第15話『ズレていった時間軸と修正』
~駅前~
マスターの家から直行でここに来た。
まだ来てないみたいです。
なら、やる事は一つと笑みを浮かべて魔法陣を展開しようとした時、
景色が灰色に変わった。全ての人が止まっている。
「ふう……」
僕もどきが帰ってきた。
何かすごく重そうな表情だ。
「ほらよ」
盾と鞘を渡してきた。
僕は盾を圧縮させてポケットの中に入れる。
ポケットの中から圧縮していた剣を取り出し解除した。
「え~と、こうやってやると」
試しに剣を鞘に収めるが、何もなかった。
周りがシーンと静かになる。
静かと言っても景色が灰色で人が止まっているのだから当たり前。
「何も起きないな」
「おい、微かだけど光ってるぞ」
僕もどきが気付いて僕にそう言ってきた。
僕は言われた通りに見ると鞘が光っていた。
「ん?」
光っている鞘から剣を引き抜き、真っ直ぐ天に向ける。
向けた瞬間、強大な魔力が周りに広がる。
「滅茶苦茶な魔力があるな」
「僕もどきでもわかるんですね。推定でも星の一つや二つが消せるね」
「そんな危険な物を集めさせたのか!?」
「アヴァロンに書いてある武器は全部危険レベルだけど」
アヴァロンに記載していたのは世界を切り裂くとか色々な表現で書かれていた。
どれぐらい前の書なのか僕には知らないが、昔の魔法は強かったらしい。
顎に手を添えて何か唸っていた僕に僕もどきが別の武器について聞いてくる。
「盾はどんな効果があるんだ」
「全ての概念を反射及び吸収するけど、僕でも数分は無防備になる」
「じゃあ、意味がないな」
「そこで明日菜さんと木乃香さんとマスターの出番です」
隙だらけになるから絶対に仲間が必要だ。
ネギでもこの盾だけはどうしようもないレベル。
例えば、ラカンさんの全力攻撃をこれで防ぐとする。
反射は無防備がないけど、吸収は反動による無防備になる可能性がある。
「面倒な反動だな」
「鎖は?」
「あれは地球上にはないぞ」
「魔法世界って事?」
「鎖だけはやめた方が良いかもしれない」
嫌な予感がしたからだと言葉を続けていた。
地球上に無いって事は魔法世界まで意味がないって事か?
それとも、僕が手に入れるのが駄目なのか?
それは例え、僕の複製だからと言ってもわからない。
とりあえず、現状の状況を僕もどきにも伝える。
「明日菜さんと木乃香さんをマスターの弟子にさせるのは成功しました」
「計画は順調なんだな」
「うん」
確かに計画は順調だ。
例え、のどかさんと夕映さんにバレても誤差が無い。
計画の奥が深いと言うほどだ。
目の前の人物が、僕もどきが真剣な表情で聞いてきた。
「最後に一つだけ聞きたい事がある」
「僕もどきが……何?」
「お前、弱くなってないか?」
その言葉に目を見開いた。
僕もどきにさえ、気付かれてる。
そう、今の僕はここに来る前の魔力と今の魔力を今更気付いた。
完全に気付いたのは闇の魔法を使った事を僕は正直に話す。
「やっぱな……お前の闇の魔法は周辺にあるエネルギーを全て掌握させてしまうという世界災害クラスの危険能力だ。
それなのに、それが起こらないどころか制御が危険状態か」
そう言ってから、僕の全てを把握したと頷く。
僕もどきも僕だから当然か……と負けた気分になる。
「闇の魔法いや、マギアエレベアは使わない方が良いのかなぁ」
「何も対策を取らずに使ったら、学園どころか日本の電力・生命力などのエネルギーが全て消えるぞ。俺はお前だから理解できる」
そう僕に忠告した後、僕もどきが転移魔法でこの場から消えた。
それと同時に景色が戻る。
景色に色が戻ると、人や電車などが動き出した。
「……」
「ネギ君!」
沈黙していると、私服姿の木乃香さんがようやく来た。
景色が灰色の時、時間すら停止しているからそんなに待っていない。
木乃香さんが僕の顔をじーっと見ていたが、
「それじゃあ、明日菜のプレゼント選びにいこか」
「はい」
木乃香さんが僕の手を握り歩いて行った。
でも、これって見た目が姉と弟が手を繋いでいるという雰囲気だった。
~街~
街に着くと、人混みが多かった。
歩きながら話していた。
「何処から行くんですか?」
「どこか行きたい所はないん?」
「ないですね」
「そうなんや……じゃあ、服見にいかへん?」
「はい」
木乃香さんが僕を引っ張っていった。
「この服なんてどうや?」
何か女の子らしい服を見せてきた。
服の詳細は省略しますが、とにかく木乃香さんにはお似合いです。
「似合いますね」
「ありがと……ってウチを褒めても仕方ないやん。嬉しいけど」
「じゃあ、これなんて」
次は微妙な物を出してきた。
木乃香さん、それは服じゃなくて着ぐるみっていうんですよ?
