No.381999

司馬日記12

hujisaiさん

その後の、とある文官の日記です。

2012-02-23 00:55:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:18937   閲覧ユーザー数:12452

12月7日

先般の下着展示会で会計を務めた子丹お嬢様が、仲達が着用した意匠は一人として注文がなかったわよ、とにやにやしながら仰った。

薄々そうではないかと思ってはいたことではあるが、私では折角一刀様が御提案下さった下着の素晴らしさを引き立たせられなかったのだ。

かたや公孫瓚殿は4着も着たとは言え中堅官吏を中心に数十件の注文があるそうだ、多少の付き合いでしかないが彼女の人を落ち着かせる容姿や無難な人柄、また痩躯でもなく弛んでもいない整った肢体を思い返せば納得がいく。

女としての魅力の磨き方は彼女に学ぶべきかもしれませんねと私が言うと子丹お嬢様は何故か微妙な表情をされ、外でその話は余りしないようにね、貴女が本気な分聞いた人傷つくわよと言われた。

 

12月10日

夜になってしまったが一刀様に冀州組の人事について御報告に伺おうと廊下を歩いていたところ前方に奉孝様が書類を片手に一刀様の御部屋に入られるところを見かけた為、奉孝様の御用が済んだ後にしようと室外で待機することとした。

しかし中々郭嘉様が退出されない為、長引きそうなら出直そうと思い失礼ながら扉の外から中の声を伺ったところ、

『一刀殿っ、まだ報告の途中ですっ…』

『稟…今はこんな報告書なんかより、君が欲しいんだ』

という声が聞こえ、慌てて逃げ出した。

 

今思い返してもあの一刀様の御声は私の知る一刀様のものとは明らかに違い、力強く、余人であれば強引とも言える御様子だった。

 

だが私にしてくれた時はどこまでも御優しかった。

御情けで何もわからぬ生娘であった私に合わせて御優しくして下さったのだろうか。

私は、私の勝手な想いを一刀様に押し付けてただお疲れになる事をさせてしまったのだろうか。

お望みでしたらどのように激しくされても構いませんのに。

私が一刀様のお好みに合わなければいっそ抱かれなくても構いませんのに。

 

一刀様。貴方のお気持ちが知りたいのです。

 

12月11日

悩んだが、やや目の腫れぼったい奉孝様を夕食にお誘いした。

故意ではなく房事を伺ってしまった事をまず詫び、その後事務会議で一刀様の御性癖を調査することになっている事を説明し、一刀様は昨晩のようになさるのがお好みなのかと伺ってみた。

奉孝様は初めは顔を朱に染めてあんぐり口を開けておられたが、仕方のないという表情をされて一刀殿はいつもはああではありませんよ、と言われた。

では何故昨晩はあのようだったのでしょうか、と重ねて伺うと決まり悪げにあちこちに視線を彷徨わせた末、そういう『ぷれい』だったのです、と目線を逸らせて言われたが意味が今ひとつわからず『ぷれい』とは、とさらに聞こうとしたところ、酒盃をくいっと空けて息をすうと吸い

『私が一刀殿にお願いしたのですよ、「今日は報告する振りをするからそれを遮って強引にして欲しい」と!なんか文句がありますか、人の性癖に!私だって疲れているのです、桂花と桐花は喧嘩してばかりだし風は面倒な調整はしてくれないし皆私と秋蘭にばっかり話を持って来て!だいたい…』

と怒り出された。

これが士季の言っていた天の国の言葉で言う『逆切れ』と言うものかと思いながらしばらく奉孝様の愚痴を聞き、ようやく冷静になられて『…というわけで、ええ、まあ…一刀殿も、か…可愛かった、よかったよと言ってくれたことでしたし、まあ、そういうことなのです』

と酒のせいか赤い顔で指を弄りながら仰った。

 

更に、では一刀様御自身はどのようになさるのが最もお好みなのでしょうかと聞いたところ、顎に指を当てて考え込まれた末に

『恐らくなんでもありなのでしょう、よっぽど極端なこと以外は。桐花が「髪を掴んで無理やり喉を突いてとお願いしたら痛そうなことは駄目と拒否された」と言っていましたから』

