No.390046

『改訂版』 真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第一部 其の八

雷起さん


大幅加筆+修正となっております。

お待たせしました。
貧乳党の決起大会ですw

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2012-03-11 06:55:15 投稿 / 全19ページ    総閲覧数:4936   閲覧ユーザー数:3949

『改訂版』 第一部 其の八

 

 

烏巣

【朱里turn】

 敵を破った私たちはそのまま烏巣に陣を張りました。

 この烏巣の戦いでは私と雛里ちゃんは同志風、同志稟ととても仲良くなりました。

 共に死線をくぐり抜け芽生えた友情に、私たちは真名を交換してその絆はより強固なものになったのです。

「風さん、稟さん。敵は大きいですけど、力を合わせれば必ず勝てます!同志桂花、それに孫呉にも同志となってくれる方の目星を付けてあります!これから同志をもっと増やしていきましょうっ!!」

 

(なあ風よぅ~。)

(なんですかぁ宝譿?)

(この嬢ちゃんたち人格変わってね?)

(まぁお気持ちは解らないでもないのでぇ、ここは生暖かく見守っていきましょう~。)

 

【緑一刀turn】

 早馬での連絡で移動目標を烏巣に変え、俺の率いる劉備軍の対袁術部隊と孫呉軍は昼下がりには到着することができた。

 しかも西から移動してきた華琳たちと同時に到着。

 出来過ぎじゃないか?

 それはともかく、洛陽で別れて以来の同盟集結だ。

 それに誰( はばか)る事無く、堂々と集まれるってのは気分がいいよな。

 俺達は烏巣の城の大広間で早速お互いの報告と明日に向けての軍議を開始する事にした。

 

「みんなお疲れ様!早速俺から報告させてもらうよ。俺達の対袁術部隊は損害無し、董卓軍の流浪していた部隊を集結させることも出来て現在三万だ。」

 俺に続いて冥琳が報告。

「我々孫呉遠征軍は鈴々と恋に恐れをなして壊走中の袁術軍と許昌南方百余里で接敵。これを撃破。しかし、袁術と張勲は雪蓮の恩赦により斬首をせず放逐とした。もしかしたら今後そちらに現れて迷惑を掛けるかもしれないので先に陳謝しておこう。発見したら我ら孫呉に遠慮せず、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。後、我ら孫呉遠征軍の損害は軽微。出発時と変わらず三万だ。」

 次に朱里が報告する。

「私たち劉備軍の対袁紹部隊は今日、ここ烏巣奪還戦からの参戦ですが、こちらも損害は軽微。敵軍の駐屯数が五千と少なかったのが幸いしました。ただ敵兵もすぐに逃げ出したので数はそれほど減っていないと思われます。こちらの数は三万です。」

 次はいよいよこの戦の本隊である華琳の所か。

 おいおい、華琳本人が報告するのか?てっきり桂花がするものと思ってたのに。

「我が軍は昨日官渡、陳留、定陶で袁紹軍先陣と接敵。紫一刀の策で張三姉妹を使い調略、その殆どをこちらに寝返らせることができたわ。その数は三万よ。」

「さ、三万っ!?」

 思わず大声出ちまったよ!

「すまないがその策がどの様な物だったか説明して貰えるだろうか?こちらには成り立て軍師が居るので少し勉強させてやりたいのだが。」

 冥琳が横に座らせた亞莎を指した。

 俺も昨日知り合ったばかりだけど・・・・・あらら、袖で顔隠しちゃったよ。

「詳細は書簡で渡すけど・・・そうね、折角だから緑と赤の一刀に謎解きしてもらおうかしら?」

「「え?俺らに!?」」

「最初に与えられる情報は青州♪」

 青州?青州ねぇ・・・・・張三姉妹・・・黄巾党・・・そういえば朱里が青州には黄巾党の残党が居て袁紹がそれを吸収するとかいってたな・・・。

「「成程そういう事か!」」

「もう解ったの!?」

 お、華琳を驚かす事が出来たみたいだな。

「徐州は青州の直ぐ南だから情報は掴んでたさ。むしろ赤の方がその情報を掴んでたのが驚いきだな。」

「孫呉には優秀な諜報家がいるんでね、俺も黄巾の残党の事は聞いてた。」

 思春もそうだけど明命も相当な隠密だって言ってたもんな。

 ちらりと明命を見ると目が合った・・・・・こっちもあたふたし始めたぞ?

「それじゃあ俺の考え。兗州以外の張三姉妹の熱狂的な支持者・・・というか聴衆?まあ舞台を見に来てた連中は張三姉妹が曹操軍に殺されたと思ってるから、華琳を攻めると言われて簡単に袁紹の味方に付いたんだろう。でも張三姉妹が実は生きていて実際に歌と舞台を見せればこちらに寝返らせるのは簡単だな。」

「あのぉ緑一刀さん、それってそんなに簡単な事なんですかぁ?私には今ひとつ解らないんですよねぇ・・・」

 穏はどんな舞台なのか知らないから理解できないんだろうな。

 これは赤がフォローしてくれるようだ。

「それは俺が説明するよ。実は俺と緑は紫からどんな感じの舞台で、どういう舞台装置で歌を遠くまで聴かせるのか、虎牢関を出発する前に詳細を聞いてたんだ。俺たちは天の国で似たような物を知ってるから直ぐ理解できたけど、多分みんなは張三姉妹の舞台を見ないと理解できないと思う。」

「そうね・・・あの舞台は実際に見るまで私も理解できなかったわ。」

 華琳は見たことあるんだ・・・・・さぞ面食らったんだろうなあ。

「ふむ・・・これではあまり勉強にはならないな。」

 冥琳は少し困った顔をしている。

「明日の戦でも張三姉妹には歌って貰うから、その時に見られるわよ。取敢えず今の話を頭に入れておけば納得出来るでしょう。」

 張三姉妹の舞台を見たことがない面々は首をひねり、知っている面々はウンウン頷いている。

 おれも実際には見てないから、実は明日の舞台が楽しみではあるのだが。

「さて、報告を続けましょう。」

 その後の華琳の話は愛紗が文醜を退けた事。

 そして今日の戦闘で新兵器の弩砲が効果を発揮した事等だ。

「では以上を踏まえた上で明日の白馬攻めをどうするか決めましょう。」

 

「華琳様っ!そのことでお願いしたいことが御座いますっ!!」

 

 へ?桂花?

