No.394621

仮面ライダーディージェント 第4話:戦闘開始

水音ラルさん

ディケイドライバーがライダー大戦の際に壊れた際にバックアップとして生まれたディケイドの代理人こと破壊の代行者・仮面ライダーディージェント。
ディケイドに代わって本当の目的を果たそうとするも、門矢士が復活したせいで存在を保てなくなってしまった。
しかし自分の代わりに計画を実行できる素質を持った一人の青年に自分の力をすべて託し、青年はその計画を代わりに実行するために動き出す。
仮面ライダーディケイドに代わり、自らの使命を遂行する者、仮面ライダーディージェント。 自らの存在意義を求め、その歩みは何処へ行く。

2012-03-19 21:39:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:381   閲覧ユーザー数:381

皐月は亜由美たちと別れた後、ランニングしながら自宅への帰路を辿っていた。

 

「めっざっせ!ぜっんこっく!せ・い・は~♪」

 

適当に今思いついた歌を口遊(くちずさ)みながら走っていると、突然目の前に灰色のカーテンが何の前触れもなく現れた。

 

「おわぁっと!何だぁ!?」

 

突然の異常現象に思わず急ブレーキをかけて踏み止まると、灰色のカーテンの中から三十代後半と思われる黒髪をワイルドに刈り上げ、黒い革ジャンを着た男が現れ、灰色のカーテンはそのまま後ろに下がっていきやがて消えた。

 

「何だ何だぁ?新手のストーカーか?」

 

そう言いながら身構える皐月を余所に、男は何の反応も示さず皐月に歳不相応な乱暴な口調で話しかて来た。

 

「この世界を壊そうとする悪魔が来てるぞ」

「はぁ?」

 

その言葉に皐月は訝しげに眉を顰めるが、男はさらに言葉を紡ぐ。

 

「気付いてねぇのか?お前が今日追っかけ回してた須藤歩とかいうヤツが普通じゃねぇことに」

「え………あ!?」

 

男の行った事に一度頭を悩ましていると、ある事に気がついた。

歩は商店街で一通りの食材を買っていた。その中には2kgはありそうな米も買っていたのだ。それに加えてその他の食材を合わせれば相当の重量になる。

そのはずなのに、歩は何も持っていないかのように普通に歩いていたのだ。

あの細身であんな重い荷物を軽々と持って歩くなんて不可能だ。

 

(歩ってホントはスッゲー武術家なんじゃねーのか?)

 

皐月はそんな事を勘繰っていたが実際には、あの時歩は自分の周囲の空間を演算して荷物の重量を皆無にしていただけで、皐月が思っている様な事は一切ない。

寧ろ研究施設で実験対象にされていたくらいだからどちらかと言うとインドア派である。

 

「で、だ…この世界の『基点』でもあるお前にその悪魔を倒してもらいてぇんだよ。一応その為の力もくれてやるし、その後はそれを好きに使っても構わねぇよ」

「で、その悪魔ってのが歩ってことか……でも何で歩が悪魔何だ?」

「さっき言っただろ。この世界を壊そうとする悪魔ってな」

 

世界を壊す…それがどういったものなのか皐月にはよく解らないが、少なくとも碌なことじゃないのは確かだ。

 

「じゃあ歩は悪いヤツってことだな?」

「そうだっつってんだろ」

「フーン…ウソだな」

「何?」

 

男は皐月の反論に眉の皺を寄せながら訝しんだ。

 

「確かに歩は死んだ魚の目をしてっから悪そうなヤツには見えるぜ。でも歩と話してる時はそんな悪いヤツには見えなかった。アタシから言わしてみれば、歩はただちょっと引っ込み思案なだけの良いヤツだぜ?」

 

皐月の良い所は人を見る目があることだ。少し関わっただけでもその人がどんな人間なのか第一印象ですぐにわかる。

さらに彼女の友人が少しでも非難されれば、身をもってその友人を守る。だからこそ彼女には亜由美や加奈を始めとした親友が沢山いるのだ。

 

