アイエフの眉が少しだけ動く。
「……なんですって?」
「………?」
―――そういえば俺もあの後アイエフとコンパがどうなったのかを知らない。
ソニックは視線をアイエフに向けた。
「……もういいわ。さっさとアンタを倒してマジェコンを破壊する。かかって来なさい!」
「チィ、ここでやりあったら分が悪い!あばよてめえ等!」
ダッ―――!!
リンダは猛スピードで逃げ去った。
「あッ!逃げた!待ちなさい!」
「アイエフ、追うぞ!へヘッ、俺から逃げられると思うなよ!」
アイエフは再びソニックに掴まった。
「Ready………」
ソニックは短距離走の選手のように構える。
「Go!!」
ギュンッ!!
ソニックが叫んだ時には既に巨大噴水広場に二人の影も形も無かった。
――――もうどれ程走ったか
大きな草原にたどり着くとリンダはドッと草むらに倒れ込む。
「ハァ――ハァ――」
青く澄んだ空の下でリンダは荒呼吸をする。
「……あ―――!つっかれた―――!!ここまで来りゃあもう大丈夫だろ。」
そして大きく伸びをする。
だが―――
「寝るのはまだ早いぜ?」
「!?」
突如聞こえた声に驚きリンダは飛び起き周りを見回す。
「……ッな!てめえ等……!!」
目の前に立っていたのは先程のハリネズミとぶかぶかのコートに身を包み
両手にカタールを構える少女。
「ば、馬鹿な!?この俺を上回るスピードで!?」
「あいにく、俺はちょっと凄いハリネズミなんでね!」
「さあ、観念しなさい!」
少女が言い放つとリンダも背中に装着していた鉄パイプ――何かを殴った様な跡がある
少し凹んだそれを取り出す。
「……っへ!しゃーねー、こうなりゃやってやるぜ!」
「私はアイエフ!プラネテューヌの諜報部員よ!」
「俺はソニック!ソニック・ザ・ヘッジホッグだ!」
「俺はリンダ!犯罪組織の構成員だ!」
シーン……
しかしリンダが名乗ると束の間静かな空気が流れた。
「……な、何だよ……?」
眉間に皺を寄せたままのアイエフが口を開く。
「……構成員ってことは……下っ端?」
「下っ端だな。」
二人は真剣な表情だが声がちょっと笑っていた。
「んな……!!」
ブチッ!――
リンダの額に複数の血管が浮かび上がる。
「誰が下っ端だゴルァ!?」
「だって構成員て……」
「う、うるせぇうるせぇ!!俺にはちゃんとリンダって名前があるんだ―――!!」
バッ!
「!」
リンダが跳躍しアイエフに肉薄する。
ガッ!
そして鉄パイプを振り下ろしたが間一髪でアイエフがカタールを十字に構え防ぐ。
「く……ッ!」
―――重い!?
そう、リンダの攻撃はとてつもなく重かった。その重さにアイエフは一瞬怯む。
バッ!
しかし何とか我に返りリンダを弾き飛ばす。
ズザザザァッ!
少し離れた場所でリンダは着地した。
「今度は私の番よ!」
バッ!
アイエフは跳躍し一気にリンダに迫る。
「ヤァッ!」
ガキンッ!
振り下ろしたカタールをリンダが軽々しく受け止めた。
「まだまだ!」
アイエフが更にもう片方のカタールをリンダに振り下ろす。
スッ―――
「!!?」
アイエフは一瞬目を疑った。
振り下ろしたカタールをリンダがまるで蛇の様にしなやかな身のこなしで避けたのだ。
「スキあり!」
ガッ!
「きゃッ!?」
そのすきにリンダはアイエフの腹を蹴り弾き飛ばす。
ズザザザザザザァッ!
「……っく!」
空中で何とか体勢を整え着地し立ち上がるも今の一撃のダメージが大きく
アイエフは腹を押さえる。
(強い!?)
「どうした?下っ端ってバカにした割には大したこと無いな!」
「!」
アイエフが顔を上げるとそこには再び鉄パイプを振り上げているリンダがいた。
「……ッく!」
(防御は間に合わない!)
アイエフは思わず目を閉じる。
ガッ!
「……?」
鈍い音だけが聞こえるもののアイエフは痛みを感じなかった。
アイエフは恐る恐る目を開ける。
「なッ……!?」
「へヘッ!」
ソニックがリンダの鉄パイプを片腕で受け止めていたのだ。
「アンタ……!」
「大丈夫かアイエフ?」
「……ええ!」
「ハァッ!」
バキッ!
ソニックは腕を無造作に振りリンダを弾き飛ばす。
「チッ!」
バッ!
