No.395620

けいおん!大切なモノを見つける方法 第6話 愛器との出会う方法

勢いとノリだけで書いた、けいおん!の二次小説です。
Arcadia、pixivにも投稿させてもらってます。

よかったらお付き合いください。
首を長くしてご感想等お待ちしております。

2012-03-21 09:04:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1253   閲覧ユーザー数:1238

 

 第6話 愛器との出会う方法

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、軽音部総勢6名が揃った。

 

「で、だ!みんな会議を始めるぞ!コラ唯、お菓子ばっか食ってんなっ」

 

 全員が席に着いて一息ついていると、いきなり律先輩が立ち上がってそう言った。

 

「ハイハイっ、りっちゃん隊長!いったい何の会議ですか?」

 

「良い質問だぞ、唯。議題は『新入部員フユをどう育てるか』だっ!」

 

 …………。

 

「要は部活においての俺の立ち位置、つまりバンドの担当楽器をナニにするかってコトでしょ?」

 

「いかにもっ。で、いくら素人って言っても興味のある楽器とかあるだろ?」

 

 まぁ、軽音部に入るにあたって考えてこなかったワケではない。

 

「フユくん、キーボードはどうかしらっ?とっても似合うと思うの」

 

「バカ言えっ、フユはドラムに決まってんだろ!」

 

「フーちゃんは私が育てるよっ。ギターだってば!」

 

 単純に自分の楽器をやらせたいのか、先輩たちはここぞとばかりに主張し始める。

 

「つーか、ひとつのバンドに同じ楽器が複数あってもいいもんなんですか?ギタリストとかは2人いてもおかしくないでしょうけど、実際のトコ音ゴチャゴチャになりません?」

 

 この疑問は前々から思っていたコトだ。

 

「そんなコトないよ」

 

 この素人丸出しの疑問に答えてくれたのは中野さん。ギター歴の長い彼女はイロイロと音楽知識が豊富なのだろう。

 

「確かに冬助くんの言う通りドラマーとかベーシストが複数いるロックバンドってのは珍しいよ。でもあくまで珍しいってだけで、ツインベースやツインドラム、ギタリストが3人だとか、逆にギタリストがいないなんて面白いロックバンドもあるんだよ」

 

「へぇ、思ったより枠に定まってなくてもいいんだな」

 

 ギター3人とかレディヘぐらいしか知らねぇぞ。

 

「とは言っても、やっぱりロックってジャンルに限るとメンバーが多すぎると難しくなるかな」

 

 中野さん、イロイロと知ってんなぁ。

 

「でもね、フーちゃん。ヨソのバンドがどうだとか、セオリーだとこうするとか気にしない方がいいよ。ウチはウチ、同じバンドなんてひとつもないんだよ?フーちゃんの思うままにすればいいと思うな」

 

「……おぉ。唯先輩、今スッゲー先輩っぽいコト言いましたね!」

 

「でしょでしょー?ホメてホメてっ」

 

「つーワケでそんな唯先輩に感銘を受けたので、唯先輩と同じギターやります」

 

「やったーっ、フーちゃんゲットぉ!!」

 

「て、テキトーだなぁ……。フユ、そんな簡単に決めてよかったのか?」

 

 呆れた表情の律先輩。

 

「まあ、全くのノープランってワケでもないんですよ。唯先輩はボーカルも一緒にやりますよね、俺がギターやるコトで少しは先輩の負担減らせるかなと。それにギターの先輩は唯先輩だけじゃなくて中野さんもいる、他力本願で聞こえ悪いですけど技術教えてくれる先生は多い方がいいでしょう?」

 

「うん、私もソレでいいと思う。ギターパートがひとり増えるぐらいなら他のパートに悪影響しにくいだろうし。まだそっちのが作りやすい」

 

 と、澪先輩。

 

「そっか、曲って澪先輩が作ってるんでしたよね?」

 

「い、いや私だけじゃないよ?ムギがいないとまず上手くいかないし。他の2人にも手伝ってもらってる」

 

「がんばってフユくん用のパート作ろうね、澪ちゃん」

 

 にしてもたった1年でオリジナル何曲も作れちゃうってどうよ?

 音楽知識の浅い俺でもソレがいかにすげぇコトなのかわかる。マジで才能ある人たちなんかな。

 

「というコトで、めでたく我が部に3人目のギタリストが誕生した、みんな拍手!」

 

 みんながお世辞抜きで嬉しそうに拍手してくれる。なんかこっ恥ずかしいなぁ。

 

「あ、でも本当に俺の脚でギター演奏できるかすげぇ不安です」

 

「昨日も言ったけど大丈夫だよ。ほら、ギー太貸したげる。提げてみなよっ?」

 

 そう言って唯先輩は自分のレスポールを渡してくれた。コレがさんざん言ってた愛器ギー太くんね、ギターに名前付けるとかいかにも唯先輩らしいや。

 

「おおっ?思ったより全然軽い!コレなら俺の脚でもイケそうです」

 

