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IS~漆黒の守護者~ 第1章【転生者、漆黒と共に……】

加那 翔さん

にじファンで連載していました【IS~漆黒の守護者~】です。
読者様の要望により、こちらで連載を再開させていただきます。
《あらすじ》通り魔に殺されそうになった妹を庇って死んでしまった主人公、上条 優哉。
だが、それは神様のミスだった。
それを償うために神様は上条 優哉をISの世界に転生させる。

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2012-03-18 12:59:39 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1538   閲覧ユーザー数:1420

 

 ――俺、なにか悪いことでもしたか?

 

 目前で起こった摩訶不思議な光景を見ながら、俺こと上条優哉(かみじょうゆうや)は思う。

 摩訶不思議な光景というのは、スーパーで普通に売ってる包丁で腹を刺されて殺された。

 血に染まった自分の死体が目の前に転がっていた。

「……ねぇ、兄さん。嘘でしょ? 嘘だよね。嘘だって言ってよ」

 そんな俺の死体の前で、泣き崩れる妹の姿があった。

「……恵理(えり)

 俺の変わりに幸せになってほしいと願った、愛しい妹の名前を呟く。

 泣き崩れる恵理の姿を見てるだけで、胸が苦しくなってくる。

「なんで話してくれないの……? せっかく仲直りが出来たのに。なんで……」

 これ以上、恵理の泣き叫ぶ声を聞きたくはなかったので耳に栓をする。

 今までと同じように嫌なことから逃げる。俺の嫌なクセだ。

「いやーーーーっ!!」

 

 

 

 くそっ、なんでこんなことになっちゃったんだよ……。

 俺が死ななきゃ、こんな辛い目に遭わなくて済んだのに。

 

 

 

 

 ~~1時間前~~

 

 

「……はぁ、今日も疲れた」

 一日の授業過程をすべて終え、家に帰ろうと帰路を歩いている。

「あっ」

 家の前まで帰ると、なぜか妹が不機嫌そうな顔をして誰かを待っていた。

 俺とは兄妹なのだが、まったくと言っていいほど兄弟仲はよくない。喧嘩をしているわけではない。だけど、何故か仲が悪い。

 仲が悪い意味はわからない……。というわけではない。俺と妹の仲が悪い理由は一つ。

 “俺が出来損ないで、妹が完璧超人”なだけだ。

 妹が完璧すぎるせいで劣っている俺を見下し始めた。強いて言うのであれば、これがキッカケだろう。

「……やっと帰ってきましたね。どれだけ待たせるんですか」

 俺の他に誰か帰ってきたのだろうか?

 そう思って周囲を見回すが、俺以外の人の姿がない。

 ――もしかして、妹が帰ってくるのを待ってたのって俺なのか?

「何のようだ? 俺と違って何でもできる恵理さん」

 上条恵理(かみじょうえり)。実の妹であり、成績優秀な完璧超人。

「……その事で……話をしたいんですけど」

「別にいいけど。それじゃあ公園にでも行こうか」

 俺達がする話はあまり人に聞かせられるものではないと判断し、場所を移動する。

 家の前で話してると、もしかしたら心底嫌っている両親と会うことになるだろうから。

 恵理をつれ、近所の公園まで向かっていく。

「……あのさ、私の守るために兄貴が…その……」

 ――あぁ、なるほどね。あいつらから聞いたのか、その話を。

「まぁ、その話は本当だぜ」

 両親(あいつら)は成績が悪いやつには、暴力でも何でもするからな。

 リアルな話、俺の体にはかなりの傷がついてるし。

「……そうなんだ」

「それで、もういいか?」

 恵理の話が終わったと思いベンチを立つ。

「あ、“兄さん”」

「へっ?」

 あれ、今――兄さんって。

「あ、ありがとね……。私を庇ってくれて」

「いや、別に気にするな……っ!!」

 恵理から顔を背け、公園から出ようとしたのだが、ふと恵理の後ろから怪しい男が近づいていたのに気がついた。

 男は恵理を見て急にニヤニヤしていた。一目見た瞬間からおかしく、怪しい雰囲気しかしなかった。

 俺は男に警戒はしていたのだが、予想を遥かに超えた行動をしやがった。

 ……カバンのなかから包丁を取り出し、恵理に向かって走り出したのだ。

「兄さん?」

 まずい!! 恵理のやつ、男に気づいてない。

 

 

 ――くそっ、間に合えよ!!

