No.395045

『舞い踊る季節の中で』 第124話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 黄忠の導くまま把群に辿り着いた劉備達。そこで待ち受けていたのは、想像以上の厳しい戦いの地だった。だけどその向こうにある未来を掴み取るために必死に戦う。

拙い文ですが、面白いと思ってくれた方、一言でもコメントをいただけたら僥倖です。

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2012-03-20 14:20:09 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:10326   閲覧ユーザー数:7407

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第百二十四話 ~ 月の輝きは厚き雲に覆われ、その灯を隠す ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

        

最近の悩み:

 結局、夕べの翡翠のお説教は何だっただろう?

 お説教の後、七乃と同じように翡翠の耳掃除をさせられたことから、この世界が誰かの耳掃除をするのが悪いって言う風習があるわけでもないようだし。

 

「んっ、主様くすぐったいのじゃ」

「くすぐったくても我慢、我慢。 動くと危ないからね。 それに慣れれば気持ちいいだろ?」

「ぬぅ、確かにこれは心地よいのじゃ」

 

 考え事をしながら、美羽の普段は隠されている穴の奥を覗きこむ。

 同時に見える美羽の横顔から、言葉通り痛みは無く、本当にくすぐったいのと心地良いとを同時に感じている顔に、俺は小さく笑みを浮かべながら鼻歌を奏でる。

 美羽が力を抜けるように…。

 身を任せれるように…。

 

「部屋を掃除するのと一緒で、耳の中も掃除されて喜んでるんだよ」

「それもそうなのじゃが。どちらかと言うと、主様の膝と手から伝わってくる温もりが心地よいのじゃ」

「ああ、何となく分かるなそれは」

 

 やはり歌に興味があるだけあって、聞いた事のないメロディに、美羽は身体の力をいっそう抜いて俺の鼻歌に耳を傾ける。

 緩やかな時間の中で交わされる美羽との会話に、俺はなんとなく納得する。

 そう言えば子供の頃、母さんにこうやられた時もそんな感じだったよな。

 妹がそれを見て自分もやると言いだしたっけ。

 

「なら、今度は妾が主様にしてあげるのじゃ」

「……え~と、俺もう自分で済ませたから」

 

 美羽の言葉と共に、その時の事を思い出す。

 は妹の操る耳かき棒が、誤って思いっきり奥に刺し込まれて、痛さのあまりに飛び跳ねて悲鳴を上げた事はいまだに身体が覚えている。あの時は本気で死ぬかと思ったよな。

 実際その時の妹はまだ幼かったから仕方ないとは言え、その後大きくなってもリベンジを願う妹の願いを、自分で出来るからと俺は拒絶し続けてきた訳だが、何となくその時の事が脳裏に浮かびあがり、美羽の願いを条件反射的に断ってしまう。

 妹と同じように食い下がる美羽の耳を、仕上げとばかりにそっと息を吹きかけると。

 

「ふひゃっ」

 

 小さな可愛い悲鳴をあげて一瞬強張った身体を、今度は逆に身体を弛緩させる美羽に今度は反対側だよと促す。そして美羽の反対側の耳を奥を覗きこんだとき。

 

「一刀さん入りま…す……ね……」

 

 一昨日前から任務で出かけてきた明命が顔を見せに来てくれたらしいのだが………。

 あの、もしかしてこのパターンは……。

 夕べの翡翠の意味不明のお説教が脳裏に浮かび、背中に冷たい汗が流れる。

 ……え~…と、悪い事じゃないはずだよね、これ?

 ただの耳掃除だし……ねぇ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月(董卓)視点:

 

 

 打ち合う剣戟の音が…。

 互いの怒声と断末魔の声が…。

 土ではない何かを踏み潰す音が…

 目の前で繰り広げられている光景に…。

 

「あわわ、星さんの隊を下がらしぇて下さい」

 

 紫苑さんに導かれるままに向かった先で私達を待っていたのは、想像を上回るほどの激戦でした。

 そこで起きている地獄絵図のような光景の中で、次々と出される指示。

 この地獄から抜け出すために、更なる地獄を作り出す事になろうとも。

 その先にある未来を信じて必死に思考を巡らせ、喉を振るわせ声を張り上げる。

 

