No.395020

迷子の果てに何を見る 第四十四話

ユキアンさん

あそこまでゴミだとは思いもしなかったわ。
byリーネ

2012-03-20 13:17:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3420   閲覧ユーザー数:3205

アドリブ

 

side リーネ

 

春休みも明日で終わるため麻帆良に帰ってくるとあのガキがはしゃいでいる姿を見て腹が立った。

 

「姉上、落ち着いて下さい。殺気が漏れてます」

 

「そう言う刹那も、というよりみんなか。お父様達を心配させたくないからアレの事は忘れましょう」

 

『……はい』

 

渋々ながらもみんな納得はしてくれた。

久しぶりの我が家に入るとちょうどお父様が店番をしていた。

 

「お帰り」

 

『ただいま』

 

「ストレスの発散は出来たみたいだな」

 

「ええ、でも見たくないものを見てしまったけど」

 

「あの野菜か」

 

思い当たる事があるのかお父様が苦笑する。

 

「私たちがいない間に何かあったの?」

 

「ああ、まあ長くなるからお茶でも飲みながら話そう」

 

それぞれの部屋に荷物を置いてからリビングに集まるとお父様が既にみんなが好きな飲み物を用意してくれていた。それからお父様が話してくれた話は中々に笑える話だった。お父様の元教え子達が学園に対して春休み初日からデモを起こして、3日前までその対応に追われていたらしい。その間あのガキは軟禁状態にあったらしい。いい気味だと笑ったのだけど、ふと思い出した。

 

「そういえば茄子の依頼、動き出す必要があったわね」

 

「ああ、あの吸血鬼の噂はその為か。まあ一般人に迷惑だけはかけない様に注意する様に」

 

「分かっているわ」

 

「それなら良い。アレに巻き込まれて一般人を不幸にするのは忍びないからな」

 

「お父様、もしアレが一般人をパートナーにしたらどう行動すれば良いかしら」

 

「記憶を消去して仮契約も解除」

 

「出来るだけ傷つけたりもしないのよ。どうせクラスメイトがパートナーになるでしょうから」

 

「眠りの霧を使うから大丈夫。覚悟も無い女の子を戦いの場に連れてくるアレにはお仕置きするかもしれないけど構わないよね、アリス」

 

「ええ、死なない程度にいたぶってあげて下さい。むしろ私も参加したい所ですが今回は不参加にしておきます。代わりに皆さんも参加して下さい」

 

「ちなみに参加すると一人当たりこれ位貰えるわ」

 

魔力に色を付けて空中に数字を書く。使い道があまりない魔法だけど私が初めて作ったオリジナルの魔法だから愛着はある。

 

「「リーネ(ちゃん)、私(ウチ)も参加する」」

 

値段に釣られてチウちゃんと木乃香も参加を決めた。

 

「じゃあ、初日から動くから準備だけはしておいてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「3年A組~~~~~」

 

『ネギ先生~~~~~~~~~~~~~』

 

結局、こいつが担任か。タカミチの方が副担任ねぇ。タカミチも茄子に変な出張で今日から1週間程いないし。少し絞めようかしら。

 

「うるさい」

 

言霊に魔力を乗せて教室全体に響かせる。ついでに殺気が漏れてしまった為か宮崎さんや鳴滝姉妹といった数人が涙目になっている。

 

「とっととSHRを始めて貰えますか」

 

「リ、リーネさん、どうしてそんなに機嫌が悪いのですか」

 

雪広さんか、ショタコンを除けば完璧なのに。まあ、私もファザコンでマザコンだから人の事は言えないから何も言わないけど、少し戯言に付き合ってもらおうかしら。

 

「そうねぇ、担任になったというのに教師としての覚悟も何も無いガキのせいでお父様のあんな姿を見る羽目になってしまったのだから、その元凶が目の前にいて機嫌が悪くならないとでも」

 

「天流先生のあんな姿?」

 

「少し時間が空くと心ここにあらずと言った感じにぼーっとしているのよ。教師という仕事に生き甲斐を感じていたみたいだから急にやる事が無くなって元気がなくなってるのよ。私たちに心配をかけない様に無理に振る舞っているから余計に痛々しいのよ」

 

「しかも茄、ぬら、じz、学園長がスプリングフィールド先生の不祥事を全部押し付けたらしくて再就職先から断られたらしいしな」

 

