クラス代表戦当日
まるで信じられない物を見ているかのようにアリーナは静寂に包まれていた。
上空では一夏がまるでつまらない物を見ている目でセシリアを見下ろしていた。
しかもシールドエネルギーは一夏はほとんど減っておらず、セシリアはかなり減っていた。
さらに一夏は全く呼吸を乱しておらず、セシリアはハァハァと呼吸を乱していた。
「・・あれだけ自分はエリートだとか極東のサルがどうとか大口を叩いて所詮この程度か。なあエリートさん。」
「く・・。」
一夏の皮肉にセシリアの顔が屈辱で歪む。
おかしい。
自分は唯一教官を倒した学年首席のはずだ。
なのにポッと出の素人のこの男に一撃も与えられていない。
バカな。
自分は代表候補生で国に選ばれたエリートではなかったのか?
ウソだ。
毛嫌いしている極東のオスザルに翻弄されるなんて。
セシリアの中に色々な感情が渦巻くなか、一夏がGNソードⅡを右手に持ち口を開く。
「やっぱりお前は男を見下して、この装備だけで近接と決めつけて相手の技量を見ようとせず傲慢だけが膨れ上がった・・という訳か。イギリスの選考基準は甘過ぎだな。」
「何ですって!?」
激昂したセシリアはレーザーライフルを放つが一夏は威力を落としたライフルモードを放ち相殺する。
「・・!?」
セシリアはレーザーを相殺した一夏の技量に恐怖した。
「怒る前に俺に一撃入れてみろ。」
ピットではまさか一夏が有利になるとは予想できてなかったのかロックオンを除く全員が信じられない目で一夏を見ていた。
ロックオンは三人に更なる衝撃の言葉を投下する。
「驚いている様だけど一夏、全然本気出してないわよ。むしろ遊んでるわ、あれ。」
「「「な!?」」」
対戦前
一夏たちはピットにいた。
時間が迫り、リラックスしている一夏に千冬が声をかける。
「織斑。そろそろ時間だ。」
「あ、はい。箒、ロックオン。行ってくる。」
「ああ、気をつけてな。」
「・・・。」
箒は激励を送り、ロックオンは手をヒラヒラと動かす。
一夏は軽く体をほぐしてからカタパルトへ向かう。
カタパルトで一夏は相棒の名前を呼ぶ。
「行こうぜ。ダブルオー。」
一夏の身体に青を基調とした全身装甲が装着。
特徴的な三角のコーンが両肩にあり腰には剣が二振りあった。
「織斑一夏、ダブルオー。空を駆ける!」
両肩のコーンから粒子を散らしながら飛翔。
ピットで見ていた千冬たちは簡単に飛翔した一夏に驚く。
「何だ、あの粒子は・・。それに全身装甲(フルスキン)だと・・?」
「あの粒子・・キレイです。」
(NとSのスイッチ・・あれ?確か両親が遺した遺品の中にあの二つ用の拡張パーツがあったような・・。)
三人がモニターの一夏を見つめる中ロックオンはNスイッチとSスイッチの事を考えていた。
上空
セシリアははじめて見るフルスキンに驚いている。
「フルスキンですって!?」
「怖じ気づいたか?」
「まさか、あなたに最後のチャンスを上げますわ。」
一夏はダブルオーのモニターを見て心の中で溜め息を吐く。
「ご託はいい。さっさと始めるぞ。」
「なら、お別れですわね!」
セシリアはレーザーライフルを放つ。
一夏はそれを避ける。
「あら、逃げ足だけはお上手ですわね。ですがこれならどうです!?」
セシリアはブルーティアーズを分離させて動かす。
あちこちにレーザーの雨が降り注ぐ。
「さぁ踊りなさい!私セシリア・オルコットとブルーティアーズが奏でるワルツを!」
「・・・。」
一夏は無言でレーザーの雨を掻い潜っていた。
「織斑・・。反撃出来るのか?」
「ですけどあの動きはすごいですよ。」
「一夏・・。」
一夏を心配する三人。
ロックオンは違った。
モニターを全く見ないでアストロスイッチカバンでマグネットスイッチの検証を繰り返していた。
見かねた箒がロックオンに声をかける。
「ロックオン!お前は一夏が心配ではないのか!?」
