歩が好太郎と章治に一通り自分達の事とDプロジェクトの事を話し終えると、章治はしばらく黙っていたその口を開いた。
「ほぉ~う、めっちゃ胡散臭い話やなぁ~」
「で、ですよね~……」
「よし信じたる」
「…って信じてくれるんですか!?」
亜由美は章治の信じてくれなさそうな雰囲気から諦めかけたその時、まさかの180度真逆の答えが返って来た。
まさかそう来るとは思いもしなかった。
「そりゃそうやで。科学者たる者まずはそれを信じて実証せんとやってられんからな」
「っていうか、科学者だったんですね……」
とても彼の格好からはそんな事など想像できない。むしろストリートダンサーと言った方がシックリくる。
「まぁな!それにな、このライダーズギアかてウチが造ったもんなんやで!」
「そうだったんですか!?」
受付カウンターに置いてあったアタッシュケースを持ち上げながら自慢げに言ってきた。
こんなハイテクな物を造れるとか…この人見かけによらなすぎる……。
「そんで、その歪みっちゅうモンがこの世界にあるからそれを消しに来た、と……」
「そうです、何か心当たりはありますか?」
章治は亜由美との話に一区切りつけると、歩に自分たちが来た目的を再確認して来て、それに歩が抑揚のない声色で訊ねた。
「……いんや、特にないなぁ」
「……そうですか」
章治の返答に歩は素っ気なく答えたが、亜由美はその章治の様子に違和感を覚えた。
彼の目が真剣なのだ。「これ以上関わるな」と言っているかのように……。
歩もそれを察したのかそれ以上の追及をしなかった。
しかし章治が「歪み」に関わりがないとは言い切れない。
好太郎もその雰囲気に勘付いたのか目を鋭くして無言で章治を睨み付けていた。
その雰囲気によって周りが沈黙に包まれてしまう。
「え、え~とぉ…取り敢えずもうすぐ日が暮れるし、何か食べに行きませんか?」
その押し黙った空気に耐えきれず亜由美がそう切り出した。
夕食と言っても亜由美にとっては三時間ほど前に「龍騎の世界」で既に済ませたはずなのだが、この世界ではまだ夕方の五時だ。
食生活のバランス崩れそうだなぁなどと考えながら今後の旅が不安になって来た所で、章治が一つ意見してきた。
「なぁ嬢ちゃん、メシっつってもどこで食うねん?ウチ、お尋ねモンやからファミレスとか入れへんで?」
「え?じゃあ何食べて生活してたんですか?」
「そりゃあもう、そこらへんにおったネズミとかトカゲを焼いて……」
「わあぁぁぁぁ!!やめてっ!それ以上言わないで下さい!!」
章治のかなり野性的な食生活に思わず鳥肌が立った。
一体どこの放浪者ですかアナタは!?イヤ、実際放浪者ですけども!!
そんな事を心の中でツッコンでると、歩は納得したように頷いて章治に尋ねて来た。
「“焼いて食べてた”って事は、少なくとも火はあるんですね」
「そやで~、このタテモンのガス供給パイプをイジりゃあ、ウチに取って朝飯前よ!」
「……それって犯罪じゃないのか?」
「好太郎さん、ツッコミが不足しています!!歩!変なところに納得しない!!それと何気に章治さんの言葉の続き言うのやめて!?鳥肌…!鳥肌が……!!」
この時点でボケとツッコミが綺麗に分かれてしまった。
一応好太郎はツッコミ側ではあるが、無口なため実質自分一人だ。正直、もう泣きたい……。
「それじゃあ何か食材でも買ってくるよ。何か欲しい物は?」
「あ、じゃあビール頼むわ。ひっさびさに飲みとうなって来たしなぁ~」
「二人とも無視しないで!?」
もう、ホントに泣きたい……。
「分かりました。それじゃあ行ってきます」
「……待て」
歩が廃墟となったホテルから出て行こうとした時、好太郎が呼び止めて近寄って来た。
好太郎はその無表情で険しい目つきで歩を見据えながら言い放った。
「何?何か欲しい物があるの?」
「そうじゃない…お前にはまだ聞きたい事がある。少し付き合え」
「……ウン、いいよ」
歩は頷きながら了承すると「ついて来い」と言って隠れ家から出て行った好太郎の後に続いた。