あらチウちゃんも手伝ってくれるみたいね。即興だけどチウちゃんとなら合わせるのは難しくないわね。私が真実に近い嘘を、チウちゃんが嘘に思える真実を、そして聞く人の想像で戯言の出来上がり。

 

(というわけでみんなちょっと即興劇に付き合ってもらうわよ)

 

念話で刹那達にも協力して貰う様に言ってから劇を続ける。

 

「チウちゃんそれって本当なの?」

 

「らしいよ。先日、風祭の人にそう言う動きがあるって教えてもらったから」

 

「ふう、今日は早退させてもらいます。刹那と茶々丸も来なさい」

 

「はい」

 

「どこに行くおつもりですか」

 

「ちょっと茄、ぬら、よう、じz、学園長の所にお礼参りに」

 

誰にも見えない位置から先端に赤いシミがある釘バットを取り出し教室から出ようとする。赤いシミ?もちろんけっ……ペンキよ。

 

『ちょ、ちょっとストップ~~~』

 

叫びながら雪広さんと神楽坂さんに抱きつかれて動きを止める。茶々丸はチア部の三人に同じ様に止められている。ガキは慌ててるだけみたいね。不甲斐ない。お父様は一体何を考えているのかしら。何れ話すとだけ聞いているけど。

 

「クーフェイさん、楓さん、刹那さんを」

 

「むっ、クー、楓、邪魔をするなら切り捨てるぞ」

 

「一旦落ち着くでござるよ」

 

刹那はクーさんと長瀬さんと睨み合いを始める。このクラスで動ける武闘派は後一人

 

「真名」

「龍宮さん」

 

「「あんみつ十杯」」

 

さすが雪広さん、考える事は一緒か。だけど私たちには切り札がある。携帯を取り出し連絡を入れる。

 

「零樹、元凶が分かったわよ。今すぐ学園長室に乗り込みなさい。私たちもすぐに行くから。それから真名、あんみつをお父様に作って貰える様に頼んであげるわ」

 

『分かったよ姉さん』

「すまんな委員長、レイトさんのあんみつが十杯と聞いては断れない」

 

これで状況は一変した。これで嫌がらせの舞台は整った。まず、真名がクーさんと長瀬さんを押さえ刹那がチア部を排除、雪広さんと神楽坂さんが気を取られた隙に怪我をしない様に投げ飛ばしガキの制止を振り切り学園長室まで一気に駆け抜ける。ちょうど反対側から零樹も来ていたので二人で走って来た勢いのままタイミングを合わせて学園長室のドアに回し蹴りを放つ。

もちろんスパッツを装備しているので下着を見られる様な事は無い。淑女としては当たり前よね。

そして強化は一切していないけど鍛えた私たちの力にドアは耐え切れずに吹き飛ぶ。

 

「「さあ、お前の罪を数えろ」」

 

やっぱりこの台詞は格好良いわね。お父様と零樹がよく使うはずだわ。

 

「ひょっ!?」

 

「ネタは上がってるのよ。あのガキの不祥事を全部お父様に擦り付けているらしいわね」

 

「……何の事じゃね」

 

「春休みの再現をして欲しいのかしら。それとも惨殺死体を作って欲しいのかしら」

 

「それとも学園長が隠れて行なっている事を公表しましょうか。例えば本国の意向を無視して内密に世界樹を調査したりとか」

 

あら?零樹ったら春休みの間に調べたのかしら。

 

「賄賂とか裏金に関しても幾らかありますけど」

 

刹那も集めていたみたいね。感心するわ。

 

「さて、一旦この件は横に置いて、依頼の件だけど昼休みから動くわ。あのガキでも分かる様に分身を保健室に送って魔力を放出するから他の魔法先生に通達しておきなさい。分身には変装させて首筋にある吸血痕を見せれば性格から考えて夜に見回りに出るはずだからそこで襲うわよ。これも通達しておきなさい。邪魔をすれば殺すから」

 

「さすがに殺人は勘弁してくれんかのう」

 

「契約外だからパス。それに通達しておけば良いだけでしょう。ガキの方は契約内だから殺しはしないけど治療部隊を用意しておきなさい。6人掛かりで半殺しは確定しているから。もちろんお金は払ってもらうわよ。これは迷惑料だとでも思っておきなさい。というより、お父様の退職金がまだ払われていないみたいだからそれも合わせて用意しておきなさい。じゃないと次に会う時は法廷よ」

 

「半殺しじゃと」

 

「残念だけど家族から許可を取っているから無駄よ」

 

「その家族はアリス君ではなかろうな」

 