怒る箒だがロックオンは涼しい顔をして答える。
「一夏が負ける?はっ、それ何の冗談?」
箒の言葉にロックオンは鼻で笑う。
そんなロックオンの言葉に千冬が訪ねる。
「ストラトス、それはどういう意味だ?」
「別に。一夏があんなエリート意識の塊の様な高飛車女に負けるはずがないわ。それでよく姉や幼馴染みと言えるわね。」
観客席では簪と本音が戦いを見ていた。
簪はこの戦いで一夏が勝ったら話をしようとロックオンから持ちかけられている。
(もしかすると本当に勝つかも・・。)
「かんちゃん、おりむーすごいね~。セッシーの攻撃が一度も当たってないよ~。」
簪の手に持っているのは一夏が受け取りを拒否したISだった。
結局押し付ける形で簪のISになった。
一方、セシリアは焦っていた。
相手は避けてばかりで全く反撃してこない。
なのになぜ一撃も当たらず自分の息が切れるのだ?
そして冒頭に戻る。
ようやく一夏がGNソードⅡをライフルモードで構える。
「もう終わりにしよう。」
そう言って一夏は左手もGNソードⅡを持ってライフルモードを拡散で放ち一撃でセシリアを仕留めブザーが鳴る。
(勝者・織斑一夏)
セシリアは自分を圧倒した一夏に訪ねる。
「なぜ・・お強いのですか・・?」
「簡単に言えば今のお前は努力を怠り男を見下している。専用機をもらった最初は今の気持ちとは別にひたすら努力したはずだ。だがいつの間にかお前はそれを忘れていた。それだけだ。強くなればまた相手をしてやる。」
一夏はそう言ってカタパルトへと戻る。
セシリアはその背中を見つめていた。
ピット
「凄いぞ一夏!」
箒が駆け寄って一夏を賞賛。
千冬はロックオンを声をかける。
「ストラトス、30分後に試合を開始する。」
「わかったわ。」
ロックオンは着替えに向かう。
30分後
「さて、次はあたしね。」
「気をつけてな。」
「ふっ。」
ロックオンがピットへと向かう。
30分間千冬は一夏に自分の知らない所で一体何があったのか気になった。
いくら学生と言っても代表候補生。
素人がここまで圧倒するとは信じられない。
同じ頃
セシリアはシールドエネルギーの回復を済ませ、休息を取ることができた。
次はロックオン・ストラトスと名乗る少女。
彼女の祖国は男女平等の国で特に男性の雇用を積極的に行っている。
そんな軟弱な考えを持つ国の候補生に負ける訳にはいかない。
考えを切り替えてアリーナへ飛び立つ。
上空ではすでに相棒のケルディムを纏ったロックオンが待っていた。
しかもまたフルスキンで緑色。
「あなたもフルスキンですの!?」
「そうよ、これがあたしの祖国の技術の結晶・ケルディム。」
セシリアはロックオンが手に持っているスナイパーライフルに目を向ける。
(おそらく狙撃に特化したISでしょうか。でしたらオールレンジ攻撃を持っている私が有利に運べるはず。)
試合開始のブザーが響き渡る。
「ロックオン・ストラトス!狙い撃つわ!」
ロックオンはGNスナイパーライフルⅡでセシリアの腰についているミサイル二基を撃ち抜く。
「キャァ!」
爆発によりシールドエネルギーが減る。
千冬たちはロックオンの狙撃技術に戦慄を覚える。
「今・・オルコットさんの腰のミサイルを正確に撃ち抜きましたよね・・?」
「ストラトスは狙撃に特化しているようだ。しかもあのISとの相性もいい。」
ロックオンはGNスナイパーライフルⅡを肩で支えながら持ち、仮面の下で微笑みながら言う。
「どう?あたしの狙撃技術は?」
「あなたでたらめですわ!たった二発で私の切り札を落とすなんて!」
「切り札は速めに潰した方がいいでしょう?さて、速めに終わらせるわ。」
ロックオンはGNスナイパーライフルⅡを収納して腰のホルスターにマウントされているGNビームピストルⅡを両手に持つ。
(あのピストル・・何かありそうですわ・・!)