「……なんだろ、すっごく不安だなぁ」
好太郎の雰囲気に亜由美は言い様のない不安に駆られていた。
歩はどこか子供っぽい所がある。それは“龍騎の世界”で彼が落ち込んでいた時に感じた事である。
それを思い出すとなんというかアレだ、小学校に入ったばかりの息子が学校でイジメにあっていないか心配する母親の様な心情になって来る。
「…ってお母さんか私は!!」
「ええツッコミすんなぁ嬢ちゃん…それにしても、ビール飲めるんかいな……」
そして章治は亜由美とはまた違った不安に駆られている様子だった。
好太郎につられてやってきたのは今隠れ家として使っているホテルの地下駐車場だった。
そのコンクリートに囲まれた空間に二つの足音がカツカツと音を鳴らしている。
その内の一つが止まると、もう一つの足音も一拍置いて止まった。
「それで、話って何だい?」
「お前、アイツが『歪み』だって気付いてるんじゃないのか?」
歩が尋ねると、好太郎はこの空間に響く、低い声で聞いてきた。
好太郎もまた、亜由美と同じく感付いていた。
彼は「歪み」の感知に特化したワールドウォーカーだ。
彼にはディジェクトドライバーによる副作用によって人が寄って来る事はないが、世界の脅威はその副作用の影響を受けないので近づいて来る。
亜由美が傍にいたのに、彼女が世界の脅威だと勘違いしなかったのが何よりの証拠だ。
これは歩には無い特性だが、彼のあの反応を見れば大体察しがつく。彼が「基点」であり「歪み」であるという事に。
「ウン、多分そうだろうね」
「だったら何故放っておく?いくら奴が『基点』とはいえ、『歪み』をそのままにしておくわけにはいかないだろ。それにこの世界の元々の『基点』はファイズの筈だ。ここでデルタを倒しても『基点』がファイズに変わる事で解決できるだろ」
歩が淡々と肯定すると、好太郎がもっともな言い分を言って来た。
確かにこの世界は「ファイズの世界」のリイマジネーションである「デルタの世界」だ。
もしここで「基点」であるデルタを倒しても、本来の基点であるファイズがその役目を果たすのだ。
しかし、歩はそれに賛同しかねた。
「僕は何の事象もなくライダーを破壊するわけにはいかない。それに彼は人間だからね。殺す気にはなれない」
それは歩の否定的な言葉だった。歩はこれまで人を殺した事がないし、これからも殺すつもりはない。それがオルフェノクでもだ。
例え世界の脅威となってしまった者達と言えど、彼らは元は人間だ。
そんな彼らを殺す事には気が引けたのだ。
以前ゴートファンガイアを倒した事があったが、アレは元から異形だったのでそれほど罪悪感はなかったからだ。
「偽善だな」
好太郎は目を鋭利な刃物の様に鋭くさせて、そんな歩の考え方を切り捨てた。
好太郎は今まで「ライダーサークル」の中をいくつも渡って来たが、そんな甘い考え方を持った事がない。
敵は敵、それ以外の何者でもない。ましてや「歪み」となれば尚更だ。
好太郎はそういう「歪み」を何度も見て来たし、その「歪み」が世界を壊す瞬間も見た事がある。
だからこそ決めたのだ。「歪み」が何であろうが徹底的に拒絶し、破壊するだけだと……。
「何故殺そうとしない?アイツ等は最早ただの怪物だ。そんな奴らに慈悲なんて与えてどうする?むしろ殺してやって罪を着せない様にしてやる方が慈悲だろ」
「……確かにそういう考え方もあるね。でも彼らの中には人間として生きようとする人達もいる。そんな彼らの命を奪う事なんて出来ない。それは章治さんにも言える事だよ」
「……もう、これ以上何を言っても無駄の様だな」
互いの意見の食い違いに好太郎は苛立ちを覚えながらロングコートの中からディジェクトドライバーを取り出し、腹部にセットした。力尽くで分からせるつもりなのだろう。
「“バックアップエージェンシーシステム”だか何だか知らないが、そんな甘い事を何時までもぬかしてたらこの先やっていけないぞ。俺がその根性を叩き直してやる…変身」
[カメンライド…ディジェクト!グオオォォォォ!!]