男は不満げに「チッ」と舌打ちすると、再び彼の背後に灰色のカーテンが現れた。

 

「警告はしたぞ。後はどうなってもシラネェからな」

 

そう吐き捨てると、男はその灰色のカーテンの中に消えていった。

 

「フゥ、何だったんだアイツ?新手の宗教勧誘か?」

『ギャアァァァァァ!!』

「って今度は何だぁ!? 辻斬りか!?」

 

先程の男について考える暇もなく、突然聞こえてきた断末魔に皐月は驚くが、すぐに気持ちを切り替え、その断末魔が聞こえてきた方向へと駆け出した。

 

 

 

 

 

皐月が断末魔の聞こえた方向へと駆け出す数分前……

 

歩が変身したディージェントとゴートファンガイアは激しい戦闘を繰り広げていた。

 

『グアァァァァ!!ク、クソッ!』

 

しかしそれは一方的なものだった。

突然エモノがキバの鎧の様なものを身に着け、こちらに駆け出してきたので、自身の魔皇力で生成した片刃剣で大振りに斬りかかろうとしたのだが、振り下ろす寸前に片刃剣を持った右手を掴んで動きを止めたかと思うとそのまま腹に膝蹴りをかまされ、その怯んだ隙を突いてわずかに距離を取ると、そこから思いっきり回し蹴りを放って吹き飛ばしてきたのだ。

 

(フザケやがって!だったら、これならどうだ!)

 

ゴートファンガイアは体内から魔皇力を放出し、それをディージェントの背後に集中させて牙状の半透明の弾丸を二本作り出した。

 

その弾丸…吸命牙は本来人間からライフエナジーを吸い取るために使う…謂わば人間で言うところの「箸」だ。

 

基本的に人間からしかライフエナジーを吸い取れないため、同族であるファンガイアやキバには効果がない。しかしそれでも敵に突き刺してダメージくらいは与えられるだろう。

 

相手も背後の気配に気づいたのか、後ろを振り向く。それと同時に吸命牙を発射するが、相手はその拳で簡単に砕いてしまう。

 

(よし!掛かったな!)

 

しかしそれこそが狙いだった。背後に気を取られている一瞬、その一瞬だけでよかったのだ。

その一瞬の内にまだ後ろを向いているこのエモノとの距離を縮め、その手に持った片刃剣でで斬りかかった。

だが……

 

「…フッ!」

『アガッ!?』

 

エモノはこちらに振り向かずにカウンター気味の裏拳をゴートファンガイアの鳩尾(みぞおち)に打ち込んだ。

その際に片刃剣を落としてしまい、地面にぶつかった瞬間、片刃剣はガシャァンという音とともにまるでガラス細工の様に砕けてしまった。

 

ファンガイアが自身の魔皇力で作り上げた武器は常に魔皇力を注ぎ続けなければならない。そうしなければ武器を形成している魔皇力が空気中に飛散してしまい、劣化ガラスの様に非常に脆くなってしまうのだ。

 

『ナ、ナゼだあぁぁぁ!?』

「一応、この姿になれば周囲の状況が詳しく解る様になるからね。」

 

ゴートファンガイアは鳩尾を抑えながら後ろに数歩下がりながら疑問の声を漏らす。

それに対してこのキバの鎧の様な物を身に着けた下等生物であるはずの人間は淡々と答るだけだった。

 

Dシリーズは元々、変身する際には装着者の持っている次元移動能力を常に潜在意識の中で演算し続けなければならない。それによって自身を覆う装甲を形成しているのだ。

しかし演算し続けるといってもあくまで潜在意識。つまり息をする事と同じ様に無意識の内に使っているのだ。

 

それでも次元移動能力のほんの一部なので変身した状態でも次元断裂空間を展開する事が出来るのだが、ディージェントの場合は変身している間は次元移動能力をすべて演算に使っているので、次元断裂空間をカードの取る出し以外で展開する事が出来なくなる。

その代りに身体能力や空間把握能力に特化しているのだ。

 

『ク、クッソオォォォ!!バカにしてんじゃねぇぇぇぇ!!』

「……ハッ!」

 

