第57話『学園祭編その22 武道会⑨ ネギVSナギ、またもやの状況』
お姫様抱っこしていた明日菜さんをソファーに下ろす。
しかし、ここまで成長するとは、でもまだまだだな。
「回復させますか」
「回復? 休憩すれば大丈夫だからいいんじゃない」
「念のためですよ」
権限の鍵を出して明日菜さんの背中に刺す。
体をビクンと跳ね上がり、可愛い声を出す。
「ひゃ! ななな、何これ」
「少し我慢してください」
「うん」
僕は権限の鍵に記憶復元の魔法を組み込む。
虹色から赤色に変化した瞬間、明日菜さんは声を漏らす。
「な、何これ、ネギ一体何を」
「小さい頃の記憶を復元させるだけです。破壊じゃないから復元なんて訳無いです」
「小さい頃の記憶……うっ」
明日菜さんはいきなりの情報に気絶した。
「記憶を戻すとショックで倒れる。これだけはどうしようもない」
頭を撫でると、ピクッと反応して目を開けた。
「こ、ここは?」
「起きましたか」
「そっか。記憶戻したのね。私がお姫様か、実感無いわね」
「アスナ自身と融合した?」
「まあね」
ソファーから立ち上がった明日菜さんは咸卦法を使う。
アスナと同じ魔力と気を開放していた。
体を動かしてから、僕に抱きつく。
「ああ、アスナと融合したから心地いいわ」
「融合したという事は全て、か」
「ええ。それにしても記憶を消すなんてひどいわ」
「それは明日菜さんの事を思ってのことだと」
「本人の許可もなしで?」
これは何とも言えない。
トラウマになるだろうと防ぐ方法が記憶消去だとは。
「じゃあ僕との初体験は?」
「お、覚えてるわよ! 初めは普通だったけど、それ以降はめちゃくちゃドSだったわね」
「ふむ。じゃあ次はクウネルとの戦いか」
「正確にはカードによるナギでしょ?」
「よし、次代魔法で」
「やめなさい! 消す気?」
「てへっ!」
「それじゃあ行くか」
「ええ」
外に出るとフードをかぶる怪しいやつがいた。
「おや? ネギ君じゃないですか」
「次の試合、よろしくお願いします」
「ネギ君にとって最高の一日になるのではないでしょうか。では後ほど」
薄気味悪い笑みを浮かべながら去っていった。
正確には姿を消したのほうが正しいけど、人前で消えるなよ。
「ネギ、話し噛み合ってなかったわね」
「そうですか? 僕にとってどうでもいい事です。極光陽でも使いましょうか」
「ヘルマンを消したやつね? あれって何なの?」
「ん? 記憶戻ってるなら本当の事を言うけどアレはかなり圧縮したエネルギーを相手のどこかに設置、圧縮を開放すると相手を熱と極光で蒸発? 消滅できるんだけど」
「それってすごいわね」
「温度も尋常じゃない。まあ、たったの6000度以上だけど」
「何でそんな温度なのよ! それで蒸発したのね」
「あのときの温度は100万℃だけど、被害は絞ったからたいしたこと無い。でもこの極光陽の本質はまったく違うけど」
「本質? 何それ」
「それは内緒」
「あのときのネギの面影が残ってないわ」
明日菜がネギにジト目で見てきたが、まったくその通りだよ。
並行世界の僕とまったく違いすぎるのも無理は無い。
そもそも目指してた道が違うから比べる意味など無い。
並行世界の僕はマギステル・マギと父親の行方だけど、僕は父親の強さだけだったり。
マギステはついでしか考えてなかった。
村を襲ったのがアレと知った時、「ついで」から「どうでもいい」に印象が変わった。
「さて行くか」
「話しそらしたわね」
僕と明日菜さんは試合場のベンチに戻る。
「次の試合、ネギだろ? 行かなくていいのか?」
エヴァにいきなりそんな事言われた。
ひどいにも程がある。
「司会者が何も言ってませんし、まあだい―」
『さあ、次はとうとう決勝戦です。両者舞台に上がってもらいましょう』
「ネギ、出番だぞ」
「がんばってください!」
「ネギ先生、がんばってください」
……あれ? 刹那さんが普通にいるけどタカミチはって要請ないのか。
向かってもタカミチは既に超さんから脱走してるもんね。
「ようしいきますか」
いつもの転移で舞台に立つと、クウネル、アルでいいか。そのアルが不気味な笑みを浮かべていた。
目がきらきら輝いている。錯覚か? 錯覚にしておこう。
『両者、準備はいいですね! これが泣いても最後だ! 決勝戦、ネギスプリングフィールド選手VSクウネルサンダース選手の対決、開始!』
試合開始の合図が鳴り響いた。
今までより鳴る音がすげえ。つか、うるせえ!
