No.392154

代表戦前夜

rahotuさん

第十六話投稿

2012-03-15 22:31:43 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2721   閲覧ユーザー数:2668

メガフロート

 

南太平洋ソロモン沖に浮かぶ巨大な人工の島。

 

波間に揺れるその姿を上から見ると、海上に浮かぶ巨大な板のようだ。

 

地球連邦が嘗て、公海上に建設しようとしてマスドライバーの土台を利用して作られたこの施設は、今では洋上の巨大空港として、活用されている。

 

六年前、第一回モンド・グロッソ大会が開かれたのもこの場所だ。

 

その為、今でも多くのISファンが観光に訪れ、国際空港という場所でもあり、一般的にその認知度も高い。

 

今この空港に一機の政府専用機が飛び立とうとしていた。

 

「ああ、今飛行機の中から携帯をかけているよ。いい子にしているかい?」

 

携帯から聞こえる娘のかわいらしい返事に、男は顔を綻ばせる。

 

「ウンとね、いい子にしているよ。モーモの云い付けも守っているし.....でもね、パパは何時になったら帰ってくるの?」

 

「心配いらないよ。今回の仕事がすんだら休暇を取って一緒にキャンプに行こう。」

 

男は、もうかれこれ一週間も娘と会っていない事を思い出し、秘書が差し出した予定表に娘との約束を書き込む。

 

「本当!!嬉しい。ねえねえ、友達のキャシーとミシェルも誘っていい。」

 

娘の喜ぶ声が聞こえるだけで、男はそれで胸がいっぱいになった。

 

「ああ、いいとも。友達を沢山呼んだらいいよ、と、もう時間だ、飛行機が飛ぶからもう携帯を切るよ。」

 

「ああ、ちょっと待ってパパ!!あのね、約束だよ、ちゃんと帰ってきてね。」

 

男は娘との会話を名残惜しむようにしてから、

 

「ああ、ちゃんと帰ってくるよ。パパは約束を絶対守るよ。それじゃ切るね、愛してるよメイ。」

 

携帯を切り、シートベルトを確りと閉めた後、飛行機が滑走路まで誘導され、だんだんとスピードを上げ飛び立とうとしていた.....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝早くから一夏と箒はベッドから抜け出し、朝の鍛錬に精を出していた。

 

一応言っておくが、ベッドのシーツは濡れてはいたが血は付いていない、さらには鍛錬の精の意味を履き違えないでもらいたい。

 

体を眠気から覚ます体操から朝のロードワークを終え、現在一夏と箒は剣道場に来ていた。

 

朝靄も段々と晴れてきた道場に、一夏は久しぶりに嗅ぐ剣道場特有の汗と何かが混じった匂いに懐かしさを覚えた。

 

靴を脱いで、箒の後に続き、箒は壁に立てかけてあった竹刀を二本取り、一本を一夏に投げ渡した。

 

「一夏、一戦私とやらないか。そのなまった体にはちょうどいいと思うが。」

 

竹刀の先で一夏をさし、向かい合う二人。

 

「ああいいぞ。俺も特技ったらこれしかないからな。まあ、随分とやってないから手加減してくれよな。」

 

「私が出来るとでも?」

 

ニヤリと笑う箒に、はあとため息をついた一夏は「ですよね~。」と言って次の瞬間二人は同時に竹刀を構えた。

 

箒は身長を生かした上段に構え、一夏はスタンダードな中段の構えをとる。

 

一閃、箒の竹刀が一夏の頭を狙い振り落とされるが、上手く合わせた一夏はそれを右に逸らし、小手を狙う。

 

が、さすがは全国大会経験者、一夏が狙った竹刀を支える左手を咄嗟に離して小手を防ぎ、空振りした一夏の胴を狙い、一夏の手を利用して回り込むが、振り切った反動で前に出てすぐさま箒と向き直った一夏に狙いを外される。

 

箒は汗を一切流さずにフッと、

 

「一夏、そろそろ体が温まって来た頃だろう。全力でかかってこい。」

 

