No.391819

ISジャーナリスト戦記 プロローグ2

紅雷さん

コツは掴んだ。

一話ごと別に考えればいいわけね。

2012-03-15 14:50:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3162   閲覧ユーザー数:3027

 

「・・・で、ここは何処なんだ?」

 

意識を取り戻した俺はもしや奇跡的に助かって病院に運ばれたとか起き抜けに想像してみたわけだが、予想に反して周りには何もなかった。病院に入院したら大抵はセットで付いてくる点滴も存在しない。そもそもベットすらもない完全に床に寝ている状態であった。ついでに言えば周りの景色はまさに驚きの白さ、洗濯機でもここまで白く出来ないんじゃないかと思わざるをえない。

 

「というか、出血が止まっている・・・いや、痕跡すらないってどういう事だ」

 

結構それなりに高い値段で買ったジーンズを半分血で染め上げてしまったはずだというのに、元の青い色のままで何故か瞳には映り込んでいたのだ。銃弾が貫通した痛みすらなく、ましてや穴すらない。

 

「不思議なことが起こって再生したとか、んなことはないよな」

 

あいにく自分は肉体再生だの時間操作の能力なんて持ち合わせてはいないしキングストーンを埋め込まれた覚えすらない。まぁ、知らないうちに埋め込まれたのかもしれないが(ありえないって)

 

にしても辺りは先が見えないほど真っ白く、最果ての地なんて存在しないのではと思わせるようにまったく何にもなかった。死んだのなら(というか死んだの確定だろう)三途の川ぐらい見せてくれたっていいのに。

 

 

『あ、じゃあ見せましょうか?』

 

「!?」

 

 

口にすら出してないただの巫山戯た考えに対して突然答えるように言葉が走った。しかし、どこぞのNT連中とは違い空間認識能力など自分は持ち合わせてはいない為、適当に振り向いても姿を捉えることができない。仮面を被ったかの赤い彗星のセリフとは真逆の『見えない、私には敵が見えない!!』状態である。

 

「誰だ、何処にいる・・・?」

 

『ここですよ』

 

再び、女性らしき声が後ろから聞こえた。今度こそその面を拝ませてもらおうと・・・もとい、姿を見せていただこうと思い体を捻らせるとそこには――――やっぱり誰もいなかった。

 

「(・・・不味い、遊ばれている上に翻弄されている。今まで出会ってきた人達よりも手強い相手だ)」

 

何で意味不明な場所で意味不明な心理バトルを繰り広げなくてはならないのか疑問が尽きないが、魔女に閉じ込められてチェス盤を引っくり返すような推理バトルをするよりは遥かにマシと言えよう。冷静に頭を研ぎ澄ませハートのキングよろしく明鏡止水になると(金色にはなっていない)俺は・・・背負っていたと思い込んでいた|バックらしき何か(・・・・・・・・)を躊躇いなく右手で掴み上げると槍投げのごとく勢いでそれ(・・)を―――

 

 

「そぉい!!」

 

 

投げた。

 

 

『にゃにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?』

 

 

奇声ともとれる悲鳴と共に小柄な姿をした女性が空中を飛んで行き、遥か彼方へと消えていく。その光景を最後まで見届けると彼女が飛んでいった方向とは真逆に俺は駆けていった。これが後に鬼ごっこならぬ『神ごっこ』と呼ばれる遊びの始まりの瞬間であった。

 

 

 

 

~主人公逃走中~

 

 

 

 

 

 

 

まあ、結局のところ捕まってしまった(否、本当は涙ながら追ってくるのがいたたまれなくて捕まってあげたわけなのだが)。今現在の状況はというと何処からか持ってきた箱の上に立って必死に背を同じにして対等な目線であろう神を名乗る女性(外見:少女)と目を合わせて説明を聞いている。

 

 

『―――要するにまとめると、

 

1.貴方の友人が死守した生物兵器に関する情報が無事に暴露されたおかげで世界がバイオハザード的世紀末世界にならずに済んだ。

 

2.本来、流れ弾など当たらずに無事に生還できたはずだったのに手違いで死なせてしまった。

 

3.このまま来世まで待ってもらうのはこちらとしても恥ずかしい限り。ならば、特典つけて転生してもらえと偉い人は言った。

 

4.都合により転生してもらう世界は特定され、なおかつ役割が与えられてしまうけどOK?