 

 

 

「いたっ!! に、兄さん!? いきなり何を……っ!!」

 本気で恵理を突き飛ばし、助けることは出来たのだが、俺は包丁を避けれずに心臓辺りに喰らってしまった。

 犯人は俺を刺したあと、すぐに逃げていった。

 ――俺、あんなやつに刺されて死ぬのかよ。そんなことを思いながら、地面に倒れる。

「……に、にい…さん?」

「え…り。わるいな……」

 そんな俺の近くに座り込んで、泣きじゃくる恵理の頬に手を添え呟く。

「喋らないで。今、救急車呼ぶから」

「……もう、無駄だよ。目が霞んできたし。自分でも、もう死ぬってことぐらいわかってるんだ。だけど死ぬ前に言いたいことがある」

「……な、なに?」

「俺がいなくなっても幸せに暮らせよ」

 そう言い終えた瞬間、目の前が真っ白になった。

 死ぬ瞬間って、こんな感じなのかな。と、のん気なことを考える。

 やっぱり死ぬと自覚した瞬間って、こんなものなのかとも思った。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 ――そうだ、すべて思い出した。

「……俺、死んだのか」

「そうね。確かに死んだわね」

 いきなり後ろから声をかけられ慌てて振り向くと、白いドレスに身を包んだ天使と間違ってもおかしくないぐらい綺麗な人がいた。

「……あら、綺麗だなんて。褒めても何もでないわよ」

 あれ、声にだして綺麗だなんて言ったっけ?

「言ってないわよ。心を読んだだけだからね。私は神だからね、こんなこともできるのよ」

「……なるほど。神様だからできたのか」

 俺がそういうと神様はちょっとびっくりしたようだった。

「……どうしたんですか?」

「いや、今まで私が担当した人達は全員、信じてない様子だったから。あなたみたいなタイプが珍しくて」

 まぁ、確かに自分のことを神様だっていう人は痛いもんな。

 

 

 

 

「ごめんなさい!!」

「はいっ?」

 あれから色々話していたのだが、神様に急に謝られた。

「えっと、どうして謝るんですか?」

「実は私のミスであなたを殺してしまったんです」

 はっ? 神様(こいつ)のミスのせいで俺が死んだ?

「……話を聞かせてくれ」

「はい……」

 それから話を聞いてみると、俺が死んだ理由がわかった。

 なんでもこの人のミスで、本当は警察に捕まって死ぬはずだった男が警察に捕まらなかったらしい。で、男が生きていたせいで俺は死んだと。

「……なるほどな。だいたいの事情はわかった」

 俺の表情を見た神様は少し泣きそうな顔をした。

 それはさっきまでの女性らしさからはかけ離れた、少女のような怒られるのを決心したような表情だった。

 ……そんな顔をされたら怒りたくても怒れないじゃんか。もとから怒るつもりはなかったけど。

「で、俺は天国に行くことになるのか? それとも地獄か?」

 俺の言葉にびっくりしたのか、神様はキョトンとしていた。

「私のミスであなたは死んでしまったので、もう一度生き返ってもらいます」

 ――もう一度、生き返るねぇ。

「だけどさ、死んだ奴が生き返ったらおかしくないか?」

「そうですね。死んだ世界では、ね。なのであなたには転生してもらいます」

 転生?

「そうです。あなたにはとあるライトノベルの世界に行ってもらいます」

 ライトノベルの世界か。なんか面白そうだな。

「……まぁ、話はわかったけど。どこの世界に行くことになるんだ?」

「そうですね。ISの世界にしましょうか。理由は私が好きだからですけど」

 ISか~、俺はあんまり見てないんだよな。恵理は結構、この小説が好きらしいけどってか……そんな個人的な理由で人を送っていいのか。

「……良いんだよ。じゃ、行っくよ」

「ちょ、ちょっと待て!!」

 まだ聞きたいことが………。

「……お断りします」

 神様がそういうと、俺の足元に急に黒い穴があく。

 

 

 そして…………。

「ふざけるなぁぁーー!!」

 俺は黒くて不気味な穴に落ちた。

「あっ、また間違えちゃった。どうしよ!」

 女神の焦ったような声を上から聞きながら。

 

 

 

