「君にとっておきのコレクションをみせてあげようかなぁ。」
「コレクション?」
さして興味がなさそうに聞き返す
なれなれしく抱き寄せた
「ああ、そうさ。
ボクのコレクションはね…あまり人には見せないんだけど。」
君にだけ特別さ。
甘く蕩ける様なささやきを耳元へ。
「あ、そう。
別に興味ないけど。」
しかし、愁耶はそんな囁きを物ともせずに三月兎の手を解く。
三月兎の耳が鋏のように左右にショキショキと動くと、
今度は逃がすまいと後ろから抱きしめる。
「あぁ、もうっ。
そんな冷たく冷めているところも好きだよ。
本当にもうボクのこk「僕忙しいんだけど。」
三月兎の恐ろしい台詞を聞きたくないといわんばかりに遮る。
本当に油断もすきもあったものじゃない。
愁耶は道端で三月兎に声をかけたことを今更ながらに後悔した。
「頼むよーぅ。
君に見て欲しいんだっ。」
「…ああ、もう。
わかったよ、だからせめて僕を放してくれないかな。」
これじゃあロクに歩けやしないさ。
やれやれとずり落ちた眼鏡を押し上げながら頼む。
本当にこの世界はどうなっているんだ。
女性が居ないだなんてありえない。
そもそも、本来此処にいるのは僕 有栖川愁耶でなく
金髪ハーフの有栖という”名前”の女の子だ。
そう、ミョウジではない。
完全な間違いなんだ。
なのにどうして帰らせてくれないのだろう。
そもそも、ここの住民は自分が男であろうとなかろうと関係がないのではないか。
アリスという人間であれば。
そんなことをボンヤリ考えていると妙に息苦しくなり我に帰る。
三月兎だ。
彼が唇を塞いでいる。
「…」
「痛いなあ。
何も蹴らなくたっていいじゃないか」
「やはり、僕は帰らせてもらおう」
足早に背を向けたときだ。
腰を捕まれ、後ろに引かれる。
密着した身体に血の気が引くのが分かった。
「今日は凄く幸せだね。
君がこんなに長い時間ボクに付き合ってくれているんだ!」
この抑えられない高ぶりを感じるかな。
嬉しそうに笑い、愁耶を更に抱きしめる。
「ソレを君はどうするつもりなのかな」
「ほんとは今すぐ此処で君にプレゼントしたいんだけどね。
それを許してくれないのが
「…なんで帽子屋が」
「恐いよ、彼。
この
「そこ、触ったら僕は本気で君を突き放すよ」
するすると下に伸ばされた手を払いのける。
背後でクスと小さく笑い、三月兎が離れていった。
「君は賢い。
近づけないし突き放さない」
「別に心底嫌ってるわけじゃないからね。
ああ、でも勘違いしないでほしい。
これはあくまで”風変わりな友達”としての好意さ」
眼鏡を押し上げ、ゆっくりと三月兎を見据える。
彼もまた、いつものように”愁耶の嫌いな笑み”を浮かべた。
表面上の笑顔。
目だけが笑わずに此方を見据えていた。
「コレクションはまたの機会にしようか」
「ああ、是非お願いするよ」
それじゃあ。
そういって今度こそ三月兎の元を離れる。
あからさまに先ほどよりも大きな歩幅で、出来るだけ早足だ。
一瞬だけ、ちらりと振り返ったときにはもう 三月兎の姿は見当たらなかった―――…。
Fin...
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耳が鋏のように左右にショキショキと動くと――…。__三月兎×アリス/腐向け/変態兎にご用心/