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IS-W <インフィニット・ストラトス> 死を告げる天使は何を望む

第2話 その名はガンダム

2012-03-20 22:30:00 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:8447   閲覧ユーザー数:8130

ヒイロが織斑 千冬について行って着いた場所は『IS学園』と呼ばれるところだった。

『IS学園』は島一個が学校で世界各国からISの操縦者になるため、日夜学業とISの練習を行っているところだ。

織斑 千冬はかつて第1回IS世界大会『モンド・グロッソ』で総合優勝をし、世界最強となった。だがその彼女が先ほど見たのは圧倒的な戦いだった。まるで天使が舞うように戦う姿…千冬はある感情がよぎっていた。そして今、最も大切な弟を守ったこの男が何者なのか調べようと思ってここまで連れてきたのだった。

時間はすでに午後8時。そして学校内の一室…テーブルとイスしかない部屋で二人は椅子に座り見つめあっていた。ヒイロの目の前には皿のみになったカツ丼があった。

 

「さて飯も食べたことだし…先ほどの事だが…弟を守ってくれてありがとう。姉として礼を言う」

「……さっきも言ったはずだ。気にするな、借りを返しただけだ。それより今は情報がほしい。」

 

ヒイロはそう言った。なので本題に入るのがこの男に対しての敬意だと千冬は判断した。

 

「そうか…わかった。まずお前の名をもう一回行ってくれ」

「……ヒイロ・ユイだ」

 

ヒイロは一瞬悩んだがここはちゃんと自分の名前を言った。普段ならこの場合、偽名を使うべきだろうがヒイロは千冬にそれは通用しないと今までの経験から千冬の目を見て判断した。

 

「ヒイロ・ユイだな…ユイ、お前はどこの出身だ?」

「…ヒイロでいい。言いずらいだろ、俺はコロニー…この世界とは別のところから来た」

「なに?…どういうことだ」

 

ヒイロは説明した。自分がAC(アフターコロニー)196年と言う人類が宇宙に住処を作っている時代から来たこと。

一年前から17mぐらいの人型機動兵器、MS(モビルスーツ)で戦争したこと。そして戦争を終わらせ、すべての兵器をなくすための『完全平和主義』のために自分が戦って死んだと思ったらここにいたと…

 

「それを証明できるものは?」

「幸い、ゼロに記録が残っている。それを見ればいい」

 

そう言ってヒイロは左手についたブレスレットを見せた。千冬にはこれがISに見えた。

 

「……俺からはこれがすべてだ。織斑 千冬…俺もお前に聞きたいことがある。それが聞けたらゼロのデータを開示できる範囲で開示する」

 

千冬は顔をしかめた。ヒイロの言葉はあまりにも飛び過ぎている。だからこちらの情報を出す前に証拠を見たかった。だが先に情報を出さないと開示しないとヒイロは言った。

その目はまさしくまっすぐな目をしていた。

 

(この少年…明らかに場慣れしている。それにこの目悪い奴ではない…信じてもいいかもしれん)

「わかった。この世界の事だな…」

 

千冬はこの世界について簡単に話した。ISとは何か。どういった組織が管理しているか。そしてここは何処か。ヒイロはそれを目をつぶって聞いていた。

この世界では兵器がスポーツとして使われていることにヒイロは驚きを隠せないところがあった。そしてISの開発者…篠ノ乃 束に対して疑惑を持ったが今は考えないことにした。

 

「私の話は以上だ。お前の処遇については聞いたことを話して上の判断を仰がなくてはならない。その為お前の言うゼロはこちらで一時預かるがいいな?」

「…ゼロのデータ開示に関して俺がするのが条件だ。守れない場合は……ここでゼロを起動させて逃げるだけだ」

 

千冬はうなずき、携帯で連絡を取り始めた。そう今の主導権はヒイロにあると言っていい。何せIS6体に対して一人でしかも無傷で殲滅したからだ。さらにあのライフル…バスターライフルの威力はISの絶対防御を貫き、大けがをさせるほどである。今は従うしかないのだ。たとえ自分でもヒイロと戦ったら“勝てるだろう”がただでは済まない…あの時一瞬剣を交えただけでそう悟った。

