確認、決闘、リンチ
side レイン
こちらの世界に転生してから早●6年。前世の知識と努力と根性とガッツで賢者となり、勇者一向に加わり、魔王ハドラーとの最終決戦にはアバンに最後まで着いて行き余力を残して勝利する事が出来た。その旅で私はアバンに恋をした。原作ではカール王国の女王と結婚して王になっていたけど、そんなのは知りません。絶対に私の物にしてみせます。だからハドラーを倒す旅が終わった後もずっとアバンに付いて行った。旅の途中、原作の主人公の相棒であるポップ君が弟子に加わり原作よりも力を付けてもらおうと色々と小技を教えたりした。デルムリン島に到着すると予想外の事が起こった。主人公のダイに兄が居たという事だ。それが誰かはすぐに分かった。私と同じ転生者だ。しかも神にチートまで与えられているそうだ。そのチートは竜の紋章を額と両手に1つずつの計3個を貰ったそうです。かなり羨ましいです。こっちは産まれて2歳後半から修行を開始して何回も死にかけたというのに。3回程死んでザオラルで蘇りました。もう死にたくはないですね。
そして、とうとうこの日がやって来た。原作でアバンがメガンテを使う日が。まあ、今まで通り二人で戦えば問題なんて無いし、ダン(ダイの兄の名前)も手伝ってくれるそうなので、ここでハドラーを倒しきろうと思います。
「久しいな勇者アバン、そして大賢者レインよ」
「やはり復活していたか、魔王ハドラー」
ついにハドラーが目の前に現れたが何処か違和感が。それに後ろに控えている人間は一体何者?
「魔王、か。それは以前までの話よ」
「何っ!?」
「貴様に破れ死の世界を漂っていたオレを蘇生させて下さった偉大なる魔界の神、それが今の魔王、いや大魔王様だ。オレはその大魔王様の全軍を束ねる総司令、魔軍司令ハドラーだ」
おかしい?ここではバーンの名を宣言したはず。それに高笑いする訳でもなく淡々と事実を述べるだけ。まるで超魔生物になってからの様な威厳がある。
「アバン、それにレインよ。そこに居る三人は貴様らの弟子か?悪い事は言わん、とっとと逃がせ」
「それを言うなら貴様の後ろに居る……人間なのか」
「ふっ、オレは魔王軍遊撃師団所属のレイキだ。ハドラーがアバンと一騎打ちがしたいというのでな、オレが他の奴らの相手をする。死ぬ覚悟があるのなら武器を取れ。無いのなら背中を向けて逃げされ。後ろから打つ様なマネはしない」
くっ、なんて殺気。こいつ、まさかハドラー以上に強い。
「レイン、ポップ達を連れて逃げて下さい」
「アバン、でも」
「気付いているのでしょう。彼らは強い。それこそ私に万が一が、いえ、おそらく私はハドラーに勝てないでしょう」
「そ、そんな先生」
「……行くわよ皆」
「弟子を頼みます、レイン」
「死なないで、アバン」
ダンは何も言わずに従ってくれ私はポップとダイを気絶させてその場から逃げ出した。
side out
side 零樹
逃げるか、おそらくオレの存在が撤退に導いているのだろう。そしてサーチャーに気付いている様子も無いか。それだけが分かれば十分か。
「さて、両者とも戦いを始める前に形見を残すか。武人として約束違えずに届けるが、どうする」
「オレは残さん。が、もしものときは大魔王様に謝罪を伝えて欲しい」
「必ず伝えよう。アバンはどうする」
「……信用しても」
「男の最後の約束を破る様なマネはせん。戦争ならともかくこれは決闘だ。それを穢す様なマネもせん」
「信用します。これを三人の弟子に、そしてこちらをレインにお願いします」
その言葉と共にオレはアバンのしるしを3つと指輪を預かる。
「必ず届けよう。これで両者ともに思い残した事は無いな」
「ああ」「はい」
「ならば両者、構え……」
ハドラーはフードを脱ぎ捨て、アバンは居合い切りの構えをとる。
「始め」
合図と同時にハドラーが限界まで収束させたギラを連発する。この行動が予想外だったアバンは転がって躱す。今度はイオが足場や天井で爆発し、その破片がアバンに傷を与えていく。アバンも負けじとベギラマを放つもハドラーは簡単に躱す。
