No.392778

SPECIAL EDITION PIRATE SQUADRON GOKAIJA THE IS《INFINITE STRATOS》  再会と因縁

今章では、一気にセシリアの戦闘前まで書きます。そして初っ端からLet's Battle!!


その前に、この小説は設定改変が多々あるので、それを説明させていただきます。

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2012-03-16 23:57:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3687   閲覧ユーザー数:3557

~数年後・IS学園~

 

 

「・・・・・なんでこうなった俺」

 

 

「ぼやくな一夏。俺だってどうしてこうなったんだか・・・・」

 

 

かつて姿を消した一夏は現在(いま)、親友である『五反田 弾』とともに、なぜか女子高であるIS学園・1年1組の自らの座席にて、突っ伏すような姿勢で椅子に座っていた。その理由は、周りの環境にあった。

 

 

「「「「「「「<●><●>」」」」」」」

 

 

この、そのうちジーッという擬音でも聞こえそうな目線である。先程も説明したとおり、ここは本来女子高である。周りは女子ばかりの上に男子は自分達だけである。例えるならば、街中に素っ裸で放り出されたような気分である。別の例え方をするのならば、動物園のパンダの気分である。

 

何故こうなっているのか?それにはれっきとした理由がある。

 

 

~回想~

 

 

「おい弾。本当にここなのかよ。会場間違えてんじゃねーのか?」

 

 

「いや間違いない。真耶が持ってた案内状には確かにここって書かれてるんだから」

 

 

そう愚痴りながら廊下を歩くのは、白いコート(マーベラスの服装とほぼ同じだが、コートのみ純白)を着た一夏、そして青を基調としたブレザーを主軸に、全体的に青み掛かった服装にしている、一夏の友人である弾であった。

 

彼らはとある高等学校の受験会場であるホール1階にて迷子になっていた。実はこのホール、有名で性格が捻じ曲がっている建築家が建てた建造物で、内部がまるで迷路のように複雑になっているのだ。おかげで毎年、老若男女問わず何十人もの迷子が発生する始末である。

 

そんなホールを何故二人が今歩いているのか。それは先程の真耶という女性からの頼みがそもそもの発端である。

 

真耶こと『山田 真耶』は、とある事情で一夏と知り合いになり、そのまま一夏に惚れてついてきてしまった女性である(経緯としては弾やここには居ないほかの二人も同じようなものだが、それはまた別の話である)。真耶はISを専門的に勉強するための学校『IS学園』で、新人教師として教鞭を揮っているのだ。

 

そして今回もIS学園関係の仕事でここに来るはずだったのだが、運悪く真耶にしか出来ない仕事が入ってしまい、仕方なく弾と一夏に代役を頼んだのだ(普通は、担当者に代替えが効かない様な仕事が入ってしまった場合、他の教師がやるようなものだが、そちら側の事情が重なってしまい、結果として真耶が信頼のおける人物である一夏と弾に特例として頼まざるを得なくなってしまったのだ。

 

 

「おっ?ここじゃねぇか?その会場は」

 

 

「ん~・・・・、っぽいな。んじゃ、さっさと入るとするか」

 

 

そして二人はようやく目的の部屋を見付だし、さっさと用事を済ませて帰ろうと思って扉を開く。そこにあったのは・・・

 

 

「「IS・・・・だけ?」」

 

 

そこにあったのは、ただっ広い空間に日本が世界に誇る第二世代型IS『打鉄《うちがね》』とフランス製の第二世代型IS『ラファール・リヴァイブ』が一台ずつ、ポツンと鎮座していた。しかし、その周りには警備員や役員すらおらず、ただただ打鉄のみがおいてだけであった。

 

二人は一瞬ポカーンとしてしまったものの、直ぐに気持ちを切り替える。ただし、先程までのふざけた雰囲気とは違う、戦士《・・》としての風格を全面に押し出して、だ。

 

 

「・・・・弾」

 

 

「あいよ。オラ!!」

 

 

ガガガガガガガガガァン!!

