No.397733

『欢迎、瑚裏拉麺』 其之弐―参

ども、峠崎ジョージです。
投稿82作品目になりました。
今回の『瑚裏拉麺』はかなりネタに走ってみました。元ネタを知っている人はきっと俺と美味い酒が飲め……俺が飲めないので、きっと美味いメシが食えると思います。
各アバターはなるだけ御本人の要望を反映させてはいますが、基本的に俺の勝手は妄想の産物となります。

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2012-03-25 12:22:49 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5742   閲覧ユーザー数:5013

<SIDE『農業』グループ>

 

「……まぁ、事情は理解できたろ。納得はまだしかねるだろうけど」

 

滅茶苦茶な内容の便箋を読み終え唖然とするメンバー一同を見回し、苦笑と共にberufegoal(以下『beru』表記)はそう告げた。

 

「でもまぁ、言ってる事は理にかなってますね。過去の2回が特殊だったってだけですし。……でも、」

 

そう言って劉邦柾棟(以下『劉邦』表記)は辺りを見回して、

 

「どこで、何をすればいいんでしょう?『農業』って言うからには、僕等の担当って青果なんですよね?」

 

「というか、そもそも皆は何を頼もうとしたの?」

 

「ん? それもここに入ってるっぽいな。ん~と?」

 

大ちゃんに問われ改めて封筒の中を漁るberu。すると更に数枚の便箋が出てきて、

 

「まず一丸が、大根に牛蒡、レンコンって書いてあるな。煮物でも食べたかったのか?」

 

「そうですね。丈二さんに頼んだのも和食をメインに選びましたし」

 

「んで、大ちゃんが桃と夕張メロンか」

 

「うん。頼んだのは別の料理だけどね」

 

「で、劉邦が米と……お? メンマ? 俺と同じじゃん」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ。だとしたら、一度は竹林に行かなきゃならないな。で、龍々が……ありゃ? 麻婆豆腐?」

 

「ですね。多分、メインの豆腐の材料って事じゃないですか?」

 

「あ~、つまり大豆も採らなきゃならんと。……となると、余計に解らんのが、ここで何をすればいいのかだが」

 

 

 

―――――それは、俺から説明しよう。

 

 

 

『?』

 

突如、背後からの声に振り返る5人。いつの間にやらそこにいたのは、

 

「丈二さん」

 

「よぅ」

 

片手を挙げて答えるアロハにサングラスの男。言わずもがな宴の主催者たる峠崎丈二その人であり、

 

「皆、お早うなのにゃ」

 

「あれ、うたまるさん」

 

その丈二の頭上、ちょこんと座りこんだ大福のような、比喩でもなんでもなく文字通り丸いトラ猫。見た目は完全に『POYO』な彼女もまた管理者が一人。名前を『うたまる』と言う。

居心地良さ気に両手足を仕舞い込み完全に真ん丸の状態で、さながら『ぷよ○よ』のように乗っかっていた。

 

「俺は今回、どこかに付きっきりというのが出来ないからな、うたまるの能力を貸してもらっていると言う訳だ」

 

「あぁ、そう言えばうたまるさんの能力って瞬間移動でしたね」

 

「正確には能力の一つなのにゃ」

 

「……そういやそうでしたね」

 

思い出したくもない記憶が該当したのだろう、表情を曇らせる一同。何を隠そうこの猫、管理者達の間では有名な『腐』属性の持ち主であり、その趣味嗜好から微小とはいえ『界』を創り出す事すら出来る程、なのである。管理者メンバーの中には過去に一度、その『界』の中に一週間近く幽閉されていた者もおり、誰一人としてその際の事を語ろうとはしない。理由は、言うまでもないだろう。丈二や狼に至ってはその記憶の封鎖を施さなければ平静を保つ事すら出来なくなるまでに疲弊する程、である。

『これさえなければ本当にいい娘なんだけどなぁ』というのが、皆が抱く主な印象であった。

 

「それで、丈二さん。俺達はどうすればいいんですか?」

 

「あぁ、まずは移動する。俺に着いて来てくれ」

 

 

 

 

…………

 

 

 

……………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

「……あの~、丈二さん?」

 

「なんだ?」

 

「随分、藪が高くなってきてませんか?」

 

「そうだな」

 

「なんか、山も結構近くなってきてる気がするんですけど?」

 

「そうだな」

 

「この先に、何かあるんですか?」

 

「来れば解る」

 

『………………』

 

終始、この調子である。

雄大な自然の中、人の通った形跡があるだけのあぜ道をひたすらに歩く事、早十五分程。

 

「到着だ」

 

