No.392365

全ての終焉 40

ラグエスさん

第40話

2012-03-16 06:19:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1678   閲覧ユーザー数:1622

第40話『学園祭編その5 学園祭前のイレギュラー的な出来事』

 

偽りの存在はただ偽りを作った存在の傀儡である。

 

人形は人形師に逆らえないと同じだ。

 

それは世界だって同じだ。

 

ある鍵の前では平行世界を含む全ての宇宙など、その鍵の傀儡でしかないのだから。

 

だが、少年は気づかない。

 

その鍵の、本当の力が■■■である事を。

 

 

 

 

~ネギの部屋~

 

 

夢なのかわからないが、声が聞こえたと思ったら目が覚めてしまった。

 

「な、何なんだ今のは」

 

体を起こして周りを見る。

キョロキョロ見回そうとしたが、両側から暖かい感じがした。

 

「え? って何で明日菜さんと木乃香さんが僕の両隣にっ!?」

 

左に明日菜さんが寝ていて、右には木乃香さんが僕の腕に絡み付いていた。

今居る場所はソファーじゃん。おかしいな、確か僕は自分の領域で寝てたはずじゃあ。

 

「アーニャはいつもどおり、か」

「何がいつもどおりなの?」

「え?」

 

瞬動でも使ったのか、背後に黒いオーラを纏ったアーニャがいた。

 

「アーニャ、いつの間に瞬動が使えるようになったの?」

「え? なぜだろう。昨日ねって何でもないの!?」

 

ブンブンと首を左右に振っていた。

僕の寝てる間に3人が何かしていたのかな?

 

「それはどうでもいいからアーニャてつだって」

「ふう、わかったわよ。こら、起きなさい! 木乃香」

「明日菜さん」

 

アーニャと僕は明日菜さんと木乃香さんの体を揺らす。

 

「う~ん、もう朝ぁ?」

「ふわぁぁ。あ、ネギ君と一緒に寝てたんやったなぁ」

 

そう言って、木乃香さんは僕にギュッと抱きしめてくる。

暖かいぞ、それに気持ちいいし。特に胸のほうが。

 

その時、魔法の射手 火の3矢が飛んできた。

それを感じた木乃香さんは僕を抱き寄せて

 

「プラクテ・ビギ・ナル 来れ 虚空の雷」

「いや、何を撃とうとしてるんですか!」

 

モゴモゴ言ってるが口を押さえてるため大丈夫だ。

魔法の射手を空いてる手で吸収した。

 

「アーニャ、何をするの?」

「うるさい! だいたい木乃香も明日菜もあの約束はどこいったの!?」

「まあまあ」

「まあまあじゃない!」

 

朝っぱらから元気だな。

背伸びをしていた明日菜さんに聞いてみよう。

 

「約束って何ですか?」

「え?」

「ネ、ネギ君、それはな?」

 

なぜか明日菜さんと木乃香さんの顔が赤く染まっていた。

アーニャもなぜか黙ってるし。

 

「それはどうでもいいんでお腹がすきました」

「そ、そうやな! ウチ作ってくるで。今日はどっちがええ?」

 

和食か洋食か?

 

「和食で」

「アーニャちゃんと明日菜は?」

「洋食」

「私も洋食でいいわ。そっちの方が楽だし」

「ほな、和食やな」

「木乃香、毎度思うんだけどネギの意見しか聞かないなら聞いてこないで」

 

あきれたように溜息を吐いた明日菜さんに木乃香さんがはっきりと

 

「ネギ君と同じかなぁって気になるやん」

「それよりも作ってきたら、時間の余裕が無くなるし」

「そやったな」

 

木乃香さんは僕にウインクした後、台所の方へ向かった。

 

 

 

食べ終わった後、

 

「ねえ、ネギ」

「何ですか?」

「あれだけじゃあ足りないと思わない?」

 

今日の朝食はいつもより少なかった。

ああそういえば今日はアレ、だったな。

思い出した僕は頷く。

 

「木乃香、あそこ寄ろう」

「ああ、アソコやな」

「アソコってどこよ」

「それは内緒や、着いたらわかるって」

 

 

そういう2人の後を付いて行くと、人が集まってくる屋台があった。

そこにはクラスメイト数人いた。

 

「超包子ですか」

「そうや、この時しか食べられん料理もあるんや」

「なるほど」

「へえ、ウチのクラスってかなり変人ばっかよね」

 

まあ、確かにそうなんだけどね。

でもさ、アーニャも変人に入ると思うよ?