「こんなものなのかアバンよ。昔のお前の方が強く感じるぞ」
「実際にそうなのかも知れません。お前が倒れてから地上は平和になりました。それでも私とレインはお前が生きている様に感じそれを各国の王達に伝えましたが相手にもされず、いつ私の前に姿を現すのかが分からなかった。その時に私が戦えるかどうかも。だからこそ勇者の家庭教師をし次世代の育成に励んで来た。その結果がこれなのでしょう」
「つまらん、つまらんぞアバンよ。オレは大魔王様に蘇生させていただき自由に活動できる様になってからも自分の研鑽を欠かした事は無い。だが、そんなオレもある人間に負け、人間の素晴らしさを理解する事が出来た。だからこそアバン、オレはお前と戦う事を楽しみにしていた。なのにこの様はなんだ」
「申し訳ありませんねハドラー。だが私にも勇者としての意地がある。それをお見せしますよ」
アバンが剣を逆手に構える。
「アバンストラッシュか。良かろう、貴様の勇者としての意地、真っ向から受けてやる」
ハドラーの両手に魔力が集まり両手を突き出す。おそらくイオナズンを放つのだろう。
「感謝しますハドラー」
「御託は良い、掛かって来い。イオナズン」
「はあああああああ」
決死ともいえるアバンストラッシュはイオナズンを切り裂き、確かにハドラーを斬る事には成功した。が、傷は浅く、剣も折れ、ハドラーの逆撃を喰らう。
「でぇやああああ」
だが、それも策の一つだったのか両手の指をハドラーの頭に突き刺し固定し魔力を集中させる。
「アバン、貴様、まさか」
「ええ、貴方が考えている様にあの呪文を使います」
「やはりか、死を覚悟しているのだな」
「元よりこれしかないと考えていました。これなら今の貴方でも倒せると」
「そうか、ならオレはそれに耐えてみせよう」
ハドラーが攻撃をやめ魔力で身体を強化していく。
「一緒にあの世に来てもらいますよ」
「断る」
「メガンテ」
次の瞬間、大爆発が起こる。自分の生命力を爆発させる自爆呪文、それがメガンテ。その威力は極大呪文並みの威力を持っている。それを至近距離で受けたハドラーもただではすまないだろう。最もそれでハドラーが死ぬ等露にも思わないが。
予想通り爆発が治まり少し経つとハドラーが瓦礫の下から這い上がって来た。
「……アバンはどうなった」
「僧侶以外がメガンテを使ったんだ。言わずとも分かっているだろう」
「……そうか」
「それより傷の方は大丈夫か」
「問題ないと言いたいがここは退かせてもらう。後の事は頼んだ」
「了解だ」
そう言うとハドラーはキメラの翼を取り出し鬼岩城へと引き上げていった。それを見送ってから海を眺める。そしてそこに浮かぶ一人の男を確認する。
「安らかに眠れアバンよ」
影から弓を取り出し心臓を射抜く。そして沈んでいく姿を確認してから約束通りアバンの形見を届けにいく事にする。そう、死んでいなければ形見になりえないのだから。
普通に残されている足跡をたどりオレはアバンの弟子と転生者が居る場所まで簡単に辿り着いた。オレの姿を見るとポップとブラス以外が武器を構えるがそれを無視して
「アバンの形見を届けに来た」
とだけ告げ形見を投げ渡す。
ダイとポップとダイの兄にしるしをレインと呼ばれる賢者に指輪を。
「嘘だ。先生が死ぬはず無い」
ダイがパプニカのナイフで切り掛かってくるがそれを避けずに肉体強化で受ける。筋は良いがやはりまだまだレベルが低いのかオレにダメージを負わせる程ではない。
「ダイ、下がれ」
ダイが下がると同時にメラゾーマが3つ飛んで来たので闇の魔法を応用して投げ返す。まさか投げ返されると思っていなかったのかポップだけ回避が遅れるがダイの海波斬で事なきを得る。
「そんなにアバンの後を追いたいのなら追わせてやるぞ」
「そんな事は私がさせない」
レインがダイ達を庇う様に前に出る。
さて、どうするべきか。そうだな、動揺を誘うか。
