No.394225

IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・

ISさん

第27話『実戦訓練終了』

2012-03-19 01:16:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7239   閲覧ユーザー数:6955

 

 

「玖蘭君、お疲れ様でした」

 

「山田先生もお疲れ様です」

 

 

 山田先生と一緒に地上まで降りた俺は、『マイスターズ』を解除しつつ山田先生に答えた。 

 

「ふん、玖蘭はまだ機体性能に頼っている部分が多いな。動きが荒いぞ」

 

「でしょうね。自覚はあります」

 

 やっぱ織斑先生は手厳しいな……。

 

 パンパン!

 

 織斑先生が手をたたいて、他の生徒たちの意識を集中させる。

 

 

「さて、模擬戦の実演も終わった。早速授業に入る。専用機持ちは織斑、玖蘭、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰か……玖蘭は話があるからこちらに来い。では八人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな? では分かれろ」

 

 そう合図すると、シャルルと一夏の2グループに女子が集中する。

 

「織斑君! 一緒にがんばろう!」

 

「わかんないとこ教えて~」

 

「デュノアくんの操縦技術みたいなぁ」

 

「ね、ね、私もいいよね? 同じグループに入れて!」

 

 少なくとも今は授業中だから、織斑先生の雷が落ちても知らないぞ?

 てか、話って?

 

「えっと、織斑先生。何ですか?」

 

 男子に集まった女子に対する指導(きょうかつ)が終わった織斑先生に話しかける。

 

「ん? ああ、言いにくいんだが……アイツを何とかしておいてくれないか」

 

 アイツ? 織斑先生が示す先――グラウンドの出入り口――には…… 

 

 

「ハロー☆」

 

 

 楯無。

 

「なぜに!?」

 

「知らん。なんにせよ、原因はお前だろう。何とかしておけ、そのうち妨害に入りそうで邪魔だ」

 

「……ええっと、授業は?」

 

「今回だけ特別だ。いや、アイツを何とかしておけ……これがお前への指導だ」

 

 うわぁ……授業より疲れるんじゃないか? 別にいいけど。

 

「じゃあ、そうします――ってなにすれば?」

 

「私に聞くな。授業の邪魔以外なら勝手にしていろ」

 

「……了解です」

 

 楯無、お前まさか織斑先生まで振り回してるんじゃないだろうな……?

 足早に楯無の元まで駆け寄る。

 

 

「授業中に何の用だよ?」

 

「ちょっと真面目なお話。とりあえず拓神は着替えて。屋上に行きましょう」

 

「ん? ああ、わかった」

 

 真面目な話ってなんだ?

 それを気にしながらも、アリーナ更衣室でジャージの上から制服を着て楯無と再合流。そのまま屋上に向かう。

 

 

 

 

「で? 話ってなんだ?」

 

 

 屋上のフェンスに背を預けて、話を切り出した。

 楯無も同じように、俺の隣でフェンスに身を任せる。

  

「そんなに急かさなくても。授業サボれてよかったでしょ?」

 

「まあな。つかお前は何でサボってるんだよ」

 

「私も許可はもらってるからいいの。……正直なところ、IS関係の座学って専用機持ちにとっては復習だから暇なのよ」

 

「オイ、復習でもしっかりやれよ。つか生徒会長がサボっちゃだめだろ」

 

「まあ、細かいことは気にしない気にしない。じゃ、そろそろ本題に入るわね」

 

「はぁ……。了解」

 

「ため息つくと幸せが逃げるぞ~? ま、本題なんだけど……VTシステムって知ってる?」

 

「『ヴァルキリー・トレース・システム』、略称VTシステム。モンド・グロッソでのヴァルキリー受賞者の動きをトレースするシステム……それがどうかしたか?」

 

「流石、拓神ね。ご名答よ♪」

 

 どこからともなく取り出した扇子を楯無は開く。そこには達筆で『大正解』と書いてあった。

 ……たぶん、自分で書いたんだろうな。

 

「で、ある情報筋―――といっても更識家なんだけど、うちの諜報部からの情報で『ドイツのISにVTシステムが仕込まれている可能性がある』らしいのよ。何か知らない?」

 

 更識家どんだけだよ。やったとこでも極秘情報だろ、それ。

 俺は原作知識で仕込まれてることは知ってるけどさ。

 

 この世界で未来のことを教えると何が起きるかわからないからな……余計なことにならないようにするとしよう。

 

「……ボーデヴィッヒを警戒しろと?」

 

「ええ、話が早くて助かるわ。でも、念のためのよ念のため。自然に見ててくれればいいわ。……拓神が他の女の子を意識的に見てるのは気に食わないけどね」

 

「OK。てか嫉妬するなら俺に頼むなよ」

 

「頼れるし、制圧できる能力もあるから頼むのよ?」

 

「そりゃ、ありがとうって言うべきかなんと言えばいいのか……」

 

「キスでもいいわよ?」

 

「なんでだよ!」

 

 本当なんでだよ! 話のつながりが見つからない!