 

 

弾は一夏の言葉に返答を返すと同時に、入り口付近に向けてマスケット型の銃『ゴーカイガン』を取り出して、連射する。

 

 

『ゴゴォ・・・・』

 

 

ドサドサドサッ・・・

 

 

すると扉の近くから、鼠色の身体に銀色の鎧のようなものを装着した、ザンギャックの兵隊『ゴーミン』が4~5体倒れこんだ。隠れ潜んでいたのが弾の発砲によって倒されたのだ。

 

 

「なんでこんな処にザンギャックがいるんだ」

 

 

「俺が知るか。少なくとも、厄介ごとが俺たちを迎えに来てくれそうだな」

 

 

一夏はそういって打鉄、弾はラファールを背に其々座り込もうとした。すると

 

 

ヴォン・・・・

 

 

「「ん?」」

 

 

それぞれの後ろから何かが起動するかのような音がした。彼らがそれぞれの後ろを向くと、自分達が背にしていたISがそれぞれ起動していたのだ。

 

 

「ふ~、やっと試験が終わったわ~。・・・って、貴方達何してるの!?ってか、ISが起動してる!?」

 

 

「こ、これは・・・!!急いでIS委員会に連絡を!!」

 

 

同時に、入り口から入ってきた女性達によって、その場が段々慌しくなっていく中、二人はただただこう思った。

 

やっちまった・・・・。

 

 

~回想終了~

 

 

(な~んでこうなるんだか・・・)

 

 

「・・・・さんっ!!織斑くん!!」

 

 

「ん・・・?」

 

 

「次は織斑君の番ですよ」

 

 

一夏は大分参ったような顔を浮かべながら教卓の方に顔を向けると、真耶が一夏に呼びかけていた。隣を見ると、弾がジェスチャーで何かを伝えている。ジェスチャーによると、どうやらいつの間にか自己紹介を(名字順で)やっており、自分の番まで来ていた様だ。

 

一夏は億劫そうな顔を浮かべながら、立ち上がる。

 

 

「はぁ・・・・。『イチカ・オリムラ・マーベラス』だ。俺はあまりISを知らないから至らないところもあると思うが、よろしく頼む。趣味は家事と鍛錬だ。俺の隣にいる五反田 弾と弾を穴が開くほど熱っぽい視線で見つめてる『五反田 蘭』とはダチ同士だ。これからよろしく」

 

 

ガラッ

 

 

一夏・・・否、イチカは自己紹介を溜息とともに終わらせると、自分の席に着いた。ちなみに言い忘れていたが、イチカと弾の服装は他の生徒と違い私服である。理由は単純で、二人の転入があまりにも突然だったため、制服の仕立てが間に合わなかったためである。

 

そして椅子に座ったと同時に、後ろの扉が開き、一人の黒いスーツを着た女性が入ってきた。

 

 

「ん?何だまだ自己紹介終わってなかったのか」

 

 

「あ!織斑先生!職員会議は終わられたのですか?」

 

 

「あぁ。初日なのに任せてしまってすまないな山田君」

 

 

真耶にねぎらいの言葉を掛けながら教室に入ってきたのは、一夏の姉で数年前に別れた織斑 千冬だった。千冬は一夏をみると驚愕の表情を浮かべるも、すぐに顔をもとに戻して教壇の前に立つ。

 

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ私の言う事はよく聞き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠15才を16才までに鍛え抜く事だ。逆らってもいいが私の言う事は聞け、いいな!」

 

 

千冬は一通りの事を言い終わると、すぐさまポケットから耳栓を出して耳に詰める。それを見たイチカ・弾・蘭は?マークを頭に浮かべていたのだが、その理由をすぐさま察した。

 

 

「「「「「「きゃぁああああああああああああああああああ!!!!」」」」」」

 

 

「本物よ!!本物の千冬お姉さまよ!!!」

 

 

「まさか直にこの目で見られるなんて!!」

 

 