そう思いつつ、テーブルを囲っている椅子に座る。

すると、超さんが来た。

 

「これはネギ先生、明日菜達もよく来たネ」

「私達はいつもので」

「了解ネ」

 

注文を受けると屋台の方に引き篭もった。

警戒する視線が感じなかった、な。

あんだけ暴れたんだから僕を監視してるんじゃないかと思った。

理由はエヴァのことや修学旅行、そしてヘルマンでだいぶ暴れた気がする。

警戒が無いのなら無いでちょっと寂しい気がした。

 

「そういえばアレはどこまでできるわけ?」

「私は瞬動まで」

「虚空は無理って事ね」

「アーニャちゃんは遠距離やろ? だったら防御を強くさせなあかんやろ?」

 

妙な話をしているが、これは他人から見たらゲームの話と解釈するだろうね。

アーニャが虚空瞬動って不要だと思う。障壁を増やしたほうが早い、かな」

「ネギ君の言う通りやな」

「え? 僕声に出してた?」

「出してたわよ。アーニャが虚空瞬動からね」

 

そうだったんだ。

 

「エヴァちゃんに頼んでみよか?」

「え? 闇の福音に?」

「エヴァちゃんもライバルやねんけど?」

「嘘ッ!?」

 

アーニャの顔が青くなっていた。

この人たちは一体何を話しているんだ?

それより料理はまだ?

 

聞こえてくる会話を無視して来るのも待っていたら、超さんがここに来た。

どうやら料理が完成したようだ。

さあ、懐かしい肉まんが食えるぞ。

 

その後、僕達は超包子の料理を食べたら学校へ向かう。

 

 

学校へ向かう途中、小太郎を見つけた。

小太郎はボーっと突っ立って何かを見ていた。

僕は隣まで来て

 

「あの門、でかいですよね」

「そうやなってネギ!?」

「驚かないで。それより何を見てたの?」

「お前が言うたやん、門見てるだけや」

 

前には大きな門が立っていた。

これ、前も思ったけど、いつ建てやがったんだ?

背後から明日菜さんがこう言った。

 

「学園祭の入場門よ。まあ年を重ねるごとに大きくなってるわ」

「へえ。学園祭かいな。楽しみやな」

 

「あらあら、小太郎くん」

「千鶴姉ちゃん」

 

後ろに居る明日菜さんの横から千鶴さんと夏美さんがきた。

あれ? 前と違うのにどうやって?

 

「小太郎君」

 

僕の言いたい事がわかったのか、小太郎が嫌な顔をして

 

「千鶴姉ちゃんと会ったんわなぁ」

 

事情を説明してくれた。

えと、ようは小太郎の馬鹿がお腹減りすぎて僕の所まで行った。

寮に着いたのはいいけど限界でぶっ倒れたらしい。

その時、寮に帰ってきた千鶴さんと夏美さんに見つかった。

慌てた2人は部屋に連れてって、飯を食わせてもらって僕に会う事もなく帰ったらしい。

夏美さんフラグを立てて帰るなんてさすがだ。

 

「そういう事か、でもあれ? あやかさんは賛成だったの?」

「反対してたわ。ネギ先生の方が100倍も!とか言ってました」

「委員長ならそう言うやろうなぁ」

 

小太郎は千鶴さんや夏美さんと話していた。

その話の内容はちゃんとなんちゃらとかだった。

あ~あ、千鶴さんに目を付けられるのか、フフフ……

小太郎は悪い意味でも良い意味でも不幸の道へ行くと確信した僕は手を合わせた。

 