「この度の白馬攻め、私と朱里、雛里で作戦の立案をさせていただけないでしょうか!?」

「ど、どうしたの?一体・・・」

 華琳もいきなりの事に驚いてるみたいだ・・・。

「華琳さんっ!私達からもお願いします!あと、補佐に郭嘉さん、程昱さん。それから孫呉から孫尚香ちゃんと呂蒙ちゃんも!」

 おぉ!朱里が噛まずに華琳を相手にしている!!

「・・・・・・だそうだけど。どうしましょうか?」

「・・・いや、まあ我々は援軍として参加しているのだから、総大将である華琳が決めて良いと思うぞ。小蓮様と亞莎には良い勉強になるだろうし・・・・どうだ雪蓮?」

「私は構わないわよ。だけど私を思いっきり戦える所に配置して頂戴ね♪袁術との戦では暴れ足りなかったから♪」

 赤の話では単騎で敵中突破して袁術を追い詰めたって聞いたけど、それでもまだ足りないんだ・・・。

「それでは華琳様、私たちは別室で話し合いをしてきますので少々お待ち下さい。」

 桂花が礼をして下がろうとする。

「ちょっと待ちなさい桂花。」

「な、何でしょう華琳様。」

 ん?なんか桂花の態度が引っかかるな・・・。

「まだ郭嘉と程昱に正式な軍師への採用を伝えていないでしょう。」

 郭嘉と程昱はこの言葉を聞いて振り返った。

「それでは・・・・・私たちは・・・」

 特に郭嘉は喜びに震えているみたいだ・・・・・余程華琳の下で働きたかったんだな。

「今後は私の真名、華琳を呼ぶことを許します。しっかり励んで頂戴♪」

「は、はいっ!私の真名は稟と申しますっ!!か、華琳様っ!!」

「私の真名は風ともうしますぅ。よろしくお願いしますなのですよ、華琳さま。」

「よろしくね。稟、風♪」

「・・・・・あぁ・・・真名を呼んで頂いた・・・・・しかも真名を呼ばせて頂けるなんて・・・・・・・」

「いかん稟っ!!風!稟を止めろっ!!」

 え?星があんなに慌てるって・・・・・・。

「これはもう間に合いませんねぇ。」

 

「か、華琳さまぁ・・・」

 

 郭嘉が大量の鼻血を噴いてぶっ倒れた・・・・・・って!保けてる場合じゃないっ!!

「か、華佗を!誰か早く呼んできてくれっ!!」

 数人の伝令兵が慌ててすっ飛んでいった。

「申し訳ありません、主。稟の体質を失念しておりました。」

「体質?何か持病でもあるのか・・・・・?」

「いえ~、稟ちゃんは想像力が豊かなだけで・・・」

 は?想像力?

「稟には以前から百合百合しい処がございましてな、しかも理想が高い。旅をしていた頃にその手の話でからかっていたら今のように・・・」

「・・・もしかして華琳を相手に妄想したら、興奮して鼻血噴いたってコト?」

「まあ、有態に言えば。」

 今のを聞いていた紫が何か納得している。

「星が昨日言ってた、特に郭嘉が華琳に合うってこういう事だったのか。」

 

この後俺達は華佗から鼻血を止めるツボを教えてもらった・・・・・。

 

【桂花turn】

「ちょっとあなた大丈夫なの・・・・・?」

「こしんはいをおかけひまひた・・・。」

 鼻に綿を詰めてフガフガしてるけど・・・まあ、華琳様の御威光に触れて興奮の挙句ではしょうがないわね。

 あの全身精液男もこれくらい華琳様を敬えないモノかしら?

「では改めて。・・・・・・ここに集まってもらった者に問います。」

 私は新たに迎えた四人の同志に語りかけた。

「巨乳からの迫害を受けたことは無い?」

 

(・・・・・あのぉ・・・小蓮様、桂花さんは何を言っているのでしょう・・・・?)

(シッ!黙って亞莎!これは重要な話だわ・・・・)

(えええ!?)

 

「巨乳からの憐みの眼差しや、乳が邪魔だ等という我々の気持ちを考えない無遠慮な発言!さらに巨乳好きからまるで人としてさえ(かんが )みられない事等・・・・・経験がないかしら!?」

「分かるわっ!!お姉ちゃん達や冥琳、穏、それに祭も!これ見よがしにオッパイを振りかざしてっ!!」

 

(みなさんそんなことしてませんよぉ・・・・・)

 

「そうでしょう、同志小蓮。あなたの環境には同情するわ・・・それに同志亞莎、あなたの涙が全てを語っているわ・・・苦しかったでしょう・・・」

 

(私が苦しいのは今この状況ですぅー!なんで私はここに居るんですかぁ!?)

 

「そんなあなた達だから聞いて欲しい事があるのよ。ここに居る同志朱里と同志雛里は『馬鹿巨乳』の見本、袁紹に世にも恐ろしい・・・・・決して許されない侮辱を言われたのよ!」

「・・・それは・・・・・聞いてもいいのかしら・・・?」

「ええ・・・・・むしろ聞いて欲しい・・・・・『洗濯板とまな板』と・・・」

「ひ、酷いっ!!」

「あなた達なら、この怒りと悲しみを共有できるでしょう!力を合わせ悪の巨乳を誅滅しましょうっ!!」

 

(なあ風、稟、この三文芝居はいつまで続くんだ?)

(私は少なからず気持ちが解るので・・・・・)

(まあまあ宝譿、さっきも生暖かく見守ると言ったじゃないですかぁ。このままどこまで行くのか見届けてみようではありませんかぁ。)

(そうかぁ?それじゃあオレがもう少し面白く盛り上げてやるぜ!)