カードをバックルに挿入し、ライドホーンを叩きつけてディジェクトへの変身が完了すると、地面を思いっきり殴りつけて穴をあけた。
その衝撃音がコンクリートの壁や床に反響し、やかましい位に鳴り響く。
その騒音の中でディジェクトは顔をゆっくりと上げ、紫色の複眼で歩を睨みつけた。
「お前も変身しろ。お前が言うこの“アプローチアウトシステム”・ディジェクトが貴様のその甘ったるい考え方を拒絶してやる」
その宣戦布告に歩は軽く溜め息を吐くと、クラインの壺からディージェントドライバーを取り出し、腹部にセットした。
「本当は戦いたくないんだけど、やるしかないみたいだね。僕が勝ったら頼み(・・)を聞いてもらうよ…変身」
[カメンライド…ディージェント!]
歩も同じくカードをバックルに挿入して変身すると、グローブを強く嵌め直す動作の後、ディジェクトに向き直った。
今まさに、二つのDシリーズが激突しようとしていた。
世界を救う主導権を賭けて……。
歩達が出て行ってしばらくした後、「ヒマやし、ダンスの練習でもするかぁ~」とぼやいた章治がロビーの待合席の下に置いていた大型のCDラジカセを取り出してそれをしばらく操作すると、そのCDラジカセから、ハードロックな曲が鳴り始めた。
そしてその曲に合わせて章治は踊り始める。
その動きは激しく、荒々しいものの、何処か繊細で無駄のない動きだった。
素人目から見てもその動きはかなりうまく、プロのダンサーに匹敵しそうなものだった。
あの灰色の猿との戦闘中もこれに似た動きで相手を翻弄していたことから、彼のバトルスタイルはこのブレイクダンスを基に作られたという事が分かる。
「よっ、ほっ、はっ」
(一応この人が『基点』なんだよね…でも何だろう、それだけじゃない気がする……)
亜由美は章治のブレイクダンスをホテルには似つかわしくないボロボロのソファーに座ってそのダンスを観賞しながら、そんな考えに耽っている内に、曲が終盤に近付いてきた。
それに合わせて曲のテンポが速く激しくなり、それに合わせて章治の動きもより速く、複雑なものになって行く。
やがて「ジャン!」という音を最後に曲が終わると、決めポーズを取って止まった。
それに小さな拍手を送ると、章治は快活な笑みを見せながらこちらに近寄ってきて亜由美の隣に座った。
「どうや、カッコよかったやろ?」
「はいっ、すごく上手でした」
「せやろぉ~、ウチにホレたんとちゃうか?」
「それはないです」
調子に乗り始めた章治のふざけた台詞をバッサリと切ると、ガクッとうなだれて「そこまでハッキリ言わんでもええやろぉ~」と悲壮感たっぷりに呟いた。
(やっぱり、そんなに悪い人には見えないなぁ~…やっぱりこの人が『歪み』ってわけじゃないのかな?)