 

僕は職員室、明日菜さん達は教室へ向かった。

 

 

職員室に着いたら、久々に見たかもしれない存在感の薄いタカミチに呼び出された。

本当、存在感がまったく無いよね。前よりも遥かにっという哀れみの視線で見る。

 

「何?」

「学園長がお呼びだ」

「何の用か知ってる?」

「僕は知らないが行って見たらわかるらしい」

 

答えを聞いた瞬間、役立たずと溜息を吐き、学園長室へ向かった。

一体何のようなんだか、と思いながら、

 

 

 

~学園長室~

 

 

壊して入っても良かったのだが、中には小さき気配が2つあったのでやめました。

扉を開けて中に入ると、そこには

 

「あ、ネギ先生」

「あなたがネギスプリングフィールドですか」

 

なんと佐倉愛衣いや、愛衣さんと脱げゲフンゲフン、高音さんがいた。

これは意外なメンバーだった。

ま、それはいい。学園長に聞くことにしよう。

 

「何か御用ですか?」

「うむ、実はのぅ、世界樹の向こう側にある森があるじゃろ?」

「ああ、ほとんどの人に感知されない、存在感の欠片も無い空気の森ですか」

「そ、そうじゃ。そこに魔物が召喚されてくるんじゃ。それをどうにかしたいのじゃ」

 

ようは原因を突き止めて倒せって事か。

やっと、あの時の約束が今になってきた。

 

「ぶっちゃけどうでもいいんですがいいですよ?」

「引き受けてもらえるか! ではコレを渡しておこう」

 

僕にイヤホンとマイクの着いた小型通信機を渡してきた。

そもそもこれを誰に作らせたんだ?

 

「これを受け取ってどうしろと?」

「もうひとつはコレじゃ」

 

何か音声も聞ける小さな発信機を15個ぐらい渡してきた。

だから、どうやってこんなもの作りやがった?

それを聞いてみると、あほな回答が来た。

 

「これを付ければ一石二鳥じゃろ?」

「「何の話ですか?」」

「……ようは召喚する犯人のどっかに付けろって話ですか?」

「そう言うことじゃ」

「倒してしまえば簡単だと思いますが」

「逃げたらどうするんじゃ? 確実にしとめるのが一番じゃろうて」

 

この箒頭は召喚してくる存在に恨みがあるようだ。

どんな恨みがあるんだ?

 

「ところでこの2人は?」

 

この時はまだ初めてだから名前を呼べない。

うむ、と頷いた箒頭は2人に頷いた。

 

 

察しが着いた愛衣さんが僕の前に立ち

 

「初めまして佐倉愛衣です。よろしくお願いします。あ、呼び方は愛衣でいいです!」

 

恥ずかしそうに頬を赤くしながらペコリと一礼した。

背後に居た高音さんが愛衣さんの横に移動し同じように一礼した。

 

「ネギ先生、初めまして:高音・D・グッドマンですわ。高音とお呼びください」

 

この二人を見てたら、明日菜さん達より礼儀あるなぁと思ってしまう。

でも仕方が無いよ、こっち側にはエヴァやエヴァやエヴァがいるんだもん。

その光景をほぉほぉほぉと奇妙に笑いながら見る学園長

 

「もしかして僕と愛衣さんと高音さんで行くんですか?」

「そうじゃ」

「いつ?」

「今からじゃ」

「授業は?」

「代わりの先生でいいじゃろ」

「わ、わかりました」

 

早い回答が返ってくる事に呆れた。

最初からこの件で1時間目をサボらせる気満々だったわけだ。

 

「では頼むぞ」

「「はい」」

「はぁ、はい」

 

僕と2人は学園長の言った森へ向かった。

何も起こらなきゃ良いけど、ね。

 

 

 

 

~空気の森~

 

ここは間違いなく空気の森だ。

場所は世界樹の向こう側にある森の中。

魔法を使ってもバレないらしい。

 

「着きましたね」

「どうしますか?」

 

