現在、一刀達は桃香の親友であり、この街の太守でもある公孫賛に会うために100人の兵士を引き連れて城門前に待機していた
城門前で待機している間
桃香は公孫賛との再会に思いを馳せ、
鈴々は鈴々で待つことに飽きてしまったのか、近所の子供達と追いかけっこをし、
二人の様子に気が緩んだのか、兵士達もまた各々が雑談に興じる始末
その光景を見ると、とてもではないがこれから一国一城の太守に会おうとしている団体とは思えない状態だった
しかし、そんな中で唯一人これからのことに不安を隠しきれない愛紗は一刀の横まで歩み寄ると、そっと耳打ちをした
愛紗「……一刀様、本当にこれで良かったのでしょうか?」
一刀「……不安かい?それとも―――不満かい?」
愛紗「……どちらも……と言っておきます。いくら公孫賛殿に会うためとはいえ、これは流石に度を越していると思います」
一刀「はははっ……やっぱりそう思う?」
自嘲気味に笑う一刀
その顔はまるで自身の下した判断が正しくないものだと吐露しているかのようだった
その姿がより一層愛紗の罪悪感に拍車をかける
愛紗「……はい、仮にも公孫賛殿は我らが主……桃香様の御友人だった方です。わざわざ『偽りの兵士』を雇わずとも御目通りさせて頂けたのではないでしょうか?」
一刀は苦笑いを浮かべるしかなかった
その理由は愛紗の言う『偽りの兵士』という言葉があまりにも的確だったからだ
『偽りの兵士』―――読んで字の如く、まさに偽り、偽者
一刀達が従えている兵士達を表現するのにこれほどぴったりの言葉は他にないだろう
それもそのはずだ
なぜなら、一刀達が連れている兵士全員が『正規の兵士』ではなく、『ただの一般人』なのだから……
それも義勇兵のような戦に出ることを了承した一般人ではない
あくまでも公孫賛に会うまで『兵士のフリ』をするという条件付きの騙す為だけの人員
会う為だけに雇った騙しの材料
他者を自分達の目的の為だけに利用するその行いが愛紗にはどうにも納得が出来なかった―――出来るはずもなかった
一刀「まあ、真面目な愛紗が嫌がる気持ちもわかるよ。はっきり言ってこれはほとんど詐欺に近いからね」
愛紗「で、では…―――」
一刀「だけど、これは必要なことなんだよ」
言葉を発しようとした愛紗を遮る様に一刀は事態の必要性を口にする
一刀「確かに公孫賛は桃香の友達だったかもしれない……でも今では太守という立場を気にしなければいけないからね。『友達』だからっておいそれと会ってくれるとは限らないよ。仮に会ってくれたとしても『使い捨て』にされては元も子もないからね」
愛紗「それは……一体どういう意味ですか?もしや、一刀様は公孫賛殿が我々を囮か何かに使うと仰るのですか?」
愛紗が怪訝な顔を一刀に向ける
一刀「そう恐い顔しないでよ。あくまで可能性の話をしてるだけだよ。何もなければそれに越したことはないってわかってるけど、可能性が少しでもあるなら潰すためにも保険をかけた方がいいだろ?」
愛紗「それは……そうですが……」
一刀「だろ?つまりはそういうことだってことで……納得してくれないかな?悪いようにはしないからさ……ね?」
愛紗「……一刀様がそう仰るのなら、私に是非はありません」
一刀「ありがとう。じゃあ、そろそろこの話はお開きにしようか。門番の人も戻ってきた事だし、様子から見てどうやら取次いでもらえそうだよ?」
一刀の言葉通り、一行は門番に城内へ入る事を許可された
門番に許可された事で城内に入った一刀達は侍女らしき女性に玉座の間まで案内された
玉座の間には公孫賛と思われる一人の女性が立っていた
女性は一刀達の存在に気が付くとゆっくりと近づき、桃香の手を取った
白蓮「やあ、桃香。久しぶりだな!」
桃香「白蓮ちゃ~ん、久しぶり~♪」
白蓮「櫨植先生の所を卒業して以来だから……大体三年ぶりか。元気そうで何よりだよ」
桃香「白蓮ちゃんも元気そうだね♪それにいつの間にか太守様になってるなんて凄いよねー」
白蓮「いやぁ、私なんかまだまだだよ。私はこんな位置で立ち止まってなんかいられないからな。通過点みたいなものだよ」
桃香「さっすが白蓮ちゃん。秀才は言う事が大きいな~」
白蓮「武人として大望を抱かなければな。…それより桃香は今まで何をしていたんだ?連絡もないと思っていたら、急に私に会いに来るなんて……報告を聞いたときは驚いたぞ」