 これまたなんか恥ずかしいな、一丁前にミュージシャンになった気分だ。

 

「ん?でもギタリストって足元でなんかカチャカチャやってません?」

 

 唯先輩には俺が何のコト言っているか伝わらなかったみたいだ。

 ホラなんかあるじゃん、アクセルみたいにガシガシ踏むヤツだよ。

 

「ワウペダルっていうエフェクターの一種だよ。そんな力いらないし、絶対必要ってワケじゃないから気にしなくても大丈夫」

 

 丁寧に答えてくれる中野さん。中野さんへの俺の信頼度が唯先輩へのソレと反比例するように上がっていく。実際中野さんの方がギターが上手らしい。唯先輩も高校から始めたんだっけな。

 

「でも冬助くん、去年の冬に怪我したって言ってたけどいつ頃には治るの?」

 

「あー、えっと、……まぁ年内には完治するんじゃね?」

 

 ちなみにこの怪我が一生治らないコトは誰にも言っていないし、言うつもりもない。バスケをやっていたコトも絶対にバレないようにするつもりである。

 言ったところでナニも変わらないし、腫物扱いされるのも同情されるのもゴメンだ。なにより憂がこのコトを知ったらどんな気分になるか。そんなん考えたくもない。

 

「憂ちゃん助けたっつー勲章だろ?似合わずカッコいいコトするじゃんよフユ」

 

「本当にウチの憂がお世話になりまして……」

 

「っていうこのくだり昨日さんっざん飽きるぐらいやっただろ!?もう勘弁してくださいっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、晴れてギタリストになったワケだが。フユ、お前ギター持ってんのか?」

 

「当然のごとく持ってないっスね。ココって一応音楽準備室なんだし、部の備品ってコトでボロい安物ギターとか貸してもらえませんか?」

 

「せっかくだし自分専用のギター買ったらどうだ?けっこう安く売ってるぜ」

 

「んー、そうすべきなんでしょうけど、あんまカタチから入るの好きじゃなくて。ギターに慣れて好みがはっきりしてから追々買いますよ」

 

「でもココにギターなんてないと思うぞ?あるんなら唯のギターはソレになってただろうし」

 

「マジっすか……、まぁ一応ソコの物置探してみますね。ひょっとしたらあるかもだし」

 

「あ。ちょ、ちょっと待てよっ!」

 

 立ち上がって倉庫のドアに手をかける俺に律先輩から待ったがかかった。

 

「フユ。その中には多分無いんじゃないかなっ?そ、そんな気するって多分!」

 

「?ナニ言ってんスか、開けますよ」

 

 ドアを開ける。

目の前にゴミ屋敷的風景が広がった。

 

「…………」

 

 …………。

 

「……先輩らって自分の部屋で邪魔なモン押入れとかクローゼットに押し込むタイプだろ?」

 

「あ、アハハ……。自分の部屋はけっこう綺麗にしてる、かな?」

 

「あ!このぬいぐるみ私のー!」

 

「大半が律と唯の私物だろっ!」

 

 澪先輩の言う通り、唯先輩と律先輩の所業っぽかった。

 

「うわぁ、マジでカオスだ……」

 

 山のように積み上げられたダンボール、CDに漫画本、音楽関連の雑誌や教科書、壊れかけたタンバリンやくちゃくちゃに絡まったシールドに針の折れたメトロノーム、恐らく先輩たちがゲーセンとかで獲ったであろうぬいぐるみの数々。

何とかスペースを見出してソレっぽいモノがないか根気強く探していると、部屋の奥に古雑誌の下敷きになっている銀色のケースを発見した。

 

「コレなんか楽器の入れ物っぽくないですか?」

 

 そのケースを物置から引っ張り出して、部室に戻って開けてみる。

 案の定、ソコには赤色のギターが収まっていた。

 

「かっけー。澪先輩、コレってSGってヤツ?」

 

「うん、SGだな。けっこう古いギターみたいだけど……――ってフユ、ギターのコトわかるんだ?」

 

「や、大雑把な種類だけッス。唯先輩の持ってるヤツはレスポールだとか中野さんはムスタングだとか。メーカーとかもっと専門的なコトはさっぱりです」

 

「ふーん、そっか。音楽に携わってないと全然知らないって人多いけど、知ってる人は知ってるモノかな?」

 

 ポソリと呟く澪先輩に、そんなもんスね、と俺も呟く。

 特徴的な面白いボディをしているソレを、ゆっくりとケースから持ち上げる。

 

「うっわ、カビ臭ぇな……。コレ音楽室の備品ですかね?なんか誰かの私物っぽいんですけど」

 

「どうなんだろ?少なくともアタシらのモンじゃないよな?」

 

 一同首を横に振る。

 いったいダレのギターなんだろう?

