No.395158

真・恋姫†学園~新たなる外史の青春演技!?~新しい幕開け

青二 葵さん

遂に来た入学式。
あっさりしてますけど。

そうめんって、ふりかけをかけるとおいしいらしいね。

2012-03-20 17:13:35 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1626   閲覧ユーザー数:1537

「先行は私のターン!ドロー!手札からレッド・ガジェットを召喚!」

くせ毛のある天然パーマの様な髪をした眼鏡を掛けた少年、蒼はデュエルディスクにあるデッキからカードを引きぬく。

そして蒼のフィールドに赤い歯車をしたモンスターが召喚される。

レベル4 地属性 機械族 ATK1300/DEF1500

「レッド・ガジェットの効果発動。召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『イエロー・ガジェット』1体を手札に加える事ができる」

蒼は効果によってデッキからサーチしたモンスターを見せ手札に加える。

「さらに、手札から魔法発動、『二重召喚(デュアルサモン)』。これで、このターン自分は通常召喚を2回まで行うことが出来る。手札からマシンナーズ・ギアフレームを召喚、このカードが召喚に成功した時、自分のデッキから『マシンナーズ・ギアフレーム』以外の『マシンナーズ』と名のついたモンスターを1体手札に加える事が出来る。これにより、私は『マシンナーズ・フォース』を手札に加える」

オレンジ色のフレームをした人型の機械を召喚したあと、蒼はデッキからまたサーチしたモンスターを見せてから手札に加える。

レベル4 地属性 機械族 ATK1800/DEF0

早くも蒼のフィールドに二体のモンスターが並ぶ。

「さらに、私はこの二体でオーバーレイネットワークを構築!」

「なにっ!?いきなりだと!」

蒼が叫んだ後、突然巨大な渦がフィールドにでき、蒼の二体のモンスターが光の塊となって螺旋を描きながら渦に入って行く。

その光景に頭にタオルを巻き、青を基調とし赤色の線が入ったジャージを着ている男、スターダストは驚く。

「出でよ、No.39希望皇ホープ!」

それから、渦が爆発し白と金色の甲冑を着た騎士の様なモンスターが蒼のフィールドに現れた。

ランク4 光属性 戦士族・エクシーズ ATK2500/DEF2000

「悪いですが、デッキは知っているのでね。私はこれでターンエンド」

二体も召喚したのに蒼の手札は5枚もある。

そう言って、彼は終了を宣言しスターダストの番が来た。

「成程な。なら、俺のターン!ドロー!」

デュエルディスクのデッキから彼も一枚手札に加える。

「俺は手札から魔法発動!『増援』。デッキからレベル4以下の戦士族モンスターを手札に加える。俺は『重装武者-ベン・ケイ』を手札に加える。そして召喚!」

そして、スターダストの場に様々な武器を身に纏い矢が所々刺さった武者が姿を現す。

レベル4 闇属性 戦士族 ATK500/DEF800

「早速ですか」

蒼の呆れる様な言葉が聞こえるが、構わずにスターダストは続ける。

「手札から装備魔法、『魔導師の力』を発動。装備モンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚につき500ポイントアップする。更に装備魔法『融合武器ムラサメブレード』を発動」

「やばい」

融合武器ムラサメブレードは戦士族にしか装備出来ないが、攻撃力を800ポイント上げる。しかも、このカードはカードの効果によっては破壊されないと言う厄介な装備魔法である。単純な話、『サイクロン』や『大嵐』などでは破壊されない。モンスターを直接破壊するしかないのだ。