 

「なあなあ、他にも胸の小さい奴らは居るのに、なんで声掛けねえんだ?」

「に、人形が喋った!?」

「同志亞莎、そんなことは些細な問題よ!重要なのは何故同志に迎えないかでしょう!?」

「そうよ亞莎、話の腰を折っちゃダメじゃない。で、さっき見てたけど、曹操軍にも劉備軍にもまだまだ同志になれそうな人が居たと思うけど?」

「我軍では季衣と流琉辺りだけど、季衣は脳筋巨乳の春蘭を慕ってるからダメね。流琉も秋蘭を慕ってるし、何より巨乳人に対する敵愾心が無さ過ぎるわ!」

「地和さんはどうでしょう?私はあの人から何か同志の匂いを感じるのですが・・・?」

 同志朱里が新たな人材を挙げてくれた。

地和か・・・・・確かに彼女には感じるわ。地和が仲間になれば宣伝力を上げることもできそうだし・・・。

「分かったわ。地和には後で接触してみましょう。」

「はい♪それから我軍でも鈴々ちゃんもオッパイを大きくしたいとは思っているんですが、やはり巨乳人に対する敵愾心が無いですねぇ・・・月さんと詠さん、ねねちゃんに至ってはあまり気にしてもいないみたいですし・・・・・・」

「なんてことかしら!そういう態度が巨乳人を付け上がらせるというのに!!嘆かわしいわ・・・・・」

「そういう事なら孫呉には打って付の人材がいるわ♪」

「同志小蓮、それはどなたですか?」

 同志雛里が聞き返す。

「私も孫呉の中で我々と同じ匂いを感じる者は思い至らないわ、あなたたち以外。」

 

(ですから私は違いますっ!!)

 

「明命よ!あの子普段は表に出さないけど、実は結構巨乳人に恨みを持っているわね!ねえ、亞莎♪」

「え?えぇ・・・そうですね・・・」

「成程・・・隠密貧乳というわけね。実行部隊には打って付けだわ。」

 同志稟が挙手をする。

「先程名前の挙がった方達ですが、同志朱里と同志雛里に対する袁紹の暴言を話せば今回の作戦では仲間になって貰えるのではないでしょうか?」

「確かに・・・・・今後彼女たちを悔い改めてさせて我々に賛同させるためにも、ここは協力しておく方が得策か・・・」

「あ、あのう・・・・・・・」

「何?同志亞莎?」

「あ、明日の戦は決戦ですよね・・・・・そ、その・・・巨乳の方達にも参戦してもらわなければならないのでは・・・・・」

「それは当然参戦してもらうわよ・・・・・我々の手駒としてね。」

「て、手駒っ!?」

「悪の巨乳に付き従う巨乳原理主義者共をこちらの巨乳人で殲滅してやるのよ!巨乳人に討たれるなら奴らも本望でしょ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 ふふ、この策の素晴らしさに言葉を失っているわね。

「では、明日の作戦の具体的な話をしましょう!」

 

白馬

【エクストラturn】

一夜明け、遂に同盟軍と袁紹軍の決戦がここ、白馬の地で行われようとしていた。

 袁紹軍は昨日の戦闘で更に数を減らして現在実働十三万。

 対する同盟軍は官渡、陳留、定陶に五千ずつ守りとして残し、数え役満☆シスターズの観客三万を引いても十五万五千。

「この状況で私達が敗けたら私は自分で自分の首を刎るわよ。」

 華琳は中軍で呟いた。

 それを聞いた蓮華が相槌をうつ。

「そうだな、兵も武将も軍師もこちらが圧倒的、士気もあがっている。地の利もここが華琳の領土だから当然ある。雨の降る気配も無いし風もやや追い風で天の時も悪くはない。ここに至っては勝つか敗けるかではなく、どの様に勝つかだな。」

「それって、どれだけ損害を出さずにするかって事ですか?」

 桃香が二人の話に混ざった。

「そうね、麗羽達は逃げるのに船を使わなければならない、云わば背水之陣よ。下手に追い詰めれば逆撃でこちらが大損害を被る事になる。それとは別に、いかに風評を得る勝ち方をするかというのも重要よ。」

「その風評如何で今後の同盟の運命が決まると言っても過言ではないだろう。」

「でも今回の作戦は桂花さんを中心に朱里ちゃん、雛里ちゃん、亞莎ちゃん、稟さん、風ちゃん、それに詠ちゃん、ねねちゃんも一緒になって考えたんだから、当然その辺も心配無いと思いますよ。」

 桃香はニコニコと言うが、華琳の表情は何故か晴れない。

「まあ私も頭ではそう考えているのだけど・・・・・何故か引っかかるのよねぇ・・・」

「私も冥琳と穏が今回の作戦立案に参加してないのが若干の不安材料だけど・・・けどこれは私個人の感情が原因だと思うから気にしないで。」

 蓮華は自軍の筆頭軍師が作戦立案に参加していない事を不満に思っている訳ではない。

 しかし今の発言はそうとも取れる言い方だったのに気付き、苦笑と共に説明したのだ。

 

 現在の同盟軍の配置を説明するとこうである。

 左翼に孫呉軍、メンバーは冥琳、祭、思春、穏である。

 右翼に劉備軍、こちらは愛紗、星、白蓮。

 そして先陣には雪蓮、恋、鈴々、春蘭、季衣、流琉、小蓮、明命、そして作戦立案をした軍師たち。

 中軍には華琳、桃香、蓮華、と凪、沙和、真桜。

 後衛に月と秋蘭。

 遊撃隊として霞。

 さて、三人の一刀が何処に居るかというと・・・。

 

【緑一刀turn】

『みんなーっ!今日も張り切っていっちゃうよーーーっ!!』

『ホアアアアアアアアアアアアア!!』

 地和の声に観客が雄叫びを上げる。

 これは想像以上だぞ!

 スモークに七色の電飾まであるのかよ・・・・・電気じゃなく妖術らしいけど。

 便利だな妖術って。

 夜のステージだったらレーザーやサイリウムまで出てきそうだな・・・・・。

『でも今日は歌の前にみんなに紹介したい人たちがいるのーっ!!』

『ホアアアアアアアアアアアアアアア!』

 お前ら何も考えずに叫んでるだろ!

『天の御遣いっ!その名も北郷一刀おおおぉ!!』

 言われて俺たちは前に出る。

 そう・・・・・俺たちは何故かステージの上(こんなところ )にいたのだ。

 今後の策の為と朱里に言われてやって来たけど・・・大丈夫なのか?

『ほあああああああああああああ!?』

 さすがに動揺したようだ。

『今回の舞台はこの三人の天の御遣いのおかげで実現したんだよーっ!』

 いや、これは紫一人がやったことだろ!俺と赤は何もしてないぞ・・・。

『ホアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 なんかもう否定できそうにない状況に・・・・・・。

『あっりがとう一刀っ!!』

 げっ!地和が紫に抱きついた!ここでそれはヤバイって!!