 

第1話 【状況】

 

 

 

「……アニメを見て、結構デカいとは思ってたけど。まさか、ここまでとは」

 殺人事件に巻き込まれ、不幸な死を遂げてしまった上条優哉。

 その生まれ変わり……と言ったらおかしいかも知れないが、IS版の上条優哉こと【黒月 優哉(くろつきゆうや)】は今、IS学園のゲート前にいる。

 何故、女性しか使えないはずのIS(インフィニット・ストラトス)を扱うための学校、IS学園のゲート前に俺がいるのかを説明するには、少し時間を遡る必要がある。………3日前まで。

 ――いや、具体的な理由を話すには1ヶ月ぐらい戻らないと駄目か。

 

 

 

 

ーーー1ヶ月前ーーーー

 

 

 俺がISを使えることがバレたのは、転生してから14年たったある日のことだ。

「転生してから14年たったし、ISでも作ってみるか」という軽い思いつきでISを作って完成させたときに起こった出来事。

 

 

 

~~IS作成中~~

 

 

 

「……よし、出来た!!」

 創作期間3ヶ月ぐらいかけて、装甲がほぼ真っ黒のIS【黒影(くろかげ)】が完成した。

 作り始めてから気づいたことだが、若干、ラウラのIS【シュヴァルツェア・レーゲン】に似ていた。

 そっくりというレベルまではいかないが、類似とは言えるかも知れない。

 ただ少し、こっちのほうがスピードタイプに設定した装甲が少ない。

「……おぉ、君はISを作ること出来たのか」

「ふにゃっ!?」

 いきなり真後ろから声をかけられたので、びっくりして変な声を出してしまった。

 ……ふにゃっ、ってなんだよ。俺は猫か。

 そんな自己ツッコミを心の中でしながら、振り返る。

 振り返った視線の先には、黒髪短髪の見た目好青年な男が立っていた。

「……はぁ、びっくりさせないでくださいよ。冬弥さん」

「すまんすまん。まさか君1人でISを作れるとは思ってなくてね」

 まぁ、そう思うよな普通は………。

「で、スペックはどんな感じになってるんだい?」

 さっきと話を急に変えてくるこの人は、【神崎冬弥(かんざき とうや)】。

 原作にはなかった会社、【Black moon社】ってところの社長だ。

 会社名でわかると思うが神崎家と俺はかなり親しい関係だ。俺の苗字―ー黒月を英語に変えて使ってくれるぐらいの、な。

 

 

「そうですね。……まず注目すべき点は、こいつの圧倒的なスピードですかね」

「ほう」

 使い手によっては、敵をノーダメージで圧倒することが出来ますから。

「……そして、エネルギー系と実弾系、両方の武器をつけていることも特徴の1つですね。

後、接近戦もできるし、遠距離戦もできるオールラウンドタイプです」

「……なるほど。これは素晴らしい機体だな」

「ありがとうございます。そういっていただければこいつも俺も嬉しいですよ」

 何気ないことだったが、男なら起動できないことを知っていたので黒影に触りながら言う俺。

 ――そのときだった。

「へっ?」

「な、なんだと!!」

 俺が触った瞬間、勝手にIS……黒影が動いたのだ。

 ――嘘だろ。

 なんで俺、触っちまったんだよ。俺のバカ。

 

 

 

 

 

 1ヶ月前にそんなことがあったのだ。

 それが1つ目の理由……、ISを起動させられる男なんて奇妙な存在だ。

 全世界から注目されるに決まってる。それがわかっていたからだろう。

 IS学園に所属している“とある先生”からお誘いの電話をいただいたってわけだ。

 ――そのまえに天災のせいで、俺が【世界でISを動かせる2人目の男】っていう肩書きもいただいてしまったが。

 話が逸れてしまったな……。

 俺がこのIS学園に来たのには、さきほどの理由ともう1つ、依頼があったからだ。

「すまない、待たせたな」

 2つ目の理由を思い出そうとしていたら、ゲートの中から俺に近づいてくる影があった。

 その人物は、鋭い吊り目に黒いスーツを着た女性、織斑千冬(おりむらちふゆ)だった。

「いえ、別にそんなに待ってませんよ」

「そうか、なら良かった」

 天災の所業のせいで注目されまくってるので、ちょっと早めに来ただけですよ。

 ――むしろ時間通りでした。

 心の中で天災に向けて溜め息をつくと同時に、織斑先生は口を開く。

「……久しぶりだな。黒月」

「そうですね。……5年ぶりですか?」

「ああ、もうそれくらいになるな」

 ――もう、それくらいになるのか。

 ISの世界(こっち)に来てから時間経過が早く感じるな。

「……詳しいことは歩きながら話そう」

 時計を見て千冬さんが言う。

 そっか、急がないとまずいのか。HRの時間は決まってるからな。

 