「朱里ちゃん、白蓮さんの部隊が押されています。

 愛紗さんの部隊を其方に向かわせます」

「だったらその前に星の部隊を下がらせるの先よ。

 此方が下がって見せた所で敵の攻め気を出させて、鈴々の部隊に横撃を掛けさせるのっ!」

「詠さん、分かってます。

 愛紗さんの部隊にも鈴々ちゃんの部隊と連動して横撃を掛けさせる振りをして敵に動揺を誘い。其れを呼び水にして敵の前線の勢いを削ぐ事で、愛紗さんの部隊が白蓮さんの部隊に合流する時間を稼ぐ、ですね」

 

 白く美しい水鳥の羽扇子による指示が、戦場を大空のように舞う。

 左右の大きさの違う羽を持つ杖が、兵士の命の旋律を奏でて行く。

 

「私は星ちゃんの所に増援を送る」

「はわわっ。桃香様っ」

「分かってるよ朱里ちゃん。無理は絶対にしない。。

 こういう時自分が足手まといだって私が一番理解しているもん」

 

 予備の部隊の半数を連れて、自ら増援に向かう桃香さま。

 兵を動かすために…、鼓舞するために…、自ら前線近くへと向かう。

 自分が捕らえられたら全てが終わると知ってなお、その危険を冒してまで必要な事だと理解して。

 

「なら私もついて行きましゅ。

 朱里ちゃんと詠さんは此処で全体の指示をお願いします」

「雛里ち・」

「杖の動きを見逃したりしないから、安心していきなさいっ!

 朱里は戦場全体に集中して頂戴。 その代わり即応即断の指示は全部あたしがするからっ!」

 

 戦線を押し返すために、より迅速な策と指示をするために、怖いのを必死に我慢して駆けて行く雛里ちゃんに、詠ちゃんは全幅の信頼の言葉でその背中を押す。

 戦術においては、三人の中で飛びぬけている雛里ちゃんなら、窮地を凌ぎ挽回できると……。

 雛里ちゃんならば前線に立ちながらも、戦場全体を見る事が出来ると…。

 詠ちゃんはかつて官軍の筆頭軍師であった誇りなど欠片も気にせずに朱里ちゃんに任せる。

 箇所カ所の勝敗では無く、戦全体を勝利へと導く筆頭軍師の役柄を。

 

「桃香、アンタは兵を鼓舞したらとっとと戻ってくるのよ。いいわねっ!」

 

 彼我戦力は倍以上。

 それでも、なんとか互角近くで戦っている。

 数の不利を三人の軍師の繰り出す変幻自在の策と指示で……。

 勢いに押されそうになる前線を一騎当千の将達が……。

 

「詠さん、相手の騎馬隊を何とかしてください。

 そうすれば道筋は見えます」

「分かってるわよ。そんな事はっ。

 伝令、関羽隊に通達。敵の騎馬隊の動きを何とか止めなさいってね」

 

 みんな必死に戦っている。

 生き残るために…。

 未来を掴みとるために…。

 なのに私は、此処で見ているだけ。

 今の私に出来る事は、……何もない。

 ……何もできない。

 

「報告します。 黄忠隊より、矢がもうすぐ尽きるとの事です」

「分かった。すぐに予備を送るって伝えて、それとあまり使い過ぎないようにとも伝えなさい。 この戦が最期じゃないんだからね」

 

 出来る事が無い訳では無い。

 でも、それをするにはあまりにも遅すぎる。

 今、出来る事でなければ意味がない。

 それに、それをする訳にはいけない。

 約束があるから…。けっして破ってはいけない約束が…。

 

『その代わり真名に誓って欲しい。 勢力を集める事はしないとね』

 

 ついて来てくれる兵士が居なければ、将として戦う事は出来ない。

 その兵を集める事も、名を出して集める事も出来ない。

 董卓として、軍を率いる事などもっと許されない。

 

ぎゅっ…。

 

 何かが掌から滴り落ちるの分かる。

 掌に伝わるヌメリがそれが何なのか分かる。

 でもそれがなんだと言うんです。

 そんな事、今の事態に比べたらどうでも良い事。

 

 

 

 ……私は無力なんですね。

 

 

 

愛紗(関羽)視点:

 

「どけーーーっ!」

「ぐぁ」

「ぎゃっ」

「ぼっ」

「べっ」

 