と仰った。指で咽喉を突く等単に痛いだけとしか思えずまるで理解出来なかったが、

では先程仰っていた『詠や秋蘭なんて私なんかよりよっぽど変なぷれいをしてるじゃないですか』

とは具体的にはどのようなことでしょうかと聞くと、

『あ』

と仰られた後、まあ…彼女らも苦労が多いですから、察してあげて下さい、この事は他言無用ですよとのみ言われてお開きにすることにした。また、

『貴女は頭脳明晰でありながら、悪い友人等に容易に騙されてしまう節があります。付き合う者は選ぶように』

と御忠告頂いたので気をつけます、と答えた。

奉孝様の帰りしな、最後にどうしても気になってしまったので、

昨晩の『ぷれい』はそんなに素晴らしかったのでしょうか、と伺うとややご機嫌を損ねたような表情をされたが直ぐに微笑を浮かべ、

『…そうですね、こう考えてみればわかるでしょう。…貴女が日々の御指導を終えて部屋を出て行こうとします。すると一刀殿に後ろから抱きすくめられ、耳元で「仲達さん…今日は帰したくないんだ」と囁かれたと考えてみて下さい。その程度には素晴らしいですよ。ではお休みなさい』

と言って帰られていった。

 

12月12日

昨晩は一睡も出来なかった。

真面目に仕事をしようとしたが、職場で居眠りをして机に頭を打ちつけてしまったところ公達様から疲れているなら帰りなさいと言われ、このままでは周りの士気も下げてしまうので帰らせて頂くことにした。

 

最近、自分がふしだらな娘になってしまったような気がする。

筆は明日洗おう。

 

12月15日

亞莎、凪と休暇の都合を合わせて茶会をした。

凪が『制服』の呉への貸し出しの決裁を上げたところ曹操様が目に留められ、一刀様監修のもと凪のものを『後輩用』として胸元の帯飾りの色が違う同輩用・先輩用、そして教師用の『制服』を曹操様が意匠されたとのことだ。

希望者には販売されるらしく亞莎が凪と同じ後輩用を買いたいと言い、私も同じものを購入したいというと、二人に『いや、仲達さんは教師用でしょう?』と言われた。

気落ちした顔を見せてしまっていたのか、亞莎には頑張れば先輩用が着れると思いますよと付け加えられた。

 

そんなに二人と年は離れているわけではないのだが。…きっと上背があるからだろう。

 

12月17日

夜に飲みながら子丹御嬢様、子廉様、子孝様にこれは真面目な話なのですがと前置きして、後宮整備の為一刀様の御性癖について調査しており、お名前は伏せますがこれこれ斯様な『ぷれい』をなさる方がいらっしゃるがそういったものが一刀様の御好みなのでしょうかと伺うと、

「それは稟様でしょうけれども、個人教師と教え娘という『ぷれい』も御好みのはずよ」

「稟はそういうのが好きだろうけど、潮を吹かせるのもお好みよ」

「稟の好みも分からないではないけど、卑猥な言葉でお強請りさせる方が好きなはずだけど?」

と三者三様の、それでいて全員が先の『ぷれい』の寵姫が奉孝様だとあっさり看破された御回答をされて思わず顔が引き攣った。

 

ひょっとして奉孝様の御性癖は有名なのでしょうかと伺うと

「ん~?仲達が当てやすい言い方をしちゃったからじゃないのぉ?あーあ、稟、仲達には内密にと言ったんでしょうけどきっと怒るわねぇ、ばらされて?」

と子廉様様が言い、

「でも大丈夫よ、これからも仲達が私達と『仲良く』してくれれば誰にも喋らないわ。もちろん稟にもね?」

と子孝様が付け加えられた。

 

…ひょっとして私は今脅迫されているのではなかろうかと思いながら、今後とも宜しく御願い致しますと申し上げてお暇させて頂いた。

 

しかし奉孝様の御言葉を考察してみたが、何らかの状況を設定して御寵愛を賜るという事は変たい、

もとい大変刺激的なのではないかということに思い至った。

 


 
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