「私!!お姉さまに会う為に北九州から来たんです!!!」

 

 

(((成程・・・・。これが原因か・・・)))

 

 

二人は余りの騒音に顔を顰めながらも、冷静に状況を考察していた。ちなみに三人はこの騒音が平気なのかといわれると、平気というわけではない。この三人はもっと煩い状況に出くわした事があるために慣れているだけである。

 

 

「まったく・・・。何故毎度毎度私のクラスだけこう馬鹿者共が集中するのか・・・。わざとやっているのか?」

 

 

「「「きゃぁああああああああああああああああああああああ!!!もっと叱ってぇえええええええ!!!」」

 

 

「でも時にはつけあがらないようにして~!!」

 

 

「はぁ・・・・」

 

 

千冬は指で額を覆うようにして呆れの意思を見せるも、テンションがとてつもなく高い女子達には通用しなかった。

 

 

「で?お前は数年も姿を眩まして何処行っていたのだ?おまけに名字まで変えおって」

 

 

「へっ!理由ならあの時に手紙に書いてあったはずだぜ。千冬姉」

 

 

千冬は女生徒達の歓喜声(というなの騒音)が鳴り止むまで待ち、鳴り止んだ処でイチカの処に歩いていき、質問をしていた。イチカはニヒルな笑いを浮かべながらも返事を返した。

 

 

ビュッ!!

 

 

ガキィン!!

 

 

「っ!?」

 

 

「っと、すまねぇ。ここじゃ教師だったな。悪かったよ織斑先生」

 

 

その態度にイラッっときたのか、千冬はかなり力を込めた出席簿を振りかぶって降ろす。しかし性格がほぼマーベラスと化しているイチカがそれを許すわけもなく、何処からか出したゴーカイサーベルで防いだ。

 

 

「・・・・とりあえず、織斑は放課後に職員室へ来い。個人的に話がある。山田先生、授業を始めてください」

 

 

「あ、はい。そ、それでは授業を始めたいと思います。皆さん教科書の35ページを開いてください」

 

 

少し呆然としていた真耶が千冬の声で正気を取り戻すと、すぐさま教科書を取り出して授業を始めた。そして千冬は後ろに下がり、困惑と悲しみを瞳に宿しながらイチカを見ていた。

 

 

(一夏・・・。一体どうしたというんだ・・・・)

 

 

~1時間後~

 

 

「「あ、頭いてぇ・・・・・」」

 

 

イチカと弾は最初の授業を受けただけで頭がパンクしかけていた。

 

それもそうだろう。何せ3日前にいきなりタウ○ページサイズの参考書が送られてきて、それを急遽頭に詰め込まなければならなかったのだ。それに二人は元々頭が良い方ではない。だからとてつもなく脳内疲労を起こしているのだ。

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 

「「・・・・・ア゛ァ゛?」」

 

 

故に二人は前に近づいてきた金髪少女に対してドスを効かせた声でにらみもおまけに付け加えた。

 

二人は溜息を吐きながら、この少女を相手にするために顔を上げた。

 

 

「まぁ!何ですのそのお返事は!!私に話しかけられただけでも光栄なのですから、それ相応の話し方があるのではなくて!?」

 

 

「あー、そうですねうれしいですね」

 

 

「正直こちとら頭パンクしかけてんだよ。だから話しかけんな、どこぞの誰かもわかんねぇ誰かさん」

 

 

「なっ!?私を知らない!?イギリスの代表候補生であるこのセシリア・オルコットを!?入試を主席で合格したこの私を!?」

 

 

二人が馬鹿にしたような態度をとると、セシリアと名乗った少女は本気で驚いているかのような素振りを見せる。

 

 

「はっ!候補生だか恒星だか知らねぇが、俺はテメェに構ってる暇なんざねぇんだよ」

 

 

「まぁ!!なんて口が悪いのかしら!!せっかく主席の私がISについて教えて差し上げようと思いましたのに!!」

 

 