 

「じゃあ、えっちぃこと?」

 

「なんでさ!」

 

「あははっ♪ 冗談よ冗談」

 

「当たり前だ。真昼間からなに言い出しやがる」

 

「あら、じゃあ夜ならいいの?」

 

「……さあな」

 

 自分で墓穴掘った感があるなあ。

 

「可能性はアリって考えていいのかしら?」

 

「黙秘で」

 

「攻めちゃうわよ?」

 

「……逃げ道は?」

 

「無いわ」

 

 即答ですか。そのうち覚悟決めとこう。それまでは抵抗するけど。

 いや、いっそのこと抱いちまおうか……まだ早いよなぁ。

 

 

「ええい、そっちの話はともかく。本題は終わったのか?」

 

「逃げたわね」

 

 うるせい。逃げてもいいだろうが。

 

「まあ、VTシステムにについての話だけだからね。私からの話は終わり」

 

「そうかい。いまから授業に戻るのもアレだしなあ……なんかない?」

 

「私とえっちぃこと、する?」

 

「事あるごとにそれかよ!?」

 

「ふふっ、だって拓神の反応かわいいんだもん」

 

 ぐぁっ……やっぱし楯無に弄られる運命なのか、俺は。

 そしてその笑顔はいろんな意味で反則だ。

 

「はあっ」

 

「ため息大きいなぁ、おねーさんのハートは傷ついちゃうぞ?」

 

「楯無が、おねーさんって言ってるの久々に聞いた気がする。そしてそんなに簡単に傷つかないだろうが」

 

「むー、ひどいなあ。なに? ずっとおねーさんって言った方がいい?」

 

「俺は残念ながら、姉フェチとかじゃないんだなぁ。……楯無みたいなのは好きだけど」

 

「ふぇっ? と、突然なに?」

 

 不意打ちには弱いのか? 追撃による検証、と。

 

「ん? 彼女のことを好きって言っちゃだめか?」

 

「そ、そんなことはないけど、でも……」

 

「………ぷっ、ククッ」

 

「え!? なに、なんで笑ってるの?」

 

「だって、いつもと違いすぎだ。自分が攻めるのよくても攻められるのは弱い?」

 

「―――っ! もう、私ををからかっちゃだめよ?」

 

「いや、いつもからかわれてる仕返しができるのがこんなに楽しいとは」

 

 検証結果。楯無は攻めるのが好きでも、攻められるのに弱い。

 これは俺にとって結構重要なデータだな。

 

「むー…………ふんっ」

 

 ぷいっとそっぽを向いてしまう楯無。

 い、いつもとのギャップが! か、可愛いんですけど?

 そんな楯無の耳元に顔を近づける。うん、もうちょっと弄りたくなっちゃったね。

 

「なあ、楯無」

 

「……」

 

「キス、していい?」

 

 ぴくっと一度だけ反応したが、それ以降は何もなし。

 よし、続けよう。

 

「だめか? なら……」

 

 少し溜めて。

 

 ふっ

 

 楯無の耳に向けて息を吹く。

 

「あっ……」

 

 小さく声を上げ、一瞬こちらを見ただけでそれ以降の変化は無し。

 

「次は……どうしようか?」

 

「………」

 

 そろそろやめてあげるか。

 見返りをあげなきゃだし。

 

「結、可愛い。……そういうところも」

 

 俺は、手を楯無の腰に回して後ろから抱きしめた。

 サラッと本名も口にしてみた。

 

「ごめんごめん。好きな子には意地悪したくなるだろ? ……どうしたら許してくれる?」

 

「………して」

 

「聞こえない」

 

「……キスして?」

 

「わかった」

 

 横を向いた楯無の、その唇に自分のを重ね………数秒してから離れた。

 と、ここで楯無に動き。

 俺の腕の中で体を動かし、俺と向き合う格好になる。

 そして、その顔にはいつもの不敵な笑みを浮かべてた。

 ……ありゃ、やられちゃったかな?

 

「んふふ、かかったわね? ―――んっ」

 

 今度は楯無から唇を重ねられる。

 そして俺の方に舌を侵入させてきた。

 

「んんっ! んく…っ…ん………」

 

「ん、ちゅっ―――ごちそうさま♪」

 

「ふうっ、お前なあ……」

 

「あら、何か文句ある? 弄られた見返りくらいあってもいいでしょう?」

 

 うわー、楽しそう。

 嵌められたし……計算高すぎるってのも考え物だな。

 

「最後にキスしてあげたよな」

 

「あの程度じゃ駄目よ。まだ、もうちょっとして欲しいけど…」

 

 と、ここで授業が終わる合図。

 って、もう!? んな馬鹿な!

 

「もう休み時間だしね。戻るわよ? 誰かここに来るかもしれないし」

 

「あー、了解」

 

 どうやらガチで事実らしい。

 ……ったく、何やってたんだか。

 楯無を抱いてた腕を放す。

 

「なに? 残念なの?」

 

「……かもな」

 

 ぼそっ、と小声でつぶやく。

 

「え? なんて言ったの?」

 

「気にするな。行くぞ~?」

 

 あんなこと、直接は言えないだろうが。

 楯無に言ったらどうなるか目に見えてるしな。

 

 

 俺は逃げるように、俺はフェンスから身を離して屋上の出入り口に向かって歩き出した。


 
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