ゴートファンガイアはディージェントの淡々とした口調を挑発として受け取ったのか、我武者羅に殴り掛かって来たが、ディージェントは迎い討つようにその拳を思いっきり殴った。

しかもその際に、Dシリーズ特有の万能変換エネルギー・シックスエレメントを自身の拳に纏わせた。

 

シックスエレメントはその対象にした物質に対し、最も有効な属性に変質する特殊エネルギーだ。

シックスエレメントはファンガイアに最も有効な属性…魔皇力に変換され、ファンガイアのその拳ごと二の腕のあたりまで打ち砕いた。

 

『ギャアァァァァァ!!』

 

ゴートファンガイアはそのあまりの激痛に断末魔の悲鳴を上げる。

 

他のDシリーズやキバが同じ事をやってもこうはならないだろう。Dシリーズの中で最もパワーの高いディージェントだからこそできる芸当であろう。

 

「静かにしてくれないかな? 近所迷惑だよ」

『ヘブッ!?』

 

ディージェントはゴートファンガイアの断末魔を挙げる大きく開いた口に上段蹴りを叩き込む。それによって口を塞がれてしまったゴートファンガイアは断末魔を中断させられ、仰向けに倒れ込んでしまった。

更にディージェントはその倒れて位置が低くなった頭をまるでサッカーのシュートを決めるように蹴り飛ばした。その時左の角に余りの威力で罅(ひび)が入ってしまう。

 

「う~ん、本当は折るつもりだったんだけど、手加減しすぎたかな」

 

否、手加減をしすぎたために罅が入る程度で済んだ様だ。

 

(こ、こんなのキバや王どころじゃねぇ!それよりヤベェじゃねぇか!!)

「さて、そろそろ教えてくれないかな?君をこの世界に連れて来たのは誰か」

『ヒィッ!?く、来るな!コッチに来るなぁぁぁ!!』

 

ゴートファンガイアは目の前のキバや王をも超えうる存在に完全に怖気づいてしまい、二手に分かれた道の左側へと逃げ込んでいった。

 

「ハァ…だから近所迷惑だってば……」

 

ディージェントはそう溜め息を零しながら、ゴートファンガイアの後を追った。

 

 

 

 

 

「えーと、確かコッチだったよなぁ?」

 

皐月は先程の断末魔の正体を突き止めるため、来た道を戻っていた。

その道を進む毎に、先程亜由美たちと別れた場所に近づきつつある事に気付いた。

 

「亜由美と加奈、無事かなぁ……」

『ギャアァァ!来るな!来るなあぁぁぁ!!』

 

徐々に不安を募らせていると、曲がり角の方から先程の断末魔を上げていたと思われる人物の声が聞こえてきた。

最初は気付かなかったが、その声は男性のものだがどこかくぐもった声だった。

 

「おっ!こりゃぁヒーローの出番だな!」

 

しかし、そんな事は気にも止めず、皐月は曲がり角の手前で立ち止まると手を合わせて指をバキボキと鳴らして身構えた。

 

「さぁ来い!!」

 

やがてその曲がり角から断末魔を上げていたと思われる人物が何かに怯えながら飛び出してきた。

しかし、それは人とは形容しがたい姿をしていた。

 

まず目に付くのが赤や黄色、緑と言ったカラフルなステンドグラスの様な皮膚。それが夜闇に浮かぶ月光によってキラキラと光を反射している。

次に目に付いたのは羊の様に大きく捻じれた角。しかし左の角には大きく罅が入ってしまっている。

そして最後に目に付いたのは右腕。二の腕から下がなく、その先の断面からは無数の皮膚より細かく小さなステンドグラスの模様がのぞいていた。

 

(何じゃありゃぁ…?)