『ちぃちゃんズル~イ!お姉ちゃんもぉっ!!』

『ね、姉さんたちそれはっ!!』

 人和が止める間もなく天和が俺と赤に抱きついた・・・・・・。

 

『北郷氏ねっ!!!』

『モゲヤガレッ!!!』

『爆発しろっ!!!』

 

「一刀さんたちっ!早く舞台の奥にっ!!」

 人和が二人を引きはがしてくれた隙に俺たちは舞台の奥に逃げ込んだ!

『あははっ♪みんなごめんねー!この舞台でみんなに会えたのが嬉しくってついハシャイじゃった♪』

 

「ハァ・・・ハァ・・・い、今までで一番恐ろしい殺気だった・・・」

「・・・・・あぁ・・・・・ちぃのヤツ・・・勘弁してくれよ・・・」

「・・・俺たち・・・ここから生きて出られるのか?・・・・・・」

 ステージと観客達の様子は戻っていたが・・・・・俺たちここに来た事に一体どんな意味が有ったんだ?

「ご主人さまぁあん♪お迎えに来たわよおぉん♪」

「そろそろ戦が始まるぞ、御主人様よ。」

 貂蝉と卑弥呼来てくれたおかげで、なんとか本来の配置場所へ移動できそうだ・・・。

 桂花の指示で俺たちが配置されたのは救護班だったのだ。

 

『舞台の前にもう一つっ!今日の戦を指揮する貧乳党代表!荀彧文若さんから口上がありまーーーすっ!!さあ!張り切ってどうぞーーーーっ♪♪』

 

「「「貧乳党っ!!??」」」

 桂花の奴そんなものを組織してたのかよ!?

 

【エクストラturn】

 地和の紹介を受け、桂花が先陣に用意された演説台に立った。

 

『私が貧乳党代表!荀文若であるっ!!』

 

 桂花の声は地和から借りた妖術マイクを通して戦場全域に轟いた。

「・・・・・・ね、ねえ、華琳・・・」

 蓮華は引つりながら華琳に顔だけ向けた。

「・・・と、取敢えず聞いてみましょう・・・・・」

「・・・・・そ、そうね・・・」

 桃香は笑顔を見せているが額に冷や汗を浮かべて沈黙していた。

 

『我ら貧乳党は貧乳の!貧乳による!貧乳と貧乳好きの為の組織であるっ!!』

 

 

 同盟軍各所から声援の雄叫びが上がった。

 特に貧乳党員が率いる部隊の多い先陣と董卓軍が多い後衛の声が大きかった。

「同盟軍って結構貧乳好きが多かったんだな・・・」

 赤一刀が移動途中に漏らした。

「孫呉は巨乳率高いもんな、うちは董卓軍が加わってから貧乳率が更に上がったからなぁ。」

 緑一刀もしみじみ頷いた。

「霞がこっちに来たからな。だけどうちも当主が華琳なのと、ちぃのファンが居るから結構な数だろうな。」

 紫一刀も妙な納得をしていた。

「あらぁん、ご主人さまたちったら。乙女にとってお胸の大きさは大問題なのよぉ。」

「うむ、有史以来の悩みと言っても過言ではないな。」

「俺たちは別にオッパイの大きさで差別する事はないぞ。大きいオッパイから小さいオッパイまでそれぞれに魅力があるんだから。」

「ああぁあん、ご主人さまったらそんな事言いながらわたしのお胸をジロジロべろべろじっくりタップリねぶる様に見られちゃったら恥ずかしいわん♥」

「私のお胸もギラギラぺろぺろしっかりクッキリ焦げる様な視線を向けられては照れてしまうではないか♥」

「「「見てねぇえええよっっ!!!お前らのは大胸筋だっ!!!」」」

 

『この同盟軍においては、巨乳及び巨乳好きが我ら貧乳を貶める者は居ないと信じている!!』

 

「なんか昨日と言ってることが正反対じゃねえか?」

「まあまあ宝譿、これも策ですから黙って聞きましょう~。」

 

『しかしっ!!袁紹!!あなたは同志諸葛孔明と同志龐士元に対し許されざる暴言を浴びせかけたっ!!』

 

「なにを言ってるんですの?あの華琳さんの所のぺったん軍師は?」

「れ、麗羽さまっ!!今そんな事言っちゃ駄目ですってばっ!!」

 空気の読めない麗羽の発言を慌てて遮った斗詩。

 幸い貧乳党員には麗羽のような悪口専用デビルイヤーを持ち合わせる者がいなかった。

 

『我が愛する同志達よ、聞いて欲しい!!袁紹は事もあろうに二人に対して「洗濯板とまな板」と(のたま )ったのだっ!!なんたる侮辱!!なんたる愚弄!!諸君!こんな暴言を捨て置けるかっ!?』

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 怒りの咆哮が大地を揺るがす。

「はわわぁ・・・恥ずかしいよぅ・・・」

「あわわぁ・・・泣きたくなってきちゃったよ、朱里ちゃぁん・・・・」

「今は耐えるのよっ!朱里!雛里!シャオたちが付いているからねっ!!」

「お二人の敵はこの周幼平が必ず晴らして見せますっ!!」

 固く手を握り合い、誓いを新たにした貧乳党員達。

 

『袁本初!何か申し開きが在るならこの場で言ってみるがいい!!』

 

『全然覚えてませんわーっ!』

 

 戦場全体が完全に凍りつき、風の音だけが虚しく聞こえてきた・・・。

 

『き、聞いたか!?今の発言をっ!!我々貧乳の気持ちをまるで考えない無責任な発言だったと袁紹は認めたのだっ!!』

 

「ねぇ斗詩さん、猪々子さん。わたくしそんな事言いましたっけ?」

「・・・・・・本当に覚えてないんですね・・・・・」

「落ち込むなよ斗詩。姫が何も考えなしで喋るのなんていつものことじゃんか♪」

「こうして人って知らない所で恨みを買っていくんだね・・・・」

 涙を流して一人嘆く斗詩だった。

 

『この怒りを力に変え、立てよ同志!!悪の巨乳人、袁紹に正義の鉄槌を振り下ろせっ!!』

 

 再び雄叫びが上がり同盟軍の兵達の士気は高揚していった。

 それとは逆に武将達には微妙な顔をした者たちが少なくない。

 当然巨乳組の人たちだ。

「な~んかやりづらくなっちゃったわねぇ・・・」

「そうか?私は別に気にならないが。」

 雪蓮の呟きに春蘭は不思議そうだ。

「袁紹は悪い奴だからぶちのめす!実に分かりやすいではないか♪」

「・・・・・こんな時だけあんたが羨ましいわ、春蘭・・・・・ま、暴れられる所に配置しろって言ったのは私だし・・・・・春蘭、どっちが多く敵をぶっ飛ばせるか勝負しない?」