 

 

といった感じなのですが・・・解りましたか?』

 

 

「と~ってもわかりやすいですから、とりあえずまず涙をふいて下さい。見てて本当に辛いです」

 

泣いてしまった原因である俺はハンカチを取り出し差し出す。素直に受け取った神様は涙をふいた後にお約束のように鼻をチーンとかんだ。・・・妙に和む。

 

「転生するとか特典とか云々はわかりましたが、最後の特定の世界と役割ってどういうことですか?」

 

『それはちゃんと説明します。・・・早い話、最近ある世界が崩壊する件が多いんですよ』

 

何でも自分の他に転生した自称オリ主らのせいで、最低なハーレムが築かれたり、多くの人の運命が変わってしまったりした挙句に戦争が勃発したりとかなりヤバイことになっているらしい。すべての転生者がそんな馬鹿げたことをしているわけではないが、世界が崩壊する原因となる根源がそもそも消し去られていないために崩壊するケースが後を絶たないという。要はあれだ、どのルートを進んでも同じ結末に行き着いてしまうクソゲー状態であるのだ。

 

「なるほど、俺が転生予定の世界と似たような世界では自分の目的というか欲望ばかりにとらわれて世界をどうこうしようとする輩がいなかったというわけですね」

 

ところで、その転生予定の世界はどういう世界なのだろうか。オリ主だの言っているもんだから、創作の物語へ介入みたいなものだとは思っているのだけれど。

 

『IS・・・<インフィニット・ストラトス>という世界なんですけれども、ご存知でしょうか?』

 

・・・知っているには知っている。日本に帰ってきたときに友人に見せてもらったラノベだったような気がする。確か、女にしか乗れないはずのパワードスーツに乗れちゃった男の物語だったっけか?序盤ぐらいしか読んでないからあんまし展開がよくわからないが、変な世界観だったのは覚えている。

 

「女尊男卑の世界だってことは知っているよ。専用の学び舎があるって話だが・・・・・・」

 

『はい、その認識であっています。大体の転生者はその学び舎に介入するわけなんですが、先ほど言ったとおりの展開にのちのちなりまして・・・』

 

「世界が崩壊するってわけか・・・」

 

簡潔に述べれば目の前の神様(そこそこの階級)は自分にその世界を崩壊するのを食い止めて欲しいそうだ。一つでも安定して滅びを迎えない世界がないと世界のバランスというものが崩れてしまうという。細かいことはよくわからないが、粗悪の根源を叩いて世界を正してくれっていうのは理解できた。

 

しかし、そうなると従来の転生者が行なってきた方法では無理がありそうだ。学業と共に世界をどうにかするなど困難この上ない。せめて自由に動ける立場であればいいのだが・・・・・・

 

「(あっ、待てよ・・・生前のようにジャーナリストとして行動するのはどうだろうか?)」

 

自分はかつて縁のあったとあるお金持ちのお嬢様に雇われつつ、ジャーナリストとして行動していた。後ろ盾があったからこそ通常のジャーナリストには成し得ない行動を取ることが出来たこともある。ならば、ISの世界で反ISの考えを持つ有力な存在に接触しジャーナリストとして行動すれば良いのではないだろうか。そうとなると必要なのは人脈を築く能力だ。他にも過酷な環境で生き抜く為の力が欲しいな。

 

『人脈を築く力ですか・・・言い換えるなら≪人脈を築く程度の能力≫とでも言った方がいいですね』

 

「東方の『~程度の能力』か。それならお誂え向きな力が結構あるし、ジャーナリストとして行動しやすいな」

 

下手に殺人貴的力やリリカルな力とかもらっても活用できる場はないし意味はない。ならば、知っている作品で活用の機会のあるモノにすればいいのだ。

 

「なら、さっき言った能力に付け加えて博麗霊夢の≪空を飛ぶ程度の能力≫と封獣ぬえの≪正体を判らなくする程度の能力≫、サニーミルクの≪光を屈折させる程度の能力≫と射命丸文の≪風を操る程度の能力≫が欲しいけど・・・大丈夫かな?」

 

『大丈夫ですよ、流石に≪境界を操る程度の能力≫などの強すぎる力でなければOKです』

 

彼女が与えることができる特典には制限があったそうな。流石に運命とか時とか操るのは憧れはするものの無理らしい。頼まなくてよかった。(無理言って泣かせたくはないし)

 

 

 

―――こうしてジャーナリストとして充分過ぎるほどの能力も貰った俺はお約束のように穴に落とされ、第二の人生を歩むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったわね、彼・・・」

 

「はい、貴女の言う『因子』を持つ彼は無事転生を果たしました」

 

男が穴に落ちて消えた場所からは全く別の穴が開き女性が顔を出して、神の少女に対し語りかける。

 

「彼が行く世界はもはや最後の希望とも言える灯火・・・真実を見抜く力を秘めた彼の物語は果たしてどう紡がれるか見ものね」

 

「・・・貴方が助けた『例の人物』もこの世界に向かったようですが・・・大丈夫でしょうか?」

 

「落とした先は同じく運命に抗う者の所だから大丈夫。まったくもって不思議な世界だけれども、賭けに出るのにはもってこいの舞台よ」

 

微笑んでいるようにも見える謎の女性の瞳は真剣そのものだ。扇子に隠れている口元は果たしてどうなっているのかはわからない。

 

 

 

 

一言二言言葉を交わした後で少女と女性はその場を後にし、再び何もない白い世界だけが残った。

 

 

 


 
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