おまけに『魔導師の力』まであるため最終的なベン・ケイの攻撃力と守備力は、

ATK2300/DEF1800

となる。

かろうじてホープの攻撃力を越えてはいないが、すぐに越えられるだろう。

「更に、カードを一枚伏せる」

スターダストがカードを伏せる事によって、『魔導師の力』によりベン・ケイの攻撃力と守備力が変動する。

ATK2800/DEF2300

「ああ、やっぱり」

ステータスだけ見れば化け物カードである。

いとも簡単に越えられたことに蒼は落胆する。

「バトル!ベン・ケイでホープに攻撃!」

「ホープの効果発動。エクシーズ素材を1つ取り除くことでそのモンスターの攻撃を無効にする。『ムーンバリア』」

ベン・ケイがムラサメブレードを振りかぶりながらホープに襲うが、ホープが張ったマントの様なバリアに阻まれる。

「だが、ベン・ケイの効果により通常攻撃に加えて装備魔法の数だけ攻撃する事が出来る!よって、あと二回まで攻撃できる。行け!」

再度スターダストが攻撃宣言すると再びムラサメブレードを振るい、

「無効にします」

また阻まれる。

「だが、これでホープは使い物にならない。最後の攻撃!」

「はぁ、ホープの効果によりエクシーズ素材がない状態で攻撃をされたらこのモンスターは自壊します」

三度襲ってくるベン・ケイの前にホープが襲われる前に突然爆発する。

そして、そのままベン・ケイが蒼に襲いかかり斬りつける。

一応、ホログラムなので特に物理的にダメージはない。が、目の前にまで勢いよくきていかつい武者に斬られるのだから心臓に悪い。

そして、蒼のライフポイントが引かれる。

蒼 LP8000→LP5200

スターダスト LP8000

ちなみに場所は白く何もない空間。いつもの事だが一部は若干騒がしい。

スターダストと蒼以外にも他のメンバーが全員いる。

また、スターダストと蒼は遊〇王で二人、デュエルしている。

なぜそうなったかと言うと、蒼が「おい、デュエルしろよ」と言いながらデッキを見せ、「いいだろう、俺からのファンサービスを受け取るがいい」と言いながらスターダストがノった。

蒼からすればリベンジのつもりなのだが、いきなり過ぎたため周りは何なのか一瞬分からなかった。それに何の疑問も持たず請け負うスターダストもスターダストだが。

「あっちは随分と盛り上がってるみたいで……」

「好きな事をやれるのは良いことだにゃ」

狭乃 狼とその狼の頭の上に乗っかっている寅柄の丸猫、うたまるはそう呟く。

「しかし、いい加減この殺風景な空間は飽きてきたな」

「あ、なら変えましょうか?」

「蒼……もう、終わったのか?」

狼が何気なしに呟いた一言に蒼が割り込んでくる。

先程からそう時間は経っていないはずだが、いつの間にやらスターダストと共に近くに来ていた。

「ええ、あっさりと。マシンナーズ・フォートレスを出しても二体目のベン・ケイまでは防げずにやられましたよ。魔法や(トラップ)カードが全く来ないのはなぜだ……」

「都合よく来てくれたからよかったんだけどな。あと、装備魔法を残しておいた事だな」

蒼は敗因を述べ、スターダストは勝因を述べる。

遊〇王を知らない人からすれば何の話かよく分からないだろうが。

「まあ、それはそうと白い空間はいい加減飽きたと……」

「そりゃそうさ。この広さに相まって、俺たちだけって言うのも物寂し過ぎるからな」

話を聞いてかガタイのいい角刈りの男、峠崎(とうげさき) 丈二ことジョージがサングラスを上げて周りを見渡しながら言う。

それに同意するように狼とうたまるは頷く。

「どうするんだ?蒼」

スターダストが問いかけた時に、蒼はしばし黙考し、移動する。

そして、唐突に指でスナップをきかせ一回鳴らす。

すると、白い空間が段々と緑の草原と花畑に変わり、空は蒼くそして春の様な心地いい風が吹く。

「おお……癒し空間だにゃ」

うたまるがその風景に和み、狼はそのうたまるの様子に和む。

しかし、まだ何か足りないと蒼は思ったので取りあえず、景観を損ねない建物を想像する。

考えを纏めて再び指を鳴らすと今度は、ロッジの様な建物が創造される。

「いきなり景色が変わったぞ!?」

「あら、いいところね」

先程の会話を聞いてなかった他のメンバーは突然、景色が変わった事に驚く。

黒いツンツン頭の子供、berufegoalことベルは驚きの声を上げ、美しい金髪の長髪を靡かせる女性、ほわちゃーなマリアことマリアは逆にその景色に感嘆していた。

蒼は一仕事と言うほどでもないが息を吐き、向き直る。

「さて、ロッジに行きましょうか。そろそろ入学です。一体、彼らがどんな学園生活を送るのか見に行きましょう」

その言葉に他のメンバーは蒼に続くように、これから始まる物語に胸をふくらませながらロッジに入るのだった。

 

