No.388021

真・恋姫†無双~赤龍伝~第98話「神亭山の一騎打ち」

さん

今回は回想パートで、雪蓮と太史慈が出会った頃の話です。

神亭山の一騎打ちは、三国史の中でも好きな話なので、ずっと書いていてみたいなと思っていました。


2012-03-07 01:00:00 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2915   閲覧ユーザー数:2517

真・恋姫†無双~赤龍伝~第98話「神亭山の一騎打ち」

 

 

―――神亭山―――

 

嶺上の部下「子義様に偵察任務をやらせるなんて、劉ヨウ様は何を考えているんでしょうね」

 

嶺上「ぼやくな。劉ヨウ殿にも何か考えがあっての事だろうさ」

 

嶺上の部下「そうでしょうかね…」

 

嶺上は劉ヨウの命令により、部下一人をつれて神亭山へ偵察に出向いていた。

 

嶺上の部下「だけど、子義様ほどの実力があれば大将軍に任命されたっておかしくないはずですよ。なのに」

 

嶺上「もう言うな。今は神亭山に入り込んだはずの孫策を探すぞ」

 

嶺上の部下「へーい。きっと劉ヨウ様も、孫策を捕えれば子義様の事を見直しますよね?」

 

嶺上「そうかもね♪ ……あれは!」

 

嶺上の部下「どうしましたか?」

 

嶺上「あれを見ろ。…見つけたぞ♪」

 

嶺上の部下「え?」

 

嶺上の視線の先を見ると、そこには馬に跨る武将の姿があった。

 

 

劉ヨウ軍の様子を探るため、わずかな供周りのみを連れて神亭山にやってきていた。

 

雪蓮「はぁー、偵察って退屈よね…」

 

溜息とともに独り言を呟いていると、前方から馬がもの凄い勢いでこちらに駆けてくるのに気がついた。

 

馬は雪蓮の前で止まると馬に乗っていた武将が叫んだ。

 

嶺上「お前が孫策だな! 私は劉ヨウの配下、太史慈! いざ尋常に勝負しろ!」

 

呉の兵士「おのれ!」

 

雪蓮「下がりなさい!」

 

雪蓮の前に供に連れてきた兵士たちが出たが、雪蓮は兵士たちに後ろに下がるように命じた。

 

呉の兵士「ですが…」

 

雪蓮「あなたたちじゃ、そいつには敵わないわよ。下がって見ていなさい」

 

呉の兵士「わかりました」

 

呉の兵士たちが後ろに下がると、改めて雪蓮は嶺上と対峙した。

 

雪蓮「待たせたね」

 

嶺上「かまわないさ」

 

雪蓮「ちょうど飽き飽きしていたところだったから、あなたが来てくれて嬉しいわ♪」

 

嶺上「へぇ~、それは嬉しいね。…じゃあ、始めようか!」

 

言い終えると同時に嶺上は愛用の双戟“雷電”を抜いて、雪蓮に斬りかかった。

 

 

雪蓮「はああぁぁーーーっ!」

 

振り下ろされた雪蓮の剣を、嶺上は雷電で受け止める。

 

二人が一騎打ちを始めて、もう何十合も討ちあっているが決着はまだつかない。

 

嶺上「おりゃぁぁぁーーっ!!」

 

雪蓮「はあぁぁーーっ!!」

 

戦いは終わるどころか、激しさを増すばかりだった。

 

そして、二人は勢い余って馬から転げ落ちた。

 

雪蓮「くっ…」

 

嶺上「痛っ…」

 

お互いに痛みを堪えながら立ち上がる。

 

雪蓮「やってくれたわね!」

 

嶺上「それはこっちのセリフだ!」

 

雪蓮「こうなったら、決着つくまでとことんやってやるわよ!」

 

嶺上「望むところだぁ!」

 

二人の手には武器はなかった。

 

落馬した時に、手放してしまったのだ。

 

そして、二人は素手で殴り合いを始めた。

 

 

雪蓮「はっ!」

 

嶺上「ぐふっ、このぉ!」

 

雪蓮の右フックが嶺上にきまる。

 

だが、嶺上もすかさずに殴り返す。

 

雪蓮「ぐっ! こんのぉーー!」

 

嶺上「がっ! おりゃーーっ!」

 

お互いに足を止めて殴り合う。

 

殴っては殴り返される壮絶な戦いになっていた。

 

 

雪蓮「ちょ、ちょっと、あんた…はぁはぁ、いい加減に…しなさいよね」

 

嶺上「だから…はぁはぁ、それは、こっちのセリフだ…」

 

夕方になり、辺りの景色が赤く染まる頃になっても、二人の決着はついていなかった。

 

雪蓮「はぁ、はぁ、けっこう、楽しかったけど、そろそろ終わりにしましょうか?」

 

嶺上「そ、そうだな…はぁはぁ、確かに…楽しかったな♪」

 

お互い姿はボロボロになり、立つのもやっとの状態になっていたが、顔からは笑みがこぼれていた。

 

雪蓮「じゃあ……」

 

嶺上「……これで」

 

雪蓮・嶺上「「終わりだーーっ!!」」

 

二人同時に止めの一撃を繰り出したが、命中する寸前でその一撃は止まった。

 

祭「策殿ーーーーーっ!!」

 

嶺上の部下「子義様ぁーーーーーーっ!!」

 

雪蓮の帰りが遅いので様子を見に来た祭と、援軍を連れてきた嶺上の部下が駆けつけたからだ。

 

嶺上の部下「無事ですか! 遅くなってすみません!」

 

嶺上「お前たち!」

 

祭「ご無事でしたか! あまりにも遅いから心配したのですぞ!」

 

雪蓮「祭?」

 

祭「おのれ、ゆるさんぞ!」

 

嶺上の部下「よくも子義様を!」

 

祭と嶺上の部下たちは、槍や剣を構えて臨戦態勢となった。

 

雪蓮「祭、止めなさい!」

 

嶺上「お前たちも止めろ!」

 

嶺上の部下「子義様?」

 

祭「策殿? 何故じゃ!?」

 

雪蓮「これは私と太史慈の一騎打ちよ。手を出さないでちょうだい!」

 

嶺上「その通りだ!」

 

嶺上の部下「え?」

 

祭「し、しかしじゃな……」

 

雪蓮・嶺上「「しかしもカカシもない!」」

 

祭・嶺上の部下「うっ…」

 

雪蓮「でも、ちょっと白けちゃったわね」

 

嶺上「そうだな。……どうだ。決着はまた今度つける事にしないか?」

 

雪蓮「ふっ、いいわよ♪ 今度は私が絶対に勝つんだから」

 

嶺上「何だと、勝つのは私だ!」

 

二人は殴り合いから、睨み合いを始めた。

 

その後、二人は祭や部下たちに引き離されるまで、睨み合いを続けたのであった。

 

 

雪蓮「ふふ…♪」

 

帰り道、雪蓮は上機嫌だった。

 

祭「どうされた? やけに機嫌が良いようじゃが?」

 

雪蓮「あいつ中々やるじゃない♪ もしかしたら、あのまま戦っていたら危なかったかもね♪」

 

祭「何をおっしゃるか。策殿にもしもの事があれば、儂は堅殿に会わせる顔がなくなってしまいますぞ」

 

雪蓮「太史慈か♪ 劉ヨウには勿体ないわね♪」

 

 

同じく嶺上も帰り道は上機嫌だった。

 

嶺上「あれが孫策か。噂には聞いていたけど……あいつとはもう一回やりたいかもな♪」

 

 

つづく


 
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