「当たり前でしょ。まあアリスも半殺しには賛成しているけど、殺気も本気でぶつけてやって欲しいと言われているから廃人になったらそっちで頑張ってね」

 

「……ナギ達が生きておるのか」

 

「さあ?何を勘違いしているのかは知らないけど、あのガキの祖父がこの件に関して許可を出してるのよ。はい、これ証拠」

 

影から手紙を取り出しジジイに渡す。その中身を見てジジイが悔しそうに顔を顰めているが私たちを甘く見たのが失敗だったわね。

 

「……分かった。すぐに通達しておくが出来るだけ穏便に「済ませるつもりなんて一切無いわ。あのガキには現実を見せる。タカミチを出張に出させたのは失敗だったわね。これでいざという時に私たちを止めれる戦力が無いんだから」

 

学園長が殺気を放ってくるがそれ以上の殺気を零樹が簡単に出した事に目を見開いて驚いている。

 

「学園長、あなたはこの学園のトップではあるけど実力では私たちには絶対に勝てない。権力はそこそこあるけど、所詮はそれだけ。何でも思い通りになる訳ではないし身の程をわきまえないから痛い目にあうわよ」

 

唖然としている私は最後の爆弾を落とす。

 

「私たちは赤き翼を相手にしても引けを取らない。むしろチーム戦なら負ける事は無いのよ」

 

「なっ!?」

 

「そんな私たちにあのガキを襲わせるのだから、覚悟だけはしていてね」

 

「まっ、待ってく」

 

「だぁめ、帰るわよみんな」

 

私の影にみんな入っていき最後に私自身も影に入り、屋上に出る。

 

「さて、今日は早退しちゃったし私はここで昼寝でもするけど刹那と茶々丸と零樹はどうする?」

 

「私は、休み時間にでもこのちゃんに会ってから父上に修行でも付けてもらおうかと考えてます」

 

「私はマスターの傍に」

 

「僕は残して来た分身と入れ替わって授業に出て来ます」

 

「真面目ね、中学校で習う事なんて今更する必要も無いのに」

 

「まあ、授業中は他の事をやってますけど友達との付き合いは楽しいですから」

 

「それだけは同感ね。気を付けて行ってらっしゃい」

 

「はい、では今日の夜に」

 

「ついでに家から拷問に使う正気を保たせる薬も持って来てね」

 

「分かったよ」

 

刹那が扉から屋上を離れ、零樹が自分の影に飛び込んだのを見送った後、人払いと魔力察知を妨害する結界を張り茶々丸の膝枕で眠り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、麻帆良学園女子中等部の寮から近い広場に私たちは集まった。昼休みに私の分身体に変装をさせてあのガキに吸血鬼がいる事を知らしめると、案の定こちらの思惑通り一人で見回りに出るという無謀な事を行なってくれた。

 

「それじゃあ最終確認するわよ」

 

『はぁ~い』

 

「まず最初にあのガキが見回りを始めたら木乃香が犠牲者の役をするのよ」

 

「わかったぇ~」

 

「もちろんその場には私も行くわ。で、真っ正面から挑発して誘導、ここまで連れて来たらチウちゃんが遠距離から法撃で撃ち落とす。そこからはアドリブで即興劇で精神的に嫌がらせをした後にした後に拷問って感じかな。ここで潰す気でいくわよ。記憶を操作しようとも心の底から私たちに恐怖する様に徹底的に。誰か邪魔が入った場合は殺しても良いわよ。まあ、魔法関係者じゃなかったら眠らせるか気絶させるかでお願いね」

 

「リーネ、伝え忘れていたがアリスから拷問用の薬を預かって来てる。最後にこれを飲ませて欲しいと言われている」

 

「じゃあそれはチウちゃんが持ってて、内容は気にしない方が良さそうだから聞かないでおくわ」

 

「何時渡せば良いんだ?」

 

「基本的にあのガキの前に出るのは私と茶々丸と刹那と零樹だからあのガキが一度気を失った時に合図を出すからその時にでも持って来て頂戴」

 

「分かった。あと出来れば五体満足で帰してやれよ」

 

「治療できる範囲にしておくわ」

 

お母様も女子供は出来るだけ殺さない様にしなさいって言われてるからね。精神的には知らないけど。

 

「姉さん、目標が見回りを始めたみたいだよ」

 

零樹の使い魔である梟から連絡が来たので準備に移る。

チウちゃんはルビーを展開して長距離射撃の用意をして刹那達は隠れる。私と木乃香は桜通に向かう。

 