箒は構え直し、真っ直ぐ構えた竹刀はぶれることなく一夏に狙いを定める。

 

「おいおい、勘弁してくれよ。こっちはさっきので息切れなのに。」

 

はあ、はあ、と息を吐く一夏はしかし言うほど余裕がないわけではなく、先ほどの立ち合いも僅かばかり力を抜いていた。

 

それを箒に見破られた一夏は、少し面白くないふうに感じながらも、箒に対しゆらりと竹刀の先を揺らした。

 

一夏の異変を察知した箒は、しばらく様子を見る為にじっと動かず一夏が持つ竹刀の切っ先に集中した。

 

開けた窓から入る春の風が、心地よく二人を包み込むが、しかしこの葉が舞い落ちるとも微動だにせず、二人は対峙し続ける。

 

と、一瞬箒の視界から一夏が消えた。

 

反射的に後ろに振り返って竹刀を振るった箒は、そこには本来ない筈の一夏が振り下ろした竹刀とぶつかる。

 

空気が張り裂けるような音がして、箒は一夏の技の鋭さに驚き、一夏は必殺の一撃を防がれた驚愕の表情を浮かべる。

 

と、互いにその場を引き、再び正対する。

 

「はあ、はあ、一夏....いまの技はなんなんだ。一瞬お前が消えたぞ....。」

 

「はあ、はあ、はあ、......。態々タネを教える奴はいないよ.....。」

 

互いに息を整え、次の一撃で最後だと悟った二人は、共に無言となり、構える。

 

と、箒が構えを変えて腰だめに差し、一夏も構えを解いてブラリと両手をだらけさせた。

 

一夏の構えは一見隙だらけに見えるが、これは体に余計な力をかけずに、敢えて相手に攻撃を受け、切り返す見切りの姿勢をとり。

 

対する箒は腰にさした状態で、体を屈め、柄の部分に手をかけるも他の所には余計な力をかけず、ゼロから飛ばしてで全力を発揮する居合の構えをとった。

 

と、一瞬目に見えぬスピードで抜き放った箒の居合が一夏の胴を捕らえた。

 

パンッッッッ。

 

鋭い音が鳴り響き、互いに相手に一撃をいれた姿勢で固まる。

 

箒の居合は一夏から見て左から来るよう見えた、しかし先に出た手を狙った一夏にすぐさま反応した箒がそれよりも早く抜き打ち、一夏の突きの手を利用して竹刀を隠し一夏の胴を狙う。

 

が、小手をかわされた一夏は、直ぐに狙いを変えて下からの突き上げによる面に変えた。

 

結果は互いに相手の胴と面に一撃をいれての引き分けに思えたが......。

 

「私の勝ちだな一夏。」

 

ギリギリの所で止められた竹刀の先を見て、にやりと笑う箒に、一夏は、

 

「ああ、お前の方が先に決まったからな.......そろそろ下ろしていいか?脇が痛い...。」

 

箒の全力からの加速が一夏の突きを上回り、先に胴に当たり、その直後に一夏の突きが箒の顔に突き出された。

 

ここまでの攻防は僅か一秒にも満たないにも関わらず、二人には一時間以上にも感じられた。

 

竹刀を片づけ、一夏は箒の竹刀が当たって出来た痣を見ながら時々イテテテと呻き、その度に、心配そうに箒が声をかけた。

 

「一夏.....やっぱり無理はするな。今すぐにでも保健室に行って診てもらおう。」

 

濡れたタオルで一夏の痣に当てながら箒は心配そうに一夏に言う。

 

「なに、これくらいなんてないさ。それよりも流石だな箒、前よりも一段と速くなった。」

 

「////そ、そうか。なら嬉しいんだけど.....一夏に面と向かって言われると恥ずかしい。」

 

最後の声は小さくて聞こえないふりをしてばっちりと聞こえていた一夏は、ずいっと箒を抱き寄せ...。

 

「い、いいい、一夏....な、ななな、何を....。」

 

顔を赤くして慌てふためく箒の耳元で、

 

「箒可愛い。」

 

