No.381498 勇者伝説セイバスター 第1話「勇者登場!」紅羽根さん 2012-02-22 00:09:33 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:705 閲覧ユーザー数:701 |
第1話「勇者登場!」
勇者。それは、幾度にも渡る地球の危機を救ってくれた者達の名前である。地球は勇者のおかげで平和になったと言っても過言ではないだろう。勇者は歴史に残り、一部ではその勇者を崇め、研究に取り組む者が現れた。地球外知生体・超AI・勇者の伝承、とにかくさまざまな者が研究されるようになったがほとんどは謎に包まれていた。その理由も定かではない……
のどかに時間が流れていく地球。そう、それは『平和』と呼ぶにはふさわしかった。明日ヶ丘(あすがおか)市のとある街外れ。
「ねえ、待ってよー、空人」
住宅がまばらに並ぶその街中で元気に走っている少年とそのやや後方にその少年を追いかけている少女がいる。
「早くしないと遅れるよ、晴香」
少年の名は『光神空人(ひかみそらと)』。元気が取り柄で、まるで炎のような赤いジャンパーがトレードマークとなっている。少女の名は『風間晴香(かざまはるか)』。空人の幼なじみであり、リボンで髪の毛を結び、まるでアニメの世界から飛び出してきた、そんな可愛らしいという表現がぴったりの少女である。
「だってパレードを見るだけでしょ?」
「このパレードが見れるなんてめったにないチャンスだよ! だからはやくいこうよ!」
「も~……」
晴香が少しふてくされる。だが、本気でふてくされてるようには見えない。と言うより、むしろこういう事を承知でいるように見える。
(空人のお父さんとお母さんが外国に行って3ヶ月がたつけど……もう大丈夫だよね……よかった……)
晴香がそう思いながら軽く笑顔になる。3ヶ月前、空人の両親は仕事の都合上外国に住まなければならなくなったが空人だけは日本に残りたいと言ったのである。だから今は晴香の家に居候みたいな形で住まわせてもらっているのである。
「勇者がこの目で見れるかもしれないんだ、何かワクワクするな……」
空人の言っていた『パレード』とは、勇者が巨悪を倒した日を中心として勇者に関わる企業、その他が全国を周るパレードを行うのだ。そのパレードが明日ヶ丘市の街を通ると聞いた空人が勇者が見れるかもしれないと思い、パレードの通る道へと走っていってるのだ。
「早くいこうよ!」
「だから待ってよ~……」
晴香はその付き添いであるが……
場所は変わり、ここは地球からそうはなれていない宇宙。そこにひとつの巨大な戦艦らしき物が地球にせまっていた。そう、地球を暗黒の世界に変えるために……
「皆の者、あれが我々の次なる目的地だ」
何者かの声が艦内に響き渡る。艦内にいる者達がメインルームにあるモニターで『地球』を見下ろしている……といっても、わずか5人にも満たない数ではあるが。
「あれが我ら『宇宙帝国』の次なる目的地、コードA-02931『青の星』だ」
「あれが『青の星』か……なかなかいい星じゃねーか」
「あの星を我ら宇宙帝国の住みやすい星に変えるのが我らの使命だということを忘れるなよ、ゴルヴォルフ」
「へいへい、分かってるって、ソルダーズさんよ」
悪魔のような姿をしたゴルヴォルフと呼ばれた者が騎士のような姿をしたソルダーズと呼ばれた者にむかって挑発するような感じで返事をする。ソルダーズがそれを聞いて怒りを抑えるために握りこぶしを作っている。
「ソルダーズよ」
「はっ」
「最初の任務はお前に任せる」
何者かの声がソルダーズに向かって命令する。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! なんで俺が最初じゃないんだ!?そ の理由を言ってくれよ、ヘルゲイズ様!」
「理由などない。ゴルヴォルフよ、私の命令が聞けぬなら……」
「わ、分かったよ……まぁ、真打ちは後に出ると考えればいいか……」
ゴルヴォルフがヘルゲイズと呼んだ声の脅しに自分の意見を引っ込める。
「まあ、お前の出番が来る前に私が終わらせるがな」
「そう簡単に終わればいいけどな。クックック……」
ゴルヴォルフが意味深な言葉を言い残してメインルームから出て行く。
ソルダーズはただ一人、メインルームでモニターごしに地球を見ていた。
「こんな星、私だけで充分だ!」
ソルダーズが皮肉ったような言葉を吐いてメインルームを出て行く。
同じ頃、戦艦の後方から一つの光が地球の近くまでやってくる。その光が戦艦の横をゆっくり通っていったかと思うと急に動きを早め、地球に降り立っていった。
「急がなければ……早く『勇気』を持つ者を探さなければ……」
その光がそうつぶやく。その光の後ろにある戦艦の出撃口からまた一筋の光が地球に向かっていた。
再び地球。空人達は街にたどり着き、ちょうど通りはじめたパレードを人ごみをかき分けて眺めていた。
「うわー……」
空人がそのパレードを見て感動していた。
「すごい、すごいよ、晴香!」
「確かにすごいね。……だけど、『勇者』って何?」
それを聞いた空人がズッコケる。漫画やコントのように表現するなら片足の力が抜けてカクッとなった感じであろうか。空人が体制を立て直し、