 

「上との連絡が取れた。その条件を呑むとのことだ、ついてこい」

「……了解した」

 

 

 

学園の最深部にある研究室。ここでヒイロは今ものすごいスピードでキーボードを叩いている。そして次々と出てくる映像…宇宙でゼロが暴走したこと、かつてエピオンと戦ったこと、リーブラを撃ちぬいたこと、MDのスコーピオンと戦ったこと、ナタクと戦ったこと、そして最後の大統領府の事が学校の教員…織斑 千冬とその補佐、山田 真耶、そして学校上層部の人間の目に映るたびに驚きの声を上げた。

これでヒイロの言っていたことは真実だと言う事が証明された。さらに…

 

「な…なんですかこれ!!」

 

真耶がそう言ったのはヒイロが開示したゼロ…正式名『ウイングガンダムゼロ』のデータだった。

 

「どうした?山田先生」

「これは…ISじゃありません…ISコアとは全くの別物です。それにこの機体にはシールドエネルギーが搭載していますが別にしかも無限機関のエネルギージェネレーターがあります。この機体のシールドエネルギーは文字通り、シールドのみしか使いません。他のエネルギーがいるものはすべてジェネレーターから取っています。バスターライフルも平行連結…このモードをツインバスターライフルと言うみたいですが、撃ったらIS装備でも人を蒸発させられます。機体性能は今の第3世代型と同じぐらいですが…」

「なに!!」

 

これには千冬も驚きを隠せなくなっていた。新たなるコア…それは世界に新たな革新を与え、本当に戦争になりかねないからだ。今のISのコアは一人を除いて女性しか反応しない。しかし、ヒイロがゼロを操縦できていることから、新たなるコアは………。さらにISごと蒸発できるライフルも同様だ。

真耶はさらに続ける。

 

「それにこれには絶対防御が備わっていません。その代り、全身装甲(フル・スキン)は名称『ガンダニュウム合金』って奴でデータだけ見てもかなりの防御性能みたいです。実弾兵器だとマシンガンなどはほとんど効きません。ですけど、ISにはない問題点がいろいろあるみたいです」

「そうか…」

「後…『Zoning and Emotional Range Omitted System』って言うのが開示されてないんです」

「……それは開示するつもりはない」

 

ヒイロはそう言い切った。そう…それこそ、ウイングガンダムゼロが最強として君臨していたもの…『ゼロシステム』だからだ。だかこれによって人生がを狂わせた者がいるのも事実である。だからゼロシステムの複製だけは避けなければならない。ヒイロはそう思っていた。

 

「そうか。では明日はアリーナでガンダムを起動してもらう。但し私たちがISで武装したうえでお前が変な動きを見せたら容赦なく撃墜させてもらうからな。それまでガンダムは私が預かる。ただしお前の目の前で寝る。これでどうだ」

 

それを聞いたヒイロは当然の対応だと感じた。そして自分の目の届く範囲でっていうのも納得ができた。だからここで逆らったところで今の俺に得はないと判断し、移動する千冬の後をついて行った。

 

 

 

 

翌日午前10時。ISアリーナは晴天の空の風で包まれていた。

競技場の名のとおり円形のその空間はただ広いという一言に尽きた。

そしてヒイロはその中央にいた。ヒイロを囲むように教員がISを展開している。もしものためであろう。しかし、ゼロの性能から考えると意味のないことなのだがヒイロが逃走しないことを千冬はわかっていた。

ヒイロは彼女たちがISとの神経伝達の補助の為にISスーツというものを着ているのだがそのスーツというのがアーマーの付いたレオタードにハイソックスのようなものに対して疑問を持っていた。

 

(前の奴らの方が防御性能がいいように思えるが…)

 

一夏を襲った奴らは強化装甲により通常のISよりも露出が少なかったゆえのヒイロの反応だった。

 

「よし、ヒイロ。ガンダムを展開しろ。前にやっただろう。展開ができたら自由にアリーナ内を飛んでみろ」

「…任務了解、作戦を開始する。ウイングゼロ起動」

 

ヒイロがそう言うと再び体に粒子が纏わりつく。そして出てきたのは前にも見た天使(ガンダム)

