No.394269

【腐】月花【bsr政三】

さん

◆伊達×三成です。デキあがっています ◆アニメ・劇場版のそのあと何年か後かと思います ◆いろいろ考えた割には、こんなことになってしまいました ◆出だしはシリアスチックで少し暗く感じますが、2ページ目はただのいちゃラブ ◆支部にも同じものをupしています

2012-03-19 02:38:58 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1194   閲覧ユーザー数:1190

これは、裏切りなのかもしれない――。

 

細い月は、ふたりの姿をゆるりと映し出す。

見下ろせば、ぬばたまのさらりとした髪が目に入る。……己とは対照的な、艶やかな……闇の色。

視線に気がついたのか、きら、と鋭い琥珀が閃いた。

 

刃のようだ――と。

だが、ひやりと冷えた刀身とは違う、燃える様な熱さを持っている。

 

此方を見る様は、まるで、獲物をねめつける様だ。

尤も、此方も可愛げのある餌には到底なり得ないのだが。

 

先程から己に幾ばくかの熱を与えている、隻眼の男。

簡単に捕えられて、存外に逞しい腕に、囚われて。

 

簡単には、譲れない――その思いは……罪悪感。

 

蹂躙されようとも、渡さない、渡せない――。

それは、己のすべてである筈だったから。

「……?」

ぱちり、と目を覚ます。

少し、頭が重い。ずきと鈍痛がする程度だ。

 

いつの間に、眠ってしまっていたのか。

寝かされ掛けられていた陣羽織は、見覚えのある瑠璃紺をしている。

 

人の気配。

現れたのは奥州を牛耳る年若き男、伊達政宗。

 

「Hey、目覚めたか?My princess?」

に、と口の端を歪めて己の手をとる。

 

そのまま目の前に跪き、手甲を嵌めた指先に、そ、とくちびるが触れる。

気障な男だ。

 

ぼんやりと、己の手の甲に視線を落とす。

熱が伝わる筈はないのに、何故か、あたたかいと感じる。

 

ちら、と頭を上げると、視線が絡む。

少し長めに伸ばした漆黒から覗く、挑発的な光……。

 

「……」

どう答えていいのか……答えるべき言葉を探る。

 

拒否を。

選択を――。

 

己は、一軍の大将だ。

ありたくて、その位置にあったのではないとはいえ、それが事実である。

それ以外であることを、赦されなかっただけなのだ。

 

そう、己のこの手をやすやすと取っている、この男が。

己が尊崇し敬愛する主を、ただの、小蛇程度が手を下せる筈はないと……。

 

おこがましい。

 

ああ、なのに。

何故己は、この男の手を、払い除けることができないのだろうか。

この胸の蟠りは、いったい何だというのか。

 

胸を巡る熱は、熱く、苦しく……。

ぐちゃぐちゃと考えが纏まらない。

 

「何を悩んでる?オレにも云えないことか?」

「……!?」

そ、と耳元で囁くその声は、どきりとするほど色気があり……此方を翻弄する。

 

「折角の綺麗な顔が台無し……ぐっ!」

強く、政宗の腹に一撃を加える。

「黙れ」

はっきりとそれだけを告げる。

 

「アンタ、本気で入れたな……?」

「貴様のその言動が気に障る。貴様がすべて……悪い」

真っ直ぐに睨みつけ、そう答える。政宗は、鳩尾付近を摩る様に手を添えている。

 

「……Ha!随分とshrewdだな」

「私にも解るように云え」

苛立ちを含みながら、強く云う。

 

「……意地悪なお姫さんだ、ってこった」

「どういう意味だ」

「アンタがそれだけ可愛い、ってことだ」

くす、と小さく笑っている。

 

「どこまでも、貴様は……やはりあの時、息の根を止めておけばよかった」

舌打ちする。

「Oh、怖い怖い。まぁオレは行くが、アンタはもうちょっと眠りな。朝までは……未だ時間はたっぷりある」

さらさらと、梳くようにやわらかく、銀色を撫でる。

す、と立ち上がって、部屋を出ていく。

 

「伊達」

「Ah-?」

呼ばれて振り返ると、ばさ、と布が飛んでくる。

「……忘れ物だ」

瑠璃紺の布の塊は、確かに政宗のものだ。

 

「Ha!Thanx!」

此方に口づけを投げるような仕草をし、軽く手を振ってその場を後にする。

「……」

簡単な南蛮語であれば、己も理解できる。

複雑な思いを抱えながら、その背をただ、見送った。


 
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