「あいにく、俺の知り合いにISに詳しい奴がいてな。そいつに教えてもらうように頼んであるから大丈夫だエリートさんよ」

 

 

イチカと弾は手を払うようなしぐさを見せて、再び机に突っ伏す。それを見たセシリアはもう限界だった。

 

 

「あ、貴方達いい加減に!!」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「っ!!また来ますわ!!」

 

 

セシリアが二人に対して怒りの抗議を挙げようとした時、授業開始の鐘が鳴ってしまった為、セシリアは捨て台詞を残して自分の席へと帰った。

 

 

「・・・・厄介事は自分から駆け込んでくる。まさにその通りだな」

 

 

「だな。後半は完全に俺の出番はなかったけどな」

 

 

「う・・・、悪ぃ、すっかり忘れてた」

 

 

イチカは弾の突き刺すような視線に耐えながら、次の授業の準備を進めていくのだった。

 

 

「さて、これよりクラス代表を決めたいと思う。代表に選ばれたものは対抗戦だけではなく、その他もろもろのこと・・・、要はクラス単位の雑用をやってもらう。なお、あぁ、自薦推薦は問わない。誰かいるか?」

 

 

「はい!マーベラス君を推薦します!!」

 

 

「私は五反田君を推薦します!!」

 

 

「お兄ぃを推薦します!!それとお兄ぃ愛してる!!」

 

 

「はぁっ!?」

 

 

「俺もかよ!!ってか蘭!!ドサクサに紛れて俺を推さなかったか!?しかも最後ォオオオオオオ!!!!」

 

 

二人は同時に立ち上がって推薦したメンバーを見渡す。正確には弾のみ、妹の蘭の方へツッコミを入れているが。しかも他のクラスメイトも、それに賛同の意を示していた。

 

 

「待ってください!!納得いきませんわ!!」

 

 

しかしそれに待ったを掛けたのはセシリアだった。彼女は机を叩いて立ち上がり、そのまま自論を展開し始める。

 

 

「私はそのような選出は認められません!!大体実力も定かではないのに、珍しい男だからだという理由だけで代表になるのはおかしいと思いますわ!!」

 

 

セシリアの余りにも正しすぎる正論に対して、全員が「うっ」と呻る。確かに、男子だから・珍しいからといった理由で選出するのは、あまりにもおかしすぎる。

 

それを見かねてか、イチカがすくっと立ち上がった。

 

 

「ふん。まどろっこしい事は無しだ。正々堂々ハンデ無しでぶつかれば実力もわかるってもんだろ」

 

 

イチカがそういった瞬間、クラス中で大爆笑が起きた。

 

 

「マ、マーベラス君!そ、それ本気で言ってるの!?」

 

 

「男が強かった時代なんてもう何年も前の話だよ!?」

 

 

どうやら彼女達は『男=弱い』という方程式を本気にしているらしい。

 

 

「はぁ・・・・・。しz『ガァアン!!』かに・・・?」

 

 

千冬は今の世の中では当然の事であり、自分がこんな世界に変えてしまった事を内心悔やみながら、それを表にだすことなく、他の生徒を鎮めようとした。しかし、目のハイライトを消した真耶が、イチカと弾が持つゴーカイガンと同型のゴーカイガンをぶっ放した方が先だった。

 

 

シュゥゥゥゥゥ・・・・・

 

 

「クスクスクス・・・、誰ですか?今マーベラスさんを笑った野郎は・・・」

 

 

「「「ヒィッ!?」」」

 

 

真耶はクスクス笑いをしながら銃口から煙の出るゴーカイガンを生徒達の方へと向ける。

 

 

「ストップだ真耶。これ以上はやめとけ。それにガレオンの中じゃいざ知らず、此処じゃお前は教師だろ?ちゃんと授業をしような。わかったか?」

 

 

「マーベラスさん・・・、はい。わかりました。織斑先生、授業を始めてください」

 

 

「あ、あぁ・・・。わかった。いつまでぼぅっとしているお前達!!授業を始めるぞ!!」

 