ヒイロは一気に空へと羽を散らせながら駆け上がった。

 

「き…きれいですね。本当に天使の翼みたいで…」

 

真耶はそう言うが千冬にはそれが戦場を駆け抜けるものだと思うとあの時と同じものを感じた……恐怖を。

 

「あの翼自体がブースターなのか…データはどうなっている?」

 

千冬は頭によぎった恐怖を振り払い真耶にそう聞いた。

 

「はい。ヒイロくんは性能を完全に出し切っていますね。機動性と加速性も今の第3世代の中ではトップです」

「そうか…確かにこのスピードであの機動性…すさまじいな。ヒイロ、聞こえるか?次はもうすぐ卒業する学生1人と模擬戦をやってもらう。ただしツインバスターライフルは使うな」

 

そう言うとピットから『打鉄(うちがね)』を使う女生徒が出てきて、ブレードを構えた。

 

「任務変更了解。これより、敵ISの迎撃を行う」

 

そう言うとヒイロはビームサーベルを副翼から出し、一気に接近した。

ヒイロにはすでに女生徒が自身の間合いに入っていたからこその行為だった。

しかし、女生徒は自身のハイパーセンサーが急にアラームがあったので驚いたのだった。

しかもかなりのスピードで突っ込んでくる。

 

「な!!」

 

女生徒は急いでブレードを振ったがヒイロに受け流される

 

「読めているぞ」

 

ヒイロは反応しきれない状態の彼女にサーベルで連続斬り抜け攻撃を行い、羽を舞い散らせながら上へと切り上げていく。

そして最後に自身が回りながら彼女の上を取り、一気に唐竹切りをして地面にたたきつけた。その時点で彼女のシールドエネルギーが0になって目をグルグルさせて回っていた。

 

「任務完了!」

 

ヒイロはそう言うと地上に降り立った。

千冬はヒイロ自身の戦闘力も高いとこの時、確信を持てた。

 

「よし、これで終了だ。ガンダムを解除してしばらく前の話を聞いた部屋で待機していろ」

「…わかった」

 

 

 

 

 

 

 

「お前の処遇が決まった」

 

千冬はそう言って再びヒイロと話した部屋に来た。ヒイロは閉じていた目を開き、顔を千冬に向ける。千冬が席に着くとヒイロは普段と変わらない感じで言った。

 

「俺はどうなる?」

「お前が異世界からやってきたことやガンダムのことを考慮した結果、お前にはここの生徒として来年度からいてもらう」

 

この回答に対してヒイロは予想の範囲内だった。

だが昨日千冬が行っていたIS委員会が気がかりであった。

 

(国家のIS保有数や動きなどを監視する委員会。IS条約に基づいて設置された国際機関。…委員会には報告しないつもりなのか…。場合はによっては脱走するつもりでいたが…)

「…国際IS委員会とやらにはどう言うんだ?」

「元紛争地域の少年兵だったがある日本人に拾われ日本国籍を所得、保護者が事故で死亡後、偶然ISが操縦出来ることがわかり今に至ると。幸い前例があるしな。ガンダムについては学園の訓練機のコアを基に造ったことにする。政府への根回しもしておく」

 

千冬の話をヒイロは顔色一つ変えず聞いて、さらに千冬に聞いた。

 

「すべて隠すつもりか?」

「そうも言えん…お前が与えてくれたガンダムのデータでおそらく学園内で開発が始まるだろう。Gコア…お前のガンダムのコアと『ゼロシステム』はしないつもりだ」

 

ヒイロにとってそれは好都合でもあった。開発が進まなければ自身のガンダムの整備ができないからだ。だが先ほどの言葉で疑問があった

 

「前例とはなんだ…?」

 

そうヒイロが聞くと千冬は少し顔を暗くした。普段表情に出さない奴だとヒイロはすでに悟っていたのだが、このような顔をしたので少し驚いていた。

 

「……弟がいただろ…道に迷った挙げ句受験会場を間違え、そこにあったISに触れてISが操縦出来ることがわかったしまったんだ。おかげでこの間、命が狙われることになった。そしてこれからも…」

「……織斑 一夏か…」

 