探知魔法を展開しようとしたが、前方に白装束の男が立っていた。

男の背後には推定150ぐらいの魔物が居た。

 

「貴様ら、死ににきたのか」

「あなたですの? この森から進入してくる人は」

「そうだ」

「お姉さま、話していても拉致がありません」

「そうですわね、ネギ先生もいいですか?」

 

確認してくる。

確かに話し合いだけでは無駄だろうな。

相手の気配が、さっきがこちらに向いてるのを気づき、高音さんに頷く。

 

「では行きますわよ」

 

高音さんはなんとかなんとかモードになった。

なんとかなんとかモードってのは僕が覚えていないだけの話。

愛衣さんも呪文を唱え始めた。

そういえばメイプル・ネイプル・アラモードっが始動キーだっけ。

え? 僕はどうするかって? 

決まっている。相手をからかうだけだ。

 

「3人だから10匹で十分か、ゆけ! 我がアウルどもよ!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 

白装束の男の言う通り、ワンちゃん型アウルらしきものが10匹もこちらに来た。

はあ、舐められたものだな。

僕をたったのこんな獣もどき10匹で倒せると思うなんてさ。

 

「ふざけてますわ」

「そうですね、日頃のストレスを解消するのに最適だな。融合の射手・雷と火の52矢」

「我が手に宿りて敵を喰らえ。紅き焔」

 

愛衣さんの呪文と僕の融合の射手が一斉射撃する。

紅き焔が1匹のアウルに当たるが、ハルナさんのマジックシールドみたいにはじけた音と共に消えた。

僕の矢はアウルの頭部分から貫通して爆発を起こす。

ああこれはきっと、2人では倒せないね。

 

「え、えと、ネギ先生?」

「な、なんだと!? この私のアウルが」

「アウルアウルっていうけど全然たいしたこと無いぞ? 

もうちょっと本気でかかってきたらどうだ? 白装束のヤラレ役さん」

 

雑魚を挑発してみる。

挑発を聞いた敵はプルプルと震えながら僕に指を刺し

 

「貴様、ならもう手加減なしだ。アウルよ、アウルゲルミルへ融合せよ」

「アウルゲルミル!?」

「ああ、確か北欧神話に出てくるアレか、てっきりブラックボックスと呼ばれ、触手も出してくるあいつかと思った」

「何だそれは、だがお前の言ったとおりそれを含めた化け物なのだ!」

 

なのだって口調がかわいいな。

ん? 北欧神話を含めたって意味だろうな。後者は絶対にありえん。

 

「ネ、ネギ先生!? アレ」

「え?」

 

高音さんが叫びながら化け物のほうへ見る。

化け物が、140匹の化け物が融合してる。

はじめは10メートル以上あった化け物だったが、小さくなっていき、最終的には2メートル。

推定魔力はエヴァに近いな。ってそんなにあるの!?

 

「どうだ! もう少しすれば闇の福音も倒せるほどの魔力を持つのだ」

「や、闇の福音ですって!?」

「呼んだか?」

 

エヴァの声に気づくと、僕の影から出てきて腕に絡みついた。

エヴァ、人前で、知らない人の前で止めて。

ほら、高音さんと愛衣さんが驚いた表情だ。

 

「うぬぅ、闇の福音だと? 馬鹿な」

「フン! 私のネギを倒そうなんて馬鹿な奴だ」

「誰がエヴァちゃんのネギ君やって!?」

 

浮遊術で飛んできた木乃香さんと明日菜さん、そして影の薄かった刹那さんだ。

僕のそばに降り立つ。

 

「っていうか、授業は?」

「そんなもんないわよ? 学園祭の準備だもの、

それにネギが居ないと成り立たないから勝手にやってるわ」

 

ああ、だから学、箒頭は平気な表情していたのか。

 

「ネギ先生、早く倒してしまわないと時間の無駄です」

「そうやな」

「ちょっとあなた達!?」

「何?」

「何だ?」

 

明日菜さんとエヴァがじーっと高音さんと愛衣さんの全体を見ていた。

何をそんなに見てるんだ?