 

そんなこんなで入学式の当日。

留学生用の寮と言う名目で与えられた彼女達の住まいでは、慌ただしい蝉騒が聞こえている。

そんな中、ずんずんと力強い歩みで廊下を進む人物が一人。

黒曜石を溶かした様な美しく長い黒髪を揺らしながら一つの扉の前に立ち、溜息を吐く。

そして、これまた力強くドアノブを握りしめ勢いよく開ける。

「桃香様!早くして下さいっ!!」

「わひゃあ!?」

開口一番にどなり声を上げると部屋の中にいたピンクの髪の少女、桃香がそれに驚きの声を上げ、振り返り声の主の真名を呼ぶ。

「あ、愛紗ちゃん……」

対して、ドアを開け放った人物。

愛紗は腕を組みながら呆れたように再び息を吐く。

「はぁ、まだ準備が出来ておられないのですか。今日は、軽い挨拶だけで済むのですからそんなに用意する物もないと蒼燕殿から聞いておりますが」

「うぅ……だって、私の帽子がないんだもん!」

涙目になりながら桃香が叫ぶ。

帽子と言うのは聖フランチェスカ学園の制服の内に帽子があるのだが、それを本人はないと言っている。

「桃香様……ご自分の頭を確認して下さい」

「へ?頭って」

愛紗に言われるがまま、桃香は自分の頭を触る何かが乗っている事が分かる。

何だろうと思い、掴んで目の前に持ってくるとそれは帽子だった。

「あ、あった!!ありがとう愛紗ちゃん!!」

「まったく、いきなり不安にさせないでください」

「うっ……でも、ほら、ちゃんとそれ以外はきっちりしてるでしょ?」

まるで子供のようにはしゃぎながら制服を見せつけるように一回転する。

それに愛紗は微笑みを浮かべる。

「ええ、よくお似合いです。と、皆さん待っていますよ」

「うん!」

いい返事をした後、軽い鞄を持ち部屋の鍵を閉めて出て行く。

お互いに笑みを浮かべながら、廊下を歩いていきこれから始まる新しい生活に胸を躍らせる。

そうして、寮の前に着くと談笑をしながらはしゃいでいる集団が目に入る。

「みんな、お待たせ!」

手を振りながら愛紗と共に合流する。

「も~う、お姉ちゃんってば遅いのだ」

到着して早々愚痴を零したのは鈴々。

「あはは…ごめんね鈴々ちゃん」

「こちらにも言う事があるんじゃない?」

苦笑いをしながら桃香が謝ると華琳が少々嫌味を含んだ言い方をする。

「うん、ごめんなさい華琳さん」

「いきなり謝られても困るのだけど?」

「うっ……じゃあどうしたら…」

「華琳、いきなり桃香を弄るのはよさないか……」

会話の中に呆れたような声音で諫めに入った蓮華。

「あら、バレたかしら」

「さすがに唐突すぎたからな。先程まで特に桃香の話をしていた訳でもなかったんだ。嫌でも気付く」

特に隠すこともなく華琳は言い、蓮華は根拠を話す。

「えっ?…えっ?!華琳さん、もしかしてわざと言ったんですか!?」

桃香は桃香でようやく事態で呑み込めたようで、驚いたあと涙目になり、愛紗に飛び付く。

「うぅ、愛紗ちゃん。私、いきなり苛められちゃったよう」

「だからと言って、私に飛び付かれても困るのですが……」

どう反応していいのか分からないので、愛紗は少し狼狽する。

「ごめんなさい、桃香。柄にもなく緊張してるのよ」

「そうなんですか?」

桃香が尋ねると華琳は短く「ええ」と返した。

それを聞いた蓮華は少しばかり可笑しくて、思わず短く笑いながら言う。

「ふふっ。華琳も緊張するのね……なんだか、安心したわ」

「蓮華、それどういう意味よ」

「どう言う意味もそう言う意味よ。それに緊張してる理由は大方同じだろうしね」

その蓮華の言葉を聞いてお互いに笑みを浮かべる。

「ま、それはそうと早く行きましょう。為せば成るって、誰かさんも言ってた事だし」

華琳が言う誰かさんは今は男子寮にいることだろう。

それから全員はぞろぞろと校舎に向かって移動を始める。

そして、すぐに見なれた人影が待っていた。

「どうも、皆さん。おはようございます」

「おは~」

同じ制服に身を包んだ蒼い瞳と髪が映えること蒼燕は凛とした感じの声で挨拶し、明るくて赤く長い髪と琥珀色の瞳が眩しいく見える美雄(メイション)は眠そうな感じで挨拶する。

