No.381535

江姫†無双 第3話

エリスさん

強い力を持つ者は、それだけ孤独が付き纏う。

どんどん更新していきます。
今回は雪が目を覚ますお話です。
設定として碧い眼の雪と紅い眼の雪で少し性格を変えています。

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2012-02-22 00:58:45 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1034   閲覧ユーザー数:972

 

 

 

 

 

 

 

―――私は生まれつき壊れていた。

 

 

 

 

 

 

1度見れば全て覚えられる記憶力。

少しでも加減を誤れば物を壊してしまうほどの力。

親に似ていない、日本人とは思えない容姿。

 

 

最初は少し驚かれる程度だった。

親は私を神童と呼び周りに自慢していた。

親戚は私たち家族を羨望の目で見ていた。

保育園でかけっこをしたときも

小学生で高校の勉学を修めたときも

周りからは尊敬の目で見られていたはずだ。

 

 

 

いつからだろう、『羨望』や『尊敬』が『嫉妬』と『忌避』へ変わったのは。

 

いつからだらう、『自慢の娘』が『化け物』に変わったのは。

 

いつからだろう、それが私にとっての『日常』になってしまったのは。

 

 

 

死後、雅に出会って、優しい両親の元で育って、元気な明命と友達になって、

ようやく気がついた。

私にとって普通だと思っていた日常は、他人にとって異常な日常でしかないことを。

そして気づいてしまった。

大切な家族と友達を守れると思っていた力は、力を持たない人にとって唯恐怖にしか成り得ないことを。

 

其は心の呪縛。

 

 

 

 

母を失う恐怖と、また昔の日常に戻ってしまう恐怖に板挟みにされた心は、

 

 

 

 

後悔の念と共にその死に際を再生し続ける。

 

まるでそれが私に許された唯一の贖罪であると言うように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また独りになってしまった。

 

 

 

 

 

 

独りになりたくなかったから、

今まで力を抑えて生きてきた。

 

独りになりたくなかったから、

力を使うことを躊躇った。

 

独りになりたくなかったはずなのに、

母を死なせてしまった。

 

『どうして』という想いが胸の中を渦巻く。

私は願うことも許されないのだろうか。

 

 

 

 

1人広場の中心に立つ私と、周りに散らばる賊だったもの、私に畏怖の目を向ける村人達。

 

この惨状が私は独りだと告げる。

 

その目が私に孤独を与える。

 

 

 

 

 

・・・いつかの雅との生活を思い出す。

たった2人きりの生活だったけれど、なにも恐れる必要がなかった。

雅に甘やかされ、過保護にされ。

嫌がる振りをする私は幸せだった。

 

 

 

きっとこれは、もう1度、今度こそと思ってしまった私への罰。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・理解してしまった。

ここに私の居場所は無かったのだ。

 

天界に戻りたいと空を仰ぐが、

いつの間にか曇っていた空はなにも返さず。

 

それは『独り』が私のあり方だと示しているようで。

 

 

    ―――そんな私など―――

 

 

 

 

 

『・・・雪ちゃんですか?』

 

 

 

・・・声が聞こえた。

それは聞き慣れた、耳に馴染んだ声。

 

気づくといつの間にかすぐ隣に明命が立っている。

彼女も私を忌避するのだろうか。

村人達と同じ目を向けている姿が脳裏に浮かぶ。

 

『それでも』と、

確かめたいと思う心が、

信じようとする想いが、

私を振り向かせた。

そして交差する視線は、

その黒い瞳を捉え、

 

   そこに唯々只管(ひたすら)に私を心配する想いを見つける。

 

 

 

 

どれほど安堵しただろう。

 

大切な友達が無事だったことに。

 

まだ私を想ってくれる人が居たことに。

 

 

 

 

そっと隣に佇むその姿に。

 

 

 

 

 

 

 

 

解けた心は涙を(いざな)い。

 

その涙は心を軽くし。

 

ようやく安息を得た私は、

    ―――そのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

side 雪

 

 

鳥のさえずりが静かに耳を打ちます。

徐々に光に慣れてきた眼で、周囲を見渡すと・・・

 

「森?」

私のあほ毛もクエスチョンマークです。

「なぜ・・・森?」

私はいつから寝ていたのでしょう?

 

 

 

未だに靄のかかる意識で、

ここまでの経緯を思い出そうとして、

「ぁぶっ」

記憶と共に吐きました。

 

 

 

 

助けることができなかった母の姿。

人を切り刻む感触。

私を見る怯えた目、目、目。

体が震えだす。

心が恐怖に囚われる。

目を瞑っても悲鳴が、怨嗟が、私を化け物と呼ぶ声が聞こえ、

「―――――っ!」

声にならない悲鳴を上げた私は自分の体を抱きしめようとして、

 

 

 

左手を包む暖かな温もりを感じました。

 

 

 

その温もりに誘われて向けた視線の先には、

 

幸せそうに眠る明命がいて、

 

枕にされている銀がいて、

 

『独りじゃないよ』と伝えてくれているような気がして、

 

 

 

 

     私は”笑顔”で涙を流しました。

 

 

 

 

 

 

 

 
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