「晴香、勇者を知らないの?」
「名前は聞いたことあるけど、あとは全然」
「随分前だけど、宇宙人がロボットになって地球を襲いに来たことがあったよね?」
空人が晴香に逆に質問する。
「あの恐竜みたいなロボットのこと? それがどうかしたの?」
「その時、別のロボットが現れてその地球を襲いに来たロボットをやっつけてくれたのが勇者なんだ」
「ふ~ん……」
「勇者は一人じゃないんだ。もっとたくさんいて、このパレードのほとんどが日本で作られた勇者達なんだ」
空人が得意げみたいに言う。
「これって全部本物なの?」
「本物そっくりにできてる偽物だよ。本物は今でも活躍してるからね」
「勇者さん達も大変なのね」
晴香がややのんきに言う。その時、後ろの方で激しい音を立てて乗用車がとまり、その中から一人の男が現れてパレードの方へむかう。
「ここに集まっている中で必ずいるはずだ。わたしの『勇者を見分ける眼』に止まる『勇者』が……」
男はそうつぶやくが周りの歓声にかき消された。
ここは街にあるビルの屋上。そこにソルダーズは降り立った。
「ここが青の星の地表か。ずいぶんと隆起しているものだ……」
ソルダーズがそびえたつビルを見て勘違いをしている。
「まったく騒がしい……今すぐ静かにしてやろう」
そういってソルダーズが背負っていた剣を取りだし、何やら呪文を唱えはじめた。
「デッタムロフ・セルビタモク・ティステド……今ここに闇より生まれし大地の精霊を呼び出さん……」
ソルダーズが呪文を唱えていくと剣先が光りはじめていく。
「出でよ、『ダークゴブリン』!!」
ソルダーズが剣をかざすと剣から光がほとばしり、その光が消えると同時に魔物が姿を現わす。
「グオォォォォォォォォォ……」
魔物が咆哮した後、街中を激しい地響きを鳴らしながら進んでいく。
「ダークゴブリンよ、全てを破壊するのだ!」
ソルダーズはその光景を魔物が向かう方向の反対側から指示していた。魔物は次々と街を破壊していく。そして、魔物はパレードさえもつぶしていく。そこにいた人々は魔物から逃れるために四方八方へと逃げていく。
「なんだ、あれは!?」
「何か分からないけど、怖い……早く逃げよう、空人!」
空人と晴香が手をつないで魔物から逃げようとする。
「きゃあっ!」
しかし、晴香がその激しい地面のゆれから倒れてしまい、怪我を負ってしまった。
「晴香!」
「空人、先に逃げて!このままじゃ空人も死んじゃうよ!」
「たとえ僕が死んでも、晴香だけは絶対に死なせない!」
空人がそういって晴香をかばう。
「空人!」
同じ頃、一つの光が上空から魔物が暴れる光景を見ていた。そして、空人が晴香をかばう光景も……
「あの輝きは……あの少年が『勇気』を持つ者なのか?」
光がそう考えている間にも魔物は空人達にせまっていた。
「くっ……このままでは彼らが危ない! 『体』があれば……」
光がふと視線を近くにあったまだ無傷の乗用車に目をやる。
「あれだ!」
その光が高速で乗用車に向かい、乗用車の中へと入っていく。
「チェンジ!」
光がそう叫ぶと車が変形し、ロボットとなる。
「わ、私の車が……」
その持ち主の男が自分の車がロボットに変形するのを見て驚いている。その間にも、魔物は空人達へとせまる。
「!!」
「空人ー!!」
晴香の叫び声が聞こえる。それと同時にロボットが魔物の方へと走り出す。
「フン!」
そのロボットが危機一髪、魔物を抑える。
「……え?」
空人が目を開けて見てみると自分の目の前に1体のロボットが魔物を抑えている光景が目に入ってくる。
「大丈夫か、少年達よ」
「ロ、ロボット?」
「もしかして、勇者なの?」
空人がロボットに向かって『勇者』なのかを聞く。
「そうだ。私は聖勇者『ファイナル』。『勇気』を司る聖勇者だ」
ファイナルと名乗ったロボットが魔物を抑えながら答える。
「すごい、すごいや! 本当に勇者が僕の前に現れるなんて!」
(勇者だと?)
空人が感激する。その後方でさっきの男がその光景を眺めていた。
「少年よ、名前は?」
「僕の名前は『光神空人』、空人でいいよ!」
「空人、私に勇気を!」
ファイナルが空人に向かっていきなりはっきりと意味の取れないことを言う。
「勇気を?」
「そうだ。空人、『ファイナル・ブレイブ』と言ってくれ。それが私に勇気の力を受ける鍵となっている」
「分かった!」
空人がファイナルの行ったことを理解し、うなずく。そして、落ち着くために深呼吸する。
「ファイナル・ブレイブ!!」
空人がそう叫んだ瞬間、ファイナルが輝いていく。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
ファイナルが力を振り絞って魔物を押し倒す。そして腰から銃のような武器を取り出す。
「ファイナルブラスター!!」
ファイナルが引き金を引くと炎の弾が飛びだし、魔物を炎につつむ。
「すごい、すごいや! がんばれ、ファイナル!」
「………………」
空人はファイナルの戦う姿を見て感激し、晴香は開いた口が塞がらない状態になっていた。
(あの強さはまさしく勇者!私はなんてついてるんだ!)
