No.393842

IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・

ISさん

第24話『二人の転校生』

2012-03-18 16:13:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7857   閲覧ユーザー数:7505

 

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

 

 

 シャルルの自己紹介。

 教室は『嵐の前の静けさ』とでも言うほど、静まっている。

 

「お、男……?」

 

 誰かがそうつぶやいた。

 普通だったら聞こえない音量のそれも、今の異様に静かな教室では聞こえる。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を―――」

 

 彼女―――いや、彼は現状、完全に男子だ。

 街角調査で見知らぬ人に聞いて、10人中9人は男子と答えるだろう。

 深い金髪。黄金色とでも言うそれを首の後ろで束ね、人なつっこそうな笑みを浮かべている。

 体は男子にすれば華奢で、初見の印象は『貴公子』が一番しっくりと当てはまる。

 

 

 ちなみに、街角調査の残り一人は……『男の娘』。いや、それも男だろ!?

 

 

「きゃ……」

 

「きゃ?」

 

 ああ、来るな。……嵐が。

 

 

「「「「「きゃああああああああっ!!!!!」」」」」

 

 っ!?―――ばっ、馬鹿なっ!

 耳を塞いでいたのに、貫通されただと!?

 ……次からは神力も使って防御することを考えよう。

 

 さっきまでの静けさはどこへやら。すぐに女子が騒ぎ出す。

 でもこれって、どう見てもラウラを無視してるよな。本人は気にしてない風だけど。

 

「男子! 三人目の男子!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形! 守ってあげたくなる系の!」

 

「地球に生まれてよかった~~~!」

 

 キター!(おだゆ○じ風)

 ……なんか、言わなきゃいけない気がした。

 

 まあ、シャルルが男子として入ってきたから、ドサクサに紛れて俺と楯無のことはいつの間にか認知されてる……そうなるといいなぁ。

 

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

 織斑先生のうざったそうな、ぼやき。

 けれども、それだけでクラスは静かになる。さすが織斑先生。

 

「皆さん、まだ自己紹介は終わってませんよ~」

 

 その山田先生の声で、俺はもう一人の転校生『ラウラ・ボーデヴィッヒ』に意識を向ける。

 

 髪は白に近い、輝くような銀髪。

 それはまとめることもせず、腰まで下ろされている。

 右目の色は赤。楯無よりも深い赤色。

 そして、左目には眼帯。

 某ボスのしていそうな、マジな黒眼帯。

 

 スネ○ク! ス○ーーク!

 ――ゲフゲフ、何でもない。

 

 ラウラの印象は、やはり『軍人』

 身長は、横に並ぶシャルルに比べて低い。女子の中で比べても低い部類に入るくらい。

 

 当の本人は、口を開かないでただ一点を……織斑先生だけを見つめている。

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

 織斑先生の言葉に、佇まいを『ピシッ』と効果音がつきそうな感じで直すラウラ。

 それには、クラスメイト全員がポカーンとなった。

 

 “教官”と呼ばれた織斑先生は額に手を当て、めんどくさそうに息を吐くと口を開いた。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

 ラウラはドイツ軍特殊部隊『シュヴァルツェア・ハーゼ』、通称『黒ウサギ隊』の隊長……だったかな?

 そろそろ原作の記憶が、細かいところから薄れてきやがった。

 ……でもまあ、それでもいい。他人の、俺の知ってるはずの無い過去を知ってるというのは気分が悪いからな。

 

 ここでやっと、ラウラが口を開いた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 うん、それだけ。

 クラスは沈黙、山田先生はあせあせ。

 

「あ、あの、以上……ですか?」

 

「以上だ」

 

 冷徹な雰囲気を纏ったラウラは、反論は許さない(織斑先生以外)という空気をかもしだす。

 

 

 ふと、一夏とラウラの目が合う。

 

「! 貴様が―――」

 

 ラウラはツカツカと一夏に歩み寄り―――

 

 

 バシンッ!

 

 

「……」

 

「う?」

 

 強烈な無駄の無い平手打ち。

 つか、なに間抜けな顔してんだ、一夏。

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

 クラス中が、一夏とラウラに注目。

 箒なんかは、口をポカンと開けて固まっている。

 

「いきなり何しやがる!」

 

「ふん……」

 

 ここで、突然の事にログアウトしていた一夏が戻ってきた。

 声を上げて抗議するも、ラウラは軽く受け流し、ツカツカと自分の席に座ると、腕を組んで目を閉じる。

 

「あー……ゴホンゴホン! ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 こんな状況でも織斑先生が話し始めると、全員の意識が織斑先生に向く。……いや、どんだけだよ。

 さて、さっさと教室から脱出しよう。

 女子と一緒に着替えるなんざゴメンだ。変態のレッテルを貼られちまう。

 後、楯無にまたなにか言われる。

 

 

「おい、織斑と玖蘭」

 

「はい?」

 

 教室から出て行こうとしたところで、織斑先生に一夏ともども呼び止められる。

 

「デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

「織斑君と玖蘭君? 初めまして。僕は―――」

 

「話は後にしとけ。一夏、さっさと行くぞ」

 

「おう!」

 

 一夏がシャルルの手を取って先導する。

 

「一応、俺ら男子は毎回アリーナの更衣室まで移動することになってる。早めに慣れてくれ」

 

「う、うん」

 

「一夏、早くしないと不味いぞ」

 

「分かってる!」

 

 早く行かないと不味いことに―――

 

「ああっ! 転校生君発見!」

 

「しかも、織斑君と玖蘭君も一緒!」

 

 くそっ!