その着ぐるみはウサギだった。
「う~ん、似合いますけど別の意味でいらないです」
「え~、ウチは明日菜にこれ着させてみたいんやけど」
それだけなのか……
「じゃあ、これは?」
木乃香さんが持ってきたのはメイド服だった。
何でメイド服?
「これ!」
不思議に思っていると、次々に持ってきたのがレストランとかに行くと見る服だった。
ウェイトレスって明日菜さんが着る訳……
「何のために着るんですか?」
「明日菜なら似合うやろ?」
「普通の服にしません?」
「仕方ないな~、これはどうなん?」
スカートが短めのメイド服だった。
木乃香さんにとってそれが普通なんですか?
ボケてなのかわからないが、ちょっとだけどうでもよくなりこう言って釘を刺した。
「真面目に選ぶ気あるんですか? 無いのなら僕は帰りますが」
「っ! 冗談やから!」
「でも、服はやめておきましょうか。できるならアクセサリーなどに」
「明日菜なら喜ぶやろうな」
最初からそうすればいいものを……と突っ込み所があったが気にしない。
僕たちはアクセサリーが売ってる店に向かった。
「指輪まであるやん」
「イヤリングに腕輪、首輪ってくびわ!?」
「首輪ってこれ、なんやろな?」
宝石の様なものが付いてるだけのシンプルな首輪だった。
何の目的であるか僕にはよくわからなかった。
もちろん、意味は知ってるが僕にはそんな趣味もない。
「指輪にしますか」
「いいな~」
「僕は最初から決めてましたよ? もちろん、普通の指輪ではありませんが」
「ウチはそれでもほしいわ~」
「とりあえず、木乃香さんは買っとかないと」
「そうやな」
とりあえず、木乃香さんは明日菜さんへの誕生日プレゼントを購入しました。
その後、昼食のため、バーガーショップで食事をしていた。
「ずいぶんってあれ?」
「どうかしたんですか?」
「何か時間があやふやなんやけど」
「副作用ですよ」
「副作用?」
「たまに時間も戻ったり進んだりする副作用が起こったと思います」
「街を直した時に使ったアレ?」
「はい」
復元魔法の副作用がそう言う事が起こる。
その影響で時間の感覚が全て停電後の翌日が停電日になる。
でも、既に停電が起こった場合はもう起きない。
全ての人がそう認識しているから。
これに気付く者はほぼ存在しないから修正もする必要がない。
「じゃあ、本来上は明日菜さんの誕生日が今日なんや」
「エヴァンジェリンさんの家で1日経過してるんですよ」
「良くわからへんな~」
「じゃあ、説明しますね」
停電日が1とします。その後、エヴァンジェリンの家に行って話している間に2になる。
エヴァンジェリンの家から出た時に副作用で1になり、明日菜の誕生日が2になる。
1になっても普通の人は全て2になってるから1の出来事は起こらなくなる。
こんなふうに説明をしたら、木乃香さんはわかったように頷いた。
「停電の日に戻ったって事は日付自体も変わってるんやろ?」
「その辺は修正力がかかるからどうとでもなっているみたいです」
復元魔法の第2修正は世界を元に使ってるから副作用も世界クラスで起こる。
副作用が起こった場合、無理矢理元通りにしようとしてるから感覚がおかしくなる。
感覚がややこしくなっているのは基本的に使用者であるネギ一人だ。
「僕でもこの原理は理解できないんですけどね」
例え、1000年生きていても世界の事なんてわかっていない。
分かっているとすれば、並行世界や異世界に飛ぶ魔法解析ぐらい。
この時間に戻る前、ネギは並行世界や異世界に飛んでしまっている。
繰り返すごとに少しずつ理解して今に至る。