 

そのカラフリャー(皐月命名)は皐月の存在に気がつくとこちらに駆け出してきた。

 

「え?え!?」

 

突然の事態に皐月は対処できず、その太く大きな左腕に拘束されてしまった。

 

「は、放せ!放せよ!?」

 

何とか振り解こうとするが、相手の力が予想以上に強く、中々抜け出せない。

それでも何とか振り解こうと必死にもがいていると、このカラフリャー追われていた原因と思われる存在が曲がり角から現れた。

 

青黒い体に、顔に下を向いた矢印を張り付けた様なロボットが此方と向かい合った。

 

(たくっ!今日は一体何なんだよ!?夢か!?夢オチなのか!?)

 

皐月が軽く現実逃避を始めところで、しかし事態は更に深刻になっていく。

 

『う、動くなぁ!?』

「グッ!?」

 

ロボットが駆け出そうとするがその前にカラフリャーは叫びながら皐月を拘束する腕を更にきつく締め上げる。

皐月はそのあまりに強すぎる力に思わず苦悶の声を漏らしてしまう。

 

『う、動くなよ!? 少しでも動いたらコイツの首をへし折るぞ!?』

「……随分と三下がしそうな事をするね」

『う、うるせぇ!!』

「ヅッ!?アッ…!」

 

ロボットが流暢な、しかし淡々とした口調でカラフリャーの余りの小物ぶりに嘆息すると、その腕にさらに力を込め、そのせいで皐月の首が閉まってしまい上手く息ができなくなってしまう。

 

「……分かった。どうすればいい?」

『え…?ヘ、ヘヘ…じゃあまずはその鎧を外してもらおうか』

 

カラフリャーはロボットの余りの物分かりのよさに一瞬頭が付いていけてなかったようだが、状況を理解すると、鎧を取るように命令した。

その際、わずかに拘束する腕を緩め、皐月は漸(ようや)く息ができるようになる。

 

(あぁ~死ぬかと思った…でも鎧って何の事だ?それにあのロボットの声どっかで……)

「分かった……。多々井さん、この事は誰にも言わない様にね」

「え?」

 

突然ロボットに声を掛けられて戸惑うが、その口調と声に聴き覚えがある事に気がついた。

 

ロボットは腹部に付いたゴツゴツとした機械の持ち手部分を引っ張ると、軽く下に回す。するとカチリという音が聞こえ、今度は上に軽く回した。

するとベルトを形成していた帯が外れ、持ち手の反対部分に収納される。

それと同時にロボットの身体は藍色のアナログテレビの砂嵐の様なものに包まれ、それが晴れるとそこには須藤歩が立っていた。

 

「あ、歩!?」

 

まさかとは思っていたが、本当に歩だとは思っていなかった皐月は思わず驚嘆してしまう。

それに対しカラフリャーは卑下た笑みを零し、更に歩に命令した。

 

『ヘッヘッヘ…それじゃあ今度はその鎧を作る機械をこっちに投げ渡してもらおうか。そん時にこのメスブタを解放してやるよ』

 

――――――……ブチッ―――――――

 

皐月の中で何かがキレた。コイツ、今何て言った?メスブタ?

 

皐月は中学生の頃…太っていた。そしてその頃のアダ名が「メスブタ」だった。

そしてその当時好きな男子生徒がおり、何かとアプローチを掛けていたのだがその男子生徒に、「俺、お前みたいなメスブタ趣味じゃないんだよね」と言われて見事な大失恋をしたのだ。

その後は茶道部(茶菓子が食べられるという理由で入部した)から柔道部に転入部し、そこで何かを振り切るかのように我武者羅に特訓に励み、高校に入る頃には今の様なスレンダーボディになっていたのだ。

その振り切りっぷりは某赤い振り切る刑事もビックリするほどの凄まじいものだったそうな。

 

そんな黒歴史に触れた事など全く気付いていない二人(というか一人と一体)は互いに物々交換する態勢に入っており、歩はその手に持った機械の塊とポンと軽く投げ、カラフリャー…否、乙女の敵に投げ渡した。

乙女の敵はその機械を受け取るために隻腕から皐月を解放したのだが…その瞬間、皐月(おとめ)の逆襲が始まった。

こちらに放物線を描く様に飛んでくる機械の塊をキャッチしたのだ。

 

