No.392400

全ての終焉 55

ラグエスさん

第55話

2012-03-16 08:05:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1390   閲覧ユーザー数:1358

第55話『学園祭編その20 武道会⑦ こんな事でバレとか』

 

高音さんを医務室に放り込み、治癒魔法をかけて戻ろうと扉を開けるとアーニャとリイスが立っていた。

何しにきたんだろうか?

 

「ちょっとネギ!」

「何アーニャ」

「何よあの魔法は」

「収束させてから解き放つ普通の魔法だけど」

「あれくらいならアーニャさんもできますよ」

 

リイスのいうとおり、アレは簡単だ。

ただ制御だけ複雑だからコツさえわかれば初心者でもできてお得。

 

「う~ん、じゃあ後でおしえなさいよ!」

「はいはい。木乃香さんに教えてもらえばいいのに」

「さすがに星光破壊まで知りたくないわ」

「あれは木乃香さんと千雨さんだからこそって感じだね」

 

アーニャは僕の言葉に呆れたのかため息を吐く。

リイスはリイスで苦笑するだけ。

 

「本当ネギの周りって非常識人が多すぎるわ。エヴァンジェリンとか」

「アーニャ、それひどい」

「一番の非常識は学園長ですよ?」

「あ、それ凄く納得」

 

確かにあの頭だけはありえないけど、木乃香さんはまさに奇跡の賜物だよ。

 

「じゃあそろそろ行こうか。僕としては明日菜さんと戦うのが楽しみ」

「明日菜ってそんなに強いの?」

「ハマノツルギ、カンカホウ、無詠唱による魔法の射手、雷の暴風等可能らしいです。ネギ強くさせすぎです」

 

前の明日菜(アスナ)さんより強いけど、ヘルマンに捕まってるから結局は変わらない気がしてきた。

アーニャもパワーだけは上がってるから人のことも言えないんだよね。

 

「僕は選手席に戻るよ。アーニャ達は観客の方?」

「うん。ってあ! 夕映達の所に戻らないと、リイス行くわよ」

「はい。ネギ、また」

「うん」

 

2人は観客の方へと駆け抜けた。

 

「僕はどうしようかな? 選手席に戻って様子見しましょうか。次の試合は確か」

 

そういいながらも僕は普通に会場へ戻る。

到着すると明日菜さんとエヴァが睨み合っていたけど、何があった。

苦笑いしてる刹那さんに尋ねてみる。

 

「何かあったんですか?」

「次の試合って明日菜さんとエヴァンジェリンさんじゃないですか。だからです」

「そういえばそうでしたね。どっちが勝つんでしょうか。詠唱禁止だから明日菜さん?」

 

僕の言葉に反応した2人が僕を見る。

何なんだ?

 

「ネギは私が勝つって思ってるのね?」

「何だと!? ネギ、当然、私を応援するんだろうな!」

「……アスナサンモエヴァンジェリンサンモガンバッテクダサイ」

「何で棒読みなのよ」

「まあいい。神楽坂明日菜、試合でけりをつけようか」

「いいわよ!」

 

やる気満々な二人にため息を吐く。

この2人、なんか因縁でもあるのでしょうか?

すると僕の背後に表れた気配を感じた。

 

「これはこれは面白いことになってますね。フフフ」

「クウネルさん」

「面白そうな対決ですね。見応えがありそうです」

 

そりゃあそうでしょう。

黄昏の姫巫女対真祖の吸血鬼なんて見れたものじゃないんだけど、でもさっきから明日菜さんから妙な感じがする。

この違和感って何だろう。

僕がこうして思考を巡らせていても2人はまだ言い合いをしていた。

 

「じゃあ勝った方がこれが終わったらネギと学園祭を回れる事にしない?」

「フッ、いいだろう。その条件後悔するなよ。バカレッド」

「何よ! ……ここで言っても仕方ないわね」

 

明日菜さんは選手席から離れる。エヴァも同様だが。

さてさてどうなることやら。

2人の戦闘をシミュレートしてるとずっと黙っていた愛衣さんが悲しそうな声色で言う。

 

「ネギさん、明日菜さんかエヴァンジェリンさんのどっちかと回るんですか?」

「そうみたいです。僕の予定すら聞かずに決めるとは、なんて命知らず」

「ネ、ネギ先生怖いです」

「ネギ君」

 