美雄はそんなに眠いのか欠伸もしている。

「あっ!ちょこたんだ。おはよ~!」

季衣にそう呼ばれて思わず蒼燕は肩の力が抜ける。

「どうしたの"ちょこたん"?」

「美雄……小遣い抜きにしますよ」

「ああ~っ!!ウソウソ!!冗談だってば!!」

悪乗りして美雄がからかい程度に言ったが、蒼燕は特に動じることも表情も変えることなくあっさりと返し撃沈させた。

美雄本人からすれば洒落にならない事なので思わず目が覚めてしまった。

「おーおー、朝からえらい仲がええやないの」

霞は二人の様子に感心する。

仲がいいには違いないのだろうが、蒼燕はここで感心するのは何か違う気がした。

「手の掛かる妹ですよ。もう少し聞き分けてくれれば、楽になるんですけどね」

ちらりと横を見ながら多少、嫌味を含ませて言う。

すると、見るからに不満そうな表情をしていた。

蒼燕は美雄の頭を少し撫でる。くすぐったそうにしながらも表情は変わらない。

さすがに少し意地悪し過ぎたので折れることにした。

「悪かったですよ。だから行きましょう」

「もう、一部は行ってるみたいだけどね……」

そう美雄に言われて、後ろを見るとなぜか焔耶が蒲公英を追いかけまわしている。

いつも通りと言えばいつも通りだが、入学式ぐらい落ち着いて欲しいものである。

「あいつら、何やってるんだよ……」

蒲公英の従姉である翠は桜並木の間を走り回る二人に呆れる。

今は正門からの道と合流していないので、彼女達以外に人影は見られない。なので多少はしゃいでも問題はない。

翠のその言葉をきっかけに、再び彼女達は校舎へと向かうのであった。

 

一方、北郷一刀はこれから男子寮から出る所であった。

特に持っていく物もなく、軽い鞄を脇に抱えながら部屋の鍵を閉める。

「(みんな、大丈夫かな……)」

これから始まる彼女達との新しい生活に内心楽しみにしつつも、心配していた。

なにせ彼女達はこの世界に来て一ヶ月しか過ごしていない。

当然、現代の文化知識や勉学知識がある訳でもない。その点に関しては春休みを使ってまで付き切りに教えてくれた蒼燕と美雄には感謝しなければならない。

それでもたった一ヶ月では覚えられることもさすがに限られていた。

一般常識とこの国の文字を覚えさせるのが精一杯だったのだ。それでも随分と大きな進歩だとは思う。特に勉学が苦手な武官には、目を見張るものがあった。

あの春蘭でさえ、今では完璧に文字を書けるのだ。しかし、漢字の方は文化的な違いからか使い分けるのが難しそうだが。

「(それまでは引き続きやって行く感じなのかな?)」

確かそんな話を蒼燕としていたはずだ、と一刀は色々あり過ぎてごちゃごちゃになった頭を整理する。

そして、金属でできた階段を降りながら以前の出来事について考える。

それは自分の薄れている記憶には居ないはずの男子生徒との邂逅だった。

 