 

 

 

 

 

 

2話 【再開】

 

 

 

 

side 優哉

 

 

「……私が読んだら入って来い。いいな」

「了解です」

 千冬さんの指示通りに、廊下で待ちぼうけを受ける俺。

 だが、ただ待ってるだけなのは暇なので、壁にもたれる。

 ……そういえば二つ目の目的って、“あいつ”関係だったよな。

 【Black moon社】の社長、神崎 冬弥(かんざき とうや)の一人娘。

 そして、俺の幼馴染でもある【神崎 香菜(かんざき かな)】の護衛。

 

 

 

 

 

side 一夏

 

 

「……はぁ。これは本当にキツいな」

 ISを使える男は俺ぐらいなので、必然的にIS学園には女ばかりとなる。

 クラスだけでも周りが全員、女となると精神的に参ってくる。

「あれ、一夏君。だいじょーぶ?」

「あ、ああ、香菜か」

 俺を心配して声をかけてくれた女の子は、神埼香菜と言って俺の幼馴染だ。

 そしてこのクラスには、香菜と同じ幼馴染である篠ノ之箒(しのののほうき)もいる。

 だからだろうか、男1人ではぶられるということはないのだが空気がキツい。

「……大丈夫、と言いたいところだが」

「まぁ、大丈夫じゃないでしょうね」

 私が反対の立場だったら参っちゃうもん。と参ったと現しているかのように手を横にあげる。

「やっぱりそうだよな……」

 女性しか操縦出来ないインフィニット・ストラトスの存在が出現したと同時に男女の社会的バランスが崩れ、女尊男卑(じょそんだんぴ)の時代となった。

 ――そんな時代なのに、ISを扱うことが出来る男がいるってなったらそうなるよな。

(女尊男卑か……)

 そのフレーズを聞いて思い浮かんだのは、昔の友。

 あいつの……家族が急に死んだ。

 その死に方が異常だったので、あいつは真相を探るために日本を出た。

「……香菜。あいつから連絡あったか?」

 さきほどから言っているあいつ。

 その言葉だけで俺の幼馴染である以前に、あいつとも幼馴染である香菜ならわかるだろう。

「まったくないわ。ったく、あれから何年経ったと思ってるのよ」

 憎々しげに文句を言う。

 ……だが、それも仕方ない。すべてあいつが悪いんだし。

「勝手に出て行きやがってよ……」

 

 

 

 

「はいはい……。そろそろ朝のSHRを始めますよー」

 今日も千冬姉は、用事があったのだろうか。

 朝のSHRを仕切っていたのは山田真耶(やまだまや)先生だった。

「……ねぇ、一夏君。今日も千冬さんは用事なのかな?」

「いや、そんな話は聞いてないんだけどな」

 出席番号が近いため、俺と香菜の席は近い。

 そのため授業でわからないことがあったりしたら、すぐに聞ける。

 今回は千冬姉がいないことを話題に話をしていた。

 席が前のほうなので、先生に気づかれない程度に音量を落として。

「……あたっ!?」

「……っ!!」

 音量を落として話していたんだが、急に頭をはたかれた。

 普通に頭を叩かれて、この威力――。

「呂布か……!?」

「……誰が最強の武神だ。私はそんな大層なものではない」

 いや、そう思ってるのは本人だけで。周りは最強だと思ってるぜ。

 心の中で思っていたことがバレたのか、もう一度はたかれた。

「すまないな。朝のSHRを任せていまって」

「いえいえ、別に構いませんよー。それより、転入生君は?」

「すでに来ている。今は廊下で待ってもらっている」

 転入生――?