「面白い!その勝負受けたっ!!」

 そこにねねが割り込んできた。

「その勝負!恋殿も参加致しますぞー!!」

「いいの?恋。」

「・・・・・・・うん。恋頑張る。」

「あー!鈴々も参加するのだーっ!!」

「なんだとー!ちびっこが参加するならボクもするーっ!!」

 鈴々と季衣も加わった。

「おお♪季衣もやる気充分だな♪流琉はどうする?」

「わ、私はここで軍師のみなさんをお守りしています・・・」

「シャオもここに居るわ・・・・・(雪蓮お姉ちゃんと一緒じゃシャオが相手する敵がいなくなっちゃうもん。)」

 ここで開戦のドラが鳴り渡った。

 

「それじゃあ勝負開始よっ!!」

 

 雪蓮の声に先陣が突撃を開始した。

「弓兵の皆さん!援護射撃開始です!!」

 朱里の号令で矢の応酬が始まった。

 が・・・。

 

「こらあああああっ!矢なんか射つなっ!!私がぶっ飛ばす敵が減るだろうがっ!!」

 

「はわわっ!!そんなぁ・・・」

 春蘭の怒鳴り声に同盟軍からの援護射撃が止まってしまう。

「もう無茶苦茶だわ・・・・・」

 詠は頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

 

 

「なんとまあ華琳殿に続き桂花も面白い口上であったな♪」

「星!面白がってる場合かっ!!私は何か肩身が狭くなった気がするぞ・・・」

 愛紗は自分の胸を抑えて赤くなっている。

「それだけ立派なモノを持っておるのだ。さぞや貧乳党から睨まれておるだろうな♪」

「楽しそうに言うなっ!!」

「星、お前や私だって他人事じゃないんだぞ。」

「「・・・・・・・・・・」」

 白蓮の言葉に二人は黙ってしまった。

「こ、こらっ!そりゃ私は巨乳だなんて思ってないけど、それなりにあるんだぞっ!!」

「・・・・・まあ、それなりには・・・・」

「・・・す、すまん白蓮殿。悪気は無いのだ!うん、普通に有ると思うぞ、普通にっ!」

「・・・ここでも普通扱いなのか・・・」

 麗羽に復讐する気満々で参戦した白蓮だったのに、すっかり落ち込んでしまった。

 

 

「冥琳様!左翼の突入はまだですかっ!?」

「まだだ・・・・・どうした思春?珍しく逸っているみたいだが?」

「気の所為です。私は至っては冷静です。」

 他の人間が見れば確かに冷静な姿と映っただろうが、この場にいる冥琳、穏、祭の目は誤魔化せない。

「大方雪蓮たちの暴れっぷりを見て血が騒いでいるんだろうが、間もなく合図が有る。もう少しだけ待て。」

 ここから見ていても先陣の活躍は目覚ましく、まるで船が荒波を掻き分け上げる飛沫の様に敵兵が飛んでは星になっていく。

「は、申し訳ありません。」

 思春は大人しく引き下がった。

(穏、思春の奴が逸りだしたのは桂花の口上の頃からではなかったか?)

(そうですねぇ。思春さんも実は結構気にしてましたし。)

(やはりのう、例の落書きも明命だけでは無かったのじゃろう?)

(明命ちゃんの筆跡に似せてましたけど、微妙な癖があるんですよねぇ。)

(冥琳も妙なところで鈍いやつじゃ。まるで気付いておらぬぞ。)

(それはどうでしょうねぇ。もしかしたら気付いていない振りかも知れませんよぉ。)

(それはそれで、思春が哀れではないのか?)

 

 

「我が軍の軍師が迷惑を掛けるな。」

「いえ、そんな!皆さんとお話出来て私は楽しかったですから。」

 秋蘭と月がのんびりとお茶を飲みながら会話していた。

 後衛の仕事は奇襲の警戒とイザというときに崩れかけた部隊への援護である。

 現在の状況からどちらもまるで心配いらなかった。

 そこに遊撃隊の筈の霞が馬でやって来た。

「よ~う!月と秋蘭って珍しい組み合わせやなぁ。暇でしゃあないねん。ウチも混ぜて♪」

「うふふ、霞さんったら。今お茶を煎れますから♪」

 霞も一緒に台を囲んだ。

「あ~あ、こんな事やったらウチも先陣に入れて貰えば良かったわ。折角大軍対大軍っちゅうおもろい場面のはずやのにウチの出番まるで無しやで。」

 不貞腐れる霞に秋蘭が笑う。

「まあ、そう言うな。もしここで袁紹が黄河を渡って逃げたら追撃戦になるし、ここで討ち取ったとしても河北の制圧戦があるのだからな。」

「ホンマにそう思っとる?」

 頬杖をついて唇を尖らせる霞。

 霞は今日の戦が袁紹との最後の決戦と読んでいた。

「ははは、実は思っていない。しかし、士気の問題も在るからな、万が一袁紹を取り逃がせば厭戦気分の出る兵も出てくるだろう。」

「やはり秋蘭さんもそうお考えでしたか。」

「月もそう思うん?」

「ええ、だって袁紹さんはこの戦に殆んどの兵をつぎ込んだようですし、この戦に勝てば冀州以外の三州は書簡を送るだけでこちらに帰順するでしょ。問題は袁紹さんの本拠地である(ぎょう )だけだもの。そこだって兵は残って無いでしょうからとても戦にはならないよ。」

 メイドさんの格好をしていても、やはり一国をまとめてきた董卓である。

 外交を見る目は失われていない。

「やっぱそうやろなぁ。ほんじゃあこの戦が終わったら暫くは内政で国固めっちゅうところやろうが・・・・・次の敵は洛陽の妖怪どもか?」

「そうだな・・・・・河北四州を抑えれば我ら同盟が大陸の東半分を手に入れたことになる。今度は我々が逆賊と言われるな。」

 そう言いつつも秋蘭は楽しそうだった。

「あんな腐った連中の言う事聞いとくくらいやったら逆賊上等やで!」

 洛陽での出来事を思い出して頭に血が登ってしまったようだ。

「でも、帝がお可哀想・・・・・殆んど味方が居ない状態で傀儡として監禁されて・・・」

 自分も同じ状態にさせられたから、月には他人事とは思えないのだろう。

「そやな・・・・・部下を抑えられんっちゅうて非難するには子供やから酷な話やろ・・・」

「北郷達が次は帝を助け出すとか言い出しても私は驚かんぞ。」

 秋蘭がくすくすと笑い出すと月と霞も一緒に笑い出した。

 

