誰でも良いから教えてくれ、今日は俺にとって厄日なのか?
「なんだよ、アレは!?」
そう叫びつつ俺は全力ダッシュで人気の無い廊下を爆走している。
何でかって?
追われてるからに決まってんだろうが!!
「IS? いや、気配がやけに薄いからな……まさかロボットか?」
全力ダッシュする俺の後ろには―――――全身を灰色(グレー)で塗装された装甲に全身を包まれた全長2mで二足歩行する何か(以後、アンノウン)が迫っていた。
「受験日を狙ってやって来たのか?」
今日は俺、織斑一夏が志望校にしていた『藍越学園』の受験日で此処は受験会場なんだが…………会場広すぎて道に迷った挙げ句、アンノウンと鬼ごっこする羽目になっている。
「恨まれる覚えは……」
無いと言おうとして……ふと、今までを―――――正確に言えば中1になってから今まででやらかした色々を―――――振り返ってみる。
「……ジジイ程じゃないが無くもないな。俺の正体がバレたか?」
今まででやらかしたり巻き込まれたりで色々な国で相当暴れたからな……他にも2、3心当たりが……
「げっ、行き止まりかよ。」
そんな事を考えながら廊下を曲がると目の前に広がる光景は少し先の壁にドアがあるがその先は行き止まりとなっていた。
「引き返せないし……換気口も無いときたか。」
引き返したらアンノウンと鉢合わせ、換気口があれば映画のように中に入って移動できたんだけどな。
「仕方ない。」
近くのドアを開いて中に入りドアを閉め部屋の中を見渡す。
「追い詰められたか……」
入口は俺が入った一ヵ所だけ……中にはこの状況を打破出来るモノは何1つとして……いや1つだけあった。
「打鉄?……なんでこんなとこにあるんだ?」
そこにあったのはIS―――――正式名称『インフィニット・ストラトス』。と呼ばれるパワードスーツだ。元々は『宇宙開発』を目的として作られたが今では『現存する全ての兵器を上回る性能を持った抑止力』として世界中の国々に配備されている。
「――――まあ、『あの人』は兵器として作った訳じゃないんだけどな。」
そしてIS(インフィニット・ストラトス)には女性にしか反応せず男性には反応しないと言う特性―――――欠陥と言い換えても良いかもしれない―――――がある。だから男性である俺には使用できない代物なのだが……どのような存在にも例外が存在する。
「仕方ないか……」
俺は今後の事を少し考え憂鬱になりながらも……この場に鎮座する打鉄に触れた。
††††††††††††††††††††††††
「悪いな、デカブツ……」
―――――捕獲対象(ターゲット)捕捉。第2世代IS《打鉄》装着―――――。
「俺は死にたく無いからな、抗わせてもらうぞ!!」
―――――((異常事態|イレギュラー))発生―――――
―――――((異常事態|イレギュラー))対処の為、((搭載機能|ラウズプログラム))起動―――――
【MAGNET・ON】
―――――『((搭載機能|ラウズプログラム))』発動―――――
††††††††††††††††††††††††
【MAGNET】。そう聞こえた単語に聞き覚えがあった。
「マグネット……まさかな。」
思い浮かべた可能性をとっさに否定して打鉄の武装、近接ブレードを上段で構えアンノウンに振り落とす。
「届かない?」
アンノウンは回避行動をとることなく左手を近接ブレードに向けただけ……それだけの筈なのに幾ら両腕に力を入れても近接ブレードがアンノウンに届く事はなかった。驚きつつも咄嗟に距離をとり床を壊し出来た穴から地下へと移動する。
「地下駐車場か、近くの出口から……っ!?」
脱出する……そう言いかけた時にアンノウンは右手を此方に向けた。咄嗟に近接ブレードを向け……それがアンノウンに向かって飛んでいった。
「引き寄せられてる?」
慌てて飛んでいく近接ブレードの実体化を解除し手元に再び実体化させ構える。
「最初のは、まさか斥力か?次のは、引力だとして……それにあの電子音、嘘だろ?」
記憶に残っている風景が再び頭を過る。
「冗談じゃすまないな。」
もし俺の想像通りだとしたら確実に厄介な事になっている筈だからな。
「武装が1つじゃ足りないよな。」
斥力も引力も発動する時に左手、右手を別々に向けたからな、同時使用が可能なら最低3つは必要になる。
―――――幾つなら足りますか?―――――
唐突に聞こえた声に俺は応えた。
「そうだな、7つ……」
それだけあれば確実に仕留められる。
―――――なぜ抗うのですか?―――――
どうしてか?そんなの決まってる。
「死にたくないからだ。」
―――――何故です?貴方は自身の命など無価値と思っていたのではないのですか?―――――
「昔はそう思っていた時期もあったな。だけど今は違う!!」
少なくとも簡単に無くして良いなんて思う事はもう無い。
―――――ならば何故?―――――
そう俺に訪ねるその声に応えた。