と呟き、言われた箒は頭から湯気を出して恥ずかしさのあまり一夏の脇に思いっきりタオルを押しつけてしまう。

 

 

「ッッッッッッッッゥゥゥゥッゥゥゥゥ!!!!」

 

その、余りの痛さに悶絶してしまい、結局箒に抱えられたまま保健室へと行く羽目になった一夏であった。

 

 

 

 

 

 

 

セシリアとの試合まで一夏達はひたすら鍛錬に勤しんだ。

 

なまった体を鍛え、剣術の腕を磨き、ひたすら走り込む。

 

たとえ付け焼刃とはいえ座学を詰め込み、セシリアの対戦記録を見て対策を考える。

 

俺たちの努力は、時には深夜を超える事もあった。

 

まあ、そのおかげで箒とまた昔みたいに話せるようになったのは嬉しいし、何よりも勝った時のご褒美もある。

 

半ば冗談で云ったつもりの一言、

 

「なんかな~、試合に勝っても結局クラス代表になるだけだろ。なんか他の特典とかないのかな。」

 

ある日遅くまで箒につきあってもらいながらセシリアの対戦記録を見て一言、何気なしに言ったこの一言が、後々俺の大きな励みになった。

 

大会前夜、その日は明日に備えるため二人ともいつもより早くベッドに入り、体を休めていた。

 

しばらく部屋の中には穏やかな寝息が響き、二人の間を分ける仕切りの向こう側では、一夏が目を閉じ、明日の事を考えていた。

 

これまでやれることはやってきた、それを明日証明できるかどうか.....ここまで付き合ってくれた箒の為にも、明日は絶対無様な姿は見せられないな。

 

一夏は何度も何度も今までの事を思い出し、そのたびに自らの心の中に言葉を刻みこんでいく。

 

そうして、何時しか一夏はぐっすりと眠ってしまっていた。

 

 

 

 

 

ふと、仕切りの向こうで何かが起き上がる気配がした。

 

それはゆっくりとした足取りで一夏のベッドへと向かい.....ドサリと何かがまたがった。

 

「う、ん?何だ。」

 

うっすらと目を開けた一夏の前には馬乗りになる箒の胸元からはだける豊満な胸があった。

 

寝ぼけていた一夏はそれを、思いっきり揉んでしまい、ヒャッというかわいらしい悲鳴にも気付かぬままひたすら胸を揉んで堪能し続けた。

 

「ううう、い、一夏、こら起きろ。あ...だめ.....噛んじゃいや....。」

 

既に箒の胸を覆っていたパジャマのボタンは外れ、一夏は直接肌に触れて箒の体に自らの歯形をつけていく。

 

夢の中では、一夏はただひたすらにマシュマロを食べ続けているだけなのだが.....現実はかなりきわどい所まで行っていた。

 

耐えきれなくなった箒はついに、

 

「これ一夏、起きろ!!」

 

と、寝ている一夏の頬を抓り、その痛みでようやく覚醒した一夏は、先ず箒のあられもない姿に驚いた。

 

「ほ、ほほほ、箒。おま今何時......まあ、眼福眼福ありがとうございます。」

 

そして拝んでしまったのは仕方がないことだ。

 

「何を見ている一夏!!まったくお前は、今日は何もしない約束だろ。」

 

時計は夜中の三時を指していた。

 

「もう今日じゃないよ、昨日だよ。とにかくいったいなんなんだ箒。」

 

「はあ、お前というやつは、まあいい一度しか言わないからな。」

 

そう言って箒は何度も何度も深呼吸をして、息を整え、顔を真っ赤にしながら一夏の耳元で囁いた。

 

「....私の....を......す。」

 

「え?」

 

思わず聞き返してしまった俺だが、既に箒は俺から離れ、隣のベッドにもぐりこんでしまった。

 

起こそうかと迷ったが、明日も早いので結局その日はそのまま寝ることにした。

 

夢の中で箒の感触を思い出し、紳士汁があふれださないように注意しながら、一夏は夢の中で箒をもてあそんでいた。

 

 

 

 

 

 


 
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