『な…!?』

「そおぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

解放した人質の突然の行動に驚く乙女の敵を余所に、その足元に足払いをしかけた。

 

『うおっ!?』

「人のトラウマを…弄(いじく)り出してんじゃねえぇぇぇぇ!!」

 

乙女の敵は突然の事に対処できずに倒れてしまう。更にそこから罅の入った左の角に思いっきり踵落としを決めた。

丁度罅の中心に決まったのか、その罅は更に広がり…パキィンという音とともに折れた。

 

『イギャアァァァァ!?』

「歩!やっちまえ!!」

 

右腕を砕かれた時と同等の痛みが走り、のた打ち回っている隙に皐月は機械の塊…ディージェントドライバーを歩に投げ渡した。

 

 

 

 

 

「え?あ…ウ、ウン……」

 

皐月の予想外の行動に歩は思考が止まってしまったが何とか復帰しその投げ渡されたディージェントドライバーを受け取った。

 

「変身」

 

[カメンライド…ディージェント!]

 

再びディージェントに変身した歩は未だにのた打ち回るゴートファンガイアに近づき、その隻腕を掴んでうつ伏せにさせて捻って拘束した。

 

『イデデデデデ!?』

「そろそろ本当に教えてくれないかな…?君をこの世界に連れ込んだのは誰だい?」

 

ディージェントは囁くように…淡々とした口調で再びゴートファンガイアに質問をした。

その口調が何処か冷たさを孕んでいるように感じたのか、ゴートファンガイアは怯えながらも答えた。

 

『ヒッ!し、神童だよ!神童ってヤツが俺をココに連れて来たんだ!』

「神童…?」

 

ディージェントはそんな名前は聞いた事がなかった。

ディケイドに還元されてしまった情報の中に入っていたのかと勘繰るが、皐月はその人物に心当たりがあるのかゴートファンガイアに問いかけた。

 

「そいつって、ひょっとして革ジャン着た口の悪いオッサンだったか?」

『あ、ああ!そうだよ!答えたんだから放してくれよ!』

「……何で知ってるんだい?」

「さっきアタシん所に来たんだよ。訳分かんない事言ってどっか行ったけど」

 

皐月の質問にディージェントは驚くが皐月は簡単に説明した。

 

『お、おい!もういいだろ!?放してくれよ!?』

「ん?あぁ、そうだったね」

 

未だに拘束していた事に気がついたのか、ディージェントはゴートファンガイアを解放する。

ゴートファンガイアは立ち上がって必死にこの場から逃げ出そうとした。

だが……。

 

[ファイナルアタックライド…ディディディディージェント!]

 

『ウグォ!?な、何だコリャ!?ク、クソ!離れねぇ!』

 

突然ゴートファンガイアの目の前にディージェントのマーク…ライダーズクレストが描かれたカードを模したビジョンが現れ、ゴートファンガイアに張り付いた。

 

「悪いけど、世界の脅威をこのまま野放しにしておくわけにはいかない。それに、答えたら放すとも助けるとも言ってないよ?」

『ヒイィィィ!?か、帰してくれえぇぇぇ!!』

「断る」

 

クイッと左手の指を此方側に招く様に動かすと、ビジョンがゴートファンガイアを磔(はりつけ)にしたまま此方にかなりのスピードで近づいてきた。

それと同時にディージェントは右手を後ろに構えるとその右手にシックスエレメントを集約させる。

「ファイナルアタックライド」の効果によって通常よりも多大なエネルギーを集める事が可能になったため、右手は藍色のテレビの砂嵐の様なノイズで包まれていく。Dシリーズによって異なるエネルギーの塊だ。

 

「フゥゥゥ……ハァ!」

 

全く身動きが取れずに此方に押し込まれる形でビジョンに前から磔にされたゴートファンガイアの背中に渾身の一撃・ディメンジョンパンチを叩き込んだ。

 

『ギャアァァァァ!!』

 

ディメンジョンパンチが命中すると、ゴートファンガイアは断末魔の悲鳴を残してガラス細工の様に粉々に砕け散った。


 
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