2人を見て考えていたが、明日菜さんとエヴァが振り返って

 

「あの二人、かわいい子よね」

「そうだな。で? ネギ、どうするんだ?」

「敵を倒してしまいましょうか」

「確かに敵ね」

 

いや、どっちの事を言ってるの?

刹那さんの妙な視線を感じた。

 

「どうしたんですか? 刹那さん」

「あ、いえ、何でもありません」

 

僕から視線を外す。

木乃香さんはフ~ンとわかったかのような表情をする。

 

「せっちゃん焼き餅やいてるん?」

 

木乃香さんの一言で表情を赤くした刹那さんが言い訳をする。

 

「ち、違いますよ! ネ、ネギ先生」

「ほら、口調も変やし、慌ててるし」

 

と、その時、大きな轟音が回りに響いた。

はっと気づいた全員が白装束の男を見る。

 

「貴様ら! 俺を無視するんじゃねえ!! 俺様を無視した貴様らには死を持って償え」

「ほう? 出来るものならしてみるがいい」

「アウルゲルミル、グングニル・スレイヴで崩壊させろ!」

 

エヴァの挑発に乗った男がアウルゲルミルに命令した。

必死に命令して顔が真っ赤である。

マスターの要望に答えようと、アウルゲルミルが魔力を開放する。

地面が揺れている。さらに抜け出せないように結界が張られた。

状況に混乱する数人に僕が声を掛ける。

 

「高音さん、愛衣さん、大丈夫ですよ」

「大丈夫ってどう大丈夫なんですの!?」

「そうですよ!」

 

普通ならそうなんだけどね。

ある人物を見ながら安心の一言を。

 

「エヴァンジェリンさんがいるんですから」

「でも呪いが」

「それなら心配ない。解けてるからな」

 

「「えええええええええええ!?」」

 

衝撃の言葉に叫ぶ2人。

そんなこんなの話をしている間にアウルゲルミルの頭上に赤色の槍が出来ていた。

相当の魔力が込められている。

白装束の男の笑い声が響いた。

 

「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!! これでお前達は終わりだ。

グングニル・スレイヴは不死殺し、神を殺す技でもあるのだ! 

例え闇の福音でも触れれば永遠の死を喰らう」

「何だと!?」

「何ですって!?」

 

僕以外の全員が驚愕の表情を浮かべた。

この魔力で嫌な予感してたが、まさかエヴァの弱点プラス神を殺す技、ね。

あの技ほしいな。複製してしまおうか。と考えた僕は手を前に差し出す。

 

「ネギ先生、何をなさるつもりで?」

「黙ってみててください」

「わかりました」

「エヴァンジェリンさん、終わる世界やってくれません?」

 

言われたエヴァは頷き、先手必勝と言わんばかり早く唱える。

 

「リク ラク ラ ラック ライラック

契約に従い 我に従え 氷の女王 来れ とこしえのやみ えいえんのひょうが」

 

アウルゲルミルがエヴァのえいえんのひょうがで凍った。

だが、グングニル・スレイヴが消える様子はない。

それに気にせず続きを唱えるエヴァ。

 

「全ての命ある者に等しき死を 其は 安らぎ也 おわるせかい」

 

最後まで唱えたエヴァが指を良い音で弾く。

凍っていたアウルゲルミルが割れると思いきや、覆っていた氷だけが割れた。

 

「意味ないわね」

「エヴァちゃん、むなしいなぁ」

「う、うるさいわ! 闇の魔法を使えば楽勝だ」

 

言い訳をするエヴァに何故かイヤラシイ笑みを浮かべる木乃香さん。

さらに、馬鹿大きく笑い声が聞こえた。

 

「わっはっはっはっはっははははっ!! 