 

流石に見かねたイチカは、ゴーカイガンを下に降ろさせて真耶を宥めた。そして千冬は突然の真耶の豹変に驚きながらも号令を発して、授業を再開させた。

 

 

~食堂~

 

 

「お兄ぃ、マーベラスさん、大丈夫ですか?」

 

 

「ん、心配ありがとう蘭。俺は大丈夫だ。問題は弾の方だ」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

シュゥゥゥゥゥ・・・・・

 

 

「あ~、確かに」

 

 

昼休みになり、イチカ、蘭、弾の三人は食堂で昼食を摂っていた。正確にいえば弾は頭から煙を上げて机に突っ伏しており、蘭は苦笑い、イチカは『鳥頭でもわかる!IS基礎知識!!(著:餡九《アンク》)』というタイトルの本を熟読しながら、カレーを食べていた。

 

ちなみに三人のメニューは、

 

蘭→きつねうどん

 

弾→和風ハンバーグ定食

 

イチカ→かつ丼&カレーライス大盛り

 

といった感じである。なお、弾と蘭の方は完食している。

 

 

「でもよ~、イチカは大丈夫なのかよ~」

 

 

「これ読めば何とかなる」

 

 

そう言ってイチカは懐から小説サイズの本を取り出し、弾に渡す。

 

 

「ん~?『これっぽっちのIS知識で大丈夫か?大丈夫だ問題ない』・・・なんだこのフラグ的な本は」

 

 

「題名の通り本自体は薄いが、要点をきちっと捉えてる。それに著者欄見てみろ」

 

 

「ん?」

 

 

イチカに言われて弾が著者欄をみるとそこには『著:早川裕作』と書かれていた。

 

 

「これ書いたの裕作さん!?このネーミングセンスは明らかに裕作さんのじゃないだろ!?」

 

 

「話聞いたら健太さんがつけたらしい」

 

 

「・・・・成程、健太さんなら納得だ」

 

 

弾はふーっと溜息を吐き、その小説を物珍しげに眺めながら、蘭は何かをメモするようにペンを手帳に走らせ、イチカはいつの間にか完食した食後の緑茶を啜っていた。

 

 

「ちょっといいか?」

 

 

「ん?・・・お前、箒か」

 

 

「あぁ、久し振りだな。一夏」

 

 

箒と呼ばれた少女は少しだけ笑って返す。彼女の名前は『篠ノ之 箒《しののの ほうき》』という。一夏が誘拐される前に知り合いだった少女である。

 

 

「・・・ここじゃまずい。場所変えるぜ箒。弾、蘭。教室でな」

 

 

「ちょい待てマーベラス。ほれ」

 

 

ヒュッ

 

 

「ん?おっと!さんきゅ!」

 

 

弾はイチカを引きとめると、懐から分厚い携帯電話を取り出してイチカに向かって放り投げる。イチカはそれを危なっかしげに受け止めると、弾にお礼を言って場所を変える為に歩を進めた。

 

 

~屋上~

 

 

「久し振りだな。大体6年ぶりか?」

 

 

「あ、あぁ・・・」

 

 

イチカの質問に対して上の空のような返答を返す箒は、内心困っていた。彼女はイチカを見つけてすぐに声を掛けようとしたが、セシリアと名乗る淑女(笑)が邪魔をして話しかけられず、ようやく話し掛けて屋上に連れ出したものの、いざ話すとなると頭が真っ白になって、何を話して良いか分からなくなってしまったのだ。

 

そんな箒の心境を悟ったのかどうかは分からないが、イチカが助け舟を出した。

 

 

「そういや、この間剣道の世界大会で優勝したんだってな。おめでとう」

 

 

「な!?な、何で知ってるんだ!!」

 

 

「何でって・・・、新聞で読んだからに決まってんだろ」

 

 

「何で新聞なんか読んでるんだ!!」

 

 

「そんな無茶苦茶な。大体海賊たる者『情報は常に最新のものを仕入れろ』だからな。必然的に新聞は読むんだ」

 