桃香「ごめんね。あちこちで人助けしてる時に白蓮ちゃんのところで盗賊さん達を退治するために義勇兵を募っているって聞いたから私たちもお手伝い出来ないかなって……」
白蓮「それは助かるな!兵の数はそれなりに揃っているんだが、如何せん指揮できる人間が少なくて困っていたんだよ。いや、本当に助かるよ」
桃香「そう言ってもらえると嬉しいな♪」
白蓮「兵も結構な数を連れて来たって聞くけど?」
桃香「え!?あ、えっと、うん……たくさんいる…よ」
白蓮「そっか、そっか……それで?」
桃香「……え?」
白蓮「それで本当の所は……何人ぐらい兵士を連れているんだ?」
桃香「……あぅ…気付いてたんだ」
気まずそうに目を伏せる桃香
白蓮「はははっ、これでも太守をやってるからな。それなりに見抜く目は持ってるつもりだよ。それで……実際は何人くらいなんだ?」
公孫賛は軽いノリで桃香に尋ねる
公孫賛の様子から推察するに恐らく連れて来た兵士の半分―――つまり50人は桃香の正規兵だと思っているのだろう
確かに桃香の考えならば、それもありえただろう
桃香は優しい女の子だ
友人を騙している現状に心を痛めているに違いない
仮に桃香が考えた案ならば、きっと彼女は100人の偽兵士を雇うより30人―――いや、20人の正規兵を連れて会おうとするだろう
その時点で足元を見られるかもしれないという可能性すらも省みず
ただひたすらにかつての友人に正面から会おうとするだろう
どこまでも……
良くも悪くも……
損得抜きで動いてしまう
優しい
優しい
女の子だ
しかし、残念な事に―――
今回の案を考えたのは一刀であり、桃香ではない
公孫賛の考えは
的外れな上に
見当違いで
どうしようもないほどに―――
―――間違いだ……
桃香「えっと……」
公孫賛の問いに桃香は答える事が出来なかった
当然だ……
自分の考えならば、こんな友人を騙すような方法は決して取らない
正直に
真っ直ぐに
自分の気持ちを伝えるだろう
しかし、結果して桃香はそれを行っていない
それが桃香にとっての罪悪感を膨らませていた
白蓮「それで?何人なんだ?50人か?40人か?」
矢継ぎ早に質問をしてくる公孫賛
桃香「あの…その……実は―――」
公孫賛の勢いに負けて答えようと桃香が言葉を紡ごうとしたその時―――
一刀「……『0人』ですよ」
桃香の頭を撫でながら……一刀が求められた答えを口にした
―――
――――――
一刀の発言により場は凍りついた
桃香は俯き
鈴々は苦笑い
愛紗に至ってはやっちまった感丸出しの溜息を吐いていた
そして肝心の公孫賛はと言うと―――
ポカーンと
それはもう驚くほど「ハニワ?」と聞きたくなる顔をして立っていた
そして、我に返ったのか、先ほどまでのハニワ顔から一転、神妙な面持ちで一刀を睨んだ
白蓮「……それは、一体どういうことだ?いや、どういうつもりだ……と聞いておこう。いや、それよりもお前は一体……」
その一言に公孫賛の一刀に対する警戒心が窺えた
一刀「これは失礼しました。俺の名は北郷一刀。……一応桃香達には『天の御遣い』なんて呼ばれています。後ろにいる黒髪の娘が関羽、赤髪の少女が張飛と言います」
一刀の言葉に反応して二人は軽く会釈する
白蓮「お前が……あの占いにあった『天の御遣い』?あまり信じられないな。正直、胡散臭くてしょうがない」
一刀「別に信じなくても構いませんよ。それよりも……先ほどの話の続きはしなくても宜しいのですか?」
挑発するように一刀が喋る
白蓮「……そうだな、ならば話を戻そうか。して、北郷と言ったか?先ほども聞いたが……一体お前はどういうつもりなんだ?」
一刀「どういう意味もつもりも何も……さっき言ったとおりですけど?俺たちが連れて来た正規兵は0人ですよ。それ以上でも以下でもない」
白蓮「ならば、その0人と言うのはどういう魂胆があってだ?まさかとは思うが……桃香の考えだから黙って従ったとでも言うつもりじゃないだろうな?―――あいにくそんな嘘は通じないぞ。人を疑わなければいけない立場になりはしたが、腐っても私は桃香の友だ。友を疑うほど落ちぶれてはいない。そんな浅はかな考えならば助力なぞ無用だ」
毅然した態度で言い放つ公孫賛
だが、逆にその態度が一刀にとって喜ばしいことこの上なかった
一刀「ははっ、それこそまさかの考えですよ……そんな浅はかな考えでここまで大袈裟なペテンはしません。むしろこれは……俺の考えだということを分かりやすくした結果ですよ。逆にこの真意に気付かずに真っ先に桃香を疑うようなら君の品位は下の下も良い所と言わざるを得ませんでしたね」