「お?」

 

ふと、見渡す限りの緑一色が一気に広がって、

 

「……丈二さん?」

 

「ん?」

 

「何ですか? このちょっとした農園は?」

 

四方1キロ程度か、荒れてこそいるものの畑のようだと判断できる空間が、四方1キロ程度に渡って切り拓かれていた。

 

「俺が以前、暇潰しに作ってな、色々植えては育てて食っていた。最近は暫く放置していたがな。近くの小川の畔に丸太小屋も建ててある。後で案内しよう。取り敢えず、今はこっちだ」

 

そう言うと丈二は更に農園の中央へと進んでいく。すると、

 

「……んを?」

 

「どうしました、beruさん?」

 

「あれ、何かの看板、だよな」

 

向かう先、一本の丸太に一枚の看板が紐で吊るされていて、

 

「―――ぶっ!! ちょ、マジかよ!?」

 

「っ!? ど、どうしたんですか?」

 

一足先に、その卓越した視力で看板の文字を確認したberuが思わず吹き出してしまう。そして、徐々に近づく度に他のメンバーも、

 

「え?」

 

「うわぁ……」

 

「ちょっ!?」

 

「げ」

 

各自、思い思いの苦渋に表情を歪める。やがて、その看板の隣にまで来ると、丈二はこちらを振り返って、こう言った。

 

「さて、お前達にはこれから新鮮で安全な作物を『植えて』貰う」

 

そして、

 

「が、見ての通り放置していたんでな、荒れに荒れまくってるわけだ。お前達には、この場所の片付けから始めてもらう事になる」

 

そう、看板にはこう書かれていたのである。

 

 

 

―――――ごりら農園『開墾』予定地

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

……………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

相当端折っての説明になるが、大まかな開墾の手順は以下の通りである。

 

1、開墾範囲の邪魔なもの(枯れ木や大きめの石など)を取り除く。

2、地中の木の根を引っこ抜く。

3、大きなザルのような農機具で土を濾す。

4、鍬などで混ぜっ返して耕す。

 

「と言う訳で、作業着に着替えてもらった所で、早速作業に移るぞ。準備はいいか?」

 

『……は~い』

 

渋々と返答する5人はそれぞれジャージやらツナギやら、所謂『汚れても構わない』服装に着替えていた。

 

「植える苗はこっちで用意してある。よっと」

 

地面に降ろした途端、ズシンと地響きがする程の重量の農業用の籠の中、沢山の鉢を取り出しながらの説明によれば、今回植える苗は以下の通りらしい。

 

・激辛唐辛子

・大根

・人参

・牛蒡

・白菜

・ピーマン

・ししとう

・トマト

・ブロッコリー

・西瓜

・茄子

・胡瓜

・南瓜

・男爵いも

・メークイン

・ソラマメ

・大豆

・桃

 

「……あれ、丈二くん? 夕張メロンは植えなくていいの?」

 

「あぁ。ここで夕張メロンは作れないからな」

 

「え? そうなの?」

 

「メロンが作れない訳じゃない。が、夕張メロンの味にはならん。作物の味を決めるのは環境だ。いくら夕張メロンの苗を使ったとしても、北海道の環境あってこそあの味になるんだ。ここで作ったとして、同じ味にはならん」

 

ちなみに、スーパーやホームセンターなんかで良く売られているポテトチップスなんかに『北海道産種イモ使用』なんて書かれている商品がありますが、ああいうのも同様です。その土地の名産たる所以は、その土地の環境が創り出すからこそ。我々人間が育つ環境で全く性格が違って来るのと同じ事です。

 

「そうなんだ……じゃあ、食べられないの?」

 

「いや、俺の知り合いの農家に売り物にできないB級品が余ってるって奴がいる。そいつからタダで貰えるから心配ない」

 

『夕張メロンがタダ!?』

 

「あぁ。形や模様が悪いだの、傷がついてるだの、そんな理由で売り物に出来ないってんでな、そういうのは取っておいても自分達で食うか処分するしかなくなるんだよ。そう言う所は物々交換で譲ってくれたりすんのさ。ま、身内の特権だな」

 

「はぁ……」

 

ちなみに中学時代の同級生にリアル農家の友人がおり、そいつはいつも夕張メロンを分けて貰っていたそうで『もう食べ飽きた』と言ってた事に若干鶏冠に来たのを今でもはっきりと覚えている。(作者の実体験)

 

「取り敢えず、まずは開墾せん事には苗も植えられんからな。頑張ってくれ」

 

「頑張ってくれ、って……丈二さんは手伝ってくれないんですか?」

 