三日程前に出会った男子生徒。

すれ違っただけなのに一刀は違和感を感じて、素っ頓狂な声を上げながら振り返る。

『え?』

『あれ?あ、やば』

『ん?』

振り返った所でさらに一刀は違和感を感じていた。

なぜなら、"二人"とすれ違ったはずなのに振り返って見れば"一人"しかいない。

そして、目の前にいる自分と同い年くらいの愛紗と同じような美しく長い黒髪の男性。

何故かは知らないが、どこかで会ったような懐かしさがある。

『………』

『………』

だが、一刀は彼を"知らない"。そもそも、以前いたのかどうかも分からない。

お互い黙ったまま、時が流れる。

『…えっと、いきなりで悪いけど俺たちどこかで会った?』

そう切り出したのは一刀だったが、すぐに後悔した。

『(なに、アホな事聞いてんだよ俺……会った事ないに決まってるのに)』

軽い自己嫌悪に陥っているとすぐに返事が返ってくる。

『……会った事はないな』

分かり切っていた答えが返って来た。

『ああ、うん。そう……だよな。悪い、初対面なのに変な事聞いて』

忘れてくれと言わんばかりに一刀はそのまま立ち去ろうとするが、

『会った事はないだけで、知ってはいるよ。北郷一刀』

名乗りもしていないのに名前を呼ばれた上に、彼は気になる言葉を言った。

そんな事を言われて、立ち止まらない訳にはいかなかった。

『……お前は…』

何者なんだ?と言う前に向こうから先に答えた。

『まあ、貂蝉たちと似たようなもんだな』

『貂蝉たちと?もしかして、正史の剪定者って言う奴なのか?』

『正史の人間には違いないが、剪定者とは違う』

その言葉に疑問を抱いた。

一体何がどう違うのか、そしてなぜ彼がここにいるのか。

『以前、貂蝉に正史と外史の説明をして貰ったと思うが。俺は所謂、作家だ。創造者って言う方がしっくりくるかもしれない』

『創造者……?』

どんどんと話が突飛になり、一刀は混乱しかける。

そんな一刀を見て、黒髪の少年はフォローする。

『まあ、単に物語を作ってる人だと思ってくれればいい』

簡単に纏め上げて彼は言うが、一刀には新たな疑問が浮かんできた。

『その、作家に当たる人がどうして俺の前に?』

『単純な話、俺も物語の…舞台の一員として出たくてな。それに実際にお前に会ってみたかったっていうのもある』

彼が言葉を続ける度に、次から次へと疑問が溢れてくる。

俺に会うため?なぜ?

そんな風に一刀が思っていると、黒髪の少年は突然笑い出す。

『ほんとに、分かりやすいな。なんで俺に会いに来たんだ?って顔だな』

心情を言い当てられて一刀は、ハッとする。

『北郷一刀。お前の紡ぐ物語は正史では広く認知されてるぞ?お前と彼女達の外史に胸を打たれた者は少なくはない筈だ』

『……え?』

『今は、分からないだろうがその内分かるさ』

捲し立てるように一方的に語った彼はそのまま男子寮の一階にある扉に入って行った。

 

 

あの後、入って行った扉のネームプレートによると彼の名前は"守王 戦国"と言うらしい。

果たして彼が敵なのか味方なのか、色々と詳しい話が聞けずにいた。

だが、貂蝉を知っていると言うことは少なくとも敵ではなさそうである。

そう結論付けて、階段を降り切るとこちらに向かってくる人影が見える。

「ん?焔耶と蒲公英か?」

焔耶が蒲公英を追いかける形で走っている。

(また、なにかしたな蒲公英)

「ご主人様~!!」

そう考えているといつの間にか蒲公英がすでに傍に来ており、いち早く一刀の背中へと隠れる。

二人とも結構な速さで走っていたが息一つ乱れてはいない。

「助けてご主人様!!焔耶がたんぽぽをいじめるの」

「先に仕掛けてきたのはお前の方だろ!」

「だって~、そんなヒラヒラしてるのを焔耶が着てたらつい右手が」

「おまえな~~~!!」

どうやら、いつも通りのことに一刀は安心するべきなのか呆れるべきなのかよく分からない気持ちになっていた。

蒲公英が言うヒラヒラとは、制服のスカートの事だろう。

「蒲公英、あまり焔耶をからかってやるな」

「はあ~い!」

元気よく蒲公英は返事をするが、

(そう言うのが、焔耶の気を逆なでするんだって……)

一刀はそれを懸念する。

「改める気も無い癖に、返事だけは一人前だな」

(やっぱり……)