 そんな話、聞いてなかったぞ。

「せんせー。転入生なんて話、聞いてないんですけど?」

「あー、今、言ったからな」

「……もう少し、早く言ってくださいよ」

「すまん。今日くるやつは訳ありなんだ。あまり大雑把に出来なかったんだ」

 訳アリな人物。もったいぶるような言い方をされるから余計に気になる。

 あまりこういったイベントに関心なかった香菜も今回に至っては興味津々といったところだ。

 

 

「では、入ってきてもらおうか。……黒月、入ってこい」

 

 

 

                     ――side out

 

 

 

 

 

side 優哉

 

 

 

『……では、入ってきてもらおうか。黒月、入ってこい』

「失礼します」

 先に入った先生からお呼びのお声をいただいたので、声をかけてから教室に入る。

 俺が教室に入ったと同時に、顔を見たのだろう。3人ぐらいの顔色が変わった。

 ……まぁ、誰の顔色が変わったのかはわかると思うが、一夏と箒。後、護衛対象の香菜だ。

 ちなみに俺が小さいころに一夏と箒と香菜とはかなり遊んでいた。俺が8歳の時までは、ね。

「黒月 優哉(くろつき ゆうや)です。趣味は料理。まぁ、これからよろしく」

 満面の笑みでそういうが、教室は無音になった。

 ……あれっ? 失敗した。

「……男?」

 あー、そういうことか。

 正直に言って、俺の容姿はどちらかと言えば女寄りだ。

 髪も後ろで1つに束ねている。そして顔は童顔(これは昔から親に言われていた)。

 これからクラスメイトとなる女の子達も、どちらかわからなかったということなのだろう。

 それはそれでわかるけども、その反応はちょっといただけないな。

「残念。髪が長いから間違いやすいけど俺は正真正銘、男だよ。なんなら見せようか? 勿論、ベッドの上で……」

「「「きゃぁぁぁーーっ!!」」」

 若干、下ネタになったような気がするが、そんなの関係ない。

 ネタとして受ければいいんだよ。

 

 

「男子!! 二人目の男子だよ!!」

「しかもまたうちのクラス!!」

「そしてかなりの美少年!!」

「私、黒月君になら抱かれたい」

おいおい、男が来たからってこんなに騒ぐことか?

……って、男がISを動かせるのは珍しいことだから仕方ないか。

そして敢えて、最後のやつには触れない。

自分からネタを振ったような感じだけど、触れたらマズイ気がする。

「騒ぐな。今は休み時間ではないぞ」

 パンっと手を叩いて、千冬さんの一声かけるだけでうるさかったクラスが一瞬で静かになる。

 ――さすがですね。

 一言であれだけうるさかったのを静めるなんて。

「黒月、お前の席は一番後ろの席だ。さっさと座れ」

「はい」

 俺は千冬さんに言われた通りに空いていた席に座り、連絡事項を聞いてHRは終わった。

 

 

 

 

「よっ、久しぶりだな。一夏」

 昼休み。

 食堂に昼食を食べに来たら一夏と箒、それに香菜もいる席を見つけて、すぐに向かった。

 本当にこの学校の女子は行動力があるな。まさかチームで行動して挟み撃ちとかしてくるなんて。

「おう、優哉か。本当に久しぶりだな。急にいなくなりやがって」

「それは本当にすまん。……箒に香菜も久しぶりだな」

 一夏に謝ってから、一緒に座っていた箒と香菜にも話かける。

「……そうだな。お前がいなくなってから7年ぶりか」

 なんか、微妙に言葉に刺があるような気がするんだけど気のせいかな。

「ですね。一体、私達に黙って何をしてたんだか」

 ――箒さん、香菜さん?

 やっぱり言葉に刺があるような気が……。

 そう、一夏には理由は伝えてある。一夏というよりは千冬さんにと言ったほうがあってるな。

 一夏にせがまれたときは伝えてください。だけど、香菜と箒の2人には絶対に教えないで、と。

「そ、そういえば、お前もISを操縦できるのか?」

 唯一、理由を知っている一夏が話を変えようと試みる。

「あ、ああ。ってか、ここについてるだろ?」

 右耳にかかっている髪の毛を退け、そこに着けている物を見せる。

「……専用機!?」

「ああ、【黒影(くろかげ)】だ」

「黒影…黒影……」

 ISの名前を言うと、たった一人、香菜だけが俺のISの名前を何度も呟いていた。

 ……なんだ? 黒影になんかあるのか。

 

 

 

 

 

 
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