No.386121

真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第四章 0話

TAPEtさん

豫州での事件から逃げて旅を続ける一刀&雛里ちゃん一行

だけど、これから向かう先にもまだまだ戦いは絶えることをしらず、
更なる戦乱の嵐が彼らを待っているばかりであった。

2012-03-03 20:13:20 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3180   閲覧ユーザー数:2800

一刀SIDE

 

豫州の騒乱から無事逃げきった僕たち次に向かった場所は徐州であった。

徐州の下邳は劉備たちが始めてまともに力を広げた場所として有名だ。それも呂布に乗っ取られたり色々あるわけだが…

なにはともあれ徐州は長い中国歴史で何度も重要な戦場になっていた。

その理由は徐州が持っている経済力がきっと一仕事したのであろう。

 

「徐州は商人たちの州と言っても過言ではないほど商業に長けてる場所です。中原と河北、南の揚州にまで船で移動出来る良い位置にある上、乱世にて戦などが頻繁に起きる中原からは少しズレているのがまた良い立地です」

「商業都市か……まぁ魯家と麋家が居るだけでもその凄さは分かるよな」

 

両方とも富豪持ってる的な意味で……

というより三国志で有名な商人出身だと言ったら前回世話になった魯粛と麋竺二人のことじゃないか。

地味にすごい経験したな、僕たち。

 

「…美味しいものいっぱいありそう」

 

倉は荷馬車の中こっちを見ながらそう言った。

 

「そうだね、商業都市だから、他の所の食材も沢山集まってるよ」

「…早く行きたい」

「てわわ、遙火ちゃんが凄くノリノリです」

 

まぁ、豫州ではあまり良い食事なんてできなかったものだしな。

僕も贅沢は言わないが、ちょっと豪華な食事とかやってみたいとは思ってる。

 

「……うーん」

「……なんですか、一刀さん?」

「分かってるくせに…」

「……あの、私たち旅人なのですよ?あまり贅沢なことは」

「知ってるよ。でも、ほら、今はまだ余裕あるじゃない」

「あわわ……」

「うん?」

 

豫州で三人が働いてたおかげで、給料としてかなりの金が揃ってあった。

豫州で大半使ったわけだが、それも雛里ちゃんがちゃんと管理してくれてたせいで結構豊かに旅出来るような額があると思う。

僕は孫策の所で別に給料をもらったわけでもなく、最も、豫州で袁術たちが逃げる際にお礼とかするのも断ったのは僕のことだ。金に関しては大口は叩けない。

でも、ほら……ね?

 

「……あわわ、分かりました」

「やったー!」

「…やった」

「てわわ、雛里お姉さん弱すぎでしゅ」

 

僕は倉とハイ・ファイブをした。

 

「あわわ、言っておきますけど、贅沢には駄目ですからね!一級料理店とかで大盤振る舞いとか無しですから!」

「分かってるって」

 

んじゃあ、行こうか。

徐州へ。

 

 

 

 

「って、長いな」

 

何が長いかっていうと、城門を通る列が長い。

 

「検問とかあるのかな」

「てわわ、そうみたいですね。おかしいですね。商業に長けてる都市だと、こういう所で物資の通行を阻むのは良くないと思うのですけど…」

「……」

 

まぁ、取り敢えず待つしかないか。

 

「…一刀、私お腹空いた」

「すまん、倉。もうちょっと我慢しててくれ」

 

これは結構かかりそうだな。

 

「…一刀さん、あの鞄、隠した方がいいです」

「え、鞄?なんで?」

 

雛里ちゃんは後ろの僕の鞄のことを差しながら言った。

 

「魯粛さんに聞いた話ですが、徐州刺史の陶謙は今病で政ができる状況ではないようです。それで陶謙さんは他の人に政を任せたのですが、その人が何も凄く強欲な人らしく…」

「…なんか、嫌な予感がするな」

 

アレだな?何らかの理由をつけて検問で物を没収して返さないって話だろ?

旅の時に使う道具とかも全部あそこで調達するんだから、奪われたりしたら大変だ。

しかも、あの鞄はその人が必要とするものは何でも出すからな。他の人の手に入ったらほんと洒落にならない。

 

「つっても、鞄を隠せる所なんてないぞ。あんな大きいものどうやって隠せと?」

「あわわ、それはそうですけど……まぁ、万が一の場合のための切り札はあるのですが…」

「切り札?何ソレ」

 

でも、雛里ちゃんは何も言わずに城門の方に視線を移した。

僕たち三人は、ただ黙って僕たちの番が来るまで待つしかなかった。

 

 

 

 

一刻ぐらい過ぎて、やっと僕たちの番になった。

 

「どこから来た?」

 