 

 秋蘭、月、霞に笑われているなどとは気付く筈も無く、三人の一刀は華佗と貂蝉、卑弥呼と共に救護班の天幕群を忙しく走り回っていた。

 

【緑一刀turn】

「やっぱりここだと戦争の悲惨さってやつを感じるよな・・・」

 また一人傷ついた曹操軍の兵が担架に乗せられ担ぎ込まれて来た。

「大丈夫だぁ!俺はまだ戦えるんだあ!!」

「馬鹿野郎!そんな傷で戦えるはず無いだろうっ!!大人しく治療を受けろっ!!」

 

「嫌だあ!救護班は嫌だあああああああっ!!」

 

 な、何言ってんだあいつは?

「戻って死んじまったらこの先、将軍達の勇姿を見れなくなるんだぞっ!!」

「救護班に行くくらいなら張飛将軍の可愛いお尻や許緒将軍の太ももを目に焼き付けながら死んでやるぅ!!」

 なかなか見上げた変態だがなんでそこまで救護班を敬遠するんだ?

「ええい、しょうがないっ!貂蝉さま!よろしくお願いしますっ!!」

 あ、理由が解った・・・。

「ほうら、男の子がその程度の傷で喚かないのよぉ。」

「そう思うんならほっといてーーーーーっ!!」

「暴れるんじゃないわよ♪」

 ゴキッという音と共に貂蝉に抱き締められた兵は泡を噴いて気を失った。

「はい、麻酔完了よん。後はよろしくねん。」

「なあ華佗・・・・・あれはいいのか?」

「ん?・・・ああ、あの怪我だと傷口の消毒と縫合の時に痛みで暴れるからな。麻酔をした方が本人の為にもいいんだ。」

 いや、麻酔したほうがいいのは分かるが問題はその方法だろう?

 そうしている間にも次々と衛生兵に担架で運ばれてくる兵士たち。

 

「孫策様のオッパイを眺めながら死なせてくれぇー!」

「諸葛亮様と龐統様を愛でながらー!」

「呂布将軍のおへそをー!」

「典韋将軍の料理をもう一度食べたかったー!」

「賈駆様の蹴りでひと思いにー!」

「尚香様の絶対領域がー!」

 

 みんな見上げた変態達だった。

 これならそう簡単には死なないと思えてくる・・・。

「急いでやるわよん、卑弥呼。」

「うむ、心得た。」

「「むちゅうううううううううううううううううううううううううぅぅぅぅぅっう♪」」

 俺たちと衛生兵達は思わず目を背け、華佗は治療に専念していて初めから見ていない。

 いや・・・これは変態とは別次元の問題だ・・・・・みんな、死ぬんじゃないぞ・・・。

 

 

【エクストラturn】

「ブルブル・・・死んでもあの人たちの敵にまわりたくないの~」

 前衛の攻撃で袁紹軍は既に半数以下まで数を減らしていた。

「凪やったらあの人らと一緒に暴れたかったんちゃうん?」

「私なんかじゃ、あの方たちの足でまといになるのがオチだ。」

「またまたご謙遜を!」

「私ならあれだけの攻撃を続けていたら多分今頃疲れて動けなくなる頃なのに、まるで衰える気配が感じられない・・・」

「・・・・・・確かにそやな・・・」

 新たに銅鑼が鳴り響き、右翼と左翼が突入を開始した。

「それよりも真桜。お前は大丈夫なのか?」

「そうなのぉ、曹操軍で一番巨乳な真桜ちゃんは貧乳党に恨まれてると思うのぉ!」

「うわああぁぁあ!!ウチが頑張って忘れようとしてたのに思い出させんといてぇー!」

 真桜が頭を抱えて悶え出す。

「ウチは大きくしたくて大きくなったんや無い!勝手に大きくなったんやぁ!!」

「きっとそういう発言が貧乳党のみんなの心を抉ると思うのぉ・・・・・」

「ほんならウチはどないしたらエエねん!?」

 真桜は本気で涙目になっていた。

「以前言われていた胸を大きくする機械を発明するしか無いんじゃないか?」

「うぅ・・・まるでやる気が起きへんけど・・・・・隊長なら何か天の知識で持っとるかもしれへん・・・」

 

 

「ふふふ・・・予定通り巨乳原理主義者共を巨乳人の手で殲滅出来ているわ。」

 桂花が不気味な笑いを浮かべて悦に入っていた。

「同志桂花、そろそろ同志明命に行ってもらう頃では?」

 朱里もすっかり黒朱里と化して暗い微笑みで提案した。

「そうね、出来れば生け捕りが望ましいわ・・・・・悪に染まった巨乳人がどういう末路を辿るか見せしめの為にも。」

 どう見ても桂花たちの方が悪役にしか見ない。

 亞莎は一人ガタガタ震えていた。

「それではこの同志明命!これより悪の巨乳人袁本初、他二名を捕獲して参りますっ!!」

「「頑張ってくださいっ!!」」

 黒朱里と黒雛里に見送られ、貧乳党の最終兵器明命が終に解き放たれた。

「もう勝手にやってなさい・・・」

 詠はすっかり呆れ返っていた。

 

 

「どういう事ですの一体!あれだけ居たわたくしの軍勢が残りはこの本陣の一万だけだなんてっ!」

 普通なら数が五割を切った所で撤退を開始しなければならない所だが同盟側の攻撃が余りにも早かった。

 更に麗羽たちは気付いていないが多くの兵が逃げ出して、既に黄河を渡り始めていた。

「いやあ~、こりゃまたボロ負けですね~♪」

「なんで文ちゃんはそんなに暢気なんだようっ!!」

「勝負は時の運って言うだろ♪次勝ちゃいいさ~♪」

「・・・・・運以前の段階で決まってたような気がするけど・・・それに次なんて無いんだよっ!!」

「へ?どうして?鄴に帰って体勢を立て直せばいいだけじゃん!」

「兵の殆どを連れて来ちゃったから戻っても兵隊が居ないんだよう!!」

 斗詩は完全に泣きが入っていた。

「あっれえ~?どうしましょう麗羽さま?」

「困りましたわねぇ・・・・・とりあえず黄河を渡ってしまいましょうか?」

 なんだかとっても他人事のようである。

「あのぉ・・・・・大変申し上げにくいのですが・・・・」

 控えていた近衛兵が発言した。

「ん?どうした?」

「実は今、船が有りません。」

「ええぇ!?どういう事!?」

「逃げ出した兵達が勝手に乗って行ってしまいまして・・・」

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 なんで誰も止めなかったのか?