「俺の命の使い方は、俺自身で決める!!俺はこんな所で死ぬなんてお断りだ!!だからお前の力を俺に貸せ、打鉄!!!」
―――――そうですか、ならば思い描きなさい……貴方が望む力と姿を。―――――
††††††††††††††††††††††††
それに気付いたのは偶然だったと言っても良い。
「あれ?」
「どうかしました?」
モニターの片隅に表示されている情報に困惑し、私の様子を不思議に思ったのか同僚の1人が尋ねた。
「これを見てください。」
「打鉄が1機、起動してますね。」
表示されている情報、それは実技試験用にIS学園から運搬された打鉄の1機が起動している事を示していた。
「場所は・・・・・地下駐車場?」
「なんでそんな場所に?」
疑問の声があがるなかで、モニターに新たな一文が表示された。
―――――『初期化(フォーマット)』・『最適化(フィッティング)』終了―――――
―――――『一次移行(ファースト・シフト)完了』―――――
――――『打鉄・七刀』起動――――
††††††††††††††††††††††††
―――――『((初期化|フォーマット))』・『((最適化|フィッティング))』終了―――――
―――――『一次移行(ファースト・シフト)完了』―――――
――――『打鉄・七刀』起動――――
目の前に現れたモニターにそう表示されたと同時に打鉄に変化が起きる。
両肩と両腕に装甲が追加され両肩の装甲の後部下に白い棒状の武装が2本、右腰にロングソード、左腰にショートソード、そして右腕に折り畳み式のブレードが装備された姿へと変わった。
「丁度良い……」
両腰のロングソード、ショートソードを手に取り構えた。
「打鉄・七刀、目標を駆逐する!!」
『瞬時加速(イグニッションブースト)』を使い、アンノウンが反応するよりも早く接近し、ショートソードを左肩の装甲に突き刺す、オマケのロングソードで右腕を切り落とした。
「………………!?」
引力でロングソードを引き寄せようとアンノウンが左手を向ける。
「受けとれ!!」
引き寄せられるロングソードを渾身の力で投げつけ、空になった両手で両肩に取り付けられている白い((棒状の武装|ビームダガー))をアンノウンの頭部へ投擲した。
「これで止めだ!!」
右腕に装備されている折り畳み式のブレードを展開し左肩から斜めに振り落としアンノウンを一刀両断に切り裂きアンノウンは残骸(ガラクタ)となり床に横たわっていた。
「仕留められたな……っ!?」
一刀両断されたアンノウンの胸部部分の切断面に見慣れたモノが見えた。慌ててアンノウンの残骸に近寄り1枚のカードが納められた薄いケース状のパーツを手に取り中に収められたカードを取り出す。
「やっぱりあった。」
予想通りだった。
だからこそ、訳が分からない。
「けど、なんでだ?」
先程まで手に取り、今は制服の内ポケットに隠したソレの名を呟く。
「なんでプライムベスタのラウズカードがアンノウンの中に埋め込まれていたんだ?」
________________________________________
1話終了時点織斑一夏所有ラウズカード一覧
【SPADE】
8:MAGNET
________________________________________
機体設定
・打鉄・七刀
・一夏が操作した打鉄が『一次移行』した形態。打鉄との違いとして両肩の非固定部分の装甲が追加された肩の装甲と一体化されている(取り外しも可能)のと両腕に装甲が追加されている。遠距離武装が存在しないが、変わりに近距離武装が複数搭載されている。
・武装一覧
・折り畳み式ソード×1
・ロングブレイド×1
・ショートブレイド×1
・ビームダガー×2
・ビームサーベル×2
・折り畳み式ソードはガンダムOOFのガンダムアストレアのGNプロトソード、残りの武装はガンダムOOのガンダムエクシアの武装―――――セブンソードを元にしています。
・折り畳み式ソードは右腕に装着されている、ロングブレイドは左腰、ショートブレイドは右腰、ビームダガーは両肩後部の下部(ガンダムエクシアの両肩の装甲をイメージしてください)、ビームサーベルは、両腕の装甲(セラヴィーガンダムの両腕をイメージしてください)に隠し武器の形で収納されている。
・ビームダガーは短時間であればビームソードとしても使用可能だが長時間(約5分)使用すれば負荷に耐えきれず破損する。
・ビームソードを使用する際、大量のシールドエネルギーを使用するので長時間使用は厳禁。
・折り畳み式ソード、ロングブレイド、ショートブレイドは実体剣で、対ビームコーティングが施されている。
Tweet |
|
|
2
|
0
|
追加するフォルダを選択
IS〈インフィニット・ストラトス〉の発表と『白騎士事件』で世界は変わった。変わりゆく世界の中でごく一部の者しか正確に知る事のない存在が有った。これはかつてその存在であった少年、織斑一夏の物語。