なかなか高圧的な態度の兵士がそう聞いてきた。

 

「旅人です。豫州から来ました」

「豫州から?もしかして豫州の蜂蜜などを持ってきたことはないな?」

「いえ、そんなものはありません」

「馬車の中を調べさせてもらおう」

 

そう言って兵士二人が断りもなく馬車の中に入ってきた。

 

「てわわ!」

「!」

「…少しやりすぎなのでは?」

「何?誰に向かって口出ししてるんだ、てめぇ」

 

兵士は持ってる槍を雛里ちゃんに出そうとした。

 

「その槍しまった方が良いぞ」

「なっ!」

「検問するのは結構だがよ…僕の女に手出したらお前ら全員僕に殺してくれと懇願するまで地獄見せてやるから……」

「っ!!」

「てわわ、北郷さん、怖いでしゅ」

「…似合わない」

 

僕の威脅に少し怯んだ兵士たちは、大人しく中を調べ始めた。

つっても中には大したものは置いてない。

普段使うものでなければ全て鞄に入れておくのが一般的なのだ。

 

…その鞄が一番問題なのだが…

 

「この鞄は何だ?」

「……」

 

ほらきた。

 

「大したものじゃありません」

「何かの箱か?中を見せてもらおうか」

「……」

 

そう言いつつ兵士は鞄に手を伸ばした。

あの鞄はそれを開ける人が望むものを渡す箱。

違う人がなんでも開けてみてはぜったい怪しまれる。

 

「その鞄は魯子敬さまに送られるものです」

「!」

「何?」

 

その時雛里ちゃんの言葉に兵士の手が止まった。

 

「荊州から特製して魯子敬に送られる重要なものです」

「お、お前ら、さっきはただの旅人だと」

「信じられないならこれを見てください。魯子敬からの身元保証書です」

 

切り札と言ったのはそれか。

 

「…間違いないな」

「最初から見せてくれたらごちゃこちゃせず通したものを」

「通せ」

 

兵士たちが馬車から出てきて道を開けると、僕たちは中に入った。

 

 

「あわわ…一刀さん、あまり驚かせないでください」

「いやだってさ…あいつらが雛里ちゃんに…」

「あれぐらいの喧嘩腰は予想できたものです。これで明白になりました。彼らは何かの言い訳をつけて、城に入る人たちから金品を奪っているのです」

「てわわ…しかもあの高圧的な態度、まるでまともな兵士とは思えません」

「…街の回るチンピラ級の奴ら」

 

確かに皆意見通りだった。

さっきの兵士たち、まともな奴らとは思えない。

そしてそんな奴らに門番をさせている刺史代理という奴も……

 

「雛里ちゃん、刺史代理の名前は知ってる?」

「判りません。でも、魯粛さんから次徐州に行くって言ったら、それならこれを持って行ってって言われたのです。きっと使うことがあるはずだって」

「なるほどな……」

 

…どこに行ってもあるんだな…高い位置で好き勝手にしながら問題起こす連中は……

 

「…ほ、ほら、そういうことはもういいですから、取り敢えず宿屋を見つけてお食事にしましょう」

「ご飯…ご飯食べに行こう」

「わかった、分かったから後ろから揺らすなって」

「…あわわ!北郷さん、前ー!!」

「へっ!?」

 

一瞬気を抜いていた。

 

倉に気を取られて前を見てなかった。

前を見た瞬間誰かが前に立っているのを見て僕は急いで馬の手綱を引っ張った。

 

「きゃー!!」

「……さまー!!」

 

その時、横から他の人影が現れて、馬車の前にいた人と一緒に横に大きく転んだ。

 

「くっ、おい、大人しくしろ!

「あわわ、大丈夫ですか!」

 

僕は驚いた馬を落ち着かせるのに精一杯で倒れた人たちのこともまだ確認できなかった。

 

「…孫権さん!!」

「ええー!?」

 

 

 

 

蓮華SIDE

 

覚悟を決めたのは一ヶ月前。

徐州に来ようと思ったのは、まだ私が軟禁状態に居た時のことだった。

 

鳳士元から手紙が送られてきたのを見て、思春たちを行かせる一方、私はることを確信していた。

これで状況がどう動くか、袁術が豫州に残るか、それともお姉様が豫州を得るかと関係なく、私が軟禁状態から解放されるってこと。

そしたら、私はお姉さまと一緒に居られるようになるだろう。

でも、疑問があったことは、いや、ほぼ確信していたけど、一刀は私との約束を守ってくれないだろうということだった。

孫家が力を取り戻し、お姉様と和解したとしても、一刀はあの日の約束を…

 

『蓮華は孫呉に戻ることになったら、僕も孫呉に…いや、蓮華に仕官する』

 