 

「ひょっとして昔の軽音部の先輩の忘れモノだったりして?」

 

 そう言ったムギ先輩に、ギター忘れる軽音部員って……、と返す中野さん。

 

「あら、懐かしいわねぇ。こんなトコにあったんだ」

 

 いきなり後ろから女の人の声が割り込んでくる。

 そこには眼鏡をかけた優しそうな若い女の先生が立っていた。

 

「え、このギターさわちゃんのだったの!?」

 

「ソレはあんまり使ってなかったんだけどね。……って、あら。アナタが新入部員のフユくん?」

 

「はい、そーですけど。えっと、ひょっとして顧問の?」

 

「ええ。初めまして、軽音部顧問の山中さわこです」

 

「どうも、これからお世話になりまっす」

 

「アナタのコトは今日りっちゃんたちから聞いてるわよ?梓ちゃんに続いてものすごくヘンな面白い男の子が入ったって」

 

 入部翌日でソレってあんま嬉しくない評価だなぁ。礼儀正しい謙虚な1年坊くらい言っといてもバチ当たらんだろ?

 

「俺も先生のコトは部長からイロイロと伺ってます。ヘビメタ大好きで、キレるとヤンキーより怖くて、女性なのに歯ギターやらかす山中センセイですよね?」

 

「りっちゃーん、ちょぉっとこっち来なさい?」

 

「あわわっ。バカフユっ、ソレ言うなつったじゃん!?」

 

 うはは、いい気味だぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、センセイ桜校のOGだったんですね、それも軽音部の」

 

 山中センセイを交えて、再びお茶を淹れてブレイクし出す一同。ホントにココは軽音部か?

 

「ちなみにコレが現役時代のさわちゃんです」

 

 唯先輩が1枚の写真を取り出したので、俺と中野さんは興味津々でその写真を覗き込む。

 

「…………」

 

「…………」

 

 なんか、デトロイトなんたらっっていうマンガにこういう感じの人いたよな……。

 

「その頃に使ってたってワケじゃないんだけど、こんなトコにあるとはねぇ」

 

 懐かしそうにそのギターを手に取る山中センセイ。

 

「うっカビ臭っ……、それに何年も放っておいたからネック反っちゃってるかも……」

 

 ギターを持ち上げて状態を確認する山中センセイ。

 

「フユくん、このギターを使ってあげてくれないかしら?」

 

「……ん、あれ?なんか押し付けられてる気がするのは俺だけ?」

 

「まあまあ、メンテに出せばまだ使えるかもしれないし。よかったらどう?」

 

「んー、でもいいんですか?コレ実際のトコ、けっこう高価なモノなんじゃないですか?」

 

「元々父親の友達から貰ったモノだし、……なによりちゃんと弾いてあげた方がこのギターも喜ぶと思うわよ。私はもうなかなか時間つくれないし」

 

「そ…っスね。じゃあ遠慮なくお借りしまっす」

 

「大事に使ってあげてね?」

 

「うん、大事にするよ。センセイありがとうっ」

 

 俺がお礼を言うと、何故か山中センセイはおかしそうにクスリと笑った。

 

「な、なんかおかしかったですか?」

 

「いや違うのよ、ごめんごめん。唯ちゃんの言った通りだなって。……ちょっと照れ屋さんなのに、妙に素直でとってもイイコだって」

 

「うー……」

 

 俺が照れ屋なんじゃなくて、こういうコトをストレートに言ってくる先輩や先生が異常なんだと思うけどなぁ。……まぁ赤面症だけどさ。

 

「とっ、とにかく!ありがたくこのSG借りますからねっ!?」

 

「フーちゃん顔ちょっと赤いよ?」

 

「あーあーあー、ウッサイっすよっ。ギターがあってもアンプやらチューナーやらなんやら必要なモンあるでしょ?このギターがホントに使えんのかちゃんと診てもらいたいし、ここらへんで適当な楽器店教えてくださいっ」

 

 誤魔化すように大きな声で唯先輩のからかいを遮る。

 ホント天然はタチが悪ぃなっ。

 

「よーし、それじゃ今からお店に出発だ!みんな準備しろよっ」

 

「律先輩っ、部活しないんですか!?」

 

「まあまあ梓、コレも部活の一環だ」

 

「律……練習したくないだけだろ?」

 

「フユくん知ってる?ネギリをすると安くお買い物できるんだよ?」

 

「ムギちゃん値切りとっても上手だもんねぇ」

 

 どうやら部活を切り上げてまで俺の買い物に全員で付き合ってくれるらしい。

 結局のところ、みんな優しい人たちばっかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みんなが帰り支度をしてバタバタしている中、俺はケースに包まれたギターをゆっくりと覗く。

 不思議な落ち着いた赤い光沢を放つボディにそっと手を触れ、優しく撫でる。

 

「ま、ポンコツ同士いっちょ仲良くしようや。これからよろしくな」

 

 俺はニヤリと笑い、誰にも聞こえないほど小さな声で、そう呟く。

 俺に合わせるように、ギターもニヤリと笑った。

 そんな気がして、早く弾いてやりたいな、と強くそう思った。

 

 

 


 
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