少々、怒気を含ませた焔耶の言い方に一刀の予想は当たっていた。

「たんぽぽは誰かさんと違って素直だも~んだ」

さらにそこへ火に油とばかりに蒲公英が発した言葉により一触即発になる。

「どうやら、入学式とやらに出る前に死にたいらしいな」

そう言いながら素手で焔耶は身構える。

さすがに武器は厳禁と言い含めてあるので取り出す事はないだろう。

しかし、いきなり戦闘されるのはマズい。

そう思って一刀が止めに入ろうとしたその時だった。

「必殺、脛蹴り!!」

いつの間にやら間合いを詰めていた美雄が焔耶に強烈なローキックを(すね)当てる。

「~~~~~~っ!!」

不意打ちの一撃に声にならない悲鳴を上げて、焔耶は硬直する。

見ているこっちが痛くなるような、そんな一撃だった。

「うわ~、いったそ――――きゃん!!」

蒲公英が感想を口にしようとした時に悲鳴を上げ、鈍い音が一刀の後ろから聞こえる。

振り返って見ればこっちにもいつの間にか蒼燕がいる。拳を握ったまま呆れる様にしていることから、恐らく拳骨を蒲公英に喰らわせたのだろう。

「全く……早々に問題児扱いされたいのですか?」

淡々とした口調で蒼燕は問いかける。その言葉に二人は涙目になりながら反論する。

「しかしだな、この小悪魔娘が」

「冗談くらい少しは流せない、そっちが悪いんでしょ」

再び火が付きそうになる二人に蒼燕は咳き込み注目を集める。

すると警告するように言葉を続ける。

「売り言葉に、買い言葉、です。もう一度、殴って差し上げましょうか?もしくは美雄の蹴りでも構いませんが」

そして美雄はその場でアップを始めている。そのことから、どうやらやる気満々のようである。

逆にこう言う風に手荒っぽくしないと色々と泥沼化する可能性があるからである。

二人の様子を見た焔耶と蒲公英は冷や汗をかく。この二人はあまり容赦がないと悟った瞬間であった。

「あら、一刀じゃない」

華琳に声を掛けられて視線を移せば、いつのまにやら皆が来ていた。

「そう言えば、翠さん。遠慮なく従妹を殴ってしまいましたけど……」

「別に構わないぜ。こう言っちゃあ何だが、たまには痛い目を見た方がいい」

「あーっ!お姉様ってばひっどーい!!」

蒼燕の問いかけに遠慮するなとばかりに翠は言う。その言葉に蒲公英は不満を漏らす。

蒲公英自身、蒼燕の拳骨は一発だけで十分だった。正直な話、たんこぶが出来ると思ったほどだった。そんなのを何発も貰うと言うのは勘弁願いたい話である。

なによりも悪戯が出来ない。

蒲公英が懸念するのはその一点だった。

「そう言えば、璃々ちゃんや美以たちはどうしたんだっけ?」

唐突に話題を切り替える一刀。

言われてみいれば確かにいない。そして、雪蓮と冥琳に祭。紫苑と桔梗と華佗もいない。

「いまごろ入園式でしょうね。紫苑さんたちは保護者としてそちらに」

「…そうだったな」

蒼燕の言葉に一刀は納得する。

その時に風が大きく吹き、桜の木を揺らし、花弁を舞い上げる。

「そう言えば、これは何の花なのでしょうか?桃とはまた違うようですが」

稟が疑問に口にする。

確かに中国では桜はあまりお目にかかれないだろう。それも三国志の時代となればなおさらだ。

「これは、"桜"って言ってこの国の象徴の花だよ。新しい始まりや別れの象徴でもあるかな」

「へえ、そらまた随分と今のウチらに合った花やないか」

一刀が説明し、霞が景気がいいとばかりにカラカラと笑う。

確かにこれから新しい日々が始まるのだから、その門出としては合っているだろう。

実際、天気も快晴で青空に舞いあがるピンクの花弁がよく映える。

「ところで、そろそろ行かなくていいのかしら?」

「そうですね~。早めに行った方が余裕も持てますし~。初めての事でも冷静に対処できるでしょうから~」

人和の言葉に間延びした言葉で同意を示すのは風。

それから一刀と合流を果たした一行は、体育館に向かって進み始める。

歩いている途中、一刀は気付いた。風の容姿なのだが、制服なのは当然として二つほど違和感がある。

まず、宝慧がいない。代わりに制服の帽子が頭の上に乗っている。

次いで、いつも咥えているペロペロキャンディーがないということ。

「風。宝慧はどうしたんだ?」

さすがに気になったので一刀は思わず聞く。

「おいおい、兄ちゃん見えないのかい?」

と、宝慧の声がすれども姿が見えず。

しかし、注意深く見てみれば帽子が少しだけ盛り上がってるような気がする。

思わずに自然に風の帽子に手が伸び、掴みあげる。

「そこにいたのか……」

帽子の中に宝慧がいた。

「おう、さすがに俺がいねえと締まらねえからな」

それはキャラ的な意味なのだろうか?