亜由美はその章治の人間らしい言動を見ながらこのパンクな格好の青年が世界を壊す存在とは思えなかった。
歩の話では、この世界の仮面ライダーは世界の脅威であるオルフェノクであると聞いた。
つまりこの青年がデルタというライダーに変身した事から、オルフェノクであるという事になる。
しかし彼には少し変な所があるものの、それほど危険な人物には見えなかった。
そんな時、亜由美はある事を思い出した。
「あ、そう言えば章治さん」
「ん?なんや?」
章治は元々スマートブレインというオルフェノクを管轄する組織に所属していたと言っていた。
しかし、今はその組織から抜け出し、オルフェノク達を倒しているとの事だが、何故そんな裏切り行為をし始めたのかが気になった亜由美は、章治に尋ねようとした。
「章治さんって何で……」
『デルタギアは返してもらったぜ』
『っ!?』
だがその時思わぬ第三者が現れた。
その第三者の方を向くと、受付カウンターに置いてあったデルタの変身ツールが入ったアタッシュケースを持ったモグラ型のオルフェノク…モールオルフェノクがカウンターの奥から言い放っている姿があった。
「お前!確か研究所におった……!」
『覚えてたんだなぁ、こんな平社員の事も…なぁ、三木主任……』
モールオルフェノクはネチッとした嫌味ったらしい口調で答えた。どうやら章治の元部下だったようだ。
「何でここが分かったんや!?」
『なぁに、今回ここを見つけたのは偶々さ。何だか聞き覚えのある曲が聞こえて来たんでもしやと思ってなぁ』
「ちぃ!もうチョイ音量下げとくんやった…!」
『ま、ここであんたとやり合うつもりはねぇよ。ノルマも達成したしなぁ』
章治が悔しがるのを余所に、モールオルフェノクはアタッシュケースを持ち上げながら、嫌みタップリな台詞を吐き捨てた。
『じゃあな、主任。後で多分社長と秘書が来るだろうからよろしくな!カァーカカカカカッ!!』
独特な笑い声を上げながら後ろに宙返りをしてそのまま頭から落ちると、モールオルフェノクはカウンターから姿を消した。
章治と亜由美がその向かい側へ急いで駆けつけると、その床にはマンホールほどの大きさの穴が開いていた。
どうやらここから忍び込んできていたようだ。
「くっそぉ~逃がしたか…!まさかここを嗅ぎつけるとは思わんかったわ…!!」
「わ、私、歩と好太郎さん呼んできます!」
亜由美はそう言うと、歩をイメージして次元断裂空間を展開し、その中へと走り出した。
その際章治が「おぉう!?」と驚いた声を上げていたが、説明は後でいいだろう。
とにかく今は歩にこの事を伝えるのが先決だ。
「何や今の…アレが世界を渡る方法かいな……ま、こちらとしては好都合やけどな」
章治は亜由美が灰色の空間の中に消えたのを見届けてしばらく思考が停止していたが、ようやく復帰してそう呟くと、顔にオルフェノク特有の痣を浮かび上がらせた。
すると章治の身体が灰色に変色しながら盛り上がり、その姿をイモムシに無理矢理手足をくっつけたかのような異形のキャタピラーオルフェノクに変化させた。
(起きるなよぉ~絶っっ対に起きるなよぉ~マジで……)
そう念じながらキャタピラーオルフェノクはゆっくりとした動作で慎重に穴の所にしゃがみ込むと、その姿を更に変化させ始めた。
[アタックライド…ファング・アーム!]
「ガアァッ!」
[アタックライド…スラッシュ!]
「…ヌッ!」
ディジェクトは「アームファング」の効果を発動させると、両腕に刺さった複数のライドプレートを変質させて一つの大きなブレードに変形させてディージェントに特攻してきた。
それに対してディージェントは「スラッシュ」の効果で攻撃モーションに斬撃の属性を付加させると、その両手の手刀でディジェクトの二本のブレードを防いだ。
「グウゥゥゥ……」
「ヌゥゥ……」
「ガアアッ!!」
「グハッ!?カッ…ハッ……!」
互いに鍔迫り合いになったのも束の間、ディジェクトはディージェントの左脇腹を蹴って吹き飛ばした。
吹き飛ばされたディージェントは壁に叩きつけられ、肺の中の空気を一気に吐き出されて息を詰まらせた。
いつもなら事前に相手の動きを空間把握能力によって予測して避ける事が出来たのだが、相手が自分と同じDシリーズである為、常に装甲を形成する為に潜在演算を行っている。
その潜在演算がジャミングの役割を果たしているので相手の動きを予測する事が不可能なのだ。
「ガアアァァッ!!」
「クゥ…ハァッ!」
「グァウッ!?」
壁に叩きつけられて怯んでいる隙にディジェクトが斬りかかろうと迫って来るが、それをハイキックによる斬撃を飛ばすことで牽制し、そのハイキックから流れる動作で回し蹴りを二回放って斬撃による追撃を与えようとした。
「フッ!ハァッ!」
「ガウッ!ガアッ!!ガアアァァァッ!!」
しかしその斬撃を両腕のブレードで弾き飛ばし、再び突っ込んできた。
[アタックライド…ブラスト!]