 気合いの声と振るった槍と共に、数人が悲鳴を上げて吹き飛ぶ。

 刃の部分に当たった者以外は、生きているかもしれぬが、それでもあれだけ派手に吹き飛んだ以上、もう戦えはしまい。

 今相手にしていた敵兵を視界に収める事も無く、私は次の敵へと槍を向ける。

 別に敵兵を雑兵と侮っている訳では無い、相手は我等が軍と比べても遜色の無い程の精強な兵達。侮れば私はともかくついて来てくれている仲間の兵士達が危険に晒される。だから手に伝わった感触で相手の負傷具合を確認する事は忘れない。

 敵を弱卒と侮れば、痛い目を見る事は痛い程学んだ。

 幾ら磨こうとも個人の武では届かないものがある。

 そして私が守りたい物は…、私が掴みたい物は…、そんな個人の我で何とかなる様な矮小なものではないからだっ。

 

「兵士達よ我に続けっ!」

 

 兵の練度はほぼ同じ。

 だけど我等が兵士は疲弊している。

 幾ら気合が乗ろうとも…。

 未来を掴もうとその魂を燃やそうとも…。

 兵士達は私達将と同じではないのだ。

 其処にはおのずと限界がある。

 故に短期決戦が必須。

 もとよりそんな余裕など、何処にもありはしないがな。

 

「槍を前に突き出せっ!

 敵騎馬隊の動きを止めるんだっ!」

「「「「応っ!!」」」」

 

 敵前線の一部を切り開きながら、やっとたどり着いた敵の騎馬隊。

 山岳部の多い益州において、主力となるのは歩兵。

 敵将である厳顔も歩兵を主とした戦が得意と紫苑も言っていた。

 それ故に周泰殿と北郷殿部隊から借り受けた千の騎馬を率いた白蓮殿が、それを掻き見だすのを主軸にしていたのだが……。

 

「ぜったい動きを止めるなっ! 敵ごと踏み潰す気で突っ切れっ!」

「馬超!今度こそ我が矛を受けてもらおうっ!」

「やだね。誰が相手にするかっての」

 

 我が矛を馬上から受け止めながらも、馬の足を緩める事無く我が横を駆け抜けて行く。

 くっ、まただっ。

 西涼より流れてきたと言う奴ら騎馬隊が、我等の策をまるっきり同じ事をして返された。

 騎馬の数は我等が僅かに上回るものの、元より彼我戦力が倍近くあるため、決して有利とはいえない。

 白蓮殿とて白馬長史とまで言われた人物。そしてその名に恥じる事無く騎馬を用いた戦い方は我等の中で最も長け。馬の民と言われる西涼の騎馬隊と比べても何ら遜色のない働きを見せている。

 むしろ、馬超と馬岱の二人の将が率いる部隊を相手にして、白蓮殿は良くやってくれているといえる。

 ……いえるのだが、それは互角に持ち込んでいるだけと言う事いすぎない。そうなれば騎馬でもって掻き乱す事の出来ない我等の前にあるのは、純然たる倍以上もある数による不利な状況。

 なら、私がやる事はただ一つ。

 

「うぉぉーーーーーっ!」

 

 気合の声と共に駆ける!

 敵兵の事など関係なしに全力で駆ける!

 我が前に立ちふさがりし敵兵を、気迫でもって退かせるっ。

 退かねば粉砕する。

 ただそれだけの事と。

 犬死したくなければ退けとっ。

 

「おいおいっ。幾らなんでも普通馬の脚に追いつくか!?」

 

ぎぃーーーんっ!

 

「我が矛を受けてもらう。そう言ったはずだ。錦馬超っ」

 

 砂埃を立てながら地を駆ける勢いのままに馬超めがけて跳躍する私を、馬超は驚愕しながらも我が剛檄を受け止める。

 やはり馬上からの利は、馬超ほどの相手では覆せぬか。

 ならばっ…。

 

「やばいっ、避けろっ!」

「ぐぁっ!」

 

 馬超の注意の声も間に合わずに、近くを走っていた騎兵に飛び掛かりざま、馬上の兵を蹴り飛ばして馬を奪い取る。

 

がんっ!