 

イチカは胸を張って言うが、箒にはその『海賊』という言葉が引っかかった。

 

 

「一夏、その海賊というのは何だ?」

 

 

「あ?そのまんまの意味だ。俺は12の時に海賊に鍛えてもらってな。それで今は俺自身も海賊をやってるんだ」

 

 

「海賊!?」

 

 

これには余り動揺しない(笑)箒でも流石に驚いた。というよりこのご時勢、海軍にもISを使って船を守ったりしているため、正直この世界には海賊が存在していないのだ。

 

 

「おっ、予鈴なったからそろそろ教室いくか。戻ろうぜ箒」

 

 

「え?あ、あぁ(変わったな、一夏は・・・・)」

 

 

そう言ってスタコラと戻ってしまう幼馴染を見て、箒は何処となく悲しいような寂しいような感情を抱いた。

 

 

~放課後・職員室~

 

 

「さて、俺は何を話せばいいんだ?」

 

 

放課後、イチカは千冬に言われたとおりに職員室に来ていた。といっても、他の者達にこの話は聞かせられないということで、他の者達からは見えない兼聞こえない、職員室の端っこだが。

 

 

「・・・・・数年前に家から出て行った後のことを話してもらいたい。手紙には『これ以上迷惑を掛けられないから出て行く』としか書かれていなかった。だから、その後の事を聞かせて欲しい」

 

 

「・・・・・分かった。ただし俺が話せるようなことだけになるがな」

 

 

そう言ってイチカは自分の過去を話し始めた。

 

 

「俺は姉さんの下を離れた後、ある人物の下について修行や旅をしてた」

 

 

「修行?それにある人物とは・・・」

 

 

「修行はそのまんまの意味だ。その人の名前に関してはいえねぇ」

 

 

「そうか・・・・」

 

 

そのほかにも色々のことを聞いてきたが、イチカはそれらをはぐらかすか答えるかで往なしていた。そんな事を話していると、外が暗くなっているのにイチカが気づいた。

 

 

「・・・姉さん、今日はここまでにしないか?外も暗くなってきたし」

 

 

「む?そ、そうだな・・・(もっと一夏と話をしていたかったのに・・・)」

 

 

ブラコン千冬はイチカとの会話が終わってしまうのを心残りに思いながらも、千冬は立ち上が

 

 

「あ、そうだ。一夏、これをお前に渡しておく」

 

 

・・・ろうとしてイチカに渡すものがあるのを思い出し、ポケットから鍵を取り出してイチカに渡す。

 

 

「鍵?何処の鍵だよ」

 

 

「お前の寮の部屋の鍵だ。簡単に言えば大人の都合というものだ」

 

 

「・・・成程。政府からのお達しってやつか。分かった」

 

 

イチカは口端を吊り上げると鍵を受け取って職員室を後にした。そして職員室を出た直後、先程の携帯電話を取り出して何処かへ電話を掛けた。

 

 

『はい』

 

 

「俺だ、マーベラスだ」

 

 

『まぁマーベラスさん。どうかしましたか?』

 

 

「学園の寮で暮らすことになった。暫くの間、『ガレオン』には戻れないって事を伝えておこうと思ってな」

 

 

『あぁ。分かりました。というより真耶さん達からも、暫く帰れないという旨の連絡をもらっていますので大丈夫です。暫くは『ナビィ』さんと二人きりということになりますけども・・』

 

 

『なんてことはないさー!!なんたって、おいらだって海賊なんだからなー!!』

 

 

「はは・・・。悪いな『カトリーヌ』。後は任せたわ」

 

 

『はい。では失礼します』

 

 

その言葉と共に電話は切れ、イチカも携帯を服の中に仕舞い込んで自分の部屋へと向かった。

 

ちなみにこの後、部屋に向かったイチカは、箒の風呂上りを見てしまう(不可抗力)というハプニングがあったが、何とか乗り切った。

 

 


 
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