一刀は疑問に思ったが口には出さないでおく。

そして、宝慧を置いてきたと言う選択肢はさすがになかった。

「…バレないようにしてくれよ。取り上げられたら、さすがに俺でもフォローと言うか助けようが……」

「大丈夫ですよお兄さん。ちゃんと宝慧は大人しくしてますから~」

「安心しな兄ちゃん。そんな、へましないからよ」

「と、宝慧も言っておりますので~」

風の言葉に一刀は苦笑いを浮かべる。

風の事だから何だかんだでバレない気がする。

そう思える時点で自分が色々と彼女達に影響されていることを認識する一刀だった。

ちなみにキャンディーは宝慧が持っていた。

 

ようやく体育館に着き、先生の指示に従い席に着く。

袁家の面子が少々気になるが、珍しく大人しくしているように見える。

麗羽に限って緊張している訳ではないだろうが。一刀はみんなの事が心配になる。

そして、アイツもここにいるのだろうか?

そんなことをふと思った。

 

 

「ぶえっくしゅ!!」

突然のくしゃみに周りが驚き、クスクスと笑い声が聞こえる。

一応、手で抑えたつもりだがそれでもよく聞こえていたようだった。

戦国は周りが女子しかいない事に居た堪れなさを感じながら、席に座っていた。

お嬢様学校と言うだけあって、周りにはそれなりの美少女がゴロゴロしている。そして、誘惑が多い。

何よりも最近共学化しただけあって男子が珍しいのか、周りからヒソヒソ話が聞こえる。

正直言うと、物凄く気まずい。それは、この場にいるほとんどの男子に言える事だろう。この中で森羅も及川もどうなっているやらである。

(及川は別に心配しなくてもいいか……)

緊張とかとは無縁そうな男だ。

今頃隣の女子にフレンドリーに話しかけていそうである。

そう戦国が考えているとあたりがシンと静かになる。

そして、入学式が始まるのであった。

お嬢様学校とは言え、なんてことはない。普通の入学式である。

新入生の入場があって、国歌斉唱があって、校長からの祝辞があってという具合である。

ただ、新入生の中に見なれた顔があり、緊張していたりと物珍しさに周りをキョロキョロしているのが見受けられた。

何よりも校長の祝辞の時に、貂蝉が壇上に上がったことで何人かが呆然としているのが目に浮かぶようであった。

「在校生代表から歓迎の言葉。在校生代表、不動(ふゆるぎ) 如耶(きさや)

マイクがなくても良く通りそうな声がスピーカーから流れ、一人の生徒の名前を呼ぶ。

最近の学校は在校生代表からの祝辞はあまりないらしい。が、この学園ではやるようだ。

壇上に注目していると黒髪を(なび)かせた、スタイルのいい女性が現れる。

彼女が不動 如耶なのだろう。いかにもお姉様と言った印象が受けられる。

凛とした声で彼女は淡々と歓迎の言葉を述べる。なぜか、周りの女子がうっとりしている気がするが、気のせいだろう。

気のせいだと思いたい。

こうして何の問題もなく入学式は終わった。

 