「くぅっ!」

 

 だが、そんな絶好の隙を馬超が見逃す訳も無く、向かってくる槍を間一髪で受け止める。

 だがその槍の鋭さに…。

 槍に籠る馬超の背負いしものに…。

 私の背が冷や汗をかく。

 我が手に痺れが走る。

 

「今のを受け止められるとは思わなかった」

「はっ、今程度の攻撃が全力だとは、まさか言うまいな」

 

 こやつ、やはり強い。

 そして知っている。

 槍の重さの本当の意味を…。

 

「無茶苦茶する奴だな」

「はっ、無茶ぐらい幾らでもするさ。

 我が矛を信じ、共に歩む者のためにはなっ」

 

ぶぉんっ!

 

「おっとっ。そりゃあ違いない。気が合うな」

「ならば今度こそ我が矛に付き合ってもらうぞ馬超っ」

「騎馬戦であたし等西涼の民に勝とうなんて、百年早いって教えてやるさ」

 

しゅっ!

 

 互いに馬を駆けさせながら槍を振るう。

 私はもとより、馬超も配下の兵士はついて来れない。

 我等のような将同士の戦いに巻き込まれればどうなるか知っているが故に。

 

ぎぃんっ!

がきっ!

 

 受けに回る数が多くなる。

 掌に痺れが走り続ける。

 腕が重くなってゆく。

 武の腕は互角か私の方が上。

 だが、機上と言う条件が大きな差が生んでしまう。

 馬上と言う不安定さを保つために太腿と膝を絞め続けるため、どうしても普段とは振りが違ってしまう。

 込める力が大地の上とは違うと意識してしまう。

 それはほんの僅かな差。

 だけど大きな差。

 なにより決定的なのが馬の扱い方が違い過ぎる。

 

どかっ!

「くっ」

 

 相手の馬に押された私の馬が、一瞬よろけた隙を馬超は見逃さない。

 私の攻撃を馬超は難なく受け止めるのは、彼女の馬が攻撃を受け止める馬超を助けているからだ。

 もし私が同じ事をやろうとすれば、どうしても馬を操る事に意識が割かざる負えない。

 まさに人馬一体。生まれた時より馬に乗り、馬の背でその生涯を終えると伝えられるだけの事はあると言う事か。

 だが、それでもこの攻防に意味はある。

 彼女と彼女の部隊を、私達にひきつけておける。

 ならば白蓮殿を…、そして仲間達を信じるだけの事。

 この不利な状況を何とかしてくれると。

 

「ちぃっ、まだ粘るか。武神関羽の名は伊達じゃないと言うことか」

「ふっ。その二つ名はもう捨てた」

「負けた言い訳とはらしくないなっ。残念だぜ関羽っ」

「言い訳かどうか、確かめてみるんだなっ。

 でぇーーーーいっ!」

 

 気合いと声と共に、馬超の槍を打ちかえす。

 魂を燃やして更に"氣"を高める。

 相手を打ち倒すのではなく敵軍を打ち倒す。

 その為ならば、幾らでも不利な状況に堪えて見せよう。

 無理を通して、勝利を掴みとって見せよう。

 我が槍は我一人に非ず。

 私を信じて共に戦場を駆けてくれる兵士達。

 そしてそんな我等を信じてついて来てくれる民全ての想い。

 我が槍は彼等と共にあるのだ。

 

「うぉぉぉーーーーーーっ!!」

 

 来るがいい。我は軍神関羽。

 民を包み込む闇を打ち払いしもの。

 彼等の笑顔を守りし守護者。

 まだその道は遠くとも、必ず辿り着いて見せるっ。

 多くの仲間と、弱い私を強いと信じてくれる皆と共になっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき みたいなもの

 

 

 こんにちは、うたまるです。

 第百二十四話 ~ 月の輝きは厚き雲に覆われ、その灯を隠す ~ を此処にお送りしました。

 

 冒頭では相変わらず一刀が無自覚にフラグを立てていますが、その後のO・HA・NA・SHIも含めて微笑ましい日常ですよね ……あっ何処からか一刀の悲鳴が聞こえる(笑

 

 今回の主役は月ちゃんと愛紗を描いてみました。

 かつてはさして望んでいなかった力を、無力な今の自分を実感する月。

 変わりつつある愛紗を描いてみました。

 そんな訳で本格的に始まった益州攻略。圧倒的な不利にも拘わらず。それでも互角な戦いに持ち込んでいる劉備達ですが、この先どうなって行くのかは次の投稿まで、ぜひお待ちください。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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