「それじゃあ始めましょう。眠りの霧はいる?」

 

「お願いするわ。ほんじゃあいくでぇ。きゃああああああああああああああ」

 

木乃香が悲鳴をあげると同時に近づいてくる魔力の固まりを確認する。

 

「抵抗しないでね、眠りの霧」

 

眠ってしまった木乃香が怪我をしない様に優しく抱きとめて少し待つとガキが杖に乗って飛んで来た。そして、人払いも認識阻害も行なわずに『魔法の射手・光の17矢』を撃ってくる。その内の2本が木乃香に当たる軌道だ。これは使える。

 

(木乃香、障壁と幻術。実際に喰らった様に見せなさい)

 

(ほ~い)

 

木乃香を放置して後ろに跳躍する。そして1本が右脇腹に、もう1本が左腕に当たる。私からは障壁で完全に防いでいる様に見えるけどあのガキには、血を吐き腹部から血を流し、左腕がちぎれた木乃香が見えているでしょうね。

 

「こ、木乃香さん!?よくも僕の生徒を」

 

こいつ何を言ってるのかしら。自分がやった事でしょうが。

 

「木乃香をこんな風にしたのはあなたの魔法よ。それに私の姿がちゃんと見えているの?」

 

私は黒いナイトドレスに、いかにも魔法使いが着ていそうな黒いマントを付けているだけで顔は一切隠していない。それなのに私の事が分かっていないの?

 

「なっ!?なんでリーネさんが」

 

「さあ、何故でしょうね。それより木乃香を放っておいて良いの?このままだと死んじゃうわよ、あなたの魔法で(・・・・・・)

 

「僕はそんなことしていない」

 

どの口が言うのかしら。いちいち話さないと分からないのかしら。

 

「私は魔法を使っていない。あなたは私に向かって攻撃魔法を使った」

 

「それをリーネさんが木乃香さんを盾にしたからでしょう。だからあなたのせいで木乃香さんが怪我をしたんです。やっぱりあなた達は天流先生みたいに何も分かっていない」

 

 

 

 

 

 

ぶちっ

 

 

 

 

 

 

「だからあなた達をたおし「チウちゃんやって」なにを、うわぁあああああああああああああ」

 

チウちゃんも切れていたのか予定よりも強力な砲撃がガキを飲み込んだ。砲撃が止むとガキはそのまま倒れ込む。

 

「木乃香、チウちゃんと一緒に先に寮に帰って頂戴」

 

「でも」

 

「いいから帰って頂戴。ここから先はあまり見られたくないの。おねがい」

 

自分でも分かる位、顔が憎しみで歪んでいるのが分かる。正直強制証文を書いてなかったら殺している位に憎しみに囚われている。

 

「……わかった」

 

納得はしていないのだろうけど最後には折れてくれた。チウちゃんも離れてくれているのが分かる。これで本気になれる。

 

「刹那、このガキを固定」

 

「はい姉上」

 

私の影から出て来た刹那が符でガキを空間に貼付ける。

 

「零樹、薬を」

 

「うん」

 

刹那と一緒に出て来ていた零樹がチウちゃんの砲撃で気を失っているガキに注射で薬を打ち込む。

 

「茶々丸、結界と記録の準備をしなさい」

 

「既に完了しています、マスター」

 

茶々丸がシスターズを引き連れながら茂みから現れる。その内の一人が水が入ったバケツを持っていた。それを受け取り気絶しているガキにぶっかける。

 

「ごほっ、何が!?これは一体」

 

「目を覚ましたかしら」

 

「リーネさ、がはっ」

 

鳩尾に強化を一切していない素の拳檄を叩き込む。

 

「気安く呼ばないでくれるかしら。何も分かっていないただのガキが」

 

「な、何を」

 

「喋るな、このゴミが」

 

今度は顔面を殴る。衝撃で歯が折れたようだが気にしない。

 

「さて何も分からないから喋るのだろうから、状況を教えてあげるわ。私達はあなたを襲う様に依頼を受けたの。本当なら軽く虐めて終わらせるつもりだったのだけどあなたがお父様を侮辱するのが悪いのよ。お父様の事を何も知らないあなたがお父様の事を侮辱するのは許さない。侮辱したからには殺したいんだけど強制証文の影響で殺せない。だから今からあなたには拷問を行なうわ。記憶を消去しようとも心の底から私達を怯える位に」

 