刹那さんが震えていた。何を怖がってるんだろう。

背後から愛衣さんの隣に移動したクウネルが話しかけてきた。

 

「何でしょう」

「あの二人のどっちが勝つと思いますか?」

「知らない。戦闘経験でエヴァンジェリンさんじゃないですか?」

「先ほどと違いますね」

「よく考えれば明日菜さんの魔法無効化はあくまで魔法を、だから純粋な体術で攻めれば余裕な感じです」

「彼女も元から運動能力は高いですよ? もしかしたらの結果になるかもしれませんよ? その方が私は嬉しいですが」

 

僕が言いたいのはそうじゃない。

アスナだったらその程度造作も無いけど、この現在だと勝ち目はあまり無いに等しい。

向こうは吸血鬼だし、身体能力も尋常じゃない。

それにさっきから違和感がする。

 

『次の試合を開始します。メイド姿の神楽坂明日案選手対小さな子供ながら勝ち進んでる幼、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル選手、出てきてください!』

 

今、気のせいだと思ったけど幼女って言いかけなかった?

エヴァが頬を痙攣させているぞ。明日菜さんは笑いを我慢してるし。

2人が試合場の中心に立ち、お互い向き合う。

 

『両者準備はいいですか? 返答は聞きません。では始め!』

 

コングの合図が出て、会場に響く。

毎回、試合の合図が変わっていくな。いや存在理由は変わらんけど。

 

「さあエヴァちゃん、行くわよ」

「来るがいい。わが弟子一号馬鹿レッドよ」

「ムカッ! はああああああ」

 

明日菜さんは勢いを込めて突進する。

近づいた瞬間、何かに引っかかったように扱けそうになるも瞬動で背後へ回る。

エヴァもそれに気づき、いつの間に準備していたのか扇子で明日菜さんのお腹に当てる。

魔力? 気を込めてる影響で明日菜さんは後方へ吹き飛ぶ。

愛衣さんと反対の隣にいる刹那さんが驚いた口調で呟く。

 

「扇子に気を覆わせて、いやエヴァンジェリンさんがなぜ気を!?」

 

エヴァ自身もとから気は使えるって知る僕やクウネルさんは気にせず試合を見る。

2メートルぐらい程度で済んだ明日菜さんはニヤッと口を吊り上げ、カンカホウを使う。

先ほどの数倍の速さでエヴァの前まで近づき、ハリセンを思いっきり振り下ろした。

しかし、エヴァも扇子を縦斜めに構え、ハリセンの勢いを殺し、人差し指で糸を操作する。

糸は明日菜さんの両足に括り付け、指をクイっと曲げる。

 

「え、ええ!?」

「ちっ!」

 

糸の引っ張られる勢いで後ろに倒れそうだったが、咸卦法で強化された素手であっさり切れ、元の体勢を戻す。

明日菜さんは何を思ったのか目を瞑る。

 

「ほう? 余裕だな」

「別に余裕じゃないわ。私にとっても予想外の状況になったからね。だから今の『私』が勝つ方法を考えてただけ」

「何を言ってるんだ?」

 

え? 今の私ってどういう事。ああ、今の実力って意味か。

実力の差を理解してる所は明日菜さんの凄さだ。でも明日菜さん、負けず嫌いだからどうにかしてしまうかも。

 

「わからなくていいわ。さてとエヴァちゃんを場外負けにさせたらいいのよね」

「できるものならな」

「じゃあいくわよ!」

 

そう言い放った瞬間、明日菜さんの姿が消えた。

瞬動してもエヴァは動きを読むから虚空瞬動も組み合わせないと駄目だろ。

でも明日菜さんの姿が見えないままだった。

 

「ふん! 速さで誤魔化そうとしても無駄な事だ。見えづらいがな!」

 

エヴァは糸を全方位展開する。

しかし、次々と糸が切れていく。

エヴァの周辺を回ってるだけであり、ハリセンは構えてるから速度に応じて切れてるだけ。

 

「どうなってるんですか?」

 

一応、動き見えてるから愛衣さんの疑問を説明しよう。

 

「明日菜さんはカンカホウの出力を上げて瞬動の速度を上昇させてます。後、姿が見えないのはあまりの速さにブレてみえないだけです。普通の人には見えませんが、実力が高い人には見えますよ」

「はぁ……」

 