 遅かったか!

 

「いたっ! こっちよ!」

 

「者ども、出会え出会えい!」

 

 ここは武家屋敷じゃない! というツッコミをしたい衝動に駆られるが、そんなことをしてる暇は無い。

 

「織斑君と玖蘭君の黒髪も良いけど、金髪っていうのもいいわね」

 

「しかも瞳はエメラルド!」

 

「きゃあああっ! 見てみて! 織斑君と手繋いでる!」

 

「日本に生まれてよかった! ありがとうお母さん! 今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!」

 

 あーもう、ツッコミを入れたい!

 なんだよお前! 毎年河原の花あげてたのかよ! 

 いや、自分で採ってきたヤツだし、綺麗であれば良いのか? それと感謝が伝われば……まあ、置いとこう。

 

「な、なに? 何でみんな騒いでるの?」

 

「そりゃ男子が俺たちだけだからだろ」

 

「ああ、その通りだ」

 

「……?」

 

 何でワケがわからないって顔をする? 

 ボロが出るの早すぎだろ。一夏がこういうところでも鈍感でよかったな。

 

「いや、普通に珍しいだろ。ISを操縦できる男って、今のところ俺たちしかいないんだろ?」

 

「あっ! ―――ああ、うん。そうだね」

 

「さて、雑談はそろそろにしとけよ?……包囲された」

 

「えっ、うわマジだ」

 

「ど、どうするの?」

 

 走ってたはずなのに、いつの間にか行き先の通路も全てが女子で通行止め。

 どんだけエネルギー有り余ってるんだよ、お前ら。

 

「こうなったら……」

 

「「こうなったら?」」

 

 おい、一夏とシャル。お前たち今日始めて会ったのに、なんでそんなに息が合ってるんだよ。

 

「シャルル、まず謝っとく。ゴメンな」

 

「え? なんで?」

 

「……悪い」

 

 まず、一番手近な廊下の窓をあける。

 その後、シャルルをお姫様抱っこで抱き上げて―――

 

 

「さらばっ!」

 

「え、お、おい、拓神!?」

 

「ちょ、まっ―――」

 

 ―――窓から飛び降りる。

 一夏? 生け贄だよ、生け贄。こういうときは犠牲がつきものだ。

 

 ちなみに、ここは三階。

 結構高いね。常人だったら飛び降りれるか降りれないか、危ういだろうな。

 ま、俺は常人でも人ですらないんで、っと。

 

「きゃああああああっ――!?」

 

 シャルルの悲鳴。

 もはや声だけだと女子だぞ?

 

 そのままだんだん地面が近づいて―――

 

 ダンッ!

 

 着地。膝を折って衝撃を殺す。

 それを確認してから、呆然としているシャルルを下ろす。

 

「ほれ、さっさと行くぞ。デュノア」

 

「……え? あ、うん。それと、僕のことはシャルルでいいよ?」

 

「オーライ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺は玖蘭拓神、さっきの生け贄が織斑一夏だ。俺のことは拓神って呼んでもらっていい」

 

「うん、わかったよ拓神」

 

「おう。ちっ、時間が無い。走るぞ!」

 

「うん、わかった!」

 

 やばい。遅刻したらやばい。織斑先生がっ! 

 一夏? だから、生け贄って言ったじゃん?

 

 

 

 全力で走って、アリーナの更衣室に到着。

 

 

「さっさと着替えるぞ。織斑先生に叩かれたくないだろ?」

 

「それはね。痛そうだし」

 

「痛いで済めば良いな。―――っと真面目に不味い」

 

 痛いで済めばいいほうだ。

 激痛だぞ激痛。そして毎回五〇〇〇個の脳細胞が死滅していくんだ。

 

 俺は、いつも通りに制服の下に着込んでいるジャージになる。

 エネルギーはいくら使ってもいいんだ。アレ――ISスーツ――を自分で着るのはめんどくさい。

 

 シャルルの方を向くと、シャルルは既にISスーツ姿だった。

 すごいよね、デュノア社。体のラインとか、これだけ隠せるんだから。

 

 

「あれ? 拓神はISスーツ着ないの?」

 

「ん? ああ、ちょっと特別なんだ。行くぞ」

 

 

 俺とシャルルは足早に、更衣室からグラウンドへと向かった。

 


 
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