「俺は他の連中にも説明したり監督したりせにゃならんからな。その為のうたまるだし。定期的に俺か華陽が様子を見に来る。お前達なら半日もあれば開墾は終わるだろう。そうすれば今日中に植える段階まではいけると思うぞ」

 

『は、半日……』

 

それも、今日植えたという事はだ。

 

「丈二さん」

 

「ん?」

 

「食べられるのって、いつになるんですか?」

 

少なくとも実がなるまでは最低1ヶ月は必要なはずだ。それも熟す必要のあるトマトなんかは更に倍の時間がかかるのは間違いない。が、

 

「その件なら問題ない。『外史』の特性を利用すれば、明日にでも食えるようになる。それに、今回はアイツもいるしな」

 

「……アイツ?」

 

どうやら、丈二には何やら考えがあるらしい。どういう事なのか、と首を傾げる皆を余所に、

 

「それじゃ、俺はそろそろ行くぞ。ほれ、起きろうたまる」

 

「んにゃ? 話は終わったのかにゃ?」

 

「あぁ。次は『漁業』連中の所へ飛んでくれ」

 

「了解にゃ」

 

「あ、ちょっ、丈二さん!?」

 

咄嗟に呼び止めるも虚しく、一瞬にしてかき消える巨体。残された5人は暫し無言のまま硬直し、

 

「……取りあえず、作業始めるか?」

 

「……ですね。いつまでも渋っていた所で、作業が終わるわけでもなくなるわけでもないですし」

 

「いっちょ、やりますか」

 

「そうだね。皆で頑張ろう」

 

「よ~し!!」

 

各自、思い思いに意気込んで作業に移ろうとした、その時だった」

 

「あ、あの~」

 

『?』

 

再び、背後からの声。しかし丈二のそれとは違う。

振り向いた先にいたのは、

 

「どうも」

 

「戦国じゃんか。どうしたんだ?」

 

「僕も、作業手伝う事になったので」

 

「そうなんだ。人出が多いに越した事はないからね。助かるよ」

 

「それじゃあ、戦国さんも農業グループって事ですか?」

 

「あ、いや、そうじゃないんです」

 

「……どういう事だい?」

 

「えっと、実は、ですね―――」

 

大ちゃんに問われ、戦国はゆっくりと事情を語り出し、

 

『―――うわぁ』

 

農業グループの5人は、彼に比べればまだ自分達の境遇がずっとマシだったという事を心底思い知るのであった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

……………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

それで、華陽さん。僕は何をすればいいんですか?

 

 

―――そうね、そろそろ説明しておこうかしら。戦国くん、君は今日からウチの従業員になるわけだけど。ウチで働くに当たって、アナタには何よりも知っておいて欲しい事があるのね?

 

 

……何ですか?

 

 

―――当たり前のことだけど、ウチは食べ物を扱うお店なの。色んな人がウチの味目当てで来てくれる。態々お金を払ってまで。

 

 

そう、ですね。

 

 

―――だからね、君には食べ物の有難味というものを、しっかりと理解しておいて欲しいの。

 

 

……それは解りますけど、それで僕は結局何をすればいいんですか?

 

 

―――……なんで、私がアナタを態々さっきのグループに入れなかったと思う?

 

 

はい?

 

 

―――ふふっ……アナタにはね。

 

 

 

 

 

 

 

一通り、全部の作業に参加してもらおうと思ってるのよ。

 

 

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

いやぁ、久々にネタ話書いてるけど、楽しいなぁオイ!! やりたい放題じゃべらんめぇww

定期的にやろうかな、こういうの。確かに大変なんだが、その分楽しいわww

 

 

で、

 

 

一応元ネタの話をさせていただきますと、北海道ローカルの『水曜どうでしょう』という深夜番組、その企画の一つ『大泉シェフ夏野菜スペシャル』です。

今や全国区の俳優、タレントとなりました『大泉洋』さんの名を全国に知らしめたのはこの番組であると言っても過言ではありません。

いつもぶっ飛んだ企画。それに愚痴を言いつつも従うタレント陣。そして全く隠れていない人非人ディレクター。これはもうローカル深夜番組の域を逸脱しています。

今現在、DVDが第17巻まで刊行されていますので、興味をもたれた人は是非にご購入を。どの巻からでも笑い転げられる事間違いなし。

 

さて、次は『漁業』メンバーの出番。

こちらはどのような仕打ちが待ち受けているのか、お楽しみに。

 

でわでわノシ

 

 

 

…………ニコニコ動画にも沢山落ちてるから、まずはそっちで視聴してみるといいよww


 
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