闇の福音も大した事はないな。さすが神殺しの銃神なだけある」

「銃神? 因果律の番いやありえないか、仕方ない。

……権限の鍵発動、魔法属性を存在消去の属性に変更」

 

小声で呟きながら自分の魔力を、魔法の射手を変換する。

自分の中の魔力が別のエネルギーに変わったと感じた僕は前に差し出していた手に集中し、

 

「これ、詠唱ないからなぁ。 権限の射手・1の崩壊」

 

水色の矢がアウルゲルミルに発射する。

白装束の男は僕が放った矢を見て慌てながらも対応する。

 

「アウルゲルミル、グングニル・スレイヴ撃て!!」

 

アウルゲルミルが勢いよく、後ろに持っていき、思いっきり前に投げる。

権限の射手とグングニル・スレイヴが衝突する。

これもあっさりとグングニル・スレイヴを崩壊させ、アウルゲルミルの右腕を貫通する。

貫通したと同時に右足も崩壊した。

不思議な現象に僕以外の全員が驚く。

 

「な、何だと!?」

「すごい……」

「今なら出来るか。幻想世界、天蓋!」

 

右腕を天に向けて叫ぶと、朝だった景色が赤く染まる。

範囲はココだけだからほかの人に感知できない。

 

「ネギ先生って何者なんですか?」

「もしかしてこれって私にしようとしたやつ?」

「これは」

 

後ろからそんな声が聞こえるが気にしない。

白装束の男は悔しそうに口を歪めるが、着用していた白装束の胸にはポケットがある。

そこに手を突っ込み、何かを取り出した。

 

「おのれ、アウルゲルミルよ! この札で完全回復しろ!」

 

どうやら回復の札らしきモノをアウルゲルミルに当てるが、何も変化がない。

 

「バ、バカな!」

 

幻想世界とは、相手の有利に動く力は通用しない。

だが、その幻想世界展開も時間がない。おそらく僕の魔力が全然足りないらしい。

時間は推定5分程度か、さっさとケリをつけるか。

 

「一斉攻撃で終わらせましょう。この空間では僕達の方が有利です」

「そやな」

「後で説明してもらわないと」

「わかってますよ」

「それじゃあ行きましょうか」

 

全員が杖を持ったり剣を構えたりする。

白装束の男はひいっと怯えた声を叫ぶが、攻撃を開始する。

 

 

※短縮版にてお送りします。

 

 

「いっておしまいなさい!」

 

鞭の音が鳴り響く。ただそれだけ

 

「ウオオオオオ!?」

 

効果は普通に効いた。

 

「紅き焔」

 

炎で敵を覆いつくした。

 

「ウオオオオオオオオ!?」

 

効果は普通に効いた。

 

「無極而太極斬」

 

巨大な剣を振り下げた。

 

「ウオ?」

 

前の攻撃で苦しみながらも今の攻撃に首を傾げた。

効果がまったくない。

 

「何で私のは大して効かないのよ!!」

「そりゃあ神殺しやからなぁ」

「次は私の番だ!」

「ええ!? ウチの番やないん?」

「このちゃんには申し訳ないですが、神鳴流決戦奥義、真・雷光剣」

 

神鳴流の奥義が直撃した。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!?」

 

効果は抜群だ!

 

「あ、せっちゃん!」

「今度こそわた」

「残念、僕がいただきます。雷の暴風!!」

 

大分弱めの雷の暴風を放った。

 

「グオオオオオオオオオオ!!」

 

権限の鍵を解除していないため、効果は抜群すぎる。左腕、足が崩壊した。

バランスを崩し地面に倒れる。

立ち上がろうと一生懸命動いている。

 

「こうなったらエヴァちゃん!」

「ちっ、仕方がない」

 

木乃香さんとエヴァが並んで立つ。

何の呪文をやるのやら。

 

「リク・ラク ラ・ラック ライラック 来たれ氷精 闇の精 闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪 闇の吹雪!」

「プラクテ ビギ・ナル 光の粒子よ、我に仇名す存在に、罰を与えん 星光破壊!」

「木乃香ったら」

「ウオオオオオオぉぉぉぉ……ゥゥゥ……」

 