 なんでさっさと報告しなかったのか?

 言いたい事は山ほど有ったろうが言ったところで船が戻ってくる訳でもない。

「ま、しょうがねっか!おい、お前らは降伏しろ。大人しく投降すれば悪いようにはされないって。」

「え?文ちゃん!?」

「ほら、戦場をよく見てみろよ斗詩。敵の救護班のヤツらあたいらの兵の手当までしてるんだぜ。」

 猪々子が指差す方を見てみると確かにやられた兵達が綺麗に並んで手当を受けていた。

「あんなお人好しがいるんだ、心配ないって!」

「そんな・・・・・将軍方と袁紹様はどうするんですか!?」

「逃げるっ!!」

「ちょっと文醜さんっ!?」

「まあまあ、麗羽さま。これを機会に自由気ままな旅に出るのもいいじゃないですか♪」

「自由気ままな旅・・・・・悪くないですわね・・・では河北四州はあのクルクル小娘にくれてやりますわ!わたくしはあくまでも旅がしたくなっただけなんですからね!!」

「・・・・・本当にもう行き辺ばったりなんだから・・・・・」

「何か言いました斗詩さん?」

「いいえ!何でもありませんっ!!ほら、そうと決まったらさっさと行かないとここから動けなくなっちゃいますよっ!!」

 

 

「ようやく白旗を挙げたわね。」

 望遠鏡を覗いていた華琳が確認した。

 その直後戦闘終了を告げる銅鑼の音が聞こえてく来た。

「まったく・・・あの状況でいつまでも戦い続けるから、徹底抗戦をするのかと思ったわ。」

 蓮華は戦が終わった事で胸をなで下ろしていた。

 中軍ですることのない華琳、蓮華、桃香の三人はひたすら斥候を出して戦場の把握に務めていた。

 戦場の中で一番状況を把握していたのは間違いなく彼女達だった。

 袁紹軍が三万を切った所で船が全て居なくなっていた事も掴んでいたので降伏は時間の問題と思っていたのに、いつまで立ってもそんな素振りを見せないので逆に心配になった程だった。

「袁紹さんたち、素直に言う事聞いてくれるかなぁ?」

「素直かどうかはともかく、白旗を挙げたら聞くしか無いのよ。」

「も、申し上げます!降伏したのは兵と士官だけで敵将袁紹、文醜、顔良の姿は有りませんっ!!」

 走ってきた斥候が告げた。

「な・・・あの状況で逃げたと言うの!?」

 蓮華が驚きの声を上げた。

「やるんじゃないかと思ったわよ・・・」

 華琳には予想の範疇だった。

「申し上げます!」

 別の斥候が馬でやって来た。

「北郷様が三人ともいらっしゃいません!!現在手の空いた者から捜索させておりますっ!」

 これを聞いた華琳、蓮華、桃香は同時に溜息を吐いた。

「分かった。お前はそのまま後衛の秋蘭と月の所に行き捜索隊の編成を我ら三人の命令として伝えろ。」

「御意っ!!」

 走っていく騎馬を見送り三人は顔を見合わせた。

「また一刀達の悪い癖が出たようね・・・」

「一刀達はどうするつもりかしら?」

「どうするにしても私たちには相談して欲しかったなぁ・・・」

 

 

【緑一刀turn】

「赤一刀様、紫一刀様、緑一刀様、こちらです!」

 俺たちは明命に連れられ森の中へと入って行く。

 明命には桂花達から声が掛る前に、赤が頼んでいた事があったのだ。

 袁紹が逃げる前に捕まえて置いて欲しいと。

 明命のマンハント能力を聞かされていた俺と紫だが、目の前に縛り上げられ気を失った袁紹達三人を見て唸った。

「こ、これは・・・・・」

「確かに恐ろしい・・・・」

 袁紹には『おつむ空っぽ!バカ巨乳の見本』

 顔良には『ぱっつん無駄巨乳』

 文醜には『人生負け続けの博徒』

 と、顔に書かれていた・・・。

「それじゃあ俺たちが話をするから明命は隠れて袁紹達を見張っててくれる?」

「はい!畏まりましたっ!!」

 うん、明命の返事っていつ聞いても気持ちいいな。

「おーい、袁紹さん。起きてくれるかな?」

 俺たちはそれぞれ三人の頬をペチペチ叩いて起こした。

「んん・・・・ここは・・・へ?なんでわたくし縛られてますのっ!?」

「ううん・・・・・あ、あなたは!」

「うにゃぁ・・・・ん?お前は!」

 

「どなたでしたっけ?」

 

 はい。お約束通りの反応ありがとうございます。

「北郷さんですよっ!北郷一刀さん!!」

「・・・ほんごうかずと?」

「ほら!天の御遣いのっ!!」

「ああ、そんな噂も有りましたっけ。お会いしたこと有りましたかしら?」

 わーお!予想以上の反応が来てびっくりですよ。

「どうも申し訳ありません・・・・・悪気は無いんですけど、こんな人ですから・・・」

「顔良も大変だね・・・同情するよ。」

「うぅ・・・ありがとうございます・・・・・あれ?なんか北郷さんが三人いるような・・・」

「顔良は噂聞いてない?曹操と孫策の所にも天の御遣いが降りたって話。」

「あ、有ります!あの噂本当だったんですか・・・・・」

「まあ、普通は信じられないよね。」

「それで天の御遣いの兄ちゃん達が何の用だよ!あたいらを縛り上げて・・・・・まさかっ!?斗詩に手ぇ出したら生かして帰さねえぞっ!!」

「「「しないってぇのっ!!」」」

「え?しないの?噂だと・・・・・」

「もうその話はいいって・・・・・とにかく三人には話が有ってうちの隠密に足止めをさせたんだ。」

「お話ですの?生憎下僕だったら要りませんわよ。」

「何処の世界に縛り上げてから下僕にしてくれって頼む奴が居るんだよ!」

 会話するだけなのに、なんでこんなに疲れるんだ?

