セシリアと一悶着があり、結局クラス代表をかけた勝負を来週行うことになってしまった。
その後の授業は問題なく行われたが、相変わらず俺にはチンプンカンプンだった。
放課後になり、授業を終えた俺は、今日色々とありすぎて疲れた体を一刻も休めるべく教室を出て、
巨乳に出会った。
いや、失礼。山田先生に呼びかけられて思わずその豊満な母性を凝視してしまったのだ。
うん、俺は悪くない。
それには気がつかない山田先生は、一人?を浮かべ、俺が何かと尋ねると、
どうもこの学園は全寮制で既に俺の荷物は部屋に届いていて家はもぬけの空らしい。
俺は入学する一週間前に、久しぶりに帰ってきた千冬姉ぇからIS学園に入学するさい、全寮制だから寮に持っていく荷物をダンボールに詰めておけと聞いたのを思い出した。
何でも後で宅急便で送ってくれるらしいがもうついたのだろうか。
その後、荷物は事務室に届けられていることと先にルームメイトに挨拶しておくということでルームナンバーキーを受け取った。
さて、一体誰がルームメイトなのか.......。
寮に入って、寮母さんに挨拶をした後、色々と案内されながら、俺がこれから三年間お世話になる部屋の前に来ている。
ルームキーを入れると、直に違和感に気付く。
空いてる.......。
無用心だなと思いながら、念のためノックをしてからドアを開けた。
部屋の中に入ると、広々としていて一学生の部屋としては豪華すぎるものだ。
まあ、それだけ世間的にIS学園の生徒が優遇されているからだろう。
部屋の入って直右側には自炊が出来るようにか、冷蔵庫とコンロがあり、戸棚には綺麗にお皿が片付けてあった。
男の俺を意識してか、ダブルベッドの間には仕切りがあり、互いのプライベートスペースを確保していてくれた。
欲を言えばこれを個人で欲しかったが.....学園の決定では従わざる終えないな。
一先ず鞄を使われていない机に置いた俺は、荷物でも持ってくるかと後ろを向き.......タオル一枚巻いた箒と出くわした。
互いに硬直して見詰め合ったまま立ち尽くす。
............................................
無言のままお互いに目を逸らせない状態で遂に我慢できなくなった俺は、
「や、やあ、箒......さっきぶり.....。」
何とか搾り出すようようにして声を出して俺に箒は最初驚いた顔をして、そして今の自分の姿に気がついたのか段々顔が赤くなってきて。
「ど、如何してお前が此処にいる!!答えろ一夏。」
行き成り俺に掴みかかってきた箒は、タオル姿なのにも関わらず俺を問い詰めた。
「千冬先生の差し金か?私を監視しようとそうだろ!!そうに決まってる、お前まで私を疑うのか、答えろ一夏!!」
訳も分からぬまま箒に怒鳴られ続ける俺は、箒の目には別の感情が浮かんでいるのに気付いた。
「どうして、どうして私を一人にしてくれないんだ.......どうして......どうして........わたしは、優しくされる資格なんてないのに....どうして。」
ああ、今分かった、箒は壊れてなんかいなかったんだ、いや壊れたフリをしてきたんだ。
そうでなきゃ耐えられなかった、俺とは違い箒はずっと耐え続けて来たんだ。
俺は随分と前に壊れてしまったな、何時だろう、そう昔でもないはずなのにどこか遠くに感じる。
「箒、その、また合えて嬉しいよ.....本当に。」
いつの間にか手を離していた箒に、俺はそんな場違いな言葉を言いつつも、なぜか箒を抱きしめていた。
ビクッと体を震わせた箒を優しく包み込みながら、俺は箒の耳元で囁くように、
「そんなことない、箒はいままで頑張ってきたんだ。俺はそれを知っている、だから”俺だけ”に甘えていいんだよ。」
逃げ出そうと胸を叩く箒をギュッとにさらに力を入れ、
「箒がどんなこと言われようと、俺はずっと箒と一緒にいる。昔のことを忘れろなんか言わない、だけでも今だけは俺を見てくれ箒。」
だが箒は小声で支離滅裂なことを言いながら泣いていた。
ああ、いいよ。
箒が目の前で壊れていく。
俺は今までイジメを受けてきた分、どうすれば相手が壊れるのかを知っている、そしてそれが堪らなく快感になっているのだ。
さっき分かれたばかりなのに、今こうして優しくされて、抱きしめられて、いま箒は罪悪感と安堵と混乱と今までのことが頭の中でグルグルと回っている。
泣きながら逃げ出そうとしながら、でも本気で逃げようとせず、こうして何時までも何時までも堂々巡りを続ける。
そして、そのうち箒の弱ったガラスの心は、音を立てずにひびが入っていく。
もっと泣かせたい、もっと箒の色んな表情を見たい、そいして、俺の目の前で壊れればいい。
だから箒、今は俺に依存すればいい。
俺は箒の全てを受け入れる、そうして箒が俺に全てを曝け出し箒の全てをモノにしたとき、全部ぶち壊してやる。
だから今は箒の好きにさせる。
俺に抱きつき、泣き続ける箒はを俺はずっとずっと受け止め続けた。
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第十三話