アウルゲルミルの姿が完全に消滅した。

復活する様子もないと確認すると、幻想世界を解除した。

元の景色に戻り、権限の鍵を常時警戒モードに切り替える。

白装束の男は完全敗れたと悔しがるが、逃げることにした。

敵に背中を見せて逃げるなんておろか過ぎるな。

 

「発信機、てい!」

 

箒頭から頼まれた発信機を相手の背中に投げ付けた。

付けたと同時に転移して逃げた。

完全に気配が消えた。

 

「逃げたわね。いいの?」

「学園長に頼まれた発信機を付けましたから大丈夫だと思います」

「それにしても最悪の敵だったわね」

 

アウルゲルミル、神殺しなんているとは思わなかった。

前にそんな奴居なかったのに、ね。

やっぱりこの世界は何かがおかしい。

 

「とにかく学園長室へ戻ります」

「そ、そうですわね」

「ネギ先生、すごいです」

 

愛衣さんに尊敬の目で見られていた。子供みたいに目をキラキラさせて。

木乃香さん達はどうするのかな?

 

「木乃香さん達は?」

「ウチは教室へ帰るわ」

「刹那さんの札の効果が無くなりそうだし」

「そうだな」

 

刹那さんのアレか。

 

「ネギ、極移頼む」

「影のゲートで行けばいいんじゃあ」

「面倒だ!」

「ネギのアレのほうが早いわ」

「しょーがないですね」

「すみません。ネギ先生」

「じゃあ行きます。極移」

 

極移用の魔法陣を4人に展開し、呪文を発動させると4人の姿が消えた。

ここには3人だけになったが、高音さんと愛衣さんがこちらを見ていた。

 

「ネギ先生、今のは」

「今のは極移といって次元を越えることが出来る上級転移魔法です」

「そ、そんな魔法聞いたことがありません」

「え? そうなんですか? 古い魔導書に書いてありました」

 

嘘っぱちの事をさらっと言う。

これは異世界の転移を見て真似ただけの呪文だよ。

それを言っても変な目で見られるだけだから言わない。

僕の嘘に納得した2人は、特に愛衣さんが

 

「行きましょうか。ネギ先生」

 

何か嬉しそうな笑顔で僕の手を握って歩く。

握られているせいで、僕も合わせるように歩くが、僕フラグ立てたっけ?

アホな事を考えながら学園長室に向かうネギ達だった。

 

 

~学園長室~

 

僕達は学園長室に設置してあるソファーに座る。

 

「よくやった」

「はぁ……」

 

止めを刺したのは木乃香さんとエヴァだけど。

 

「ネギ君、どうだったかのゥ」

「あの男は何者なんですか? エヴァンジェリンさんの攻撃も効かなかったですよ?」

 

あの男の持つアウルゲルミルが、だけど。

 

「それほどか、というかエヴァも行ったのか!」

「学園祭の準備じゃないですか」

「確かにそうじゃが、ネギ君のクラスは何をするんじゃ?」

 

何をするってもう簡単な喫茶店でもいい気がする。

ぶっちゃけ面倒である。

 

「それは後で決めます。3時間目でいいですか?」

「2時間目はどうするんじゃ?」

「とりあえず僕、疲れたから休ませてほしいです」

「それは構わんが、おぬしらはどうするんじゃ?」

 

高音さんと愛衣さんに聞いている様だ。

あんだけ大変だったんだ。

箒頭の目は「お主らも休憩が居るじゃろう」と聞いていた。

突然立ち上がった愛衣さんが意外なことを言い出した。

 

「あの、ネ、ネギ先生の膝枕になってもいいですか!!」

「はい?」

「え?」

「ほぅ……」

 

予想外のことを言うから変な声が出た。

ちなみに上から僕、高音さん、箒頭(学園長)だ。

というか、何がほぅ……なんだ? この爺さんは!

