No.384679

春は恋の季節。猫は契りの季節。

cpfizzさん

本来は1~2月が時期らしいですが、ウチの周囲では今も発情期特有の猫の鳴き声が聞こえてきます。
年中発情期の人間も動物であれば、そう言う周期、バイオリズムはあるんじゃないでしょうかね。
特に春は浮き足だって、ラブラブしたくなるのかもしれません。そんな感じで猫の発情期と重ね合わせてみました。
ちょっぴりさくらちゃん攻めvv
▼2012/03/09:作品を公開するアカウントを変更しました。

2012-02-29 01:48:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3030   閲覧ユーザー数:3024

「にゃぁ~ん……♪」

 猫が鳴いている。それも部屋の中で。

「……そうか。この時期は猫の発情期だったな」

 小狼は冷静にカレンダーの日付を確認した。最近は温暖化の影響なのか、少し時期がずれているのかもしれない。通例なら1~2月が当たり前だが、今年はこんな初春の3月になっても鳴き声が続いている。

「にゃぁぁ~~ん♪」

 再び猫が鳴き声を上げた。小狼のすぐ近く、というよりも目の前で。しかもその猫はとてもお洒落さんらしい。白地にピンク色の縁取りのエプロンを着けている。猫なので当然のようにそれ以外に身に着けているのは……。

「自然の摂理なのは当然として……」

 猫の発情期はまずメスから始まり、それに誘発される形でオスが発情期に入るという。

 その理由はよく分かる。こんな魅力的な格好をされれば、どんなオスも恋をするだろう。愛を求めたくなるだろう。そのしなやかな体付きに誘惑されれば応じないわけにはいかない。はっきり言ってその肩とか二の腕は反則だ。

 太っているとか、スタイルが悪いとか、そんな話しを聞くがそんなのは関係ない。今すぐにでも……。

「にゃぁぁ~~ん~~♪」

 ますます猫の鳴き声は近くなり、今はもうその吐息が顔で感じられるほどの距離だ。

 小狼はその頭頂部に右手を載せ、目つきは真剣なまま声色は呆れたように、目前の猫、もとい少女に問いただした。

「なんでお前が猫になってるんだ? さくら」

 そう。今目の前にいる巨大な猫は、猫ではなくてネコミミとしっぽを付けたさくら本人である。しかもネコミミとしっぽの色は彼女の毛の色と同じはちみつ色。見ているだけで触れたくなるふわふわの、あの色だ。加えて真っ白いエプロンが辛うじて彼女の前半身を隠しているが、彼女の魅惑的な背中や二の腕、はたまた鎖骨周りは剥き出しである。それ以外がどうなっているのか、今すぐエプロンを引き剥がして確かめたくなる。

「にゃ? にゃぅ~~vv」

 そして、優美な曲線を描くお尻も、エプロンと同じように白地と淡いピンクの繊細なレース模様が入った下着を着けているようだが、その生地はずっと薄手の物らしい。春の柔らかい日差しが、彼女の柔らかさを強調している。

 小狼は「穏やかな春の日差し」と言う表現は嘘だと今は思う。透けるのか、透けないのか、ギリギリのラインを保っている今の日差しは、むしろ妖艶なスポットライトよりも官能的だ。

「そんなに擦り付けるな! 何がしたいんだお前……」

 目を輝かせた猫さくらが頭を少年の身体に擦り付ける。猫特有の臭い付け行動。それは臭いを付けた対象が所有物である事を示すのと同時に、時には愛情を強請る行為でもあるという。

「にゃぁぁ~~ん♪ にゃぁ♪」

 小首を傾げ、更に身体を密着させようとする猫さくら。小狼は巧みにソファの上で身体を滑らせ、とても困った状態にある場所を何とか触れられないよう、遠ざける努力を繰り返す。

「あぁ、もう、分かったから。先に仕事を片付けさせてく……」

「ぁ……」

 ほんの一瞬。彼女の手首の内側が彼のとても困った状態にある場所を掠めた。

『…………////』

 少年の頬へ一気に血の色が走る。それは猫の少女も同様。お互いに意識してしまい、誤魔化す術を持たないのは如何にもこの二人らしい。

「ぁにゃぁぁ……。にゃぁぁ~~ん♪」

 いち早くその衝撃から脱した猫さくらが、改めて小狼にすり寄り、彼の頬を一舐め。

 直後、小狼の頬は赤く爆発した。伝う汗が彼の慌て振りを何よりも如実に現している。

「…………たくっ。お前は……」

 キスを強請るように瞳を閉じて、再び少年の頬を舐めようと近づいてきた少女の頤を、彼はくいっと持ち上げ、

「覚悟しろ…………」

 低く静かにそう言い放ち、突き出されていた彼女の赤い舌、そして唇と順番に口に含んでいった。

「にゃっ!? んぅ……」

 猫さくらは初めこそ僅かに舌を引っ込めて抵抗したが、すぐに唇ごとその鳴き声を抑えられてしまった。

 ――やがて響き始めた違う鳴き声が、部屋の穏やかな空気を甘い綿菓子のように蕩けさせるのだった。


 
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