セシリアは嫌な予感がしたのかブルーティアーズを分離させてレーザーを発射。
「特別よ!あたしの真骨頂を見せてあげる!」
そう言ってロックオンは高速で縦横無尽に動きながらGNビームピストルⅡを放ち、正確にビットに当てて落とす。
「ウソ・・。」
「あんなに動いてるのにビットだけを落とすなんて・・。」
アリーナはあり得ないものを見たかのようにざわめく。
全てのビットを破壊したロックオンは動きを止めセシリアを見る。
「さあフィナーレと行きましょう。」
セシリアは確信した。
勝てないと・・。
「乱れ撃つ!」
ロックオンは側転しながら連射、さらに姿勢を直して両手で連射。
その動きを見てアリーナはその姿に見惚れてしまう。
(避けきれない!まさか連射しながら回避先を読むなんてあり得ない!)
セシリアは懸命に回避するが予測を見切ったロックオンの連射があっという間にシールドエネルギーが空になる。
(勝者・ロックオン・ストラトス)
ロックオンはビームピストルをクルクル回した後、ホルスターに収める。
その後、頭部だけ部分解除してセシリアを見る。
「あたしはね、ISがなかったら男も女も関係ないと思うの。全ての女性が扱えるとは限らない。それに男性だっていいところはある。一夏のようにね。」
セシリアは見惚れた。
ロックオンの美しく輝く銀色の髪、どこまでもまっすぐな青い目。
(ああ、私はこの方に・・。)
その後一夏とロックオンの戦いが展開されたが決着は付かなかった。
翌日
「クラス代表はオルコットさんに決まりました。」
「あの、なぜ私に?」
何故か自分がクラス代表になっているのか疑問に思ったセシリアは真耶に質問。
代わりに答えるように一夏とロックオンが答える。
「俺たちは辞退したんだ。」
「というか織斑先生が辞退してくれって言って来たのよ。」
あのあと千冬が二人に一年であの実力では話しにならないということで代表を辞退してくれと頼まれ辞退したのだ。
「まあ変わりに鍛えてやって欲しいといわれたから。」
「本当ですか!?」
セシリアの目が輝く。
ロックオンに鍛えてもらえば自身の目標に到達出来るかも知れないと。
こうしてクラス代表はセシリアに決まった。
ロックオンの部屋
放課後、簪はロックオンとの約束通り本音を連れて部屋に来ていた。
簪はドアをノック。
ドアが開き中からロックオンが現れる。
「いらっしゃい。のほほんもね。」
「招待ありがとう~。ストりゃん~。」
ロックオンは部屋に上げ、ドアの前に外出の札をかけ後に鍵をかける。
部屋に入り、クローゼットを開く。
「何これ・・?」
「クローゼットが光ってる~。」
「さぁ行くわよ。」
驚いている二人を置いてロックオンはクローゼットの奥に入り込む。
我に帰った二人も後に続く。
光の道を暫く歩くとドアがあった。
ラビットハッチ
ドアが開く音が聞こえ、一夏とティアナが振り向く。
「あ、いらっしゃい♪待ってたよ♪」
「ようこそ、月面基地・ラビットハッチへ。」
二人は笑顔で簪と本音を出迎える。
簪と本音は今いる場所が月面と聞き驚く。
「ええ~!?」
「ここって・・月なの・・?」
「うん、ほらあれ。」
ティアナの指差した方向に二人はそこを見ると窓越しに映る地球があった。
「どうして・・?」
「まあ、後で説明するわ。あたしが簪を呼んだのは・・。」
はたしてロックオンは何の用で簪を呼んだのか?
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ISの戦闘は難しかった・・。