エピローグからのプロローグ
side other
極東最大の霊地、その中心にそびえ立つ一本の大樹。名を蟠桃という。かつてここには都市が存在していた。それも世界最大の学園都市だ。だが、それもたった一日で壊滅的なダメージを負い、規模が縮小され、人がどんどん離れていき、時が経つにつれてこの島国が環境保存の為に解体された今もそびえ立っている。
そして、その大樹の上空に3人の男女が浮かんでいた。
「まだ零樹は来ないの?」
「あまりここには長時間居たくないからギリギリになってから来るらしい」
「やっぱりまだあの事を引きずっているのでしょう」
「……仕方ないわよ。一時期は危なかったけど今は、ここや魔法世界に行かない限りは落ち着いているんでしょう」
「ああ、それは保証する。先日会った時も変わりなかったよ」
「ならいいわ」
この地が彼女らにとって、どのような場所かは分からない。
その後誰も話す事無く、ただじっと時が流れるのを待ち続ける。
「……時間ね」
金髪の女性がつぶやくと大樹が発光を始める。22年周期で発生する魔力の放出による発光だ。そして発光が始まると同時にフードを被った男が現れる。
「……久しぶりね。零樹」
「いきなりで悪いけどさっさとやろう。感情が抑えられなくなる」
「……分かったわ。それじゃあ、やるわよ」
金髪の女性の合図で4人は詠唱を始める。
それと同時に大樹の発光が弱くなっていく。
彼女らが行なっているのは大樹の魔力を利用した儀式だ。それがどんな物かは分からない。
やがて儀式が終わると4人の目の前に一つずつと4人の中央に一つの宝玉が現れる。その宝玉をためらう事無く4人は飲み込む。
「これでこの世界でやる事はなくなってしまいましたね」
「そうね。だけどこの世界よりも私達は求めるものがある」
「覚悟は出来ているかい」
「愚問だな。オレはオレである為に、彼女との約束を守る為に神になる」
「なら、行くわよ」
残っている宝玉に4人が手を触れるとまばゆい光を放ち、4人と一緒に消えていった。
side out
side 零樹
目を開けるとそこは、何処かの森のようだった。
「どうやら別の世界にたどり着いたようね」
「そうみたいだな」
「それにしても零樹、口調を父上みたいに変えたのですね」
「ああ、いつまでも子供で居られなかったから。最近になってやっと無意識で話せる様になる位にはなったけど」
「話はそこまでだ。何かが近づいてきている」
その言葉と同時にバラバラに木の陰に隠れる。そして気配がする方を覗いていると、水色の丸い生き物が現れた。
「零樹、あれはまさか」
「ああ、ドラクエのスライムだ」
「あれがファンタジーにケンカを売っているスライム」
ここで少し説明になるが、ファンタジーの世界の中で強力なモンスターは何かと聞かれれば、それはスライムだと言わせてもらう。ドラクエやFFのスライムは普通に打撃で倒せる雑魚だが、実際のスライムという生き物は流体であり、打撃や斬撃が一切効かないモンスターだ。もちろん弱点はある。炎で残さず燃やす、特定の液体をかける、大きな音をたてるなどの多彩な弱点を一つだけ持っている。それが本来のスライムと言えるスライムだ。まあ、目の前に居るスライムもドラクエ史上最強のマダンテを使える様にはなるから強いと言えば強いが断じてスライムだとは認めんぞ。とは父さんの談だ。オレとしてはどっちでもいい。とりあえず殺せば良いんだろう。
投影でナイフを作り出し、投擲する。
ナイフが見事に刺さりグチャっと言う音と共にスライムが飛び散った。そして残されたのはナイフと数枚の銅貨だった。
「とりあえずこれがゴールドだとして、問題はここがどのドラクエの世界なのか、あるいはゲームとは一切関係のない世界なのかを確認する必要があるな」
「そうね、それから私達がこの世界でどう動くのかを決めましょう。とりあえずは近くの魔物を殲滅してお金を稼ぎながら街に向かいましょう」
「そうするのがよろしいかと、とりあえず私が前衛、零樹とフェイトが中衛、姉上が後衛の陣形をとりましょう」
「その必要は無いと思うけど一応そうしておこうか」
さて、どんな世界なんだろうね。少しだけ楽しみだ。
side out
この作品は迷子の果てに何を見るが終了してからの続編です。
スランプに嵌まった時期に気晴らしで書いた物ですが最近はこっちの方がすらすら書けてしまうという状況です。最も現在は移転作業が忙しいんですけどね。
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レイト・M・テンリュウとエヴァンジェリン・M・テンリュウは多くの愛すべき人を残してこの世界から高みへ行ってしまった。彼女らは再び出会う為に彼らが居ると思われる高みを目指して、各々の『根源』を探す旅に出る。