No.393211

龍の転生者と魔物達の転生記 二話目

龍牙さん

…取り合えず、世紀末の魔人達の強さをラカン式の表に表してみようかと検討中だったりします。

…一部、図り難い人も居ますね…。主に菩薩様と黄泉返り少女。

2012-03-17 18:20:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1397   閲覧ユーザー数:1360

「フハハッ…さらばだ、また会おう♪」

 

その日の夜もまた鬼の面と忍び装飾と言った格好で『謎の忍者ゴッコ』で侵入者や学園の魔法使い達を相手に修行を積んでいる総麻の姿があった。

 

本人曰く、魔法使い相手には『警備の仕事は肩代わりしているから、その分の代金の強制徴収♪』と言う感じらしい。当人達にしてみれば、迷惑極まりない事だろうが。

なお、侵入者相手に対しては『犯罪者に人権無し』らしい。余裕があれば金目の物まで漁っている始末でもあるし。

 

もっとも、目立つ事を避けてバトスピのスピリット達の召喚するのだけは避けてマジックの使用だけで留めている。…小型の低コストスピリット達は兎も角、Xレアに代表される大型スピリット達等召還したら目立つ事この上ない。特に『魔界七将』に代表される様な紫のスピリット達は世界観から言って小型の低コストスピリットでさえ召喚するのは危険だろう。

 

付け加えると、魔人学園シリーズの主人公達と同じ《黄龍の器》だとしても、経験の無い『レベル1』では勝てる相手など、いい所『そこら辺の不良』だけだ。不意を着かれたり等、一歩間違えればそんな相手にも負ける。

イメージの中で世紀末の魔人達と戦っていても、そこから得られる経験など、こうして実戦の中で得られる経験に比べれば微々たる物で、この世界でどう言う意味を持っているかは不明だが、こうして『器』と言う厄介事を抱えている以上は弱い一般人では居られない。だから、相手に迷惑でもこうして危険と隣り合わせの油断できない実戦の中で経験を積む必要が有る。

 

「っと、危なッ!」

 

飛んで来た衝撃を《掌底・発剄》で迎撃する。

 

「随分と危ない事をしてくれるな」

 

「いや、君のこれまでの活躍を考えれば、これくらいなら平気だと思ったんだけどね」

 

そう言って森の奥から現れた男性、タカミチを見据えながら総麻は、

 

「いや、迎撃が遅けりゃ直撃だったぞ」

 

「君が逃げなければこっちたって、こんな事はしないよ。ぼく達は人知れず侵入者を排除してくれている君にお礼を言いたいだけなんだ」

 

「(お礼ね…)折角のお誘いだが、悪いけど、今日もこれで失礼させてもらう。ガントレット、チャージ・オン」

 

そう呟きながら新たに取り出したガントレットを両腕に装着し、それぞれに一枚のカードを装填すると総麻は周囲の時の流れから外れる。これが麻帆良学園No.2の実力者であるタカミチ対策。

 

それは、《爆丸》を本来の姿に戻す為に必要なアイテムであるガントレットを二つ利用しバトルフィールドを発生させて周囲の時の流れをゆっくりとした物へと変えた、例えるならば擬似的な『クロックアップ』と言った所か。

 

まだ爆丸達こそ届いていないが、爆丸バトルの為に必要なガントレットは丁度二つ有ったので、こうして戦いたくない強敵相手、または緊急時の逃走手段として利用している訳なのだ。

 

(…バトルフィールドの中でしか使えないなら、完全に娯楽用だな…。まあ、それならそれで平和で良いんだけどな)

 

この世界で戦闘用に利用する事を考えれば、ガントレットを単独で使えば通常時間の中で爆丸を本来の姿に戻す事が出来るのではと言う疑問も浮ぶ。だが、肝心の爆丸が届いていない現状では考えても意味が無いと、早々に考えを切り止めた。

第一、これはこれで物凄く便利なのだ。

 