桃香「一刀さん!?」
愛紗「一刀様!?流石に言葉が過ぎます!!」
白蓮「…………」
一刀「いやいや、悪いね。確かに言葉が悪すぎた。だけど、勘違いしないでくださいよ?『だった』―――だから今は微塵もそんなことは思ってません。さっきの公孫賛さんの言葉に桃香に対する想いをひしひしと感じましたからね。間違っても俺たちを『使い捨て』にはしないだろうから、これ以上無礼な発言をするつもりはありません。この通り……謝罪をさせて頂きます」
そう言って、一刀は公孫賛に向かって深々と頭を下げた
一刀の行動にまたも玉座の間は凍りつく
先ほどまでの挑発的な態度から一転し、急に殊勝に頭を下げる一刀の姿に周りは判断が追いつかなかった
しかし、そんな中―――
その混乱に包まれた空気を打ち破るように公孫賛の後から一人の女性が姿を現した
???「その辺りで茶番もお止めになったらどうですか?」
女性は非常に端正な顔立ちと余裕のある笑みを浮かべ、ゆっくりと一刀達に近づいてくる
白蓮「星!?お前いつからそこに……」
女性の存在に気付いた公孫賛は彼女の名前を口にする
星「さっきからですよ。ああ、申し遅れました。我が名は趙雲、字は子龍、真名は星と申す。宜しく頼む劉備殿、関羽殿、張飛殿」
桃香「私のことは桃香でいいよ」
愛紗「私のことも愛紗でいい」
鈴々「鈴々も鈴々でいいのだ~」
星「ふむ、かたじけない……さて」
桃香達と真名を交し合った星は頭を下げ続ける一刀に向き直り―――
星「『天の御遣い』殿はいつまでこの茶番を続けるおつもりなのかな?」
一刀の謝罪を茶番と吐き捨てた
その言葉に周りの反応は様々だった
愛紗は怪訝そうに一刀と星を見つめ
桃香と公孫賛は何がなんだかわからないといった表情を浮かべ
鈴々は……何か暇そうにしていた
そんな周囲の反応をよそに星に茶番と吐き捨てられた一刀だけは
まるでそう言われることを予想していたかのように
爽やかなまでの余裕の笑みを浮かべていた
玉座の間にはこれで何回目かと言う沈黙が流れた
そして、その沈黙を破ったのはまたしても星だった
星「その余裕の笑みは……肯定と受け取っても良いのかな?」
その一言で全ての事象に決着は着いた
問われた一刀はゆっくりと…下げた頭を持ち上げると
一刀「ばれちゃったか……」
たった一言口にした
星の問いに対する肯定の言葉を
茶番を演じていた肯定の言葉を
彼は悪びれもせず―――
口にした
―――
――――――
白蓮「……さて、それでは話してもらおうか、星。……茶番とは一体どういう意味なんだ?」
公孫賛の一言で皆の視線は自然と星へと向いた
疑問を投げかけられた星は自身の顎に手を添えると「ふむ……」と少しだけ考えて、一度だけ一刀に了承を得るかのように視線を移す
星の視線に気付いた一刀は苦笑いを浮かべながら「いいよ」と言った
その言葉に納得したのか、星はポツポツと自身の読みを口にした
星「白蓮殿の問いに率直にお答えするならば……この御人の目的は恐らく―――」
星「―――『白蓮殿に嫌われる事』ですね」
彼女の言葉に誰もが目を見開くことしか出来なかった
あとがき
お久しぶりです。勇心です
……
…………
はい、わかってます
今回もかなりイミフですね(笑)
すいませんm(_ _)m
もうだんだんこのssもノリで書いてるところがありますからね
ツッコミどころ満載でしょうね
ただでさえ文才ないくせに
挙句、ノリって(笑)
もう呆れてモノも言えんですわ
と、まぁこのあたりでネガトークをやめて次回予告行きます
まぁ、ぶっちゃけ一刀編の続きですよね
何で一刀は白蓮に嫌われようとしてるのか~とか
星と一刀のやりとり~とか
賊来ちゃった 作戦決めなきゃまずくね? テヘペロッ☆
みたいな感じで行こうと思ってます
一応プロットも出来てるんですけど
所詮は文才のない自分のなんで
温かい眼で応援してもらえると嬉しいです
それでは
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お久しぶりです
今回白蓮に会う今回の話……正直最終的な締め方も、一刀のキャラも、読んでくださる方々に「はぁ?」と言われてしまう流れになってると思いますが、そこらへんは寛大な心でオブラートにコメをお願いします