「ほう、アバンの様にメガンテを使ってでも弟子を守るつもりか」
この言葉にダイとポップは動揺するが、レインとダイの兄は真直ぐにこちらを見ている。つまり原作を知っているという事か。ならこれを見せれば十分か。投影を使い形だけを真似たカールの守りを見せる。
「これが何か分かるか」
それを見てレイン達は一気に動揺した。
「これはアバンの最後の形見、オレはこの後カールの女王フローラに届けなければならない。時間が無いから来るなら来い」
「きっ、貴様〜」
ダイの兄が竜の紋章を両手と額に表し飛びかかってくる。正直に言おう。がっかりだ。弱すぎる。使いこなせていない以上にもとが弱すぎる。これでは宝の持ち腐れだ。
「殺しはしないでおいてやる。ありがたく思え」
刹那姉さんがそこら辺で買って来た銅の剣でダイの兄の両腕を切り落とす。バランと約束している以上殺すのは問題があると判断したからこそだ。竜鬪気を纏っていたみたいだがバランと比べると薄いとしか言いようも無く簡単に切り落とす事が出来た。そして素早く回し蹴りを喰らわし吹き飛ばす。
「これだけの実力差でまだやるか、大賢者レインよ」
レインがメドローアを構えてこちらの隙をうかがっていた。
「それでもまだやるというのなら命の覚悟をしろ」
「貴様だけは絶対に許さない」
「それが返答か。ならば撃つが良い。もっとも抵抗はさせてもらうがな」
オレは両腕をクロスさせて構える。
「死になさい。メドローア」
「……グランドクルス」
劇中最強の魔法メドローア、相反する二つのエネルギーを合成する事で対象を対消滅させる魔法。確かに劇中なら最強だったのだろう。だが、グランドクルスは己の鬪気を全力で放射する技。鬪気とは生命力や気ではないかとオレたちは考えている。そこで試しに咸卦法を使用しながら鬪気技を使用した所威力が上がる事が判明した。つまり元の世界で咸卦法を使い続けていたオレたちがグランドクルスを使えばどうなるか。答えは竜鬪気を放つドルオーラ以上の威力が出る。結果、魔力と気の鍔迫り合いなど起こる事無くオレが放ったグランドクルスはメドローアとレインを、そしてその背後にあった森を飲み込み海を割った。完全にレインが死んだのを確認し振り返るとダイの兄の治療が終わり様子を見に来たブラスが杖を構えていた。
「ぜ、絶対にこれ以上ダン達には手を出させんぞ」
我が子を守らんとするその姿を見て昔を思い出す。
オレはあの子の良き父であれたであろうか。
何万回以上自問し、結局答えのでなかった答えの一つを見せつけられた気分だ。
「ブラス老よ、お前はモンスターだ。だが、貴様の言うダン達は人間だ。貴様にとってあいつらは何だ」
「モンスターだ、人間だなんて関係ない。ワシにとってダン達は家族で、ワシの自慢の息子達じゃ」
オレもそんな風に言える関係で居たかったな。だが、それも過去の話か。気持ちの切り替える。
「そうか、なら一番に教えておくべきだったな。相手が格上かどうかの見極め方を。逃げる事は卑怯ではない。生きている限り敗北ではないんだから。今日はここで退かせてもらう。それと、島を傷つけてすまなかったな」
ルーラで鬼岩城に引き上げようとするとダイが飛び出して来た。
「オレはお前を絶対に許さない。絶対に強くなってお前を倒してやる」
「名は何という」
「ダイ、勇者ダイ」
「オレの名はレイキ・マクダウェル・テンリュウ。勇者ダイよ。貴様が強くなり再び相見える事を楽しみに待っていてやろう」
今度こそルーラで飛び去った。一応カールに赴きフローラに形見としてカールの守りを渡す為にメタルでソリッドな蛇の人みたくカール城に侵入。目標であるフローラにだけ姿を見せ形見を渡し逃走した。
さて、世界はどう動く事になるかな。
side out
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親子
その答えを見せつけられた。
オレもあんな風になれればよかったのに。
by零樹