そう考えて足早にその場を立ち去って行く。

 

バトルフィールドの存在は現状では時間の流れに干渉する術を持っている者が学園側、《立派な魔法使い》側に居ない所か向こうの常識に捕らわれていて想像できる者も居ない事を考えれば正体を隠す上で極めて有効な手段と言えるだろう。どれほど警戒を高めても決してとらえる事の出来ない《謎の鬼面忍者》として行動する上では。

 

…付け加えておくが『ゲートオープン、界放』と叫んだ所でバトルスピリッツのバトルフィールドは発生しない。まあ、バトルスピリッツのカードの力は現実で扱えるのだから問題ない。

 

「それじゃあ、さようなら~」

 

ヒラヒラとタカミチに手を振りながらその場を立ち去っていく。寮へと戻る途中で何人か魔法関係者とすれ違っていく。

 

(呑気に長々と戦ってたら拙かったな)

 

流石にまだまだ未熟な総麻としては、魔法生徒だけだったとしても大勢に囲まれたらバトルフィールド無しでは奥義を使わずに逃げ切れる自信は無い。

 

(…秘拳とかの奥義なんて間違えて使ったら、間違いなく命を奪う事になる)

 

最近では幾つか使えるようになってきた、緋勇龍麻の四神と鳳凰、黄龍の名を冠した六つの奥義、通称『秘拳シリーズ』を初めとした魔人達の奥義(フィニッシュブロー)。

素手で在る以上は使える技は限られるが、寧ろ性質の悪い事に素手の方が凶悪な威力を誇る。………流石は主人公の必殺技と言った所だろうか?

 

(…まあ、世界を救う救世の英雄の役割は主人公(ネギくん)に任せておけば良い事だしな。魔法バンザイな連中が多いなら、オレよりも彼の方が相応しいだろう)

 

そんな事を考えていると寮の前に着く。

 

この世界で望まれているのは気を扱う《黄龍の器》と言う英雄ではなく、魔法を扱う《立派な魔法使い》と言う英雄。

 

魔人学園伝奇の中における主人公の宿星。

強い氣を持つ者と《菩薩眼》の女の間に生まれる例え多くの者に知られずとも、その行いは救世の英雄と謡われる人間になると言うイメージのある大地に流れる龍脈の力を操る者。

『ああ、効率良く英雄を作り出す為の英雄の仲間としては望まれるかもしれない。』等と妙に捻くれた考えも持ってしまう。

 

世界を救う英雄は二人も要らない。ならば、総麻としては、

 

「まあ、この世界の物語は君の物語だ。頑張ってくれたまえ、主人公(ネギ・スプリングフィールド)君」

 

望まれてもなる気は無いが、平凡を捨てる英雄に望まれずになるくらいならば、自分は死なない程度に手の届く範囲の者を守る戦士で十分だ。と、もう直この地に現れるであろう英雄になる事を望まれた英雄の子へとそんな言葉(エール)を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな何時もの日常から数週間が過ぎたある日、

 

「オイ、総麻! 信じられるか!? 十歳だ、十歳! 十歳の子供が担任として赴任して来たんだぞ! 幾らなんでも有り得ないだろ!?」

 

喫茶店で現在進行形で、初等部に入学した頃に出会って麻帆良学園の常識を異常と感じるもの同士として相談に乗った事が切欠で続いている付き合いの友人の『長谷川 千雨』さんに愚痴られている総麻くんでした。

 

確かに『子供先生』の事は噂で聞こえてきた…。

…何れ訪れる事だろうとある種の達観は持っていたが、こうして、改めて現実として突きつけられると、この世界がかつての人生で読んでいた漫画『魔法先生ネギま!?』に近い世界だと言う現実を認識させられる。

 

「え、えーと…取り合えず落ち着いて…」

 

内心、この学園全体に影響を及ぼしている『認識阻害魔法』とやらの影響下の中で、その影響を受けずに居る自分達の方が『異常』なのだろうと思ってしまう。まあ、総麻自身は『黄龍の器』だからと言うある種の『究極の異常』だからと言い訳は出来るが。

 

いや、総麻はこの世界における『異端』と言い換えるかもしれない。

 

龍脈の力によって目覚めた世紀末の魔人達の《力》を最大の形として、この世で唯一持っている。これを異端と言わずに何と呼ぶべきなのか?