空人の後方にいる男もなぜか感激している。
「いくぞ!」
ファイナルがファイナルブラスターをしまい、魔物に向かって構える。魔物は炎からなんとか逃れ、立ち上がろうとしていた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ファイナルが咆哮するとその周りの空気がファイナルに集まっていくように風がふく。
「ファイナルバーン!!!」
ファイナルの胸の飾りから巨大な火の弾が現れ、魔物に向かって飛んでいく。
「ガアァァァァァァァァ!!!」
ドオォォォォォォォォン!!
魔物はその攻撃を受けたと同時に激しい大爆発を起こした。
「うわっ!」
「きゃっ!」
その爆発によるものすごい勢いの爆風で空人達はよろけてしまう。しかし、それは一瞬のことだったのですぐに体制は立て直せれた。そして、空人達が目を開けるとそこにはファイナルただ一人だけが立っていて、魔物の姿は影も形もなかった。
「あの化け物を倒したの、ファイナル?」
「ああ」
ファイナルが自信を持ってうなずく。
「やったあ! やっぱり勇者はすごいや!」
「よかった……」
晴香がその嬉しさからか、涙を目にためる。
一方、ビルの屋上にいるソルダーズがその光景を見て怒りを抑えていた。
「おのれ……よくも私の計画を無駄に……聖勇者ファイナル、覚えておくぞ!」
ソルダーズが捨て台詞を吐いてその場から消える。
「それじゃ、帰ろうか。」
「そうだね。」
「すばらしい!!」
空人達が帰ろうとしたその時、後ろから大きな声と拍手が聞こえる。
「私の勘に狂いはなかった! さすが勇者だ!」
「あの、おじさんは誰ですか?」
空人がその男に質問する。
「おっと、突然話しかけてすまない。私は『勇者研究所』の所長『石橋貴志(いしばしたかし)』だ」
そういって石橋と名乗った男が空人と晴香に名刺を渡す。
「勇者研究所?」
「そう、私は勇者を研究する者の一人だ。今日、この街に勇者のパレードが通るという情報で来たのだが、まさか本当の勇者に会えるとは思っていなかったぞ。しかも私の車だからな」
そういって石橋はファイナルを見上げる。
「すまない、勝手にこのボディを借りてしまって……」
「なに、別にかまわない。ところで、君達にひとつ頼みたいことがあるのだが……」
そういって石橋は再び空人達に視線をやる。
「何ですか?」
「私の研究所に勇者と共に来てくれないか? いや、無理にというわけではないが……」
「どうするの、空人?」
晴香が空人の方を向く。
「いいですよ。」
空人が快く引き受ける。
「本当か!? ありがとう、え~と……」
「光神空人です。こっちは僕の幼なじみの風間晴香」
「風間晴香です」
晴香がおじぎをする。
「空人君、本当にありがとう! では、早速で悪いんだが今すぐ行こう!」
『ええ~っ!?』
二人が石橋の言葉に驚く。
「そちらの……」
石橋がファイナルの方に視線をやる。
「私はファイナルだ。よろしく、石橋所長」
「よろしく。では、ファイナル君、悪いが私の車に戻ることはできるか?」
「ああ」
ファイナルがうなずき、ジャンプする。するとファイナルが変形して元の乗用車に戻る。
「おお、さすがだ」
石橋が運転席に座る。
「空人君、晴香君、乗りたまえ」
「はぁ……」
「はい……」
二人がまだ驚いたような感じで後部座席に乗り込む。
「では、いくぞ。」
石橋がアクセルを踏んだ瞬間、車は激しい音を立てて高速でその場から走っていった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
二人がその勢いで思わず体制が崩れる。
「二人とも、シートベルトはしめるように。スピード違反ぎりぎりまでスピードを上げるからな!」
石橋のその言葉にふたりは急いでシートベルトをしめる。だが、それでもまだ不安が残っていた。「これから何が起こるのか」という心配もあるがそれ以上に今は「交通事故にならないか、スピード違反にならないか」という不安の方が大きかった。
「大丈夫……だよね?」
「多分……」
第2話に続く
次回予告
こんにちは!僕、空人。
石橋さんの勢いで勇者研究所に行くことになった僕達。
勇者研究所では本当に勇者の研究をしていたんだ。だけど、勇者研究所にはまだ秘密があった。
そんな時にまた街に魔物が現れた!すぐに街に向かう僕とファイナル。
だけど、魔物の力が強くてファイナルの力でも倒せない!どうしたらいいの!?
その時、僕達の前に現れた黄色いロボット。え?君も勇者なの?
次回、勇者伝説セイバスター『電光石火の勇者』
僕と一緒に、「ファイナル・ブレイブ!!」
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アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。