「さすがに私も我慢の限界がきました。このちゃんに怪我を負わせておいて自分のせいじゃないだと。ならなぜ光の矢で撃った。他の魔法先生達なら風の矢を使う。これは魔法学校の教科書にも書かれている事ですよ」

 

「こんな馬鹿が評価されてアリスさんの様な娘が評価されないなんて学園自体が腐ってますね。本当に彼らの息子なんですか」

 

「父さ」

 

「喋るなと言われたでしょう」

 

零樹が股間に膝蹴りを放つ。痛みで気を失うと思われたが拷問用の薬が効いているのか気を失う事は無かった。

 

「おもしろいでしょう。昔から『立派な魔法使い』が使っている拷問用の魔法薬の力は。どんなことをしても気を失わせず、どんなことをしても正気も失わせない、ものすごい薬よ」

 

「うs」

 

「だから喋るな」

 

今度は零樹が鳩尾に蹴りを入れる。

 

「茶々丸、糸と針を」

 

「はい、零樹様。こちらになります」

 

茶々丸から糸と針を受け取った零樹はそれを使い、ガキの口を縫い付けていく。1分もしないうちに完全に縫い付けられ、喋るどころか口からの呼吸すら困難だろう。

 

「まずはこのちゃんと同じ目にあってもらいます」

 

そう言って刹那が新年会の時の賞金を使ってお父様に鍛ってもらった刀、銘は『舞姫』だったかしら。それを使い一振りで左腕を切り落とし右脇腹を貫いた。

 

「また腕を上げたわね。今のは完全に第2魔法(多重次元屈折現象)だったわよ」

 

「ええ、今日ようやく完成したばかりです。これからは斬撃の数を増やすのが課題です。最低でも後一つは増やす必要がありますし」

 

「頑張りなさい。さて、このままだと出血多量で死ぬだろうから止血だけはしてあげる。我が手に宿るは炎の精、その身を以て燃やし尽くせ。ファイアボルト」

 

拳大の炎を傷口に押し付ける。肉が焼ける臭いが辺りに広がり、ガキの目から涙が、口からは叫び声が大量にこぼれるが完全に無視する。止血が完了したので炎を消して離れる。

 

「次はどうしようかしら」

 

「マスター、私に任せてもらえませんか?」

 

「茶々丸が自分から何かをしたいと言うなんて珍しいわね。いいわ、任せてあげる」

 

「ありがとうございます。では早速」

 

茶々丸がガキの肩をつかみ、そのまま骨を握りつぶし間接も外す。

 

「なるほど、アルみたいにするのね。中々良い趣味してるわね。けど握りつぶすのは出来れば辞めておきなさい。治療し難いから」

 

「分かりました。では普通に折るだけにしておきます」

 

それから数分で茶々丸はガキの骨を臓器を傷つけずに全て折り、間接も全て外した。

 

「終わりました」

 

「うん、お疲れ。最後に私だけど、痛めつける場所があまり無いわね」

 

どうしようかと考えているとガキの背後に落ちている物を見て考えがまとまった。

 

「ああ、良い事を思いついたわ」

 

ガキの後ろに落ちている物。ナギが使っていた杖だ。それを拾い影にしまい、適当に木の枝に幻術をかけ杖に見せる。それを持ってガキの正面に行く。

 

「これが何か分かるわね。あなたの父親が使っていた杖。今じゃあ形見だったかしら」

 

杖を両手で持ち、ちょっとずつ力を入れていく。力を込めるごとにメシメシと軋みをあげていく。そして、とうとう真っ二つに折れた。

 

「ゴミは燃やさないとね。我が手に宿るは炎の精、その身を以て燃やし尽くせ。ファイアボルト」

 

杖に火をつけて目の前で灰になる様子を見せつける。これで完全に心が折れたでしょうね。

携帯を取り出し学園長に繋ぐ。

 

「学園長、依頼は済んだわよ。治療部隊を早く寄越さないと死ぬからね」

 

学園長の名前を出し、伝えることだけ伝えて携帯を切る。

 

「じゃあね」

 

ガキの拷問用の薬を魔法でキャンセルすると今までの痛みで気を失う。それからアリスに渡されていた薬を鼻から流し込む。それから全員でゲートを使い、寮ではなく店に帰る。

 

「お帰り」

 

部屋にあるダイオラマ魔法球に行こうとしたらお父様がカウンターに座っていた。

 

「話は木乃香から聞いている」

 