何度そう思ったかは既に数えるのを止めた。

一度、この世界に『魔人学園伝奇』の世界観が混ざっていないか調べてみたが、東京には真神五人衆の通う『真神学園』も、美人姉妹の居る『織部神社』も存在していなかった様子で安心した。法で裁けぬ悪を裁く暗殺業も請け負っている『拳武館高校』については深くは調べなかった。…万が一存在していたら、命が幾つあっても足りないので。

……もっとも、龍斗か異界王かファーブニルの意思かは不明だが、『刀に槍だけで無く鞭やナース服、賞味期限が不明な食品や雑誌にアイドルの写真まで扱っている亀の忍者が営んでいる某骨董品店』だけは総麻だけが利用できる形で存在してくれていたが。それがどう言う形かは、また別の機会に語る事としよう。

 

「悪い。」

 

「まあ、オレに対しては気にしなくても良いけど、周囲の目だけは気にしてくれれば嬉しいかな。」

 

「うっ…。」

 

流石に総麻に与えられた東洋(御門(みかど) 晴明(はるあき))、西洋(裏密(うらみつ) ミサ)、中国(劉(りゅう) 弦月(しぇんゆえ))の術の知識の中に人払い等の物も存在しているが、そんな物を下手に使う気は無いから思いっきり注目を集めている。

 

初等部の頃に出会って以来こうして相談に乗っている事が現在まで続いている訳だが、この麻帆良の不思議には総麻としてもなれない。偶然にも出た声と溜息が彼女と重なってしまった。

………もっとも、総麻の事情を知られたら、『お前が言うな』とでも言われそうなのだが。

 

「退屈な平凡を嫌っている奴にしてみれば、2-Aの騒動の多さは羨ましいって思うかもしれないけどさ。」

 

「…羨ましいって言う奴が居るなら、今すぐ代わってくれ。」

 

「まあ、人間、自分に無い物は魅力的に見える物だからね。そう言う人に限って、いざ自分がその立場になったら、取り乱したりして。」

 

そう言って苦笑を浮かべると、彼女に気付かれない様に真剣な表情を浮かべる。

 

……魔人学園伝奇の世界観が無い事を確認した時、一つだけ恐ろしい可能性が推測出来た上に否定する証拠も肯定する証拠も無い為に、感情で否定したが、当ってくれるなと願い続けている事が一つだけある。

 

…簡単な話だ…。

 

『真帆良学園』が『真神学園』…いや、魔人学園伝奇に登場する学校の役割を担っていると言う可能性だ。他にも織部神社の変わりに『龍宮神社』と言う形で、ネギまの舞台が魔人学園の重要な場所の役割を果たしていると言う可能性だけは未だに否定できていないし、油断していて突然怪事件に巻き込まれても困るので『謎の忍者ゴッコ』の序に調べているが、それらしき証拠は発見できていない。

 

《旧校舎地下》の様な異形の怪物が出て来る無限に続く修行場が存在していれば、それが肯定する証拠になっているのだが、幸いと言うべきか、未だにそんな場所は出て来ていない。

 

(…あとは、《図書館島》が《旧校舎地下》の代理と言う可能性か…。)

 

ある意味、正体を隠している以上、タカミチや学園長以上に警戒する必要のある人間の居場所である為に積極的に調べていない。

 

総麻はそう考えた後、カップの中のコーヒーを一口喉に流す。

 