エヴァは単純な動きに溜息を吐いた瞬間、明日菜さんはハリセンを投げる。

投げてきたハリセンをエヴァは一番端っこまで移動するが、それを予想していた明日菜さんはエヴァの後ろに現れ、左手でエヴァを掴み、水の中へダイブさせた。

当然、このままなわけもなく明日菜さんも水の中へダイブした。

 

『お二人さん、そこは場外領域だよ! では規定により10カウントします。1』

 

カウントダウンを取る朝倉さん。

水の中まではさすがに見えないから説明のしようが無い。

誰も出てこないからカウントダウンがさらに進む。

 

『2,3,4,5,6,7,8、』

 

次の瞬間、水が盛り上がると同時に2人は試合場へ戻ってきた。

お互い息が荒いけど、明日菜さんはエヴァより疲れていないような様子だった。

 

「水中の戦闘って疲れるわね。まあいっかエヴァちゃん、勝たせてもらうわよ!」

「小娘ごときにできるか?」

「……『我ガ姫ノ愛』咸卦法」

 

明日菜さんは咸卦法で身体能力を大幅に上げ!?

いつもの出力より高い、いや数倍以上あるぞ。

しかし、明日菜さんの咸卦法でここまで能力が上がるわけない。

まさか、まさか……。

 

「何ッ!?」

「早めに終わらせましょうか」

 

と言ってから、明日菜さんの手から魔力と気を融合した剣状があった。

危険を察したのか、エヴァもエクスキューショナーソードを展開する。

僕が思ってるやつならエヴァの判断は正しいけど、出力が上だったらエヴァの負け確定。

明日菜さんは不敵の笑みを浮かべ、助走を付けて突進する。

2人の剣が触れた瞬間、急激な衝撃波が発生するけど結界の影響で観客まで被害は無い。

もちろんこちらもだけど。

 

「こんな力どこで!?」

「これは元からよ! 『私』のはね!」

 

力ずくでエヴァのエクスキューショナーソードを切り裂き、胴体へ直撃し、吹き飛ぶ。

あんな力を込めればこうなるのは非常にわかりやすいが大丈夫か?

心配そうな表情になった明日菜さんは倒れてるエヴァの方へ駆け寄る。

口が動いてるから何か話してるけど小さすぎて聞こえない。

会話が終わったのか、明日菜さんは朝倉さんを呼んだ。

 

『え~と、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル選手の棄権により、神楽坂明日菜選手の勝利とします!』

「すごいです! あのエヴァンジェリンさんに勝つなんて」

「明日菜さんはエヴァンジェリンさんに鍛えてもらってますから、それに元の身体能力が高いです」

「ほえ~」

「もはや一般人とは思えません」

 

ちなみに上から愛衣さん、刹那さん、愛衣さん、高音さんの言葉です。

確かに勝つとは思わなかったけど、これで確信したな。

あの咸卦法は未来じゃないと習得していない。

普通の咸卦法と違い?

それは数倍上昇する術式を実行してから咸卦法を使うとエヴァですら足元に及ばないほどの能力を得る。

だけど身体能力が高くなければいけないという。

 

「いや、もう僕自身が理解してるか」

 

溜息を吐いてる間に明日菜さんとエヴァがこちらに戻ってきた。

二人とも疲れた表情をしてるけど、僕は明日菜さんのほうへ駆け寄る。

 

「な、何?」

「ちょっと来てくれませんか?」

「え~と、どうして? 次の試合は楓さんとクウネルさんの試合よ」

 

その時、朝倉さんがマイクを通して観客全員に聞こえるように

 

『このイベントのベスト4が決定しました。

次の試合まで10分間の休憩をはさみ、いよいよ準決勝に入りますので今のうちにトイレ休憩などお済ませください!』

「だ、そうですが?」

 

そう聞こえた僕は満面の笑顔で明日菜さんの目を直視する。

明日菜さんは顔を引き攣りつつも額に手を当て、返事をする。

 

「わかったわよ」

 

エヴァ達には明日菜さんだけに話があると伝えてから二人きりになれる場所へ移動した。

途中、別の人と鉢合わせになり混乱等もあったが、どうにか説得して誤解を解いた。

 

 

~どこかの部屋内~

 

神社の中だけど、結界等張ったから誰も来ないはず。

とりあえず明日菜さんを座布団の上に座らせた。

向かい側に僕も座り向かい合う。

 

「え~と、ど、どうしたの? 改まって」

 