ヒイロはその名を口に出した時、初めて一夏を見たときの映像が脳裏を横切った。その時、一夏が見せる目に宿る信念を感じ取った。どんな信念かはまだわかっていなかったがあの目はまさしく…

 

「あいつが強くなってくれれば私としても心配事が減る。だが先日、もしお前がいなかったらと考えると…」

 

そう言うと千冬は体を少し震えていた。いくら強い、凛々しい、厳しい、鉄仮面な女でも身内、それもたった一人の弟が死んでしまうと考えると恐怖を感じだ。今までは何とかこらえていたがここに来た前の一件でその恐怖が現実のものとかし始めていた。

ヒイロはその様子を見て、椅子を立ち上がり、ドアへ向かおうとする。そしてドアの取っ手を掴んだ。

 

「!!どこへ行く!?」

 

千冬は立ち上がり怒鳴った。ヒイロは澄ませた感じで答えた。

 

「……織斑 一夏のところだ」

「な!!」

「奴には四日間世話になった。それに、奴からは……リリーナと同じ強い意志を目から感じた」

 

ヒイロを再び人に戻した人、完全平和主義を唱え矛盾しながらもそれを成し遂げようとしたリリーナ・ドーリアン。その彼女と同じ目を一夏はしていた。それは一夏が関わる全ての人を守り抜きたいという強い意志だった。たとえ戦えなくともせめて、違うところで守ろうと言う意志のある目だった。

ヒイロはそんな一夏に興味を示したのだ。

 

「…奴の生き様が見たくなった。今の戦争のないこの世界に俺のような兵士はいらない。なら、この世界で俺がしてやれることはこれぐらいしかない。……俺がお前の弟、織斑 一夏の護衛をしてやる。それに…」

「それに…なんだ?」

 

千冬が問うとヒイロは鼻で少し笑い、

 

「…アイツはどこかデュオに似ている。うまくやっていけるだろう」

 

デュオ・マックスウェル。ヒイロと同じガンダムのパイロットでヒイロと一番行動が多かった人物だ。ヒイロにとってデュオは一番の戦友と言ってもいい節があった。

 

「俺の入学手続きは“一夏”と同じところに送ってくれ」

 

そう言うとヒイロは部屋から出て行った。

千冬はただただ呆然と立ち尽くしていたが……

 

 

千冬の心に天使が舞い降りたのは間違いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ヒイロ!!どうしたんだよ!?千冬姉ぇについて行ったんじゃなかったのかよ?」

 

ヒイロは再び織斑家に来ていた。インターホンを押すと一夏が出てきてそう言ってきた。

 

「スマン。そのことなんだが、俺もお前と同じIS学園に通う事になった」

「そ!!そうなのか!?」

「ああ。だが今、俺には家がない。それでお前の姉が学校が始まるまでここに住めと言われてな」

「いいぜ!!一人で寂しかったんだよ。お前がいてくれたら楽しい日々になりそうだ!!」

 

そう言って笑う一夏に対してヒイロは

 

(やはり、デュオに似ている)

 

と思い目をつぶって、フッと微笑した。

 

「ヒイロ?」

「…問題ない、ただの考え事だ。……おそらく学校でも世話になるだろう。よろしく頼む、織斑 一夏」

「俺のことは一夏でいいぜ。ヒイロ」

「そうか、なら一夏。世話になる」

「おう!!」

 

そう言って二人は学校が始まる約1ヶ月間同じ家で生活した。

一夏がまずやらなければならないことは…ヒイロのずさんな食事を治すことだった…

 

 

 

 

 

 

後書き

 

う~ん…

今回は波紋が呼びそうですね…ヒイロの言動と千冬の件で…

 

感想等ありましたらTwitterやコメント欄によろしくお願いします。

 

ちなみにヒイロの戦闘でやった攻撃がイメージできない人…『ガンダムVSガンダム NEXTPLUS』と言うゲームのゼロカスタムの下格闘ワザだと思ってください。

 

 

表紙絵、または挿絵を提供してくださる方を募集します。

これらの絵はpixiv様の方でも使わせてくださるとさらにうれしいです。

よろしくお願いします。

 


 
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