さて、クオンは突然の出動要請で現場に向かったわけだが・・・
実はその姿を通学路の陰からそっと見ていたものが居た。
「トリッカーズが出たですって・・・?」
周りに聞こえないくらいの呟くような声でそう言ったのは
白い鹿形ファンガー、カナコ・ホワイトフォーンだった。
彼女はすぐさま周囲を見渡して誰にも見られていないことを確認すると、
路地裏にさっと身を潜めて、何やら耳を澄ませ始めた。
その耳に小さな通信機が当たっている。
そこから彼女にとって耳慣れた声が聞こえてくるのにそう時間はかからなかった。
“「ミクちゃん、聞こえている?」”
「バッチリだよ、カナコお姉ちゃん。それでどうかしたの?」
通信機の向こう側のカナコと同じように、
ミニウサギ型のファンガー、ミク・デハヴィランドは人目を避けて植木の陰に隠れていた。
ただしあくまで植木の陰なので、彼女の長い耳が隠れきれていないのは、なんというかご愛嬌。
“「ミクちゃんは今学校に居るのよね?」”
「そうだよ?ミクは今から皆と帰ろうと思ってたんだけど・・・」
“「さっきK-9隊のクオンさんがね、トリッカーズが出た!!って言って走っていっちゃったのよ・・・おかしいと思わない?ユキヨとタカトだってこっちに居るんだから」”
実はミクの方にもちょっとだけ思い当たる事があった。
それは同じクラスのモニカ・マルティーニが、今日は煌月陸斗と一緒に帰ろうとしていなかったことだ。
モニカの家である喫茶店「カフェ・ラ・ヴォルペ」に居候している上に、
恋人同士でもある(たぶん間違ってない)二人は大抵一緒に登下校してくるはずなのに。
K-9隊の陸斗がクオンと同じように出勤要請を受けて現場に向かったとすれば、それもつじつま合う。
「うん、こっちも陸斗くんが出動したみたいだし・・・それってミクたちが居ないのにトリッカーズが現われたって事だよね?」
“「ミクが一人で行ったっていうのも考えたけど・・・やっぱりトリッカーズの偽者が出てきたって事で間違いないみたいね、偽者なんて何が目的なのかしら?」”
通信機の向こうからカナコのため息が聞こえて来た、だがその物憂げな雰囲気も一瞬の事、すぐさま凛とした声がミクの耳に届く。
“「とにかく、トリッカーズも出動よ!!正真正銘の”本物“がね!!」”
カナコとの通信を終えて、手際よく通信機を仕舞いこんだミク。
一息ついて油断していた所に、彼女の白い耳をだれかが突っついた!!
「ミクちゃんこんな所でなにしてるの?」
「うわぁ!?モニカちゃん!?」
キツネ型のファンガー、モニカ・マルティーニがそこに居て
不思議そうに首をかしげていた。
驚いて飛び上がったミクは冷や汗タラタラ・・・意を決してこう言った。
「・・・なんでバレタの?」
「隠れてた事?ミクちゃんの耳が植木からはみ出してたからだよ」
「・・・今の話聞いてた・・・?」
「今来たところだから聞こえなかったけど、聞いちゃいけない話だったの?」
「・・・な、なら良いの!!ちょっとカナコお姉ちゃんとお話してただけだから・・・アハハハハ・・・じゃあね!!」
ミクは小形通信機をぶんぶん振り回しながらぎこちなく笑う。
絶対何かある、という態度で、逃げるようにいそいそとモニカの前から走り出していった。
・・・そして訳も分からないまま、あとに残されたモニカはポツリとこう呟いていた。
「ミクちゃん、前に機械ニガテだって言ってなかったっけ・・・?」
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トリッカーズの話、最近有名な彼らにこんな事件が・・・
【http://www.tinami.com/view/387022 】←こちらにて”書いても良いのよ”とあったので思い切って続き物を書かせて頂きました!!しかし話の展開自体はあんまり進んでいない気がするw
続きが出来ましたよ!!【http://www.tinami.com/view/416803 】
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