そして、入学式が終わり放課後となる。

正式なクラス発表は始業式の時になるようだ。

戦国と森羅の二人は自分の男子寮へと戻る帰り道にいる。

「いやあ、緊張しましたね~」

その道中、しみじみと言った感じに戦国の隣にいる森羅が呟く。

「まあ、確かに居辛いな」

なにせ周りを見渡しても女子ばかりである。教室に入れば質問攻めにあいそうだ。

「ところで、部活はどうする?」

「ああ、そう言えば学校と言えばそれですねえ。戦国さんはどうします?」

「俺は剣道部かなあ……注目を浴びそうだけど」

「確かに」

男子と女子の比率が1:9なのだから部活もそう言う比率になるだろう。

戦国の言うことに納得するように森羅は同意を示す。

「時間が何とかしてくれますよ」

森羅の言う通り、その内向こうも男子がいる環境に慣れてくるだろう。

そこらへんは本当に時間の問題である。

「それもそうだな」

そう呟いた時にはもう男子寮と言う名のプレハブが見えてきた。

そこで二人はそれぞれの部屋へと戻って行く。

森羅が扉の前に着き、鍵を開けて中に入ると、

「お帰り~」

なぜか、甘露がいた。

「何があっても不思議ではない。と言うか、なぜ繋がってるんです?」

よく周りを見れば、男子寮の部屋ではなくてお洒落なロッジの中である。

しかも隣を見るといつの間にか戦国がいる。

「やあ、戦国さん。さっきぶり」

「……ああ、さっきぶり。これはどうなってる」

森羅が挨拶すると戦国は一瞬呆然として居たのか、はっ、となって挨拶を返す。

「二人とも入学おめでとう。と言っても編入学だっけ?」

緑の天然パーマの様な髪をした中性的な少年、サラダが祝福の言葉を述べる。

「サラダさん、わざわざありがとうございます。それと、蒼。状況説明頼む」

「いつから説明キャラが私に」

戦国に呼ばれて、蒼はジーパンにポロシャツと言うラフな格好で出てきた。

「まあ、少しばかり戦国さんが気になってる事がありそうだったのでここに。お題は北郷一刀が戦国さんに既視感を覚えている事について。森羅さんもいるのは左慈と于吉の動向についてお二人に話しておこうかと」

「俺に既視感を覚えてるのは大体予想がつく。同じ外史、つまりは根っこは同じなんだ。俺の作った外史と薄いとは言え繋がってる。そう言うことだろ?」

「そう言う事です。私の外史も"恋姫†無双"と言う同じ外史から生まれた話ですからね。もしかしたら他にも彼が既視感を覚えるかもしれませんが、特に気にする事でもないでしょう」

「で、左慈と于吉の動向は?」

戦国が気になるのはどちらかと言うとそちらの方だった。

時には味方。時には敵。人の描く外史によって彼らの立ち位置は変わってはいるが、元々オリジナルは外史を否定しているのだ。

今回はどう言った行動に出るのかは分からない。

「サラダさんの調べによりますと、今のところ目立った動きもありませんし。どこかの外史に突っ込んでいる訳でも無いみたいです」

「俺も調べたが特に問題はない」

蒼が説明している所に別の声が聞こえるが、されど姿は見えず。

こんな事が出来るのは一人いか知らない。

「へたれ雷電さん、どこですか?」

蒼が名前を言うと足元にいつの間にやら段ボールがある。

それが突然持ち上がり、

「待たせたな」

台詞を言いながら登場した。

「相変わらずのステルス性能ですね~」

森羅が感心するように呟く。

「段ボールこそ至高のステルス」

と彼は言い切る。

存在しているのに周りに溶け込むさまは相変わらずの規格外である。

そして、へたれ雷電は切り替える様にして話題を変える。

「とまあ、今は特に大きな動きはないが。油断せずに行こう。引き続きミッションを行う」

へたれ雷電がそう言うと再び段ボールを被り、瞬く間に姿が周りの景色に溶け込み見えなくなる。

水面下で、戦いの火は静かに近づいて燃えているのかもしれない。

 

続く。

 

 

~あとがき劇場~

 

うむ、気付けばメモ帳が26KBになっていた。

 

いつぞやは63KBも書いていたので逆に少ないと感じる。

 

美雄「ところで、一部愚痴ってるのがいるんだけど……」

 

え?ああ、あっちの楽屋にいる方たちですか……さすがに出番もうちょっと先になります。

 

え、なに?4時間毎日書け?玲さん、すみませんけど勘弁して下さい。

 

あと、結さん"猿落とし"こっちに向けないで。

 

そこの二喬もハリセン持たない。

 

ええと、次はあっぱれ!天下御免です。

 

そちらをお待ちの方はお楽しみに。

 

美雄「……大丈夫かなあ」


 
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