その言葉と同時に4人の頭に拳骨が落ちた。地味に障壁突破が施してあり痛みを緩和する事が出来なかった。

 

「心配になって様子を見ていたがやり過ぎだ。忘れているかもしれないがMMの魔法技術じゃ、あの傷は治せないぞ」

 

「えっ!?」

 

それは初耳だった。新年会の時はアレ以上の怪我を負っても綺麗に治してもらえるからそれが普通だと思っていたのに。

 

「その顔は忘れて、違うな。ちゃんと教えていなかったオレのミスか」

 

「違うわ。調子に乗った私たちのミスよ」

 

「それもあるだろうがそういう風に教えていなかったオレのミスでもあるんだ」

 

そう言われてしまうと反論する事が出来ない。落ち込んでいるとお父様が私を撫でてくれた。

 

「まあ、オレのために怒ってくれたのは嬉しかったぞ」

 

「……もうそんな歳じゃないんだから頭を撫でるのは辞めて」

 

「「「姉上(姉さん)(マスター)、顔と言葉があってませんよ」」」

 

「うるさいわね」

 

自分でも分かってるわよ。でもお母様も撫でられたりした時に今の私と同じ行動をしているでしょう。実際振り払う気なんか全くないし。

 

「くくっ、リーネはエヴァにそっくりだな。昔からよくその受け答えはやったからな。最近はそんな事は無いが。これからオレはネギの治療に行って来る。この件の後処理は全部任せてもらう事になるが良いな」

 

「ええ、けどこれに関してはアリスに任せたいんだけど」

 

影からナギの杖を取り出しお父様に見せる。

 

「ふむ、問題は無いな。アリスがいるというなら渡せば良いし、要らないならナギに返せば良いだろう」

 

「分かったわ」

 

「それじゃあな。チウちゃんと木乃香が心配していたから顔を出しておけよ」

 

「「「「はい」」」」

 

お父様を見送ってから3人で寮に戻り2人に色々と説明をしにいく。寝る前にお父様からメールが来てガキの怪我は全て治ったそうだ。つまりアリスの薬は解毒していないのだろう。これは楽しみね。

 

 

 

side out

 

 

 

 

side ジジイ

 

「急いで治療を施すのじゃ。絶対に死なせてはならぬ」

 

リーネ君から依頼が終了したと連絡が入ったので現場に向かうと酷いものだった。本当に生きているのか分からない位のネギ君だが強制証文を使っている以上生きてはいるじゃろう。だがこのままでは死ぬのが分かる。急いで部下に指示を出す。じゃが

 

「腕が繋がりません」

「脇腹の傷も同じです」

「心拍と血圧共に下がって来ています」

「エリクシルも効きません」

「動かそうにも骨が臓器を傷つける恐れが」

 

 

部下から絶望の言葉が返って来る。一体どうすれば

 

「困っているようだな近衛門」

 

「その声は」

 

いつものスーツとは違い白衣を着たレイト殿が立っておった。

 

「なぜここに」

 

「何、娘達がやりすぎたからその尻拭いだ。親として当然だろうが」

 

「エリクシルも効かない怪我を治せるのですか」

 

「なんだ?MMはまだエリクシルなんて使ってるのか。あんな物、帝国もアリアドネーも使ってないぞ」

 

こちらを貶す事を忘れないのが彼らのクォリティーじゃな。今はそれよりもネギ君の事じゃった。

 

「治せるのですか」

 

「これ位の怪我ならよく治しているから問題ない。邪魔だからお前らどいていろ」

 

治療部隊を押しのけてネギ君の傍にしゃがみ、手を翳す。

 

「よっと」

 

それだけで火傷が無くなり、口の縫い後が消え、曲がっていた骨が元通りに戻る。

次に切り落とされた腕を傷口に合わせて一枚の符でそれを固定する。

 

「終わったぞ。腕はこのまま1時間も放っておけばくっ付くから」

 

「そんな馬鹿な」

 

「お前らと一緒にするんじゃない落第生共」

 

「「「「落第生?」」」」

 

「お前らがアリアドネーにいたら落第の実力だからだよ。この程度も治せんとは」

 

なんでこの人たちは人を怒らせるのが得意なんじゃ?

 

「じゃあオレは帰るから、ちゃんと金を用意しとけよ」

 

「……なんのことですかの」

 

「ふ~ん、そんな態度とるんだ。まあいいけど」

 

それだけを言ってレイト殿は帰っていった。一体何を考えておるのじゃ?

 

 

side out


 
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