リンダは少し離れた場所に着地する。
「てめえ……!」
「さーて、今度は俺の番だ。」
ドンッ!
「ナメてんじゃねーぞッ!!」
ブンッ!
ガッ!
リンダが再びソニックに肉薄し鉄パイプを振り下ろすがソニックは再び片腕で受け止める。
「オラッ!」
そしてリンダは先程アイエフにもやったようにソニックの腹へ蹴りを入れる。
シュンッ!
しかしソニックの姿が消える。
「なッ!?」
「Hey!俺はこっちだぜ?」
バッ!
声のした方を振り返るとそこには余裕の笑みを浮かべるソニックが居た。
「てめえ……いつの間に!?」
「今度はこっちから行くぜ!」
ギュンッ!
「!!」
リンダが瞬きする間にソニックが目前に来ていた。
ガッ!
「なッ!?」
そして足払いをした。
リンダの体勢が崩れる。
バッ!
ソニックはリンダの足を掴み上空へと投げ飛ばした。
「チッ!」
リンダは体勢を整え地上に居るはずのソニックの姿を睨む。
「!!?」
しかしそこにソニックの姿はない。
シュンッ!
後ろに感じる気配――それが誰かは一発で分かった。
「……てめぇ……!」
「へヘッ!」
ギュイイィィィィィィィィン!!!
その正体―――ソニックは勢いよく回転しだす。
バキィッ!!
「ぐぁッ!!」
そして回転の力を利用した鋭い蹴りを放った。
ヒュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――……
ドガ――――ン!!!!!
リンダは勢いよく地面に墜落する。
トッ!
少し遅れてソニックもアイエフの傍に着地する。
「チッ……やってくれるじゃねえか!」
しかしすぐさまリンダが立ち上がり構える。
「アンタもなかなかやるじゃない。」
アイエフも構える。
「まだまだこれからってことだな!」
そしてソニックも。
パキッ―――
沈黙が奔った……途端に何かが割れるような嫌な音が響いた。
「……パキッ?」
リンダはその音の発信地――足元を見下ろす。
「!!」
そして顔色が一気に真っ青になった。
「「?」」
何が起こったのかが分からずソニックとアイエフは顔を見合わせた。
「……マ……マジェコン……が……」
リンダの足元には先程墜落した衝撃で潰れて使い物にならなくなったマジェコンが
散乱していた。
それを目にしたリンダがわなわなと震え出す。
「……あ、マジェコンが壊れたのね?」
キッ!
やっと状況を把握したアイエフが訊くとリンダがアイエフを睨む。
「うるせぇ!てめぇら、今回は見逃してやる!今度会った時がてめぇらの最期だ!」
ダッ!
そう言い残すとリンダはどこかへ走り去っていった。
「……いいのか?追わなくて。」
ソニックがそんなリンダを見送りながらアイエフに尋ねる。
「もしまた来たら倒せばいいわ。」
二人はリンダが持っていた壊れたマジェコンの元へ歩み寄った。
そしてソニックがその一つを拾い上げた。
「……これがマジェコンか。何とも不気味な形だねぇ。」
マジェコンに埋め込まれた髑髏がパッキリと二つに割れていた。
「今やゲイムギョウ界でこれを知らない人は居ないわ。けど、プラネテューヌは
そんなに被害は大きくないようね。」
さぁーて、とソニックが大きく伸びをする。
「……で、お前はこの後どうするんだ?」
「私は一度コンパ達の所へ戻るわ。ネプギアの様子も気になるし。」
ソニックはスタスタとプラネタワーの反対方向へ歩き出す。
「アンタはどこ行くの?」
アイエフが尋ねるとソニックは顔を少しだけこちらに向け親指を立てる。
「ちょっとこの世界を散歩してくるぜ!夜には戻るさ!」
「……ハァ?」
ギュンッ!
聞き返す間もなくソニックは何処かへ走り去った。
「わッ!?」
その突風で砂が飛びアイエフは腕で顔を覆う。
風が止みアイエフは周りを見回すが、見えるのは見渡す限りの広い草原。
「……ったく、あいつは……」
アイエフは一つ溜息をつくとプラネタワーへと歩きだした。
―――その日、ゲイムギョウ界で『青い風』が吹いたことが人々を騒がせた。
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ソニックはいつものようにエッグマンの計画を阻止しようとしていた。だがそれはエッグマンの罠だったのだ。カオスエメラルドの力で別世界へと飛ばされてしまったソニック。そこはゲイムギョウ界と呼ばれた異世界だった。そしてその世界でネプギアと言う名の少女に出会い―――……ネプギアは姉を助け出すことは出来るのか?ソニックは元の世界へ帰れるのか?これは、ネプテューヌmk2にソニックが居たら――のもしもの物語である。――――