「これまでの事は水に流して、これからは気兼ねなくいこうって言いたくてね。」

 明命から三人が兵たちの安全を確信してから逃げたと聞いて、俺たちはこの決心をした。

「旅に出るんだろう?旅先でどうしようも無くなったら俺たちの誰かを頼って来てくれていいから。それまで兵は俺たちが責任もって預かっておく。」

「北郷さん・・・」

「なんだよ、結構いいとこあるじゃんか♪」

「まあ、みんなのほとぼりが冷めるまでは旅を満喫してきて欲しいかな・・・」

 俺たちは三人の縄を解いてあげた。

「よし決めたっ!あたいの真名は猪々子ってんだ!あんたの事はアニキって呼ばせてもらうぜ!」

「え?文ちゃん・・・・・じゃあ、私も・・・斗詩って言います。一刀さん・・・ええと・・・」

「あぁ、みんな俺たち呼び分ける時はこの頭の紐の色で呼んでるから。」

「はい♪」

「ほら、麗羽様も♪」

「え?ま、まあ斗詩さんも猪々子さんも真名を預けたのですから・・・・・わたくしの真名は麗羽ですわ。普通ならばあなたのような方がわたくし真名を呼ぶなどありえないことですけど、と・く・べ・つ・に・許してさしあげますわ。」

「「「うん。ありがとう麗羽。斗詩に猪々子も。」」」

「ふ、ふん・・・気がむいたら遊びに行って差し上げますわ。」

 さすがにこれ以上話し込んだらみんなが探しに来るだろうな。

「それじゃあなアニキ。次会うときは土産話をたっぷりしてやるぜ♪」

「それでは一刀さんありがとうございました。」

 俺たちは手を振って麗羽たちを見送った。

 

「全く、勝手なことをしてくれるわね一刀。」

 

「「「おわっ!華琳!?」」」

「えへへ、私達もいるよ、ご主人さま♪」

「「「桃香に蓮華も・・・」」」

「本当に一刀ったら甘いんだから・・・」

「あはは・・・ごめん蓮華。それから明命には俺が無理言って頼んだ事だから・・・」

「判っているわ。ありがとう明命、一刀たちを守ってくれて。」

「い、いえ・・・・・これも任務の内ですから・・・」

「さあ一刀、行きましょう。桂花達が首を長くして待ってるわよ。」

 あ・・・・・すっかり忘れてた・・・。

「・・・・・・麗羽たちを逃がしたって言ったら怒るかな?」

「さあ?それは行ってのお楽しみね♪」

 全然楽しくない事が待ってる気しかしないぞ・・・・・。

 

 

【エクストラturn】

「と、斗詩さん・・・・・もう、疲れましたわ・・・」

「もう、麗羽さま!馬を手に入れるまで頑張って歩いてください!」

「追手が来ないだけでも有難いことなんですからね、麗羽さま!」

 山道をトボトボと歩く麗羽一行。

 陽も西に傾き、後一刻で暮れようかという頃。

「麗羽さまー!向こうから馬に乗った人が来ますよ!!」

 猪々子の言うとおり自分たちの向かう方向から馬がやってくる。

「あの人に頼んで馬を売ってもらいましょう。」

 こんな所で馬を売ってくれと言えば通常の二倍三倍の値を言われるだろう。

 持ってこれた路銀の量を考えれば、余り無駄遣いはしたく無い斗詩だったが、麗羽の為にここは涙を飲んで決断した。

「すみませーん!その馬を売ってもらえませんか!?」

「すいませーん!食べ物を分けてもらえませんか!?」

 馬上からそんなことを言われた。

「「え?」」

 馬に乗っていたのは美羽と七乃だった。

 馬の頭が遮って乗っているのがどんな人なのか分からなかったのだ。

「美羽さんじゃありませんのっ!!」

「麗羽ねえさまっ!?」

「「なんでこんな所にっ!?」」

「・・・・・妾たちは麗羽ねえさまに呼ばれたから・・・」

「途中で孫策さんにケチョンケチョンにされちゃいましたけどねぇ♪」

 七乃は笑って白状した。

「わたくしが呼んだ?」

「麗羽さま!援軍の要請をしたじゃないですか!!」

「そういう麗羽さまたちがここに居るっていうことは・・・・・」

「あははははは!あたいらも曹操に劉備、そういや孫策もいたっけ。その連合軍に敗けちまってさぁ♪」

「敗けたのではありません!勝ちを譲って差し上げたのですわっ!」

「「「物は言いようだなぁ・・・」」」

「そういうことですから、美羽さんたちも一緒に旅をいたしましょう。」

「ほへ!?」

 美羽は突然のことになんとも間抜けな返事しか出来なかった。

「それでは麗羽さま、場所を変わりますのでどうぞぉ~♪」

 七乃に代わり馬上の人となった麗羽は美羽を前に乗せて、すっかり上機嫌であった。

「・・・・・あのぉ、麗羽ねえさま・・・お胸をわたくしの頭に載せるのは止めていただけないでしょうか・・・・・」

「あら、丁度良い高さだったからつい・・・まあ、そんな些細なことは気にせず、わたくしたちの輝かしい自由に向かい出発ですわよ!!」

「ひょええええええぇえぇぇぇ!」

 

「おーーーーーーーほっほっほっほっほっほっ!!」

 

 麗羽の高笑いと共に袁家一行の旅が始まったのだった。・・・顔に落書きをつけたまま・・・。

 

 

 

あとがき

 

 

長かった同盟対袁家も

ようやく終結致しました。

 

貧乳党

ついにフルメンバーとなりました

後は減る一方ですw

色々と策を巡らせていましたが

同盟軍のチートぶりと袁紹軍の間抜けさのせいで

あまり効果を発揮してませんね。

貧乳党のおかげで最初から最後まで

オッパイ絡みのお話となりましたw

 

救護班

貂蝉と卑弥呼が待ち受けていると分かっていれば

絶対に行きたくない場所ですw

 

袁家

麗羽のマイペース・・・というか

健忘症か痴呆症じゃないかと

心配になるほどです。

結局最初から最後まで麗羽一人に

みんなが振り回された官渡編でした。

そんな袁家も蜀に現れるまで

しばらくはお休みです。

 

次回は同盟側のエピローグから

五胡編への導入までを予定しております。

 

 


 
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