万が一、その考えが正しかったとしたら、同時期か数年の時間差で二つの世界の命運をかけた戦いが始まる事となる。そして、目の前の少女は未来の英雄の従者候補として集められたと邪推できる2-Aの一員で、《黄龍の器》と言う異端である自分と同じく学園の認識阻害魔法の影響を受けずに居る。

 

『楽観は危険だが、考えすぎも良くない』と思いながらも……自分と言う異端が原因で目の前の少女は魔法と言う裏の世界だけでなく、本来ならば巻き込まれるはずも無かった龍脈を巡る陰と陽、そして、邪の戦いに『重要人物』として巻き込まれる危険性もあると言う可能性も考えてしまう。

 

(まっ、し過ぎは良くないけど、警戒して準備しておいて損は無いだろう…。)

 

万が一、そうなった場合の決意はある。

 

「ここに居る事が不安?」

 

「いや、不満は有るけど不安は無いな。」

 

「…もしかしたら、危険に巻き込まれるかもしれないのに?」

 

「……何かあったら、その時は助けてくれるんだろ?」

 

心から信頼していると言う笑顔で語りかけてくれる彼女の表情を見て、改めて決意する。最悪の事態が起こった時は持てる力の全てを使って『邪』を滅して、目の前の少女を守る。ただそれだけだ。

 

例え、異端である自分を彼女が拒絶したとしても…。

 

「当然。」

 

だから、自身を持ってそう答える。まだ総麻の力はあらゆる意味で完全ではないが、それでも………一人くらいは守り抜く。

 

世紀末や幕末の魔人達の様な仲間が居れば決意も違うだろうが、どんな力を持っていたとしても個人で守れる物は高が知れている。それ以上のものを守れと言われても拒否するだけだ。唯一つ、大切なものを守れればそれで良い。

 

ゆっくりと、ポケットの中に有る一枚のカードに触れる。

 

(だろ、ジークヴルム…。)

 

『雷皇龍ジークヴルム』…それが、スピリット達の中で最初に召喚したスピリットにして、唯一召喚した大型スピリット。最初に従えた龍。意思を持って総麻に従ってくれた信頼する仲間の一体。だが、総麻の力の延長で有る以上は過信は禁物だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、総麻は油断していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後の夜…

 

(…どうしてこうなった!?)

 

鬼の仮面が砕け素顔が露になって、額から血が流れているのには構わない。自分と言う異端が混ざっている以上、本来辿るべき歴史が歪む可能性が有るのは理解していた。

 

怒りに震える気持ちで襲い掛かる悪魔達を『秘拳・鳳凰』で消し飛ばしながら、背後に注意を払う。

 

「…来い…。龍皇!!!」

 

初めて召喚するXレアの大型スピリットは始まりの赤き龍『龍皇ジークフリード』。だが、負の感情に支配された総麻の心が望むのは、それではない。

 

「…その存在、既に絶対破壊(カタストロフ)!!! 堕ちろ、『魔龍帝ジークフリード』ォォォォォォォォォオ!!!」

 

新たに取り出したカードが侵食する様に龍皇を飲み込み、真紅が漆黒に、理性無き色に染まった瞳を持って咆哮する龍皇…否、『魔龍帝ジークフリード』。

 

「どうして…。」

 

総麻の知る歴史ではこの時点では彼女は無関係のはずだった。

 

「オレの…せいなのか…?」

 

絶対なる破壊を撒き散らしながら、暴れまわる魔龍帝の咆哮をBGMに最高位の癒しの術を倒れる少女へとかける。強力な魔龍帝と最高位の術の同時使用は総麻にも負担は大きいのだが、そんな物は考えている時間は無い。

 

「オレの…せいで…。」

 

術の効果か、傷が治り、呼吸が戻り、顔色も良くなる。

 

「こうなった…。」

 

握り締める拳を地面へと叩きつける。

 

「オレのせいだ…ごめん…千雨…。」

 

自分のせいで運命を捻じ曲げてしまった、守ると約束した少女に謝りながら、総麻は力なく呟いた。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択