さっさとナギだせごらあ的な感じでアルを見る。
「これは彼との約束ですから仕方ないですね。ネギ君、父親と戦いたくないですか?」
「戦いたい」
「即答ですね。わかりました。このアーティファクトで願いをかなえてあげましょう」
と言った瞬間、あるを中心とした閃光が走る。
説明もなしに早いな。
う~ん、まあいっか。一度聞いた説明なんて聞く気がしない。
フードを外し、こちらを見るアルいやナギがいた。
シロハトが上空へ羽ばたいた。
「アルのやつ、過剰すぎるだろ。ハトの羽がペッ、ペッ」
ナギは飛び去った後に残った羽を払う。
僕と視線が合い、驚いた表情をしていた。
「そうか。お前がネギか」
「……父さん。とうさあああああああああん」
僕はかなりの年月ぶりに会う父さんの所へ駆けていく。
何か観客の方から騒がれてるのはきっと父さんの事だろうな。
面倒だから無視するけど。
後もう少しという所で僕は右手にコブシを作り、
「オラア!」
「ぐはっ!」
僕の父さんが数メートル吹き飛んだ。
いきなりの事で困惑してる父さんは僕に向かって叫んだ。
「いきなり何すんだ! 仮にも父親だろうが!」
「もう開始ってなってたので」
「……ネギ、お前黒いな」
「それじゃあ始めましょうか」
僕は魔力のオーラを包み込む。
魔力の多さに驚いた父さんはニヤリと子供の様にはしゃぐ。
「へっいいぜ。稽古付けてやるよ!」
「雷の暴風」
「詠唱禁止だろ!!」
「無詠唱だから何の問題性が無いです」
「そんなのありか! てりゃあ!」
僕の雷の暴風を父さんの魔力をためた右拳で相殺するはずだったが、爆発が起こった。
う~ん、前に気配無いな。と言う事は後ろか?
無言で背後から反撃する父さん、しかし左足で防ぎ、両手で左腕を掴んで上空へ投げ飛ばす。
ここで追撃しようと魔法の射手10本を周辺に蒔いた。
上空から降ってきた父さんに魔法の射手10本追撃。
「いい!?」
父さんの背後に瞬間移動して突きを放つ。
魔法の射手と共にヒットして地面に墜落。
「こんな力があるとは、さすが俺の息子だ。いくぜ!」
「……あきた。無詠唱版の星光破壊」
凶悪に溜まった魔力の塊をビームのように発射する。
「くっ! 俺の全ての魔力をぶつけてやる!」
そう叫びつつ、今までに無い魔力を右腕にチャージした後、解き放つ。
おいおい、全力って言ったぞ。
結界張っとくか。宇宙抱擁結界を展開した。
星光破壊とナギビーム?が衝突した瞬間、衝撃波が発生して朝倉さんが後ろに吹き飛んだ。
水に落ちてないからどうでもいいや、放置。
「……押されている!? だがネギの魔力が切れたら俺の勝ちだぞ、ネギ」
「だからあきたって言ってるのに。……気分沸かないな、本物じゃないと意味ない。てい」
星光破壊の特性を「障壁無視など」から「対消滅」に書き換えると、ナギビームをあっさりと貫かれてナギに直撃する。
属性変換した影響で大爆発が発生。
爆発の煙が消えてから初めに見たものは
「……うっ」
真っ黒になっているナギだった。
もうボロボロになり倒れている。
「属性変換、いや特性変換するもんじゃないな」
頭をかきながら真っ黒にこげているナギの所に向かう。
「大丈夫ですか?」
「ネ、ネギ、強くなったな。言う、事は無い。元気に暮らせよ。さ、さらばだ」
惨め過ぎる退場だな、おい。
人柱の光が上空に向かって解き放たれた。
光の柱が消えると黒焦げになったフード姿のアルだった。
アルは自分の姿を唖然としたまま、僕に聞いてきた。
「こ、これはどういう」
「木乃香さんの星光破壊と全力のナギビームの結果です」
「そうですか」
呆然と見ていた司会者、朝倉は僕とアルの所に来て困惑していた。
『えっと勝敗は……?』
「私の負けです。フードも真っ黒ですし」
『優勝者、ネギスプリングフィールド選手に決定しました!』
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
「私はこれで」
『ちょっ!?』
アルは表情を暗くしながら消え去った。
「さて朝倉さん、賞金は?」
『これだよ。2000万』
「ども。ではこれで」
賞金を受け取った僕は巻き込まれたくないため、この場から極移で消え去った。
この際、見られた事すらどうでもいいほどに。
~世界樹前~
極移してきた場所は世界樹の前だった。
またここか、とデジャブを感じながらも世界樹にもたれかかる。
「あ、忘れてた」
ズボンのポケットから携帯電話を取り出し、メールアドレス明日菜さん宛てにこちらの居場所付で送った。
色々あったから精神的に疲れた僕はこの場で眠った。
「ネギ! ネギ!」
僕を必死に起こす声がした。
目を覚ますと明日菜さん、周辺には木乃香さんやアーニャ、刹那さんに愛衣さん、えと後誰だ?