「ハアッ!」
「グウゥゥゥッ!?」
だがそうなる事ぐらいはディージェントにも察しがついていた。
既に回し蹴りの最中にバックルを展開し、カードをクラインの壺から取り出していたディージェントはディジェクトが突っ込んでくると同時に「ブラスト」の効果を発動させて両手からエネルギー弾を連続でディジェクトに放った。
そのマシンガンの様な連続射出にディジェクトは後退しながらもカードホルダーからカードを一枚取り出し、バックルに挿入すると、ライドホーンを叩きつけて効果を発動させた。
[アタックライド…リジェクション!]
「シ、シックスエレメントを拒絶する!!」
そう宣言した途端、ディジェクトに命中したエネルギー弾がディージェントの方に跳ね返って来た。
「ッ!?ウッ!グァッ!」
跳ね返されたエネルギー弾をまともに受けてしまい、その予想外のダメージに思わず膝を突いてしまった。
「どうした…もう終わりか?」
「………」
膝を突きながらも、ディージェントはどうやってこの状況を打破するか考えを巡らせた。
ディジェクトの「アームファング」は先程「リジェクション」のカードを使った為、能力が上書きされて元のライドプレートの形状に戻っている。
そして今宣言した効果はシックスエレメントの拒絶……。つまりシックスエレメントは通用しないが、それ以外なら効くと言う事だ。
(という事は、物理的な攻撃……)
「おい、やる気があるのかお前……」
「ハッ!」
「ぬおっ!?」
ディジェクトが油断して近づいてきた所を足払いして態勢を崩させると、その隙に新たにカードを発動させる。
[アタックライド…スラッシュ!]
「フッ!」
「グゥッ!うっ…ぐあっ!?」
「っ!?」
態勢を立て直そうとしているディジェクトに手刀を浴びせようと斬りかかるが、その手を鷲掴みにされて防がれてしまった。
だが「アンチ・キル」を介さずに斬り付けたため、その装甲の薄い手から血が噴き出した。
ディージェントはそれに思わず動揺して動きを止めてしまった。
そして、その血を…自分がやった事で噴き出した血を見てディージェントは強烈なフラッシュバックに襲われた。
『コラ!大人しくしろ!!』
『く、うああぁ!!』
『!?おい、何してる!?やめろ!!』
『うわああぁぁぁ!!』
『ぎゃああぁぁっ!!』
『早く、止血しろ!!』
『ダメです!出血が止まりません!!』
『クソ…!実験体の分際で何をしてるんだ!この……』
『人殺しが!!』
「…ッ!!ハァ…ッ!ハァ……ッ!!」
「…ッ!ガアァッ!!」
「ガハッ!」
ディジェクトはその隙を見逃さずに突然激しく呼吸を乱しながら頭を抱え出したディージェントの腹にボディーブローを入れて殴り飛ばすと、二枚のカードを取り出して一枚ずつバックルに挿入してそれぞれの効果を発動させた。
[アタックライド…ファング・レッグ!]
[ファイナルアタックライド…ディディディディジェクト!]
一枚目のカードの効果で右足のライドプレートをブレードに変形させ、更に二枚目のカードで自分とディージェントの間に十枚のディジェクトのライダーズクレストの描かれたビジョンを展開した。
「グウゥゥゥ…ガアアァァァァ!!」
デジェクトは低く構えた後、雄叫びを上げながらビジョンを通って飛び回し蹴りを放った。
ビジョンに触れるごとにディジェクトの身体に吸い込まれるように消えて行き、その中に溜めこまれたシックスエレメントがブレードに送り込まれて行く。
一枚、二枚と吸収して行く度にそのブレードに赤黒いドロドロとしたノイズが包み込まれて行き、飛び回し蹴りの回転速度も徐々に上がって行く。
「ゲハッ…クゥ……!」
ディージェントは咳込みながらも何とか立ち上がりクラインの壺からカードを取り出そうとするが、先程のフラッシュバックの影響で上手く演算ができず次元断裂が出てもすぐに靄(もや)の様に消えてしまう。
そうしている間にもディジェクトの凶刃はもうすぐそこまで迫っている。
(間に合わ……!)
その攻撃を避ける事が出来ず、ディジェクトの必殺技・「ディメンジョン・ストライザー」が直撃し、ディージェントはそこで意識を失った。
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ディージェントVSディジェクトです。