第十八話 修行
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「では修行を始める」
「その前にここはどこだ」
「オレのダイオラマ魔法球の中だ」
オレと赤き翼はオレの所持しているダイオラマ魔法球の中の一つに来ている。オレは常にダイオラマ魔法球をフラスコサイズを3つ所持している。
一つは研究室。誰かに見られたら困る物、制作するのに時間のかかる物等をここで作っている。
もう一つは実験場。実験の為に色々な環境を揃えておられているが生物は一切存在していない。
最後の一つは資源場。魔道具の触媒の為の資源が豊富な山や生物が住める場所、栽培可能な魔法植物等が生きている場で別名、食料庫。
「それとこれを嵌めておけ」
オレが作った指輪を一人一つずつ渡す。こいつは杖の代わりになる他にこの中では不老になれる事を説明する。
「それと中と外の時間差だが今回は時間がないので極限までずらした。なぜならオレは妥協は許さない男だ。よって外の一時間は中の20年に相当する。20年間で貴様らを本当の最強への道を歩ませてやる。まず最終決戦だが、オレの手に入れた情報によると奴らの作戦が最終段階に入った場合、魔法や気が無効化される場合がある。そのため全員に咸卦法を覚えてもらい、近接戦闘をやってもらう。これは最低ラインだ」
「そんな無茶な」
「できる。究極技法なんて呼ばれているがオレはアレを魔法の射手を覚えた後に開発した。その後は一人一人にあわせた能力の底上げをしてやる。ただしナギ貴様だけは別メニューだ」
「おっ、やっぱオレが最強に一番近いからか」
「バカだから座学と魔力運用だ。千の呪文の名の通りとまでは言わんがある程度はちゃんと覚えてもらう。あんちょこ等は絶対に使わせん。魔力運用の方は、見せた方が早いな。とりあえず魔法の射手を5矢、連弾で撃って来い」
指示通りナギが連弾で5矢撃ってくるのに対しオレは1矢で相殺するどころかナギにまで貫通する。
「見ての通りお前の魔法は中身がない。魔力の量で誤摩化して来ていたんだろうが先を目指すならこれは必須だ」
こうして修行を開始した。
修行開始から半年
「よし、全員咸卦法を習得したな。各自で継続時間を延ばす様にはしておけよ。ナギはいい加減ちゃんと覚えろ。普通一週間もいらんぞ、どんだけバカなんだよ。他のメンバーはこれから個別の修行に入るから、短所を無視して長所を重点的に強化していくからそのつもりで。まずは詠春、お前は神鳴流をベースに自分だけの剣技を開発するのが目標だ。神鳴流は技名を叫ぶから見切られやすい。新しい剣技は技名を叫ぶのは厳禁な。タカミチはガトウから無音拳を教わってたな。お前に選択肢は少ない。オレの魔法なら何とかなるかも知れないがあえて無音拳と咸卦法だけを鍛え続けろ。それが新しい道を開く事になるかも知れないからな。ガトウは勘を養うべきだろうな。どことなく戦闘は他の奴らに任せた方が良いと考えている節がある。それではいつか痛い眼に遭うだろうから資源場を装備無しで踏破してみろ。イマとゼクトには書庫を開いてやる。後は好きにすれば良い。ラカンはひたすらオレと殴り合いだ、もちろん咸卦法は使えよ。問題はクルトだな」
「僕がですか」
「そうなんだよ。お前の場合は選択肢が多すぎて尚かつそれらが全て魅力的なんだが器用貧乏になる可能性が高すぎる。正直な所ちゃんとした弟子にしたい位なんだよ。まあ、それは置いとくとしてどうする」
「教授から見て一番適性がありそうなのはどんなものですか」
「たぶん刀だな」
「ならばそれでお願いします」
「分かったよ。それじゃあオレが覚えて来た剣技を片っ端から教えてやる」
「お願いします」
修行開始から5年
探索に出ているガトウとガトウに頼まれて探偵術を仕込んでいるタカミチとクルト以外の赤き翼達がどれだけ強くなったのかを確かめる為に模擬戦を行っている。思っていた以上に強くなっていたので咸卦法の応用仕方を見せてみようと思ってしまった。オレもまだまだ子供だな。
「ほらほら、止まると死ぬぞ。咸卦法応用編その1『法撃』」
纏っている咸卦法の一部を切り離し腕から放つ。
言葉にするだけなら簡単だがこれの開発には2年の歳月が使われているだけあり難易度はかなり大変な事になっている。
調子に乗って連発した事により咸卦法が切れた事が全員が分かる
「チャンスだ、畳み掛けるぞジャック」
「おうよ」
「引っかかったな。咸卦法基礎編番外『ノーモーション』」
咸卦法を使用する際、両手をあわせる様にして気と魔力の合成を行うがハッキリ言って隙がデカイ。なんとか出来ないかと試行錯誤の末、両手をあわせなくとも発動させる事に成功した。これにより咸卦法が切れる事も理論上なくなった。難易度は『法撃』より若干上。
「卑怯だぞ」
「騙すオレも悪いんだろうが騙されるお前らが悪い。続けて咸卦法応用編その2『斬』」
これは『法撃』を打ち出さずにそのまま刃物の様に固定するだけの技だがこれの真価は
「「あだらばっ!」」
斬られると体内の魔力と反応を起こして咸卦法を失敗したときの様に爆発を起こす。
それもかなりの威力で。
「更に」
「まだ続くのかよ」
いつものごとく影で全員の動きを封じる。
「咸卦法応用編その3『通過』」
影から影へ咸卦法を全員に流し続ける。
身体強化魔法の部類に入る咸卦法だが、他の強化と違う所は限界値が極端に高いという事だ。
そして合成した気と魔力の量が多ければ多い程コントロールは難しくなる。
この技は影を伝って相手に気と魔力を送りつける技術だが咸卦法を送りつける事も出来る。
つまり
「ぎゃあああああ」
コントロールを失った途端爆発していく。
他の魔法や気による攻撃を使おうとした途端コントロールを失い爆発。
まずは詠春が犠牲になり次にイマが爆発する。
そしてイマの方が爆発が大きい。
この技を切り抜けるには早めにわざと爆発させるのが有利なのだがそれに気付けなかったゼクトとガトウは顔を青ざめる。
必死にコントロールをしようと頑張っている。
ここで嫌がらせをしたくなってしまった。
魔力をカットして気だけを送り込む。
「「ふげもなっ!」」
二人とも大爆発を起こし両サイドにいた詠春とイマをも巻き込んだ。
修行開始から20年
「ということで修行終了。よく生き延びた、これからも頑張って修行すればいつかはオレにも辿り着くんじゃね?」
「は〜ら〜た〜つ〜。結局一回も勝てなかった」
「そりゃ生きてる年数が違うからな。今のオレに勝ちたかったら後1000年は修行して来い。まあオレは更に強くなっているだろうが」
「絶対に倒してやる」
「まあ気長に待っていてやるよ。外に出たらオレとエヴァは旅に出るから」
「どこに行くんだ」
「元老院に盗まれたオレの研究成果を取り戻したら旧世界に行こうと思っている。なんかあったら話を聞いてやらんでも無いから」
「そんときは頼むよ」
こうして、赤き翼の修行は終了した。
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時間とは偉大だ。
それに真っ向から立ち向かえるオレは
偉大かどうかは分からんがな。
byレイト