 

「うむ、ではネギ君の介護を頼むかのぅ」

「あ、はい!」

「ちょっと愛衣!?」

「何ですかお姉さま?」

 

何か用ですか的な表情になる。

高音さんが僕の方をチラっと視線を合った後、すぐ逸らし

 

「私達には授業が」

「学園長が言った通り、学園祭の準備じゃないですか」

「そ、そうですけど。でも」

 

愛衣さんがモゾモゾとしながら小声でブツブツ呟く高音さんを放置して

僕の隣に座り、優しく僕の体を寝かせ、頭が愛衣さんの膝に乗せた。

 

「ですからって聞いてますの! 愛衣って何を!?」

「ネギ先生、柔らかいです」

 

まったく高音さんの話を聞かず、僕の頭を撫でている愛衣さん。

いいのか無視して、と視線を向けると、目が合った。

 

「お姉様、ちょっと」

「な、何ですの?」

 

高音さんが立ち上がり、愛衣さんに耳を傾ける。

僕に聞こえないようにしてるのか、愛衣さんが小声で何か伝えていた。

すると、高音さんの顔が真っ赤になり、こちらを見たらプイっとそっぽを向いた。

一体何を言ったんだろう。

 

「し、仕方ないですわね。とりあえず学園長、私はこれで失礼します」

「ごくろうであった。またのぅ」

 

もう用がないといわんばかりに学園長室から出て行った。

 

「あ、あの愛衣さん?」

「何ですか? ネギ先生」

「どうしてこんな事を?」

「そ、それはネギ先生の事が好、す、す」

「……」

 

あ~あ、この言葉の続きって絶対アレしかない。

ゴメン小太郎、愛衣さんフラグ消しちゃった。テヘッ!

 

「オッホン!」

「キャッ! う~」

「木乃香にライバル登場か」

 

突然、変なことを言う箒頭、

つーか空気読めよ! この爺

愛衣さんがライバルという発言にムッとする。

 

「え~と、膝枕はもういいですよ」

 

脱出するために瞬動で入り口前まで移動する。

ああ、危なかったぁ。特に理性がやばかった。

下半身に血液が集まってくる所だったぞ。

一応、この状態でもアレは大人だから危険すぎる。

 

「もう少しさせてくれても」

「駄目です。そろそろ行かないといけないので」

「はぁ……」

 

完全落ち込みモードに入った愛衣さん。

この世界の愛衣さん、どこか違ってません?

何というか明日菜さんみたいに。

仕方ない、完全にこちら側にするか、悪い小太郎君よ。

 

「じゃあ、今度会ったら……え~と、仮契約してもいいですから」

「本当ですか!!」

 

滅茶苦茶元気になった愛衣さんが笑顔になる。

はぁ、また面倒になるな。明日菜さん達によって

さっきから何もしゃべらなかった箒頭がこう言ってきた。

 

「若いのはええのぅ。じゃが木乃香も頑張らねば駄目じゃろう」

 

自分の娘の心配をしていた。

本当にどいつもこいつも歪んでやがる。

今後どうなるか考えてたら頭が痛くなった。

うん、考えるのは止めよう。

今後のことを考えてみた事を思い出さないように心の底に封印。

 

「僕はもう行きますよ」

「そうか、できればもう少し見たかったんじゃが」

「木乃香さんが見つけたらどうなるかの修羅場の間違いじゃないんですか?」

「そうともいうかのぅ」

 

素で答えられた。

これ以上、ここにいたら別のフラグが立ちそうだ。

そう思った僕は場所を思い浮かべ、極移を使った。

 

 

そして、教室へ向かい、学園祭で何をするのかを揉めた。

メイド喫茶やノーパンなんちゃらとか妙な提案が出た。

いろんな意味でグダグダな状況だった。

結局、夏だからという理由で幽霊屋敷になりましたってあれ? 今夏だっけ?

 

 

~学園の廊下~

 

「あ、さよさんの事どうしよう」

 

教室を出て職員室へ向かう途中に思い出した。

本当なら今頃って訳だ。

 

「まあいっか。それは今度にしよっと」

 

そう決めた僕は職員室へ戻るのでした。

 

 

 

 

第41話『学園祭編その6 相坂さよの存在』へ。


 
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