一刀がその約束をしたのは、鳳士元と戦った直後、その後一刀は意識を失って倒れた。

あんなものを見せられたら、その約束を守ってくれるると期待するのは、あまりにも図々しいのだと思った。

 

だけど、それ以上、このまま彼と離れたくはないと思うという気持ちがあった。

だから……私は……

 

ある日、部屋に手紙だけを残して、牙莎や他の人たちが知らぬ間に屋敷を出てきた。

 

向かうのは豫州…ではなく、徐州だった。

以前一刀たちが話すことを聞いたことがあった。

豫州の後一刀たちが向かう場所は下邳だった。

 

何の宛もなく、私は一人で徐州に向かった。

 

間に合わないかもしれなかった。

途中に卑劣な賊に会うかもしれなかった。

 

でも、これが最後の機会と思った。

これが彼に会うための唯一の手段だと思って……私はここまで来た。

 

「やっと着いたわ……」

 

そして、孫呉の英霊たちの加護があったのだろうか。

ここに着いた。

 

着ている服はボロボロになったし、今までにないほど長い道を歩いて来たせいで身も心も疲れていた。

でも、初めて自分の決心で、自分一人の力で成し遂げたこの業績に、私は喜んでいた。

 

だけど、まだ終わりじゃない。

一刀に会うまではまだ安心できなかった。

一刀がもう徐州に居ないとしたら私の命を賭けたこの旅は無駄になってしまうものだった。

 

取り敢えず、もうここに居るのならどこかの宿屋に泊まってるはずだからここの宿屋をすべて調べてから……」

 

「あら?」

 

と思った時、横を見たら馬車一つが私が居る交差点に来ていた。

そして、その御者台には……

 

「一刀……?」

 

一刀が……そこに居た。

 

「一刀ー!」

 

それを見た瞬間私は馬車の前に立って一刀を呼んだ。

でもその瞬間、一刀は後ろを向いていてこっちに気づけなかった。

 

その時私は気づいた。

私と一刀の間にある馬がすぐ私の近くまで来ていることを…

 

一刀が私に気付いた時、馬はもういきなり現れた私に驚いて暴れ始めて、私は何も出来ずにただ悲鳴をあげていた。

その時、横から誰かが私を襲いかかって、私はその人と一緒に道の反対の端に転んだ。

 

「あわわ!大丈夫ですか、孫権さん!!」

「ええーー!?」

 

一刀たちが驚いてる間、私は私を助けてくれた人に礼を言った。

 

「お身体は無事ですか、蓮華さま」

「ええ、おかげで助かったわ……へ?」

 

でも、その私の『真名』を呼ぶその声に驚いて私はその人の顔を見た。

 

「…はぁ……はぁ……。」

「え…みつ…き?」

 

私を助けたのは、以前お母様の家臣、冥琳の親友としてまた魯家の次期当主、

 

魯粛子敬の姿だった。

 

 

 

 

 

一刀SIDE

 

「蓮華、大丈夫か!」

 

馬車の馬を落ち着かせた僕はやっと蓮華の様子を見に降りてきた。

 

「あ…一刀…」

「大丈夫か、怪我は!すまん!僕がちゃんと見てなかったせいで」

 

人が死ぬかもしれない危ない場面だった。

しかもその相手が誰よりも世話になった蓮華のことなら尚更テンパるしかなかった。

 

「一刀……一刀ー!!」

 

でもその次蓮華が僕を抱きついたせいで、僕のテンパり具合は更に加速した。

 

「やっと会えた…一刀」

「れ、蓮華」

「会いたかった……一刀」

 

僕が慌てたあまりに何の反応も出来ずにしていたら、隣の魯粛さんが目にはいった。

 

「魯子敬?」

「はぁ…あら、その顔は……以前豫州で」

「はい、北郷一刀です」

「ということは…」

「魯粛さん、孫権さん、大丈夫ですか!」

「あら…」

 

凄く当たり前で、なおかつすごい偶然で集まった面子がそこに居た。

 

「…所で、一刀さん、いつまで孫権さんを抱きついてるつもりですか?」

「あ、ああ!あの、その…いや、というか蓮華は何でここに…」

「え、えっと…私は……」

「孫権サン、ソロソロ控エテモラエマスカ?」

「え、…ひやあっ!」

 

雛里ちゃん、凄く怖いです。

 

「取り敢えず、こんな所で話すのも道の邪魔になるだけです。私の屋敷に行きましょう」

「あ、はい」

「ええ…そうしましょう」

 

魯粛さんの提案に僕と蓮華は同意した。

なにはともあれ、今回の事件、なんだかここ徐州でもただじゃあ通れない気がムンムンとして来た。

 

 

 

 

 

 

 

(つづく)

 

 


 
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