「魔法の領域を超えてるんやな~」
「そうですね。 ……それより、これからどうします?」
「ネギ君は明日菜のプレゼントを作るんやろ?」
「ええ、その前にエヴァンジェリンさんの家に行く必要がありますが」
「何でなん?」
首を傾げてから、わからないと表情に出ている木乃香さん
どうしてエヴァンジェリンなのか普通なら疑問になる。
ここで忘れてはいけない。
エヴァンジェリンはマジックアイテムを大量に持っている事を。
「材料を持ってるのはエヴァンジェリンさんだけなんです。マジックアイテムを少し貰おうと思いまして」
「なるほど~」
「僕は食べ終わったら行きます」
「ウチも付いてく」
僕と木乃香さんは食事を終えてから、マスターの家に向かった。
~エヴァンジェリンの家(今後も同じ)~
マスターの家に入ったら、いきなりマスターが僕を持ち上げてこう言ってきた。
「一体これはどうなってるんだ!?」
「マスター、落ち着いてください」
「落ち着けるか!!」
茶々丸さんが手伝ってくれたおかげで、
僕はマスターの捕縛から解かれた。
「復元魔法の副作用です。アレは世界を、自然を元にしてますから時間が」
僕は木乃香さんにした説明をマスターに同じように説明した。
マスターは一旦、頭を抱えたが呆れたような表情になる。
明日菜とのどかと夕映は既にいないと茶々丸さんから聞いた後、
邪魔だ!という視線で僕を見る。
「それより、何しに来た」
「エヴァンジェリンさんにマジックアイテムを貰おうと思いまして」
「どんなのがほしいんだ?」
「指輪に付けられる宝石など」
それを聞いたマスターは手を広げて顎に添える。
「ああ、防壁が発動する守りの宝石がどっかにあったな」
「それをくれませんか?」
「タダでか?」
「じゃあ、見せてください」
「タダでか?」
「見せるぐらいならいいじゃないですか」
「複製するつもりだろ?」
水晶の時、見られてるんだっけ?
その事を思い出した僕はだるい気分になった。
見せるぐらいいいじゃないか。
仕方がない。マスターは一体どうやったら見せてくれるか探そう。
「何が希望なんですか?」
「ぼうやの血だ」
「ネギ君の血!?」
それを聞いた木乃香さんが僕を守るようにギューっと抱きしめる。
何か柔らかい物が当たっている。
男としての理性が警報を鳴らしていた。
10歳の体に慣れたせいで1000歳の頃の体組織が働き始めている。
そのせいか、欲が強くなっている。
それと闘いながらもマスターに言う。
「別に……構いませんよ……でも、木乃香さん離してもらえませんか?」
「あ、ゴメンな~、ネギ君」
そう言って離した木乃香さんはマスターを警戒する様な表情で見ていた。
そんなに警戒しなくてもいいのに。と僕が言っても無駄だろう。
「そういえば、こんなのがあったな」
1枚の紙を僕に渡してきた。
何だろうと思い受け取って顔をヒクヒクと痙攣した。
「修学旅行通知? 場所は京都、明後日!?」
「修学旅行って明後日なん?」
「ここに書いてある日で言うとそうですね」
「明日、準備の買い物行かな!」
「僕はもういいですよ……とりあえず、エヴァンジェリンさん、血を」
「ああ」
血を提供したら、マスターが奥の部屋に行き30分後、戻ってきて僕にその宝石を投げた。
宝石を受け取った僕はマスターにお礼を言って木乃香さんと寮の部屋に戻った。
戻ったと言っても正確にはネギと木乃香が影のゲートで部屋に戻った、だ。
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