惚けてるもんだから単刀直入に言うしかないか。

僕は深呼吸をしてから口を開く。

 

「どうしてもう出られないはずの人物が表に出てるのかな? アスナ」

「あははは。やっぱりバレてた?」

「バレるも何もあの咸卦法や今の私って言葉でわかったよ」

「ああ、でもね。負けたくなかったから使うしかなかったわ」

 

なるほどね。負けず嫌いは相変わらずとしか言いようが無い。

 

「『我ガ姫ノ愛』は、今の明日菜さんには負担が凄いんだよ?」

「大丈夫よ。私が表に出てる時はなぜか強化されていってるし」

「ふ~ん。つまり明日菜さんの体はアスナが乗っ取ってる間、進化してるって事?」

「そうみたい。理由は知らないけど」

 

進化、ね。

まるで権限の鍵みたいな力だな。ガノードに攫われてた時に変な事された影響では、ないよね?

あいつ自身、100年後に影響でるとか言ってたし、アスナ自身寿命で死んじゃってるから意味ないはずなんだけど。

考えても仕方ないから頭の隅に置いておこうか、アスナ自身わからないみたいだし。

 

「所で、明日菜さんはどうなってるの? もしかして意識同調」

「そ、それはないわ。明日菜と『私』は別だから」

「明日菜さんに融合していくというのは?」

「今は止まってる。突然、力が沸いてきたのよね。多分、世界樹の影響じゃない?」

 

世界樹の発光、あれか。

それが理由でアスナの存在が強くなれるならその間にアスナの体を作り、魂を分割すれば復活できる。

でもアスナはそれを望まないからこの案は意味無いけど。

それよりも気になることが一つだけあった。

 

「明日菜さんはいつ戻るの?」

「戻せるわよ。でも……」

「じゃあ、やってくれない?」

 

僕がそう言うと、アスナは難しい顔になり、僕を見る。

 

「後悔しない?」

「後悔? そんなのどうでもいいからさ。そうじゃないと」

「わかったわ。本当は自然と消える方が良いのよねぇ。跡が残らないし」

 

アスナは笑顔で呟いた後、目を閉じると数秒後、体が光りだす。

光は一瞬で消えた。

するとアスナの目が開き、僕を見ていきなりの爆弾の投下をしてくれた。

 

「この記憶……ネギって未来から来たの?」

「はいっ!?」

 

なぜか申し訳なさそうに上目遣いで僕を見つめていた。

焦った僕は明日菜さんの両肩を掴む。

 

「未来からってそんな事あるわけないじゃないですか」

「でも私の夢の中にいた私の姿をした人の全てが私の中に入ってきて、それで知ったんだけど」

 

夢の中? 本当に夢の中なのか怪しいな。意識共有は使えるはずだからソレの可能性が高い。

可愛らしい仕草で首を傾げる明日菜さんを見てアスナの言葉を思い出す。

後悔しないってそういう意味なのか。

 

「しょーがないかな? そうですよ。僕は未来から来たネギ・スプリングフィールドです」

「そ、そうなんだ。じゃあ私の中にいる私の姿をした人って未来の私なの!?」

「そうです」

「エヴァちゃんと戦ってる記憶も見てたけど、未来の私ってエヴァちゃんよりも強いって事よね!」

「は、はい」

 

やけくそになってしまったけど、明日菜さんのあまり驚かない反応を見て気が抜けてしまった。

こうしてみると試合の負担はまったく無い事にも呆れた。

反応の薄さに疲れた返事しか出ない。

 

「なるほどね。どうりで10歳に見えなかったわけか、ようやく疑問が晴れたわ。じゃあ木乃香にも教えてこよう!」

「へ?」

 

明日菜さんは子供のように目をキラキラと輝かせながら立ち上がり、この部屋から立ち去った、ってちょっと待て!

今現在で木乃香さんに教えるって冗談じゃないぞ!

一緒にいるはずの夕映さんやのどかさん、ハルナさんにも知れ渡る可能性が高いじゃないか。

僕は慌てて立ち上がり、明日菜さんを追った。

魔法を使えば簡単に捕らえる事ができるのに気づいたのはちょっと後の話。

 

 

 

 

第56話『学園祭編その21 楓VSクウネル(アル)、ネギVS明日菜、???』

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バレたとしても呼び名は初めだけ変わりません。あくまで初めだけですが。


 
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