立ち上がり背伸びをする。
「あれ? 高音さんがいないのは分かるけど、茶々丸さんとエヴァンジェリンさんは?」
「ちょっと用事があるんだって」
「何も企んでないといいけど」
エヴァが企んでないなど絶対にありえない。
それにどっかで見た事あるデジャヴを感じる。
それはそうと、そろそろあいつも鍛えるか。
メイド姿の明日菜さんに声をかける事にした。
「明日菜さん、小太郎君の居場所わかりますか?」
「知らないわよ。どっかにいるんじゃない?」
どうでもいい言い方してるよ。
木乃香さん達も苦笑いしながら話していた。
その時、逆行前とは違うありえもしない出来事が起こる。
遠くの方から、正確には空から巨大な打撃音が聞こえた。
僕にしか分からないけどこの世界に、強引に入ろうとするかのようだ。
「「「「!?」」」」
その後、震度3ぐらいの地震が揺るがす。
それはいいんだよ。たいした事無いけど僕に抱きつくのはやめてほしいんだよ。
「ネギ!」
「ネギ君!」
「ネギさん!」
あらゆる所に抱きつかれてるせいで混乱してくる。
つか、リイスは抱きついてくる必要ないじゃん!
しばらくすると、地震が止んだ。
「今の地震は?」
(ネギ)
リイスから念話がきた。
念話という事は僕にしか話せない重要な事か?
(何?)
(今の地震はこの世界に来たイレギュラーの余波です。世界のどこかに降下しました)
(またイレギュラー? 魔法世界に行く前に片付ける?)
(それは夏休みにしたほうがいいですよ? 何せ余波で地震起こせるほどのエネルギーを持った存在ですし)
そこまでエネルギーを持つという事は強そうだな。
凄くめんどくさい事がまた起こるのか、この世界はどうなっている?
悩んでてもしょーがない、と体中抱きしめられているこいつらを気合で引き離す。
「いきなり何するの!」
「ネギ君成分補給してる所やったのに」
明日菜さん達がジーっと僕をジト目、目を細めてにらんでいた。
え? 僕が悪いのか?ありえないだろ。
こんな状況をさらに悪化させるような出来事が起こった。
夕映さん達が僕達の所へ走ってきた。
「ネギ先生、ようやく探しましたです」
「ネギ先生、はぁ、はぁ、はぁ」
「ハロ~! ネギ君、およ? これはもしかして修羅場?」
ハルナさん、余計な事言わない!
「また増えた」
「人数多すぎやん。ネギ君、極移で人数絞って!」
「噴水広場にあるベンチまで移動しましょうか」
僕は魔力をもらしながら易しく言うと、皆がなぜか焦った表情でうんうんと頷いた。
とりあえず噴水広場のベンチに向かった。
~噴水広場~
人払いしてるから誰も居るわけが無い。
「ここは明日菜がチア姿で縛られた噴水広場やん!」
木乃香さんの天然な発言に明日菜さんが顔を引き攣らせていた。
いやな思い出なのは確かだろうけど、いやあれはあれで凄く似合ってた。
つい嬉しそうにしてると、明日菜さんは僕を見て小声で呟く。
「バカ……」
「まあええやん! それよりネギ君、ここで何するん?」
「そうですね。今後の予定を――」
「ああああ! ネギ君だ! 亜子、こっちこっち」
「え?」
「ちょっとお待ちなさい! あ、ネギ先生」
まき絵さん、亜子さん、あやかさんがこちらに駆けてきた。
人払い結界張ったのに何で、ああ……あやかさんがいるから結界無意味なんだな。
この先が面倒になった僕は口を歪ませながら魔力を放出する。
「とにかく全員ベンチにす・わ・れ」
「「「「「はいっ!!」」」」」
全員が一斉に慌てて何かに縋る様に座る。
「ねえ、今の何、何ですか?」
「今のは魔力、すなわち魔法使いだからね僕は」
「ネギ先生が魔法使いなん!?」
「すご~い!!」
亜子さんとまき絵さんが驚愕となぜか喜びの声を上げる。
それとは逆に2人以外は、いやあやかさん以外はまたか、と溜息をしていた。
「で、ネギ」
「何ですか?」
「この2人も巻き込み?」
「明日菜さんはわかってますよね? 僕がしたい事」
「そ、そう」
そんな俯かれても困る。
魔法、裏世界に巻き込んだら命がどうのこうのと言う。
でも僕は彼女達を強化する前提で動くから、だからどうしたって話。
「ネギ先生、あ、あの……」
「仮契約してもらいましょうか」
「仮契約って何なの?」
「まき絵、仮契約っちゅーのはな。ネギ君とキスするねんで!」
「え、えええええええええええ!?」
「キ、キスって!」
2人がトマトのように真っ赤に染まっていた。
「で、でもネギ君とキスできるなら私」
「ウ、ウチもネギ君が嫌いやないんやけど、まだ10歳や」
「ちなみにネギ先生は既に十回以上キスしてますが。特に木乃香さんが強引に、ですが」
「あはは……夕映怖いわぁ」
ゆ、夕映さんの背後から黒いオーラがユラユラと発生している。
それを察した木乃香は頬を掻き、愛想笑いする。
これが黒夕映か?という冗談は置いといて、う~ん。
「どうするか?」
僕は2人を今の戦力とこれからの戦力を思考しながら、先の状況を眺めていた。
第58話『学園祭編その23 時間操作による全メンバー強化修行(仮)』
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