第1話
「……あれ? 俺って死んだはずでは?」
不動拓馬は山の中で目を覚ました。どうやら地面に寝転んでいたらしく、服に土などがついているがそれ以外に不審な点は見当たらない。しかし、よくよく考えると自分が生きていること事態がありえないのだ。
「確か……火のエルと同士討ちになったはずじゃ?」
自分が共に戦っていた先輩の一人、葦原涼が真島浩二という男からアギトの力を受け取りエクシードギルスとして覚醒した時に、自分は突然襲撃をかけてきた自らを火のエルと呼んだアンノウンと戦っていた。そして、途中から救援に来た津上翔一と氷川誠と三人で戦っていたがエルロードに叶うことなく負ける寸前まで追い込まれたが、捨て身の攻撃で自らの身と引き換えに倒す事ができた。
「なのに……生きている? バイクも……ある」
そして、改めて自分の持ち物を確認すると財布と携帯など戦いの前にかばんに入れたものはあったが、それ以外は無し。そして、傍には自分が使っていたバイクがあった。
「……とりあえず、ここがどこなのかを確認しないとな」
そう結論付けると拓馬はヘルメットを被り、バイクにまたがり山を下り始めた。
そして、数ヶ月後この世界が自分が居た世界とはまったく違う事を確認した。基本的な歴史や文化などは変わらないが、自分が居た世界とは違う事がたくさんあることに気付いた。まずは、自分の主観から数年ほど過去に戻っている事。そして、旅をして分かったのだがこの世界にはいわゆるオカルトが実在している事。魔法使いなども何回か目撃した事もあった。
「いや、俺も十分オカルトだと思うけどな」
「どうしたの?」
「アキラか。いや、なんでもない」
拓馬はこの世界に来て旅をしていた時、とある縁で大河内家にお世話になっていた。一応、中退していたとはいえ高校生でもあり、仲間からも色々勉強を教えてもらっていたため大学生レベルの学力は持っていた拓馬。だからいろいろ勉強を教えていたのだが、今年の春から麻帆良という学園都市の中学校に進学する事もあり、寂しがったのか結構一緒に居る事が多くなっている。
「しかし、アキラも春から中学生か。がんばれよ?」
「うん。拓馬は……どうするの?」
元々、アキラの家庭教師のようなことをしながら大河内家で世話になっていた。アキラの両親は拓馬が了承すれば養子として引き取る事も言ってくれたが、拓馬は丁重に断った。
「そうだな。また旅に出てみようと思う。まあ、携帯は持っていくしバイクだから呼べば会いに行くさ」
旅に出る理由は自分と合い討ちになった形で倒した火のエルを探すため。自分がこの世界にいるなら火のエルもこの世界にいる可能性は高い。前の世界では「アギトになる可能性のある人間」を狙っていたが、この世界にアギトになる可能性が無い人間が居ないとは限らない。
「(それに、魔法使いも狙うかもしれないな)」
魔法使いも方向性は違えど脅威の存在には変わりない。もし、奴を作り出したオーヴァーロードが「特殊な能力を持つ人間」を狙うように命令していたら?
「それより、荷物は送ったんだろ? なら、麻帆良に行く時は送って行ってやるよ」
「あ、ありがと」
この世界に来てから変身はしていないがアンノウンが動き出したら変身する事になる。この世界に「アギトの力」を持つ者はいないはず。ならば、自分と同じようにギルスだった涼のように誰からか「アギトの力」を受け取り、覚醒する事もないはず。なら、いずれこの体は崩壊する。その前にエルロードを倒さなければならない。
「(頼むから火のエルだけ居てくれよ? コレで他のエルロードやオーヴァーロードが居たら俺だけじゃ完璧に負ける)」
微かな希望を持ちながら傍らに居るアキラに世間話を持ちかける拓馬。
物語はこの二年後、麻帆良に子供の先生がやってくる事が決まる少し前から加速する。
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第二話でございます。